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EMC 試験 ―― Part 1: 放射性エミッション

by Keith Armstrong and Tim Williams

翻訳: T. Sato


これは、「Do-It-Yourself」の電磁環境両立性 (EMC) 試験テクニックに関する 隔月の6回のシリーズの記事の最初のものである。 このシリーズは試験方法全体 ――開発や障害検出の目的での簡単な試験から、 最小コストの EMC 確認、様々な程度の精度での「予備適合性試験」、 大きなシステムや設備のためのオン・サイト試験、 そして試験認証機関の要求を満たせる規定通りの適合性試験まで―― をカバーするであろう

勿論、5000人の組織にとって低コストであるものは、 50人の組織はかなり高価なものであると考えるかも知れず、 1人だけのものにとっては高価すぎるものとなるかも知れないが、 ここでは誰もとり残されないように可能なコストの全範囲をカバーするつもりである。 もしあなたが EMC 試験の費用を節約したいと思い、 あるいは不適合の製品を販売していることに気付く可能性を減らしたいと思うのであれば、 あなたはより賢くなり、またより熟達しなければならないことを憶えておくこと。 低コスト、低リスク、そして低 EMC スキルを同時に求めることはできない。

このシリーズは、管理や法的な問題 (例えば、EMC 指令への適合の保証のためにどの程度の試験を行なうべきか) はカバーしない。 これは、EMC 試験を実際にどのように実施するかを充分に詳細に述べもしない。 遥かに多くの情報は、試験規格そのもの、 そしてこれらの記事の最後に付けられた参考文献から入手できる。

これらの6個の記事でカバーされるトピックは:

  1. 放射性エミッション
  2. 伝導性エミッション
  3. ファスト・トランジェント・バースト、サージ、静電気放電
  4. 放射性イミュニティ
  5. 伝導性イミュニティ
  6. 低周波磁界 (エミッション、及びイミュニティ)、 主電源のディップとドロップアウト、高調波、フリッカ
  7. 主電源高調波電流、電圧変動、フリッカ、及び突入電流、 そしてその他の試験

0 ライフサイクルを通しての EMC 試験要求

放射性エミッション試験について調べ始める前に、 製品のライフサイクル中での EMC 試験に関して、 それぞれが技術的な、コスト的な、そして時間的な要求を持つ 多くの異なった必要性があることを考える必要がある。

0.1 開発試験、及び診断

EMC 試験を製品開発の全ての段階で行なうことは、 相当の時間と費用の節約を助けられる。

その製品が意図されたエンクロージャ内に最終的にまとめられたならば、 それは標準的な EMC 試験方法を用いて試験することができる。 しかし、標準的な方法は、例えばマイクロプロセッサや DSP チップの選択 (それらの一部は他の類似のものよりも 40dB 多く放射する) が行なわれる、 プロジェクトのごく初期の段階ではあまり便利ではない。

また、それらはそのエミッションがどこから発生しているかを簡単に告げられないため、 標準的な「EMC テスト・ラボ」試験方法は、 放射性エミッション問題の解決のための対策作業が必要となる、 プロジェクトの後の段階でもあまり使えない。

従って、我々は開発/診断試験のためには異なったテクニックを使う必要があり、 しばしば近傍界プローブ、電流プローブ、 そしてバグ・ディテクタが使用される。

0.2 適合性試験、及び予備適合性試験

世界の多くの国への輸入のために、規格に対する全面的な試験 ――往々にして指定されたテスト・ラボにおけるもの―― が要求されている。 EMC 指令は、適合への規格ルートを用いた場合、 彼らが「適用」した試験規格をリストした適合宣言書を作ることを 製造業者に要求しているだけである。 「適用」が何を意味するのかはあまり明確ではないが、明らかなことは、 EU 内への何らかの品物の持ち込みのための要求として EMC 試験報告書や証明書を見ることを主張する法的権利を EU の税関職員が持たないことである。 EU EMC 指令の執行官は、当該製品の適合性に関する 「充分な注意 (due diligence)」が達成された証拠を見ることをいつでも要求できる (最も普通なのは、競合相手による告発の後で)。

全面的な EMC 適合性試験は、 大量に生産される製品の製造業者の重荷とはならないものの、 それは安価な特注や小ロットの製品のためには不釣合に高価なものとなり得る。

従って、量産品を全面的な適合性試験 (full compliance test) にかける前に 何か進行を妨害するものがないかどうかを見い出すための 予備適合性試験 (pre-compliance test) に対するニーズがある。 そのような予備適合性試験は、いつでも試験を中止し、被試験装置 (EUT) を修正し、 そして試験を再開できるという利点を持つ; 全面的な適合性試験の一日当たりの費用はより高く、 試験の妨害や EUT の設計者の介入は許されない。

