ポップスエヴリデイ(01年1−3月)
01/03/23
「天才伝説 横山やすし(文春文庫)」
主に「唐獅子株式会社」の映画化にまつわる紆余曲折を中心に、作者で
ある小林信彦と横山やすしとの交流を記録した私小説。「江戸前」の粋な
笑いを愛する作者が横山やすしという人間に対して抱いている違和感が
全編に貫かれていて、非常に冷たい感じの評伝になっているのが印象的
でした。相棒の西川きよしも「偽善者」とか、かなり悪しざまに書かれてい
るんですが、小林信彦は関西人の人間性というのが相当イヤみたいです
ね。坂口安吾なんかも引用しつつ関西人の嫌らしさをこれでもかと書き綴
ってて、実はこれかなり強烈なアンチ関西の書ですよね。
同時に日本映画界への批判もかなり痛烈に展開されているんですが、
「やすしは日本映画界の体質のせいで死んだ」という結論はなかなか
スゴイ。
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01/03/20
「どですかでん(ビデオ)」
黒澤明1970年作品。初のカラー作品なんだそうです。「どん底」の
戦後焼け跡版という感じの群像劇ですが、絶望一直線だった「どん底」
に比べると、こちらはとことん悲惨なものから妙にユーモラスなものま
でバラエティに富んだエピソードが同居していて、その結果、明るいの
か暗いのかよく分からない不思議な雰囲気を持った映画になってます。
山本周五郎の「季節のない街」が原作らしいのですが、この人の小説
も読んでないなあ。こういう話を書く人だったとは意外でした。この映画
のもつ奇妙な味の短編テイストはかなり僕好みなんで、ちょっとこれか
ら山本周五郎はチェックしないと。
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01/03/17
「洗礼(小学館文庫)」
楳図かずおの70年代作品。全4巻、全編を通じて「ゲエッ!」「あっ!」
「ギャア〜ッ!」の連続なハイテンション・ジェットコースター・ストーリー
ですが、1巻で繰り広げられる「怖いお母さん」のエピソードがとりわけ
強烈。自分の脳を娘のアタマに移植して若返ろうという企みが娘にバレ
てからのキレ具合は、リアルタイムで読んでたらどれほどトラウマにな
ったことかと思う恐ろしさです。
京極夏彦を思わせるラストの心理ネタのドンデン返しは賛否両論でしょう
が、上手く辻褄は合っているので個人的には納得。
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01/03/16
「キャンディーズ・フォーエヴァー(ビデオ)」
キャンディーズの1978年のラスト・コンサートの模様をビデオ化したもの。
しばたはつみのライヴ盤を聴いたりすると感じることですが、この頃の
コンサートはどんなに熱い歌や演奏のあとでもMCが冷静で丁寧なんで
今の耳で聞くと少し妙に感じますね。「みなさんに1位にして頂いた"微笑
がえし"、聴いてください。」といった今では演歌系の歌手くらいしか使わ
ない言い回しが新鮮です。
そういえば"暑中お見舞い申し上げます"を初めてレコードで聴いたとき、
あの「アアアーン」とか「ウウッウーン」とかの合いの手が記憶していた
より随分お色気過剰で「こんなだったっけ・・・」と戸惑ったんですが、
ライヴバージョンでは凄くあっさりしていて、いつもテレビで見ていた
頃の記憶が甦りました。個人的にはこっちの方がイイです。
あと、"春一番"って本当にカッコイイ曲ですね。再発見しました。
疾走ビートに淡々とした歌詞とメロディーの組み合わせがクール。
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01/03/15
「隠し砦の三悪人(ビデオ)」
黒澤明1958年作品。秋月家の侍大将 真壁六郎太(三船敏郎)がお家
再興を賭けて、世継ぎの雪姫(上原美佐)と大量の金とを敵国を抜けて
運び出す、という脱出モノ。スターウォーズの原型になった作品らしい
です。
三船敏郎にいいように利用される二人の百姓(これがスターウォーズ
のロボットのモデルになった)の掛け合いがとにかく笑えるんですが
「七人の侍」といい農民の描写をさせると本当に上手い監督ですよね。
あと、この映画は上原美佐が凄く良くて、この人が登場した途端にそれ
までダラダラしていた話が急にイキイキと転がり始めたような印象を持
ちました。
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01/03/14
「椿三十郎(ビデオ)」
「用心棒」の続編。いやー、悶絶。これは理屈抜きに面白い。三船敏郎
扮する名無しの浪人は本当に素晴らしいキャラクターですね。伊藤雄
之助の怪演も相変わらず物凄いけど。
張り詰めた緊張感に満ちていた前作に対しこちらは肩の力の抜けた
ユーモラスな雰囲気で物語が展開していきますが、あくまでムダの
