ヤブ山と名も無き峠・要害山ぐるり

 

 以前に御林峠(十文字峠)、和見峠を訪れた時から気になっていた要害山ぐるりの尾根を歩き、
小さな山里と山里とを結ぶ、これまた小さな名も無き峠を巡って来ました。


要害山登山口


要害山頂

上野原の市街地からテクテク歩いて鏡渡橋で鶴川を渡り小倉の集落へ。
小倉、大倉という集落名からして、木地師の末裔の集落なのでしょうか?
山腹の日当りの良い土地で、丹沢・道志の山々の眺望も良く、
どこかのリゾート別荘地よりも頗る快適そうな集落です。

小倉集落の奥に鎮座する山ノ神社から山道に入ります。
左上写真の真ん中の道が登山口です。(案内板あり)
右手は由緒有り気な山ノ神社の境内へ、左手は大倉集落へと続く林道です。
1/25000地形図では山ノ神社までの道は破線で記載されていますが、
要害山への登山道及び今回歩いたぐるりの尾根道は記載されていません。

要害山への道は、踏み跡は明瞭なものの、少々ヤブ気味です。
山頂までに四、五匹のダニが笹ヤブからズボンに取り付きました。
山頂もススキやら笹やらのヤブに埋もれています。
それでも南面は中央道の向こうに道志の山並、
東方には笹尾根が望めるなど眺望はそこそこの合格点です。

山頂の大木の下には秋葉社の祠が祀られています。
村人たちが年に何度かお参りに来ているのでしょうか?
お弁当持参で、眺望を楽しみながら祭りや宴が繰り広げられることもあるのでしょうか?
それにしては山道が少しばかり荒れ気味です。
要害山付近と次の570m峰付近は、今コース中最もヤブと倒木で荒れています。


名も無き峠(登下〜大倉)


秋葉山信仰の石灯篭と注連縄がある

ヤブ気味の山道の足下にも、よく見ると野菊やリンドウが咲いています。
秋の野花を愛でながら、下りついた鞍部が、可愛い名も無き峠です。

登下と大倉を結ぶ峠で、はっきりした道が尾根を越えています。
可愛らしい凹ですが、立派に峠状を形成しています。
峠には「権現山・用竹」、「要害山」、「登下」、「大倉」を指し示す味のある道標が立っています。
この峠自身の名前は不明ですが大倉峠とでも呼ぶのでしょうか?

峠の大木の横には「秋葉山」と刻まれた石灯篭があり、
要害山へ向かうには注連縄をくぐることになります。
山頂にあった秋葉社の祠の向きからしても、この峠からの経路が正しい参詣路のようです。
きっと大倉や登下の集落の人々の信仰の対象になっているのでしょう。
この峠は秋葉社を信仰する人々によって活かされているようです。


570m峰 展望はいいのだが・・・


小さな祠のあるピーク

道標が指し示す権現山の方向に従って570m峰に向かいますが、ヤブと倒木に難渋します。
トゲトゲ植物が少ないのがせめてもの救いでしょうか。
いかにも『新ハイキング』誌の読者が好みそうな道です。

マツクイムシにやられたのか、台風で倒れたのか倒木が目につきます。
近頃は、どこの里山も手入れをする人がいないのか、
それとも手入れをする気が毛頭ないのか荒れ放題です。
これだけの倒木があれば、薪にして一年間ぐらい御飯が炊けて、風呂も沸せそうです。
実に勿体無いなぁ〜

570m峰から西北にちょっと行ったピークにトタン屋根の小さな祠があります。
ここは祠の前を通って下りましょう。 祠の後ろの踏み跡はミスコースです。
無事に下りついた鞍部が登下から大倉大沢側へ乗っ越す場所で仕事道が越えています。
小さな赤い鳥居と祠が二基祀られています。
どんな神様が祀られているのでしょうか?
狩猟の神様でしょうか、集落の守り神様でしょうか、風神様や水神様かもしれません。


登下から大倉大沢への乗越にある祠
怪しげなキノコが目立ち始めます


600m圏のジャンクションピーク
「コヤシロ山」の名前があつた

登下側は植林帯ですが、大倉大沢側は自然林で野性動物が好みそうな場所です。 
ここの神様に手を合わせて狩に出ていた時代もあったのかもしれません。

鞍部から植林帯の急登を登りつめますが、
この辺りからはヤブともお別れで格段と歩き易くなります。
今度は足下に怪しげなキノコが多数現われはじめます。

忠実に尾根を辿り自然林帯に入るとイノシシの掘り返しが目立ち始め動物臭が漂います。
熊でも出てきそうな雰囲気ですがカバンに取り付けている頼りない鈴の音を信じて進みます。
以前歩いた御林峠(十文字峠)方向からの道を合わせるピークに、
「コヤシロ山」とマジックで書かれたビニールテープのマーキングがありました。
誰にも会わない心細い山の中にあって、頼りになるシルベです。

このジャンクションピークを右に折れて609m峰に向かう途中に小さな可愛い峠があります。
登下と今野を結ぶ名も無き峠です。


登下と今野を結ぶ名も無き峠


609m峰の次のJPから能竹山を望む

地形図では、今野側からの道が途中までは破線で描かれていますが、
しっかりと峠まで道は達しています。また登下に向けて越えている道もあります。
ただ、登下側はいきなりの崩壊で、いささか頼りなさそうでありますが。

この峠は先の大倉と登下を結ぶ峠と違って、村人の利用も、もはや無さそうです。
このまま放置され、草に埋もれていく運命を辿るようであります。
車社会の現代、最短距離であろうと、わざわざ山を越えて隣村を訪ねる人はいないでしょう。
特に高齢化の進む山間地であっては尚更です。

609m峰から538m峰に向かう途中のピークで踏み跡が消えてしまい若干戸惑いますが、
自分の読図力を信じて鋭角に曲がり尾根を下れば、再びはっきりした山道が現われます。
ツガの大木の傍らからは能竹山を望むことができます。
ここからだと、低山の割に複雑でどっかりした地形にも見えます。


マツタケか?(ちがうちがう!)
538m峰(尾続山)

538m峰は尾続山と言うらしいですが、山頂部は松の倒木とヤブで荒れています。
山頂は巻いてしまってもいいかもしれません。
マツタケでも生えていないかと足下を探してみると、多種多様なキノコがあること、あること。
いかにも怪しいキノコや、菌糸を撒き散らすキノコ、ぬめっとした不気味なキノコ・・・・
どれが安全で食用なのか、まったく知識を持ち合わせていないのが実に惜しい。
たとえマツタケがあったとしても、普段口にしたことが無いものなど判るはずがない・・・。

538m峰から三角櫓を過ぎれば、あとはジグザグに山道を下るだけで、
しぜんと尾続(おづく)集落の宝珠院裏の畑に導かれて、
ヤブ山と名も無き峠巡りの山旅は終了します。

キノコの知識豊富な人との同行が望ましい秋山なのでありました。

<参考になる実踏資料>

『新ハイキング554号』「芦垣尾根から尾続山を行く」(小倉修)
『新ハイキング412号』「芦垣尾根から要害山」
『中央線の山を歩く』(藤井寿夫・新ハイキング社)「芦垣尾根・要害山」

要害山ぐるり(周遊)コース・・・お手頃な所用時間3〜4時間