もし予備適合性試験が 当局の「充分な注意」の要求に合格するために充分に良いものであれば、 それは EU での合法的な販売のために必要な全てとなり得る ―― 安価な特注や小ロットの機器の製造業者にとって良いニュースである。

0.3 品質保証試験

製造業者が品質保証計画に適切な EMC 管理手法を組み入れていない限り、 連続生産における製品の1つの標本がかつて一度 EMC 試験に合格したという事実は、 今日作られ、あるいは販売されたユニットが EMC 試験に合格するかどうかに関しては何も証明しない。

そのような品質保証計画は、通常は少なくとも以下のものを含むであろう:

開発/診断作業において有用な種類の EMC 試験は、 EMC 適合性の確信の向上のために生産ラインに組み入れられることもある。 量産業者も、サンプルに基づいた EMC 試験のために、 (少なくとも) 程々に良い予備適合性試験設備へのアクセスは必要とするであろう。

0.4 変更と変種

x製品が累積的な変更 ――おそらくは、生産性の改善、コンポーネントの供給の問題への対処、 ソフトウェアのバグの修正、新しい機能の追加や既存の機能の改善、 あるいは新市場に適合させるための変種の作成―― なしに何年も大量生産され続けることは稀である。 これらの状況における EMC 試験は、通常は開発中、 予備適合性試験、及び/もしくは品質保証で用いられた試験方法を伴うであろう。 その変更が EMC にどのように影響しそうかを理解することは、 最も性能低下を示しやすそうなもののみに試験を限定することを助けるであろう。

0.5 第三者テスト・ラボから最良の価値を得る

テスト・ラボは非常に役立つものとなり得るし、 賢く使えば費用に対して非常に良い価値を提供する。 それらの多くは、予備適合性試験、あるいは手早い簡単な試験のために、 時間で、あるいは半日借りることができる。 要求すれば、彼らは、あなたがやりたいことを達成することを助けるために、 熟練した試験者や EMC 対策作業専門家が居るようにしてくれるであろう。

高価なラボの時間を捨ててしまわないように、 必要な全ての線材、コネクタ、ソフトウェア、そして外部機器を持つように、 試験に出かける前に充分に試験計画を作る (通常は当該のラボの助けを得て) のが最良である。

予備適合性試験に際しては、数週間以内の再試験のために予約し直す代わりに、 急いで対策作業を行なう ――半田鏝での作業に 1〜2時間を費して―― ために必要な機材やコンポーネントとともに 開発技術者を一緒に行かせるのが特に有用である。 「マーフィーの法則」は EMC 試験にも適用される ―― もしあなたが何かに備えていなければ、 それは厄介でコストを要するものとなることに気付くであろう。

試験規格を自分自身で読んで理解し、 テスト・ラボがそれらの作業をどのようにやっているかを見ることは、 あなた自身の試験をどのように行なうかを学ぶ良い方法である。

1 放射性エミッション

この章は、30MHz から 1GHz の周波数範囲にわたる、 典型的な住居/商業/工業向け EN 規格に対する放射性エミッション試験に焦点を当てる。 一部の人々は、 例えばある種の無線周波 (RF) 機器に EN 55011 (CISPR11) を適用する場合や、 108MHz 以上のクロックを含む製品で USA の FCC 要求に適合させる場合のように、 1GHz 以上を測定することを必要とするだろう。 一部の人々は、例えばケーブル・テレビ配信システムを測定する場合のように、 30MHz 以下を測定することを必要とするだろう。 軍事向け放射性エミッション試験も、30MHz から 1GHz よりもかなり広い範囲をカバーする。 普通に入手できる放射性エミッション・トランスジューサを見ることから始めよう。

1.1 近傍界プローブ

Figure 1 近傍磁界/電界プローブは、安価に購入でき、またごく短時間で手軽に作れる。 それらは、開発/診断/品質保証作業に広く用いられている。 様々なバージョンのそのようなプローブをどのように作るかを述べた 多くの記事や論文があり、 大抵の EMC 試験機器製造業者はその彼ら自身のバージョンも販売している。 Figure 1 は、磁界プローブの3つの主な構成を示す。

