Japanese Species of Tiger Beetles
(Coleoptera, Cicindelidae)
日本産ハンミョウ図鑑
日本には24種類のハンミョウが分布しています。ハンミョウの仲間には海岸や河口の湿地などに生息する種類も多く含まれ、それらはレッドデータブックに絶滅危惧種や準絶滅危惧種として記載されています。ここでは日本産ハンミョウの分布、変異、生態を簡単にまとめてみました。種名をクリックすると生態写真が出ます。
○生態写真を一部更新しました。(2002/3/9)
1.Neocollyris loochooensis KANO,1929 ヤエヤマクビナガハンミョウ
【分布】石垣島,西表島,与那国島[日本特産種]
【変異】特になし
【生態】樹上性で、クワズイモの葉上にいることが多い。幼虫も他のハンミョウ類と異なり、枯木などに穿孔する。
【備考】東南アジア一帯に広く分布するNeocollyris属としては、最北端・最東端の分布となる。環境庁レッドリストでは準絶滅危惧種。
2.Therates alboobliquatus yakushimanus
NAKANE,1955 ; ssp.iriomotensis CHUJO,1970 シロスジメダカハンミョウ
【分布】ssp.yakushimanus 屋久島,奄美大島,徳之島,沖縄本島 ; ssp.iriomotensis
石垣島,西表島,与那国島?
【国外の分布】原亜種は台湾に産する。
【変異】ssp.yakushimanus は黒色部の発達がよく、褐色部の境界が明瞭。
ssp.iriomotensis は黒色部の発達が悪い。
【生態】林縁の地面や下草に止まっていることが多い。
【備考】前種同様、Therates属としては、最北端・最東端の産地。
3.Cicindela (s.str.) lewisi BATES,1873 ルイスハンミョウ
【分布】大阪府以西の瀬戸内海沿岸,九州沿岸
【国外の分布】中国大陸の東シナ海沿岸,朝鮮半島沿岸
【変異】地色は褐色型と黒色型があり、緑色味を帯びる個体も現れる。ssp.kagoshimaensis
(IGA,1954)は黒色型に対して命名されたが、他の産地でも出現するので亜種としては認められない。
【生態】干潟が出現する海岸に生息する。
【備考】環境庁レッドリストでは絶滅危惧II類にランクされている。現在のところ分布東限となる徳島県吉野川河口では、第十堰建設と沖洲周辺の埋め立ての影響が心配される。大阪府・兵庫県ではすでに絶滅した。
4.Cicindela (s.str.) sachalinensis
MORAWITZ,1862 ミヤマハンミョウ
【分布】四国山地,本州中部以北,北海道
【国外の分布】ロシア,中国北部・東部
【変異】地色や斑紋の変異が多く、まだ十分に整理されていない。日本産に対しては
ssp.niohozana BATES,1883 なる亜種名が付けられているが、近隣諸国の標本を含めた再検討が必要である。
【生態】山地の林道やガレ場に見られる。北海道などの寒冷地では平地にも多い。
【備考】日本国内でも地域変異がある。DNAなどを含めた詳細な検討が期待される。
5.Cicindela (s.str.) gemmata aino
LEWIS,1891 アイヌハンミョウ
【分布】北海道,本州,四国,九州,対馬
【国外の分布】原亜種:中国,朝鮮半島
【変異】地色は褐色型と緑色型がある。日本産はオスの大あごがヘラ状になるが、大陸産の原亜種では先端が尖る。ssp.
