釉薬の調合と焼成

 

1 釉薬調合の一般事項

古い文書では、「灰1に対して長石1」といった記述を見ることがあります。

この場合の調合は、重量比か体積比か、が記述されていません。重量比ならば、どんな状態での重量比か。水分を含んだ灰1kgと乾いた灰1kgとでは実体は大きく違います。

体積比にしても同じです。例えば、藁灰を原料にする釉薬があるのですが、藁灰は燃やしたままではガサガサの状態でかさばっていますが、ミルにかけて擂り潰すとぐっと体積が減ります。長石にしても固形と粉体とではまるで体積が異なります。

古い調合記録を頼りに釉薬をつくろうとすると、重量比の場合、体積比の場合、更に、各々について粉体、液体で試す等の試行錯誤を繰り返して調合を確定しなくてはなりません。

 

釉薬の調合にあたっては、原料の比率が重要だが、その比率をどう計るかが難物。重量比か体積比か。重量比ならば、どんな状態での重量比か。水分を含んだ灰1kgと乾いた灰1kgとでは実体は大きく違う。容積比にしても同じ。特に藁灰は、燃やしたままではガサガサの状態で、かさばる。ミルにかけて擂り潰すとぐっと体積が減る。

窯等の中で絶乾状態に近くしたもの同士を重量比で調合するのが精確だが、面倒で実用的でない。だから、乾いた原料同士を、あるいは水に溶かしたもの同士というように、同じ状態で調合することが重要。もちろん、乾き具合、水に溶いた濃度もほぼ同じ状態で調合する。ほぼ同じ状態というのは、経験で身につけるしかない。慣れてくれば、これで実用上、何ら問題はない。

 

調合の精確を期すためには、絶乾状態に近い原料同士を重量比で調合するのがよいのですが、面倒で実用的ではありません。ですから、陶山工房では、全ての原料を自然乾燥状態にして重量比で調合するようにしています。

だが、原料を乾燥状態にすると不便な釉薬もあるので、そうしたものについては液状で調合するケースもあります。

 

釉薬は、まず基本釉をつくり、それに呈色材を加えてできあがります。

 

陶山工房の基本釉は、溶材に木灰、基材に長石を使ったいわゆる灰立の調合です。溶剤に石灰を使う石灰立の調合もありますが、陶山工房ではもっぱら灰立釉を使います。木灰は、灰汁を完全に抜かねばなりません。灰に灰汁が残っていると釉薬が濁って透明感のある発色が得られません。釉薬が濁るとはどんなことかを知るには、窯の中で薪の灰が器体にかかって釉化したいわゆる自然釉で知ることができます。自然釉は灰汁抜きしていない灰を使ったのと同じことだからです。

 

釉薬の呈色材はすべて金属で、鉄、銅が代表的な呈色材です。

基本釉に加える呈色材を替えることでいろんな色の釉薬をつくることができます。また、同じ呈色材を使っても、その量が変われば釉薬の色が違ってきます。

 

2 調合

(1)透明釉(基本釉)

自然乾燥状態の重量比で長石10、灰8を基本調合とする。この調合の釉は、透明に近いので、一般に、透明釉と呼ばれている。

木灰、長石とも篩を通して粒度を揃えること。粒だった長石は焼き上がっても熔けきらず残る。釉の上がりをよくするには篩を通すのは絶対に必要だ。

木灰が多くなると窯の中での流動性が高く、長石が多くなると流動性が下がる。木灰は樹種によって多少発色や流動性が異なるので上記の調合が絶対ではない。安全のため、まず試してみて微調整をするのが有効。

 焼成温度 1200度〜

 

(2)糠白釉

自然乾燥による重量比 藁灰 5  長石 2  木灰 3

焼成温度は1225度。

今使っている窯の場合、窯の中は、場所により30度ほどの温度差があると思われる。今使っている窯では一ヶ所でしか温度を測れないため、場所を変えての計測が不可能。推測するしかないのだ。最上段では十分に熔けた釉薬が再下段では生煮え状態ということを何回も経験した。また、再下段に朱泥の急須を置いたケースでは、1200度としたときに朱泥、糠白釉共にうまい焼き上がり。1220度では朱泥がやや火ぶくれとなった。こうした経験の積み重ねから、温度差約30度と推測しているわけだ。

したがって、1225度という温度は熱電対が計測しているその場所の温度という意味だ。それより下では低く、上では高いのだが、最下段・最上段共によく熔け、また煮え過ぎということもなく良い具合だ。

 

(3)柿釉

透明釉 2、朱泥土 1、鬼板 少々

 焼成温度 1200度〜

 1230度でも煮えることはない。

 

(4)黒釉

木灰 1、朱泥土 1、鬼板粉末 適宜

 木灰、朱泥土は、水に溶いたものの容積比、鬼板粉末は粒度を揃えて乾いた状態での容積比

 

(5)青磁釉

 透明釉に鬼板を重量比2%添加。

 

 

3 酸化焼成と還元焼成

釉薬も土も、酸化焼成か還元焼成かによって発色が違ってくる。自然界の物質は空気中の酸素と化合して酸化物として存在するので、酸化焼成では自然界にあるのと同じ色となり、還元焼成では人間が手を加えて精製した金属の色になる。釉薬は金属のこの性質を利用して色を作っている。なお、焼き物の世界では釉薬に色を付けるための材料を呈色材と呼んでいる。

 

例えば、釉薬中の鉄は酸化焼成で赤く(鉄錆色)発色し、還元によって黒く発色する。釉薬中の鉄の量によって色調は変化する。

また、織部釉のような銅を含んだ釉薬では、酸化焼成によって緑色に発色し、還元焼成で紅色に発色する。

 

<酸化焼成>

窯の中に空気(=酸素)を十分供給して焼成する方法。ほとんどの窯では、普通の状態で焼けば酸化焼成になる。

<還元焼成>

窯の中に空気(=酸素)が供給されにくい状態(密閉に近い状態)にして燃料を供給して焼成する方法。こういう状態を窯の中に作り出すには窯の壁体の隙間を粘土で目張りし、通気口は金属板等でふさぐのが一般的だ。

こういう状態の窯の空気中には、燃料が燃える(酸化する)ために必要な酸素が不足する。そこに燃料が送り込まれると、窯の中は1200度前後の高温なので、土や釉薬中の酸化化合物の酸素を無理矢理奪って(=還元して)燃えることになる。