★ ビーサン テクテク オロカ 行 / 南中峠・辻の神峠

 

 野暮用で京急横須賀中央駅に出向きます。
もちろん貧乏人は交通費節約の為、藤沢の自宅から新逗子駅まではチャリンコで移動です。
横須賀位なら当地までチャリンコで移動すべしとも考えましたが、変速ギア無しのパパチャリでは
葉山から衣笠に越える「滝ノ坂峠」はちょっとキツイのです。

ジメジメした梅雨の一日、京急新逗子駅から乗車し、横須賀中央駅に向かいます。
エアコンの効いた京急車内は快適そのもので、交通費230円の出費は致し方なしというところでしょうか。

半袖、半ズボンにビーチサンダルという出で立ちで、街中をブラブラし、野暮用を完了させます。
普段やって来ることの無い町に来た時は図書館に立ち寄るのがお決まり。
ふらりと横須賀中央図書館へ足を運びます。

 
緒明山の標柱

中央図書館のある小高い丘は「緒明山」と呼ばれているようです。
今日は山に登るつもりはまったくありませんでしたが、
思いがけず神奈川県内の一座をゲットすることができました。

近代造船業の発展に尽力された
伊豆戸田村出身の緒明菊三郎氏の所有地だった所で、
「緒明山」の通称があると標柱には記されていました。

横須賀中央図書館で横須賀市民でもないのに無料インターネットを楽しんだり、
「十三峠」の名前の由来や歴史を記した本をフムフムと拝読したりと、図書館を有効活用いたします。
郷土資料室で昭和41年の「横須賀」「鎌倉」の地形図をコピーし、眺めているうちに、
ふと、森戸川源流域を取り囲む丘陵地帯が無性に恋しくなってきてしまいました。

というわけで、帰路の交通費節約も兼ねて、
歩きにくいビーチサンダル履きで、果敢にも(無謀にも)森戸川源流域の山々を経由して
チャリンコの待つ新逗子駅まで徒歩で帰還することにします。


不動橋近くのちっちゃな標識

ペコッ、ペコッというビーサンの音を耳にしながら
上町、坂本町、池上町と車道をテクテク歩き抜いて
「畠山」の登山口である葉山町木古庭の不動橋に辿り着きます。

図書館でコピーした地形図を見ながら取り付き点を探します。

山に登る展開になるとわかっていたなら、
Hさんから頂戴した詳細な「葉山・森戸川流域散策マップ」を
持参してくれば良かったと少々後悔です。


畠山登山口

山に登る展開になるとわかっていたなら、
半袖、半ズボンにビーチサンダルという格好は
いかにもマズイと大分後悔です。

でも、半袖、半ズボンにビーチサンダル姿は
これまた、いかにも湘南スタイルです。
オシャレな湘南山歩きの斬新スタイルとなるかもしれません。


歩き始めは竹林

歩き始めは竹林内で歩きやすい道です。
これならビーサンでも余裕で登山可能かと一瞬思いました。

しかし、低山といっても、山はやっぱり山。
なめてかかってはいけません。

次第に険しさが増し、歩き難い事この上ない。
当たり前か!

森戸川源流部の中ノ沢を、ビーサン姿でピチャピチャと
流水の中を下降したら涼しかろうとも考えていましたが、
果たしてそこまで無事辿り着くか疑問が芽生えます。


夏草が猛威を振るう

畠山は割と人気のハイキングコースとの認識がありましたが、
梅雨のこの時季、いたるところで道は夏草に隠されています。

ビーチサンダルでの歩きにくさより、
マムシでも出ないかとサンダルに素足での登山に恐怖を覚えます。

ヒルやダニがいないのがせめてもの救いです。
しかし、上半身は蜘蛛の巣の容赦ない攻撃を受ける羽目に。


愚かなビーサンスタイル

前方よりパキッ、バキッと小枝を折る音が聞こえてきます。
マムシではなく、イノシシが出たかと、
手を叩きこちらの存在を知らせます。

見るや、草に埋もれた登山道に人影あり。
手には鎌を持って草刈り中の地元の御仁でありました。
この時ばかりは「ご苦労様!」と大きな感謝の声を掛けました。

あまりにひどいので草刈り道普請を
自主的に行っているといいます。
この先はさらにひどい状態だともいいます。


畠山山頂の石仏

なるほど、たしかにヒドイ!
半袖、半ズボン、ビーサン姿で歩く道ではありません。

汗だくに加え、顔面には蜘蛛の巣がまとわりついた状態です。
やっと辿り着いた畠山の山頂も夏草に埋め尽くされています。

もっぱら冬場に訪れる機会の多い森戸川流域の山々ですが、
冬場のハイキング好適地のイメージとは異なり
夏場は表情を一変させるようです。


山中町・安針塚分岐

山道は草に埋もれ、分岐も見落し易い状況です。
所々に設置された手作り標識が心強い味方となります。

畠山と仙元山とを結ぶ連絡尾根もヒドイ状態です。
クズやイラクサや名も知らぬ夏草の繁茂が行く手を阻みます。
羊歯植物の茂るムシムシした陰気な道でもあります。

ドラムのバチ程の長さと太さの巨大ミミズが
足もとでニョロニョロとしたのにはさすがに悲鳴をあげました。
高山のヤブと異なり、低山独特の樹相や薄気味悪さがあるのです。


田浦泉町・上山口分岐
東京湾要塞第一区地帯標柱 13号

東京湾要塞第一区地帯13号」や「14号」の
石造り標柱と分岐を過ぎると、
やっとのことで仙元山と二子山を結ぶ尾根に
飛び出すことが出来ました。

それにしても「東京湾要塞」の歴史的遺構物に
マジックで道案内の表示を書き込みするのは
いかがなものでしょうか?