ない、それでいて観客を混乱させるような省略もない、娯楽作品の鑑
のようなプロット運びに惚れ惚れします。
名無しの浪人に助けられる若侍の一群のなかに加山雄三と田中邦衛
の若大将コンビが混じっているんですが二人ともメチャクチャ若い。
ポップスファンは要チェックですね。(このフレーズ久しぶり)
黒澤明1962年作品。
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01/03/10
「世界ケンカ旅(徳間文庫)」
梶原一騎との交友でも知られる極真空手会館館長の若き日の記録。
アメリカのプロレスリングを皮切りに世界各国の格闘技や武術と対決
することで自分の技を磨き上げていく過程と、各国の美女達との夜の
格闘が血沸き肉踊る熱い文体で綴られています。
とりあえず冒頭に掲げられた数枚の写真の凄さときたら。
1.瓦を叩き割る大山倍達。2.牛と取っ組み合う大山倍達。3.星の
マークのパンツでポーズを決める大山倍達。これを見たら誰だって
本文を読まずにはいられなくなるはず。
また大山倍達のバイタリティーを笠置シヅ子や黒沢明といった戦後の
闇市文化と関連付けて語った平岡正明の解説も興味深いものがあり
ました。
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01/03/08
「どん底(ビデオ)」
黒沢明1957年作品。ゴーリキーの戯曲を江戸時代の貧乏長屋を舞台に
置き換えて翻案したもの。舞台が最後までほとんど動かない室内劇的な
作品ですが、派手な動きがない分、じっくりと充満する暗いエネルギーに
満ちています。悪人ばかりの登場人物を上手くキャラクター分けする手腕
も素晴らしい、黒い笑いに満ちた絶望群像劇。
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01/03/03
「梶原一騎伝(新潮文庫)」
これは熱い。70年代を代表する劇画原作者の伝記。一気に読んで、ジェット
コースターのような怒涛の人生を体感するのが本書の正しい読み方でしょう。
とにかく作品の一作一作にオモシロいエピソードが満載で、「巨人の星」や
「あしたのジョー」「愛と誠」なんかを無性に読みたくなって困るんですが、
更に凄いのはヒットが出なくなってからの紆余曲折ぶり。新機軸を打ち
出そうとしていろんな題材に手を出すんだけども、全部暴力団とプロレス
の話になってしまうとか、映画や歌手のプロデュースに手を出してコケる
とか、娘が家出して行方不明になるとか、本当波乱万丈を絵に描いたよう
な人生に圧倒されます。
でも梶原一騎がプロデュースした鈴木清順の「悲愁物語」っていうスポ根
ゴルフ映画はメチャクチャ好き。
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01/02/28
「続・姿三四郎(ビデオ)」
「姿三四郎」と比べると格段に面白い続編。前作で柔道界の頂点に立った
三四郎が今回はボクシングのチャンピオンや空手の達人と対決。道場の掟
と、柔道の真髄を毛唐どもに知らしめたいという思いの狭間で悩みながら闘う
三四郎。はたしてその結果は。という荒唐無稽さと青春の苦悩に満ちた熱い
一作に仕上がっています。
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01/02/27
「君が壊れてしまう前に(角川文庫)」
14歳の少年の一年間の日記、という体裁の青春小説。恋に悩み、人生に
悩み、家族関係に悩みつつも、いつもオナニーばかりしていてという、実に
中学生男子っぽい毎日が綴られていて、甘酸っぱい気持にさせられます。
「ロココ町」を途中で投げ出して以来、島田雅彦の小説はずっとご無沙汰
だったんですが、この人のユーモアセンスってやっぱり好きだなあ。
高校時代に大好きだった作家と嬉しい再会。という訳で、「彼岸先生」や
「夢使い」もさっそく読まなきゃ。
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01/02/25
「虎の尾を踏む男たち(ビデオ)」
勧進帳ですね。姿三四郎をやっていた藤田進がここでは義経として登場、
しかし存在感は薄いです。やはりこの映画は弁慶とエノケン扮する強力の
印象が強烈。「能」を題材にしているからか「羅生門」に通じる黒澤テイスト
が濃厚な喜劇で、これはかなり楽しめました。初めの方で一座がゲラゲラ
笑うシーンが後のヒッチコックの「北北西に進路を取れ」のエレベーターの
シーンを思わせる乾いた感触で、妙に印象に残りました。1945年作品。
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01/02/24
「姿三四郎(ビデオ)」
黒澤明の初監督作なんだそうです。面白いように人がブン投げられてて痛快。