shikokuana
OIKE,1939
は四国産に命名されたものと思われるが、顕著な差はないようである。
【生態】春期に中流域の河原に見られ、局所的に個体数が多い。
【備考】北海道では記録が少ない。
6.Cicindela (s.str.) transbaicalica
japanensis CHAUDOIR,1863 コニワハンミョウ
【分布】北海道,本州,四国,九州,伊豆諸島
【国外の分布】原亜種:シベリア,バイカル; その他の亜種:中国,朝鮮半島
【変異】伊豆諸島産が暗色化する程度で、日本産は変異が少なく安定している。
【生態】河原の乾いた砂地に生息する。夏〜秋期に多い。
【備考】特になし。
7.Cicindela (s.str.) japana MOTSCHULSKY,1857 ニワハンミョウ
【分布】北海道,本州,四国,九州,伊豆諸島
【国外の分布】朝鮮半島
【変異】地色は褐色型,緑色型,黒色型があり、産地によりその割合は異なる。北海道産は翅端の弦紋を欠く個体が多く、エゾ型(yezoana
NAKANE,1976)と呼ばれるが、他の産地でも出現する。その他、inhumeralis
BEUTHIN,1905,tosana
OIKE,1936
などの亜種が記載されているが、何を指しているか不明。
【生態】低山地の裸地や河原に見られ、個体数は多い。
【備考】特になし。
8.Cicindela (Sophiodela)
japonica
THUNBERG,1781 ナミハンミョウ
【分布】本州,四国,九州,対馬,屋久島,種子島[日本特産種]
【変異】色彩変異が多く、数多くの亜種、型が記載されているが、現在亜種として採用できるものはないと思われる。
【生態】平地〜低山地の裸地や河原に生息する。
【備考】中国大陸,朝鮮半島に産する C. chinensis の亜種として扱う学者も多いが、各部の形態に種レベルの差異があると認められるので、ここでは独立種と扱っておく。
9.Cicindela (Sophiodela)
okinawana
NAKANE,1957 オキナワハンミョウ
【分布】沖縄本島[日本特産種]
【変異】特になし。
【生態】林縁の裸地に多い。
【備考】従来、C. chinensis の亜種として扱われてきたが、前胸や交尾器の形態には種レベルの差があるので独立種としてよいのではないだろうか。
10.Cicindela (Sophiodela)
ferriei
FLEUTIAUX,1894 アマミハンミョウ
【分布】奄美大島,徳之島[日本特産種]
【変異】奄美大島産は褐色型、徳之島産は青色型となる。後者は ssp.indigonacea
MIWA,1935
とされる場合もあるが、奄美大島産と区別できない個体も現れるようである。
【生態】林縁や林内の裸地に生息する。ナミやオキナワに比べると、薄暗い環境を好み、下草などに止まることも多い。
【備考】特になし。
11.Lophyridia (S.Str.) angulata
(FABRICIUS,1798) ハラビロハンミョウ
【分布】新潟県以西の日本海沿岸,九州沿岸,屋久島,種子島,和歌山県?,伊豆諸島?
【国外の分布】東南アジア全域
【変異】九州南部の個体は本州日本海沿岸の個体に比べ、大あごが長く、体型が大型になる傾向がある。日本産に対しては
ssp. niponensis (BATES,1883) と命名されているが、他産地との違いが明確かどうか明らかでない。本種に対してかつて用いられていた
sumatrensis
(HERBST,1806)
は angulata のシノニムである。
【生態】河口付近の海岸の湿った砂地に生息する。
【備考】環境庁レッドリストでは絶滅危惧II類にランクされているが、産地数、個体数ともにそれほど少ないものではない。ただし、太平洋沿岸では稀で、和歌山県や伊豆諸島の記録は再確認の必要がある。
12.Lophyra (Spilodia) striolata
dorsolineolata (CHEVROLAT,1845) タテスジハンミョウ
【分布】沖縄本島,石垣島,西表島,与那国島?
