★ 三国山稜 大洞山南斜面バリエーションルート 

(三角点p1383は、国土地理院地形図では大洞山、地元では角取山、別名は鷹巣山)


軌跡は大体のイメージです

三国山稜界隈を今後の山行計画の下見を兼ねてぶらぶらと探索。
下見にしてはちょっと深入りしすぎた感もあるけれど。

三国山稜は籠坂峠や山中湖側から登るのが一般的。
明神峠へのバス便は期間限定の土・日だけと乏しい。
そこで南面からのアプローチを考えてみた。

冨士霊園へのバス便は、新松田駅、御殿場駅、駿河小山駅からと豊富だし、
マイカーなら霊園内に駐車することもできる。
広い霊園内は周回バスが走り、トイレ・売店もあり便利。
霊園という独特の場を厭わなければ、それなりのアプローチポイントに成り得る。


冨士霊園
北東部最奥の駐車場から稜線を見る

冨士霊園内の北東最奥部、
三国山稜の稜線に一番近い所までマイカーで進入する。
地形図、丸いロータリーはバス路線の発着場所となっている。
そこから霊園最奥部までは距離があるが、
園内周回バスがあるので公共交通利用でも大丈夫。

冨士霊園は広大で、冨士の眺めも雄大。
日の当たる南斜面だし永眠するには良い環境だ。
ただ富士スピードウェイの爆音は熟睡を妨げるかもしれない。
でも、ゴルフ好きならゴルフ場に囲まれていて心落ち着き
安らかな眠りにつけることだろう。

永眠された御霊に合掌。


角取林道ゲート
電流に注意!

駐車場から見上げる三国稜線は近い。
これは案外、楽勝アプローチコースかとその時は思った。

駐車場のすぐ脇が角取林道への入口となっている。
林道入口にはゲートがあるが通行禁止という意味ではなく、
獣の侵入を防止するためのものであり開閉は自由である。

霊園との境界部及びゲート下部には
獣除けの電流柵が張り巡らされているので要注意である。


「治山事業施行地」の看板
ここから尾根に取り付く

林道内に入ると、「角取林道」の看板と
「北郷県営林」の看板が設置されている。
この一帯は静岡県東部農林事務所の管轄のようである。

真新しいコンクリ舗装が途切れる場所に
「治山事業施行地」の看板があり木製階段がある。
仕事道がのびているのでここから尾根に取り付くことにする。


何も書かれていない指導標
支柱には「冨士霊園」とある

植林地内を真っ直ぐに道はのびている。
踏み跡程度だが、所々に黄色のテープが付けられている。

支柱に「冨士霊園」と書かれた指導標識があるが、
指し示す方向板には何も書かれていない。

昔、ハイキングコースでもあったのだろうか?
この植林地内も冨士霊園の所有地なのだろうか?


謎の標識
ここで道が二分する

ひとしきり進むと左画像の謎の標識が現われる。 【*1】
ここで道は二分し、直進は踏み跡程度、
左手にのびる道は明瞭な植林地内の仕事道となる。

左の道を選択して快適な仕事道を進む。
尾根筋を外れて大分西へ西へとトラバースしてしまう。
少し開けた除伐地を過ぎ、不安定な丸太橋を過ぎると
植林地の西端となり、自然林との境に至る。


スコリアが堆積した
小さな谷筋を登り詰める

植林地と自然林との境は小さな谷になっていて
火山噴出物であるスコリアで埋まっている。
堆積したスコリアの上を三歩進んで二歩ずり下がりながら
直登を開始する。

ザラザラして歩きにくいし、
しばらく行くとスズタケが出現するので、
適当な所で右手の植林内に入り、
鹿道などの歩き易い場所を選んで高度を稼ぐ。
先程、西へトラバースした分、
意識的に東に修正しながらp1179を目指す。


p1179付近は自然林だが
高密度のスズタケが行く手を阻む

植林地を通過すると、明るい自然林帯となる。
時折、ガスが流れ、心細くもなる。

人間の歩いた痕跡は無く、鹿道だけが頼りである。
熊の出そうな雰囲気なので手を叩きながら前進する。
今日は熊除けのホイッスルを忘れてきてしまった。
でも富士スピードウェイの爆音が聞こえてくるので
大いに熊除けの役割を果たすだろう。


崩壊地からヅナ坂の尾根を見る
この辺は鹿道だけが頼り

稜線が間近に迫ったことはなんとなくわかるが、
高密度のスズタケが現われ行く手を阻む。
スズタケ密生地を避けながら右手から巻き気味に進むと
地形図の崩壊記号上部付近に出た。

ひとつ谷を挟んでヅナ坂峠から下降する長い尾根を
確認することができる。
ヅナ坂峠探索の為の一環として周囲を下見に来たのだが
この下見自体の方がハードなような気がしてきた。


稜線に出るには
ヤブを漕がなければならない

崩壊地から鹿道を辿るが、
稜線に向かうにはどうしてもスズタケのヤブを
漕がなければならないようだ。

腹を決めて突進する。
幸いにもダニの取り付きは一切ない。
西丹沢に隣接しているのに、この違いは一体何なのか!