お話自体は今となっては使い古されたスポ根ストーリーでそれほど面白くあり
ませんが、花形満のようなライヴァルが登場したりして結構笑えます。
僕のように「七人の侍」や「羅生門」のような感動を期待して観るとガックリくる
映画。1943年作。
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01/02/20
「夜の橋(中公文庫)」
藤沢周平の短編集。メチャクチャ有名な時代小説家ですがこの作家の本を読ん
だのはこれが初めて。技巧派とか短編の名手とかいった世評から勝手にイメージ
していたよりもずいぶん分かりやすい作風で、凄く取っ付きやすかったんですが、
全体に善良な人物による善意の物語が多いのがちょっと物足りないです。
絶妙なストーリーテリングでラスト近くまでは凄くハラハラさせてくれるんですけど、
最後はハッピーエンドというパターンがほとんどで、結局「あー、面白かった」で終
ってしまうんですよね。趣味の問題かもしれませんが。そういう意味では冒頭の
「鬼気」は奇妙な読後感があって自分好みでした。もっと初期の作品の方が気合が
入ってるのかな。
「あとがき」で、小説書きは賭博のようなもので、それが上手くいくかどうかは神の
加護によってうまいカードを引き当てられるかどうかにかかっている、そしてそれが
短編書きの妙味だと書いていますが、短編の名手と言われる人でもこういうことを
言うというのは面白いですね。
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01/02/18
「ハスラー2(ビデオ)」
マーティン・スコセーシ監督の「ハスラー」後日談。1986年作品。やっぱり、これは
続けて観たくなりますよね。怒れる若者だったポール・ニューマンも今ではすっかり
いいオヤジになって、コレはと見込んだ若いハスラーに投資するという、あの頃とは
逆の立場で登場。
弟子にしたトム・クルーズにビリヤードのイロハを教えるという展開で、前作を観た
人ならニヤリとしてしまうようなセリフや演出が続いて楽しめます。ただ、スコセーシ
的な濃厚なムードを期待して観るとこのアッサリしたエンターテイナー振りには落胆
してしまうかも。ノワール的なジャズスコア中心だった「ハスラー」に比べて本作の
ゴツゴツしたロッキンな選曲のサントラはいかにもスコセーシという感じではあるの
ですが。
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01/02/17
「ハスラー(ビデオ)」
ロバート・ロッセン監督、ポール・ニューマン主演の映画。1961年作。全編の
2/3がビリヤードのゲームシーンという触れ込みで有名ですが、そればっかり
という印象はなく、一人の青年の成長物語として良く出来た作品だと思います。
強敵に出会い、最初はコテンパンにやられてしまうが、それを倒すことで成長
するというパターンは先が分かっていてもやはりカタルシスを覚えてしまいます。
少年マンガなんかでも繰り返し用いられている黄金の紋切り型のひとつですね。
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01/02/14
「もてない男−恋愛論を超えて(ちくま新書)」
古谷野敦という文芸評論家が書いた恋愛論集で、古今東西の文学作品
を恋愛下手の「もてない」男の視点から読み解くという試みがされています。
文学や映画、ポップスの世界に蔓延している「恋愛至上主義」のおかげ
で本来(いろいろな意味で)恋愛に向いていない人間が非常に苦しんで
いる、というテーマを「童貞であることの不安」「女は押しの一手という幻
想」「嫉妬・孤独」といったいろいろな側面から考察しているのですが、
どれも僕のようなもてない人間にとっては思わず膝を打ちたくなるような
卓見に満ちています。それに文章が学者とは思えない面白さで、読んでて
グイグイ引き込まれました。
とりわけスゴイのが第2章で展開される自慰論で、森鴎外や倉橋由美子の
作品に登場するオナニーシーンを紹介する傍ら、学者らしいあっけらか
んとした無頓着さで自身のオナニー作法を延々と披露。これはオナニー
についてこれまで書かれた文章の中でも最高の一つではないでしょうか。
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01/02/12
「良い経済学 悪い経済学(日経ビジネス文庫)」
ポール・クルーグマンという経済学者の本。現在、国家の貿易政策
を決定する際に大きな影響力を持っている「国の競争力」という考え
がいかに根拠がないものであるか、分かりやすく説明してあります。
80年代くらいから続いているアメリカの執拗なジャパン・バッシング
が実はこんないい加減な理論(とも呼べない)に基づいたものだった
なんて!とこれを読んだ人の多くは驚くのではないでしょうか。
