日差しが差し込む。
その光の暖かさに思わずその場で丸くなってしまいたい衝動に駆られるが、それ以上に目覚めを要求するような力の方が強い。
……わたしは一般的な人間が考える吸血鬼像と違い、日の光に当たったからと言って灰になってしまうほど、やわではない。
普通の人間と同じように暖かさも寒さも感じるし、感情だってある。
…………しかしそれを強く自覚したのは、つい最近からだったような気もするけど…………
まぁ灰になるほどの事はないが、日が出ている間は力が出ず、状況次第では死んでしまう事もある。だからできれば朝は眠っていたい気もするけど……最近は退屈なので、ただ眠っているだけでも面白くない。
わたしはベッドから起き上がって軽く伸びをした。
……まぁそんな程度で完全に目覚められるほど便利な体じゃない。
伸びたは良いけど、そのまま背中から再びベッドに身を預けてしまう。
軽く弾む感じがちょっと楽しい。
「はぁ……つまらないなぁ。最近志貴も遊んでくれないしなぁ」
そう。今わたしがこんなにも退屈なのはそれが原因だ。
どうも試験とやらがあるらしく、ここ一週間くらいは、屋敷まで遊びに行ってもムッとした表情で追い返されてしまう。
……それがちょっとムカツク。
「大体、何でいちいち知識として身につけたモノを全員同じ基準でテストなんてしないといけないのかが良く分からないわ。興味の有るモノは覚えるし、興味が無ければ覚えないし。それでいいじゃん」
などと一人ごちる。
元はと言えば、わたしはこんな風に独り言を言う事は無かった。ある意味では信じられない事だと思う。
と言っても、実際に活動している期間なんてそんなに無いし、殆ど寝ている訳だから、独り言なんて言う必要もなかったんだけどね。
今、こうして独りで呟いている原因が何なのかは、自分でもはっきりと分かっている。
兵器としての自分に言葉は必要なかった。
ヌクモリなどと言うものとは程遠い存在だった自分。
そして、それを知った自分。
―ふと、思考の端に浮かんでしまった恐ろしいイメージ―
自らの存在の定義
この場に止まる理由
「―そういえば……」
頭に浮かぶ嫌なイメージを振り払うように、わたしは呟いた。
日差しは暖かいが、窓を開ければ冷たい空気が入ってくる。そう、もう年も暮れようとする時期である。
世間は年末とかで妙にあわただしく、せかせかした雰囲気を漂わせている。
「……この国ってそんなにクリスチャン、多かったっけ?」
ちょっと呆れ顔で呟く。
確かこの国に宗教として一番多いのは『ブッキョウ』とか言う宗教だった……ような気がする。とは言え基本的には無心論者が一番多いんだろうけど。
ま、正直に言ってしまうと、わたし自身、それほど宗教なんて物に興味が無い……というか、全く無い。だって、そんな人間の偶像なんて信じてたら、こんなに堂々とは存在できないしね。
それよりもわたしにとって、その日はもっと大切な―
「……まぁいっか。別に誰に祝福されるようなモノでもないもんね。わたしって。第一、誰にも数えてないし、本当にそうなのかも正直怪しいし……」
わたしは独りごちて、ベッドに横たわりながら再び伸びをした。