【国外の分布】東南アジア全域
【変異】種としては多くの斑紋変異が知られるが、日本産は上翅側方の縦紋が連続することにより上記亜種名が与えられる。
【生態】林縁の裸地に見られる。
【備考】特になし。
13.Chaetodera laetescripta laetescripta
(MOTSCHULSKY,1860);
ssp.circumpictula (W.HORN,1938) カワラハンミョウ
【分布】北海道,本州,四国,九州,伊豆大島
【国外の分布】ロシア,サハリン,モンゴル,中国,朝鮮半島
【変異】白色紋が発達する原名亜種は北九州から山陰北陸地方に分布する。亜種
circumpictula
は、白色紋が退化する(すなわち黒化する)個体をさし、本州中部以北の日本海側と太平洋側に分布する。ssp.kiushuensis
(MANDL,1981)
は北九州の個体に対して命名されたが、原名亜種との明確な差は認められない。本種の変異については、芦田(1998.
カワラハンミョウの分布と変異. 月刊むし (333): 5-9.)を参照されたし。
【生態】広い河原や海岸の砂丘に生息する。夏期に出現する。
【備考】河原に産する個体群は最近顕著に減少しているため、環境を含めて保護することが望まれる。淀川流域では絶滅したものと判断される。環境庁レッドリストでは絶滅危惧II類にランクされている。
14.Cylindera (s.str.) ovipennis
(BATES,1883) マガタマハンミョウ
【分布】北海道,本州(中部以北),佐渡ヶ島[日本特産種]
【変異】黒沢良彦(1991, 自然誌研究雑誌 (1):33-40)に詳しい。西の産地(富山県、石川県、福井県)は「曲玉」紋が縦に立つ傾向がある。
【生態】林内の裸地に生息する。後翅が退化し、飛ばない。
【備考】北海道の記録は少ない。
15.Cylindera (s.str.) gracilis
(PALLAS,1777) ホソハンミョウ
【分布】北海道,本州,四国,九州
【国外の分布】ロシア,モンゴル,中国,朝鮮半島
【変異】上翅会合部後半に赤紋を有する個体が、産地によって稀に現れる。大陸の個体群はほとんどこの赤紋を有し、これが退化するものに対し
ssp.angustata (FISCHER,1823) と命名されたが、亜種としては区別できない。
【生態】草原、河川敷、マツ林の林床などに生息する。短い後翅を有するが、飛翔することはほとんどない。成虫は夏期に出現する。
【備考】飛翔しないため、最も発見の困難なハンミョウのひとつ。まだ新しい産地が見つかるものと予想される。
16.Cylindera (Ifasina) kaleea
yedoensis (KANO,1933) トウキョウヒメハンミョウ
【分布】関東地方,東海地方,山口県,九州北部,長崎県池島
【国外の分布】原亜種:台湾,中国南部,ベトナム
【変異】大陸の原亜種ときわめて似ているが、ここでは従来の扱いに準じて亜種名を採用しておく。
【生態】都市部の公園や墓地に見られる。帰化種と考えられている。
【備考】近年分布を拡大している。
17.Cylindera (Ifasina) humerula
(W.HORN,1905) リュウキュウヒメハンミョウ
【分布】沖縄本島[日本特産種]
【変異】なし。本種の亜種として記載された rara (MINOWA,1932) は極端な変異型と思われる。
【生態】林内や林縁の裸地に見られる。薄暗い場所を好む。
【備考】特になし。
18.Cylindera (Ifasina) psilica
luchuensis (NIDEK,1957) ヒメヤツボシハンミョウ
【分布】石垣島,西表島
【国外の分布】台湾,香港,ベトナム,マレーシア
【変異】なし。
【生態】林縁の裸地に見られる。
【備考】特になし。
19.Cylindera (Cicindina) elisae
(MOTSCHULSKY,1859) エリザハンミョウ
【分布】北海道,本州,四国,九州,屋久島,種子島,徳之島,伊豆諸島
【国外の分布】ロシア,中国,朝鮮半島,台湾
【変異】 海岸に生息する個体には、大型で白帯の太いものが多く、海浜型と呼ばれている。その他、地色の変化なども多い。
【生態】海岸から河川の下流域まで広く見られる。水際の湿った砂の周辺に多い。
【備考】特になし。
20.Cylindera (Cicindina) bonina
(NAKANE,1959) オガサワラハンミョウ
【分布】小笠原父島,兄島(日本特産種)
【変異】なし。
【生態】兄島では台地上の裸地に晩夏に出現する。父島では絶滅したが、この一因は、人為的に移入されたオオヒキガエルによる捕食圧との説がある。
【備考】環境庁レッドリストでは絶滅危惧I類にランクされている。現在のところ唯一の生息地である兄島は小笠原空港の建設予定地の候補にあがっていたが、空港建設そのものが中止となり、本種の生息地は開発をまぬがれた。兄島での観察例は、芦田(1993.