やっと仙元山と二子山を結ぶ尾根に出た

仙元山と二子山を結ぶメインハイキングコースの尾根に出れば
夏草からも解放されるに違いないと思っていましたが、
その考えは甘かったようです。

多少は楽に歩けるものの、夏草の勢いも、蜘蛛の巣の攻勢も
衰えることを知らないようです。
このエリアはやっぱり冬場に楽しむフィールドなのでしょう。

ヤマユリと足もとに咲く野性のランの一種(?)だけが
蔓延る夏草との戦いの中にあって心を和ませてくれます。


乳頭山 三角点

仙元山と二子山を結ぶ尾根から中ノ沢の源頭部に
向かう予定ではありましたが、道を隠す夏草に気を取られ
中尾根に進みこんでしまいました。

沢筋を歩くより尾根道を歩く方が夏草の影響が少ない
かもしれませんし、なによりマムシとの遭遇を避けるには
有効かもしれません。

まぁ、しょうがない、ビーサンでの中ノ沢歩きは諦めて、
久々に「辻の神峠」と「南中峠」を訪れてみることにします。


辻の神峠

峠の標柱は白ペンキで塗り潰されていて、何も書かれていません。
北側(中ノ沢)に降る道も、南側(南ノ沢)に降る道も陰鬱としていて、
とても半ズボン、ビーサン姿で踏み込む気は起きません。


南中峠


峠の標柱

以前は「六把峠」と大きく書かれていた峠の標柱ですが、「南中峠」の名前が復活しています。
『かながわの峠』(植木知司著・かもめ文庫)には「南中峠」と紹介されています。
南ノ沢と中ノ沢を分ける中尾根を乗り越す峠だから「南中峠」であるようです。

この峠から中ノ沢側に降ろうとも考えましたが、
繁茂する羊歯植物と夏草で道の様子はとても不気味な状態になっています。
冬場に歩いた時でもジメジメしていてあまり良い感じの道ではありませんでしたので、
とても半ズボン、ビーサン姿では下降する気にはなれません。
中尾根の尾根道をそのまま進むことにします。


森戸川の流れに足を浸ける


林道崩壊もそのまま


ホタル組って?

草やぶと蜘蛛の巣を掻き分け中尾根を進みます。
紺色のポロシャツは纏わりついた蜘蛛の巣で白っぽく変色しています。ヤレヤレです。
中尾根を下降し、大山林道終点の中ノ沢、南ノ沢合流部で沢水に足を浸します。
冷たい水は心地好いのですが、ビーサンとの摩擦で擦り切れた皮膚はヒリヒリします。
それにしてもユニクロのビーサンはなんと丈夫なのでしょうか。山歩きにも十分耐えることが出来ました。

大山林道を歩いて新逗子駅を目指します。
林道は数年前の台風による風倒木で被害を受けて以来、何度か様子を見に訪れています。
どれほど復旧が進んでいるのか楽しみです。


風倒木もそのまま


倒木の切断も見られる


歩き易くなっている

ところが、「復旧」なんて様子は見られず、「放置」された状態のままの姿に驚かされました。
以前より大分歩き易くなってはいるものの、倒木や斜面、路肩の崩壊は手付かずの状態でした。
まぁ、自然の状態といえばそうなのですが・・・
道を塞いでいてくぐり抜けることを余儀なくされてた倒木も切断されるなど改善も見られますが、
まだまだ荒れた状態です。ひとたび台風に襲われれば、さらなる破壊を招くことでしょう。

それでも森戸川は静かに流れています。
オイカワでしょうか、小魚の魚影も見られます。
都会のオアシスの荒廃がこれ以上進まないことを祈るばかりです。


ウン? ナニコレ?


葉山温泉・足湯の誘惑

大山林道を抜けても、チャリンコの待つ新逗子駅までは今しばらく距離があります。
ビーサンの摩擦で擦り切れた皮膚の痛みに耐えながら歩くしかありません。
途中、葉山温泉の足湯の看板に心惹かれましたが節約、節約・・・。
足湯に浸かり、我が足を労わってあげたいとも思いましたが、貧乏人にそんな余裕はありません。


海水で疲れた足をクールダウン


夕暮れの由比ヶ浜海岸

這う這うの体でチャリンコまで辿り着き、すぐさまチャリに跨り名越トンネルを越えて、いざ鎌倉の海へ。
由比ヶ浜海岸の海水に疲れた足を浸け急速クールダウンです。ちょっぴり海水が傷口に染みます。
コンビニで買ったアルコール飲料を擦り傷だらけの足にかけて消毒します。
もちろん体内にも取り入れて体の内部からも消毒です。

海の家の準備の整った夏本番前の海岸で、ボロボロになった足と体を労わります。
夕暮れ迫る海岸で、独りオロカな半日の行動を振り返り、いったい俺は何をしているのだと
反省するも無事歩き通せたことにホッと一息。

ビーチサンダルも過酷な山道での使役から解放され、
本来の活躍の舞台である砂浜にやって来て、さぞかしホッとしていることでしょう。

●以前、風倒木被害直後の大山林道を歩いた時のレポートを見る。