近傍界プローブでは常に 50Ω ケーブルを使うべきであり、 それが接続される RF 測定器の入力インピーダンスも 50Ω であるべきである。 その試験用測定器が 50Ω 入力の選択肢を持っていないならば、 その高インピーダンス入力を使い、 例えば BNC 「T 型」コネクタか貫通型終端抵抗を用いて プローブのケーブルの測定器側に 50Ω 終端抵抗を取り付ける。 この 50Ω 終端は、それがなければその長さが 関係する最大の周波数の波長の 1/10 を超えた時に発生するであろう プローブ・ケーブルでの共振を止めることを助ける (例えば、50Ω 終端は、50MHz に過ぎない最大周波数に対しても 300mm よりも長いケーブルで必要となる ―― ケーブル上の信号の波長は自由空間の電磁波のそれの半分程度となる)。

Figure 2
Figure 3
Figure 4
Figure 2 は、標準的な電界プローブの設計と、「ピン・プローブ」とを示す。 ピン・プローブは、関心のある回路や金属構造に 10pF のコンデンサを介して接触させ、 その信号電圧と同様に同相電圧を検出する電圧プローブである。 この同相電圧は、放射性エミッションに大きく寄与するものである。 磁界プローブは電界を拾わないようにシールドされており、 これは重要なエミッション源に対して「目隠し」されたままとすることがある。 小さい製品で放射性エミッションの大半を引き起こすのは、 通常はケーブルを介して漏出する同相電流であるが、 その EUT 自身の本体の同相電圧によって引き起こされる電界であることもあり、 従って電界プローブやピン・プローブには重要な役割がある。

市販のプローブ・セットの例は Figure 3 に示す。 放射性エミッションは電界と磁界の双方によって引き起こされるので、 Figure 4 に示すような シールドされていないループ・プローブを使うことも助けとなり得る。 その出力は計算や予測を行なえるようなものではないが、 これは双方の種類のフィールドに対して敏感であるので、 エミッションがどこから出ているかを調べることだけが必要な場合には時間を節約できる。

Figure 4 に示したプローブは充分に絶縁されていないので、 それらを使用する際には何かを短絡して EUT に損傷を与え、 それが接続されている試験用測定器に損傷を与え、 あるいは感電や火災を引き起こさないように注意しなければならない。 プローブを厚いプラスチックやレジンで覆うことは常に良いアイデアであり、 これは安全衛生規則への適合のために必要であるかも知れない。

全てのループ・プローブは指向性を持つので、 エミッション源を追う場合には、 最も強い信号が検出されることを確実とするために、 それらは2つ、あるいは3つの方向で使用しなければならない。

上で示したループ・プローブは 1GHz までの周波数のために良く、 小さい直径のループ (例えば 10mm) はより良い高周波応答を持つが、 低い周波数での感度は低くなる。 1回よりも多くのターンを持つプローブは低い周波数でより敏感になるが、 そのターン間の静電容量が高周波応答を著しく低下させる。 大半の設計者は、低い、あるいは高い周波数の 重要なエミッションを見落としていないことを確認できるように、 様々な大きさのプローブを手元に置きたいと思うであろう。 1GHz 以上の周波数に関心がある読者は、 [1] で説明されている「トゥースピック (toothpick)」や その他のプローブに関心を持つであろう。 [2] やその参考文献で述べられているように、 近傍界プローブの賢い使用によって相当の有用な診断情報が得られる。

1.2 電流プローブ

[3] は、自分自身で低コストの試験を行なうことに関心のある 全ての人にとって最も有用な文書である。 その論文の1つ、「Radiated emissions pre-compliance diagnostics」で、 Tim Williams は、フェライト・コアを基礎とした、 どのような電気技術者でも容易に作れる電流プローブを示している。 それは、フェライト・シリンダーの中心の同一の穴にその双方を通すことによって、 測定対象のケーブルと密に結合された、上で述べた近傍磁界プローブそのものである。

近傍磁界ループ・プローブは それらがケーブル内の導体に対してどのように置かれているかに依存して 差動と同相を同時に測定するものの、 これらの電流プローブはケーブルからの同相フィールドのみを測定する。 ケーブルからの放射性エミッション問題の大半を引き起こすのは 通常はその同相電流であるので、そのような電流プローブを用いた測定は 本来の EMC 試験の結果とのより良い相関を持ち得る。

関心のある周波数範囲をカバーしている信号発生器を使用できるならば、 電流プローブは容易に校正できる (もしそれがなければ、 近くの EMC ラボが彼らのものを僅かな料金で使わせてくれるかも知れず、 あるいは借りることもできるだろう)。