オガサワラハンミョウの観察. 月刊むし (271): 26-27.)を参照されたし。
21.Myriochile speculifera (CHEVROLAT,1845) コハンミョウ
【分布】本州,四国,九州,八丈島,屋久島,種子島,南西諸島
【国外の分布】東南アジア
【変異】地域によって地色が暗色化する個体が出現する。
【生態】主に河川敷や河口付近に見られるが、荒地や公園などの裸地にも見られる。
【備考】特になし。
22.Callytron yuasai yuasai (NAKANE,1955)
; ssp.miyakejimana (NAKANE,1961) ; ssp.okinawense (HORI et
CASSOLA,1989) シロヘリハンミョウ
【分布】原亜種:本州(神奈川県以西の太平洋沿岸),四国,九州,対馬,屋久島,種子島,黒島
; ssp. miyakejimana:伊豆諸島 ; ssp.okinawense:トカラ列島以南の南西諸島
【国外の分布】朝鮮半島,台湾
【変異】原亜種は上翅の地色が緑褐色から暗色に変異する。ssp.miyakejimana
(NAKANE,1961)
は上翅が著しく黒化する。ssp.okinawense は原亜種に比べメス上翅の鏡紋が発達する、肩部の光沢が強い、側縁の白帯が発達し連続することなどにより区別されるが、境界地域では差は明確でない。また、南西諸島の島ごとの変異も少なからずあるようであるが、まとめられていない。
【生態】海岸の岩礁地帯に生息する。南西諸島では河口のマングローブ帯でも見られる。
【備考】次種と混同されやすいが、オス交尾器の先端部の突起が短いことにより区別は容易である。
23.Callytron inspeculare (W.HORN,1904) ヨドシロヘリハンミョウ
【分布】本州沿岸(和歌山県以西),四国沿岸,九州沿岸,種子島
【国外の分布】朝鮮半島,中国南部,台湾
【変異】地色には褐色型と緑色型がある。緑色型は長崎県の諫早湾に注ぐ本明川と、種子島の熊野海岸に注ぐ2本の河川で頻度が高い。種子島産の生態・形態に関しては芦田(1997.
ヨドシロヘリハンミョウはマングローブ帯にも生息する−種子島における発見−.
月刊むし (318): 10-12, Plate 1.)を参照。
【生態】夏期にアシ原の発達する河口に出現する。種子島ではマングローブ林の周辺に見られる。
【備考】環境庁レッドリストでは絶滅危惧II類にランクされている。長崎県諫早市本明川の個体群は、1997年に実施された潮止めの影響で絶滅した可能性が高い(芦田,未発表)。
24.Abroscelis anchoralis (CHEVROLAT,1845) イカリモンハンミョウ
【分布】本州(石川県),九州沿岸,種子島
【国外の分布】中国南部,香港,マカオ
【変異】宮崎県周辺の個体は黒化傾向が強く、白帯が細くなる。 日本産を全て
ssp.punctatissima (SCHAUM,1863) にまとめられるかは疑問。
【生態】夏期に遠浅の海岸に出現し、波打ち際で採餌行動する。
【備考】環境庁レッドリストでは絶滅危惧I類にランクされている。本州における唯一の産地である石川県では絶滅したものと思われていたが、近年再発見された。