ダニがいないヤブ漕ぎなら怖くはない。


「(社)一色郷栄会山巡視」の標杭

鹿道から人間の踏み跡らしきものに変化すると、
「(社)一色郷栄会山巡視」と書かれた標柱が現われた。
久々の人間の臭いにホッとする、これで道迷い遭難は免れた。

標柱には「平成15」、「平成17」と書かれているので、
定期的に巡視されているようだ。

勾配は次第に緩やかになり、
三国山稜の頂稜部の一角に辿り着いたことがわかる。


ブナの平坦地に出た

ブナ、カエデ、ミズナラの生い茂る平坦地に出た。
地形図の大洞山の東方部、等高線が緩やかな場所である。
ほぼ予定通りだ。

予定外のスズタケ通過はあったが、
特段、危険な箇所も無く、三国山稜アプローチコースとして
有効に使えるだろう。
冬枯れの時季などはもっと歩き易いかもしれない。


一般道接続部にある標杭
今歩いて来た道が矢印で示されている

尾根上の一般道に合流する部分に、
左画像の矢印の書かれた標杭があった。
いま辿って来た道を矢印が示している。
一応、山林関係者からは認知されているコースなのだろう。
(コースといっても目印なし、踏み跡不明瞭、スズタケヤブあり)

さて、尾根上の一般ハイキングコースに出たが、
西に行くか、東に行くか。
東に進んで、ヅナ坂峠の下降も考えたが
お楽しみは次回にとっておこう!

西に進んで、大洞山を越え、
次のp1366峰から南東に尾根を下降しよう。


たちこめるガス 神秘的なブナの大木

三国山稜は白いガスに包まれていた。
ここはいつ訪れてもこんな感じだ。でも、この雰囲気がタマラナイ。
ブナの大木を包み込む白いベール、ザクザクのスコリアの黒い道。


地形図でいうところの大洞山
地元では角取山

アップダウンのほとんど無い緩やかな尾根を西に辿れば
ガスに包囲された大洞山で三等三角点が埋まる。

地形図では大洞山と表記されているが、
地元では角取山というらしい。

登山ガイドブック等では
三国山稜の西端p1332(三角点は南へ下がって1308m)を
角取山としているものが多いが、
ここは地元では立山(太刀山)と呼ばれているようだ。
また、p1353の楢ノ木山を角取山としている文献もある。


『アルペンガイド富士山周辺、駿河の山』
山と渓谷社 より

とりあえず地形図でいうところの大洞山から
「角取神社奥社」の分岐を見送って緩やかに下降する。

次の1366m峰との鞍部を、
山と渓谷社発行の『アルペンガイド』では「明神峠」としているが
尾根を乗り越す道は見当たらない。

この「明神峠」は誤植ではないかとずっと前から思っているが
版を重ねても一向に訂正されないところを見ると
そんな地名もあるのかなとまことしやかに思えてくる。 【*2】


p1366 分岐
ここで南へ下る踏み跡へ入る

1366m峰には「《←大洞山、三国山》・《アザミ平、籠坂峠→》」の
道標があり、一般登山道はやや右にカーブしている。

道標の背後に「明神峠自然環境保全地域」の看板があり、
その前から南斜面に向けて踏み跡が続いていた。
踏み跡が無ければどうしようかと心配していたが
思いの外、明瞭な踏み跡で、まずは一安心である。


「角取」と書いてある ここが角取?
点々と境界見出標が続いている

踏み跡に沿って境界見出標が点々と続いている。
最初に見た標杭には「角取」と書かれていた。

傾斜はやや急で一直線ではあるがヤブも無く歩き易い。
この道の方が、登りに使ったバリコースよりはるかに状態が良い。
登りに使用した道は下降ルートとしては不適だが、
こちらの道なら登り、下りの両方に利用できそうである。

なにより境界見出標という心強い目印があるし、
錆びた空缶などが落ちていて人間臭が感じられる。


ブナの大木の近くに石祠が祀られている
角取神社奥社か? 風の神か?