通常はクリップ式 EMI サプレッサとして販売されている分割フェライト・シリンダーを そのコアとして使えば、 校正済みの電流プローブを関心のあるケーブルの上に取り付けて、 その同相電流の周波数と振幅の双方を測定できる。 このプローブはケーブル内の同相電流に対応する電圧出力を発生し、 これは測定器側で 50Ω で終端すべきである。

Figure 5

Figure 5 は、通常の同軸ケーブルで作られたそのようなプローブの実例を示す。 それは、編組への半田付けによる同軸の誘電体の損傷を避けるために、 北川工業の FGC3M3 遮蔽接続用クランプを使用している。 使用されたフェライト・コアは、 いくつものフェライト・サプレッサ製造業者や電子部品販売業者からすぐに入手できる 標準的な 32mm の長さの分割シリンダーである。 分割フェライト・コアの長さや形状は重要ではないが、 試験されるケーブルとプローブ自身のケーブルの双方を同時に通すのに 充分に大きい内径を持つ必要があり、 また容易な組み立てと分解を可能とするようなクランプ構造を持つべきである。 そのようなプローブの校正は、 特定のフェライト部品に依存するであろうことに注意されたい。

Ott と Paul の単純な式、 E = 1.26×107 × F × L × I は、 このフェライト・コア・プローブで測定されたケーブル電流が 許容できない放射性エミッションを引き起こしそうかどうかの評価に使用できる。 この式で、E は 10m の距離での V/m での放射性エミッションであり、 dBμV に変換して、EMC エミッション規格の限度値と直接比較できる; F (MHz) は測定された周波数; L (m) はケーブルの長さ; I (mA) はそのプローブによって周波数 F で測定された電流 (プローブの校正係数を考慮に入れて) である。

[3] からのもう1つの非常に有用な論文は、 ERA Technology の Tony Maddocks による「EMC diagnostic techniques」である。 これは、エミッションを ケーブルのグランド・プレーンからの高さの関数として予測できるようにする、 上の Ott と Paul の式の有用な代替となるグラフを含んでいる。

Tony は、Tim の分割フェライト・プローブの単なる商品版であり、 多数の供給者からの妥当な費用での借用や購入が可能な 校正済み電流プローブの使用についても述べている。 これらの電流プローブは、既に校正された状態で、 それを示す周波数に対する mV/mA 変換係数のグラフとともに供給される。 mV/mA は Ω でのインピーダンスそのものであり、 このようなプローブに適用される場合には しばしば伝達インピーダンスと呼ばれる。

Tektronix は、ほとんど常に、 大抵は 50MHz までの測定しか行なえない電流プローブをアクセサリとして用意していた。 しかし、今では、2GHz までの測定を行なえる遥かに小さい電流プローブも提供されている。

1.3 「バグ・ディテクタ」

Figure 6 これらは様々な名前で呼ばれるが、 それらの大半は単に総フィールド強度を示すだけであり、 周波数の情報を与えない。 それらは、通常は何らかの形態のアンテナ (例えば小形ダイポール ―― 広帯域応答を持つように最初の共振よりも充分に下で使われる)、 広帯域検波器、そしてメーターや LED 列を駆動する増幅器から成る。 これらの作り方に関する多数の記事が商業誌やホビー雑誌で公表されており、 多数の商用製品も存在している。

これらのディテクタの多くは、存在しているフィールドが 人間の健康に危険であるかどうかの判断に用いることを意図しており、 1V/m 以下の電界の測定のためには充分に敏感でないかも知れない。 1V/m は 120dBμV/m (dBμV/m は通常 30MHz 以上の放射電磁界の測定に用いられている量である) と同じフィールド強度であり、 従ってそれはあなたの製品が 10m の通常の測定距離で (例えば) 37dBμV/m よりも多く放射しているかどうかを見ようとする時には役に立たない。 それらは、製品の誤動作を引き起こすかも知れない 強いフィールドが存在するかどうかを素早く判断するために 顧客の施設に持って行くために便利なことがある。

しかし、もしそのバグ・ディテクタが充分に敏感であれば、 正式な放射性フィールド測定に対する問題を引き起こすかも知れない 強力なエミッション源を検出するために製品の近くで使用でき、 この目的のために販売されているいくつかのモデルが存在している。 充分な感度があれば、 上で示した近傍界プローブや電流プローブと全く同様に、 それらは開発/診断/品質保証作業のために手頃かも知れない。 市販されている「バグ・ディテクタ」の例を Figure 6 に示す。

バグ・ディテクタは通常は周波数の情報を与えないので 放射性エミッションの詳細な評価のためにはさほど役に立たないものの、 自己完結的である、使用が容易で時間を要さない、ポータブルである、 バッテリーで動作するといった、いくつかの大きな利点がある。 それらは、比較的熟練していない使用や現場での使用のために良い。

