旅する杖

 

登山道の入口や、峠道の入口には、使い古した枝の杖が置かれていることが多い。
登山者が次に利用する人のために置いていったものである。
重宝であり、よく利用させてもらっている。

1000m前後の低山歩きでは、登山用のステッキを持って行くのは大袈裟だし、
たとえ山道の入口に杖が置かれていなくても、
植林地に入れば、たいてい手頃な棒切れが落ちているものである。
自分の体格にあった、手になじむmy stickを入手することができる。

幾人かの人の手に渡り、幾度の山旅を共にした杖は、
山道の入口で次の利用者を静かに待っている。
新たな道連れを待っている。

そんな杖たちは、
こちらの村からあちらの村へ
あちらの村からこちらの村へと幾度となく
峠道を越えてきたのかもしれない。

あるいは予想もしない遥か遠くの地から、
旅人の供となって流されてきたのかもしれない。

杖を使用する人が乱暴な人なら
ポキッと折られてしまったり、
ヤブの中に投げ捨てられたりして生涯を終えるが、

やさしき旅人とめぐり会えた杖は
山頂で共に重畳たる山並を見はるかし、
峠の木陰で共に憩う。

杖も献身的に旅人を助け、
しっかりと大地を捉えバランスを保つことに貢献する。

会うは別れの始まり

日がな一日、旅人に付き合った杖は、
また山道に置き去りにされて
次に手にしてくれる旅人の到来を待つ。

そんな杖たちは、
私たちより多くの峠を旅しているのかもしれない。

そんなことを考えて
今日一日を共にした杉の枝の杖を
そっと道しるべに立てかけて山を後にした。