日本の書店のビジネスコーナーにもたくさん並んでいる国際経済本
のほとんどが初歩的なマクロ経済理論すら無視した思い込みと我田
引水に満ちたトンデモ本だったという事実。あの手の本を読む習慣は
元々ありませんでしたが、時間と金の無駄遣いをしなくて済んで本当
に良かったと胸を撫で下ろしてしまいます。まあ、それを言うなら僕の
場合はブックオフの投売りCDを漁る癖を早く直さなきゃダメですけど
ね。
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00/02/10
「ハイ・フィデリティ(新潮文庫)」
ニック・ホーンビィという人の小説。中古レコード屋店主が主人公
というだけで僕のようなポップスファンは色めき立ってしまいます
が作品中で繰り広げられる音楽ネタの数々はある種の期待を持
って本書を手にするであろう読者層の期待に十分応えうるディー
プなもの。
どんなアーティストを好きかで登場人物のキャラクター分けをして
しまうというあまりに嬉しすぎる趣向に、オムニバス・テープを作る
ときのセオリーとか、レコード屋でマニアがとりがちな行動とかいっ
た小ネタを絡めた展開、さらに、「パーティーで"ブラウン・シュガー"
がフェイドアウトしてるのに、まだ『フー!』なんて言ってるような女」
といったようなナイスなセリフの応酬。割と苦手なウジウジした恋愛
小説なのにも関わらず最後まであっという間に読み切ってしまいました。
しかしこの小説、英国では大ベストセラーらしいですから、このくらい
の音楽ネタってアチラの人にとっては常識の範疇なんでしょうね。
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01/01/28
「ヘンリー・フール(ビデオ)」
ハル・ハートリーの最新作。芸術の才能にまつわる物語。こういう
テーマは僕のツボなんですよ。審美眼に優れた人間が埋もれた
才能を発掘してその才能を開花させるんだけども自身には才能が
ないために失意を味わうという・・・。ウディ・アレンの「ブロードウェイ
と銃弾」とか好きなひとにはオススメの作品です。
この作品がユニークなのは、冴えない清掃夫が詩人としての才能
を認められる過程で最後まで作品自体は出てこずにそれを見た
人々の反応しか分からないところ。このおかげで観る者は「なんで
こんな詩でノーベル賞まで取れるんだ!」と興醒めしなくてすむ
わけで、コレは上手い。
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01/01/14
「翻訳夜話(文春新書)」
村上春樹と柴田元幸が翻訳にまつわるあれこれを対談形式で語って
いる本なのですが、ご多分に漏れず僕も青春時代に村上春樹の羊
三部作や柴田元幸の一連の翻訳にお世話になった人間なんで(実は
学生時代にこの先生に教わったこともあるんですけど・笑)、最初から
最後までとても興味深く読みました。プロの文章家は本当にこだわって
いるんだなあ。っていう低レベルな感想しか書けませんが。
まあ、なんといってもこの本の一番の目玉はオースターとカーヴァーを
二人で競訳するという企画コーナーでしょう。予想通り、訳者によって
大分作品の雰囲気が違いますね。
実は僕、長い間シェイクスピアがいまひとつ分からなくて、何度か挑戦
しては挫折して、ということを繰り返していたんですが、それがちくま文庫
の超訳(笑)シリーズ読んだらいっぺんにシェイクスピアが大好きになっ
てしまった、ということがありまして、それ以来海外モノについては作者
というより訳者が僕にとって重要になってます。
で、岸本佐和子という僕にとって重要な翻訳者のひとりが、最後のディス
カッションのコーナーに登場していて、これはちょっと嬉しかったな。
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01/01/10
「光の帝国(集英社文庫)」
ゼナ・ヘンダースンの「ピープル」シリーズを意識したという恩田陸
の連作SF短編集。タイトルのイメージとは裏腹に市井の人々の
日常生活にSF的なアイデアを絡ませた静謐な手触りの短編が
並んでます。これはメチャクチャ好きな路線。読んでいる間中、筒井
康隆の「七瀬シリーズ」とか半村良とか平井和正とかを貪り読んで
いた中学生の頃に戻ったような幸せな気分になれました。
あとがきで作者が「手持ちのカードを使いまくる総力戦になってしま
った」と語っていますが、それも肯けるくらいどの作品も素晴らしい
アイデアとプロットが詰まった傑作揃い。特にラストの「国道を降りて」
には泣けました。主人公がパリの街角で"ストレイト・ノー・チェイサー"
のテーマをチェロで弾きはじめ、延々とインプロヴィゼーションを繰り
ひろげるシーンとか思い切り琴線に触れました。
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