しばらく下降を続けると、踏み跡を塞ぐブナの大木があり、
その近くに立派な石祠が祀られているのを見る。

これが「角取神社奥社」なのか?
「角取神社奥社」には大御神地区と用沢地区の二基の祠が
祀られているというからそれとは別のようだ。

三国山稜南麓の村々では、冬場、山稜から吹き降ろされる
「つのとりおろし」に悩まされ、それを鎮めるために
山腹に「風の神」を祀ったという。
あるいは、その神を祀った石祠のひとつなのかもしれない。


ハンターの注意看板が転がっている
踏み跡は一直線に真っ直ぐのびている

ガスに煙る樹林帯の下降を続けると、
突然、境界見出標が途切れ、
進路をスズタケの密生地に阻まれた。

人の辿った痕跡は途絶え、鹿道だけが錯綜している。
まだ新しい獣の糞(明らかに鹿のものではない、野犬?)に
少々ビビリながら、左手側からスズタケ密生地を巻き、
小尾根に乗りしばらく下降を続ける。

小尾根を横断する明瞭な鹿道を右手に取り、
スズタケ密生地の下部に出て、上手く巻き終えることが出来た。


マックシェイクではありません
境界見出標を保護する筒のようです

スズタケ密生地の出現で見失ってしまった境界見出標を、
ある筈であろう延長線上に探し求める。

辺りをキョロキョロ探すと人工物が目にとまり、
近づくと境界見出標を保護する筒状のものであった。
これでまた一安心。
再び境界見出標に沿って下降を続けられる。


有るような無いような踏み跡
鹿道が錯綜する

緩やかな谷状地形の斜面を下降する。
読図からこの先に林道があると確信があるから下っていけるが、
普通なら足を踏み入れようなどとは思わない。
ましてこの時季、葉をつけた木々は視界を遮り、
不安感を一層高めてくれる。

斜面の底に、小広い台地が見えてきた。
降り着くと、そこが林道の末端で、車の転回スペースであった。


林道終点の転回場所に出た

右手に植林地内に続く作業道もあるが、
左手の安心確実な林道歩きを選択する。

林道は大きく尾根を巻き込みながら下降するので
遠回りの感もあるが、精神的に疲れたので安全策がベスト。

久々のバリルートは肉体よりも精神を疲労させる。
ルート探索は集中力と研ぎ澄まされた野性の勘を必要とするのだ。
(短いルートなのに大袈裟か!)


高原情緒が漂う林道を進む

自分の日常の生活とは掛け離れた地域の、
それも人跡稀な奥山を歩いている時の不安、心細さ、焦燥、
それが時折、快感に覚えてくるのはなぜだろうか?

道迷いの危機にヤバイと思いつつも、
心の片隅でワクワク感をちらりと感じるお馬鹿な衝動。
この病気の恐ろしさに気付くのは、本当の危機に陥り、
手遅れになったときに違いない。

林道は地形図通りの接続路を合わせて
スタート地点の角取林道入口ゲートまでのびている。
ゲートを通過し、冨士霊園に無事戻り着くことができた。

こんな行き当たりばったりの山歩きばかりをしていると、
墓に眠ることはできず、山に眠ることになるのではと、
そんな思いがふと頭をよぎるのであった。

【*1】 後日、ヅナ坂峠南尾根三角点1071の西側のジグザグ道を歩いたときに同じ標識があった。
    「東海道四〇〇年祭ウォーク」で使用された標識が撤去されずに残っているものらしい。

【*2】 実際、江戸時代の絵図を見るとこの辺りに「明神山」「明神峠」の名を見ることがある。
   それは単なる作図の精度の問題なのかとも思う反面、以下のような文章を見ると今のいわゆる「明神峠」とは別の
   「明神峠」があるのではとも思えてくる。

   「明神峠が湖水を渡る諏訪明神に縁あるところとすれば尾根上約四キロ近くも離れた今の明神峠でない事は明白で
   その実証である古来の明神の祠は三国山の一角にある由である。」 (『丹沢山塊』昭和17・ハイキングペンクラブ)

【参考】

冨士霊園は水曜日閉園。

◇特急バス小田急新松田駅行き (所要時間45分・片道運賃1150円・往復割引2070円)
 土曜のみ    13:00
 日、祝日のみ  12:00,13:00,14:00

◇駿河小山駅行き (所要時間25分・570円) 1月と2月については日、祝日のみ運転
 平日(3/1〜12/30の土曜日を除く)のみ運行 水曜日運休
 9:50,10:25,11:05,11:35,12:20,13:15,14:05,14:45,15:15,15:55

◇御殿場駅行き (所要時間27分・610円) 1月と2月については日、祝日のみ運転
 10:10,11:10,12:15,13:15(彼岸期間のみ),14:10,15:20,16:10

バス便時刻、各駅始発便の時刻、運賃はご利用前に富士急バスにて御確認下さい。

★ 三国山稜・ヅナ坂峠探訪 を見る。

★ 三国山稜・南面バリエ-ションルート ヅナ坂峠南尾根〜立山南方下降路 を見る。

★ 「富士箱根トレイル」須走〜立山ルートを歩く を見る。