そのディテクタとその製品に対するある程度の経験のもとに、 それらのプローブの1つで製品の表面やケーブルに沿ってスキャンして、 その製品が正式な放射性エミッション試験に合格するであろうかどうかを 予測できることもある。 この方法でバグ・ディテクタを使用する能力の何らかの実際の証拠を得るためには、 そのディテクタを放射性エミッション試験に 合格する、あるいは不合格となることがわかっている様々な製品に対して使用する、 相当の経験が必要である。

それでも、それらのバグ・ディテクタは品質保証のために使用できる: 製品のエミッションにおける既知の弱点だけでも、 連続生産において素早くスキャンするために; あるいは、出荷されようとしている製品がより正確に試験されたものと似た 放射性エミッション性能を持つであろうことを確認するために。 ケーブル終端やコネクタのような部分を確認することは、 正しくない組み立て (ケーブル遮蔽の 360°クランプの代わりのピッグテールの使用、 あるいは Alochrome の代わりに陽極処理されたアルミニウムの使用といった) を明らかにできる。 しかし、製品の様々な部分やケーブルやコネクタに対して、 ディテクタの表示上で何を合格/不合格限度とすべきかの決定は、 正式な試験での不合格をもたらすであろう問題に対して そのディテクタがどのように応答するかの経験を必要とする。

1.4 アンテナ

放射性エミッションのための全面的な適合性試験は 遠方界での使用のために設計されたアンテナを使用し、 EMC 規格は遠方界でのエミッション限度のみを与える。 遠方界は、通常は波長の 1/6 以遠と定義され、 これは 30MHz に対しては 1.7m である。

30MHz 未満の放射性エミッションの測定に際して、 遠方界での測定のために充分なだけ離すことは非実際的である。 従って、30MHz 未満では、近傍界において、 大型ループ・プローブ (典型的には直径 600mm の) と ホイップ・アンテナ (典型的には長さ 1m の) を用いて、 磁界と電界の成分を別々に測定するのが普通である。

30MHz から 1GHz の範囲ではダイポールを使用できるが、 それらは限られた周波数範囲を持ち、これは試験を非常に時間を要するものとする。 ダイポールは計算可能な応答を持つので、 それらは依然として放射性エミッションのサイト校正のための標準トランスジューサである。

EMC 技術者が 30MHz から 1GHz の範囲の試験を素早く行なうことを助けるために 様々なアンテナが設計されており、 それらは実に面白い形状を持つことがある [4]。 バイコニカル・アンテナ (泡立て器2つを背中合わせにしたように見える) は好まれており、 典型的には 20〜200MHz をカバーするが、 典型的な対数周期アンテナ (八木アンテナに似ているが、エレメントの長さが違う) は 200MHz から 1GHz、あるいは 2GHz までをカバーする。

最近では、全面的な適合性試験のための標準的なアンテナはバイログ・アンテナであり、 20MHz までや 2GHz までのバージョンも入手できるものの、 これは通常は 30MHz から 1GHz をカバーする。 使用中のバイログは、Figure 12、及び 14 で見られる。 しかし、バイログは、大きく、重く、そして扱いにくいものとなり得る。 Figure 7 いくつかの製造業者から、小さく、軽く、そして安価な代替のアンテナ (Figure 7 に示すように、 感度の低下を補償するための組み込みの増幅器が用いられることも多い) を入手でき、それらは予備適合性試験のためには受け入れ可能であるかも知れない。

1GHz を超える周波数での放射性エミッションの測定のためには、 非常に小さいダイポール、ホーン、あるいはダブル・リッジ導波管が使われている。

全てのアンテナについて非常に重要な点は、それらは校正の必要があり、 放射性エミッションのいかなる測定に際しても その校正係数 (アンテナ係数、あるいはトランスジューサ係数とも呼ばれる) を考慮しなければならないことである [5]。 多くの広帯域アンテナは、 その周波数範囲で 0〜20dB の範囲で変動する校正係数を持つことがあり、 EUT からのフィールドを過小評価しないためには これを考慮に入れることが非常に重要である。

Figure 8 Figure 8 は、スペクトラム・アナライザや測定用受信器の測定値から 実際のフィールドを計算するために用いる典型的な表を示す。 それは、アンテナを測定器に接続するケーブル、 そして測定器自身の校正係数も示している。

オープン・サイトにおけるアンテナ測定は環境干渉の影響を受け、 これに対処するための手段はこの記事の後でカバーする。 近傍界プローブや電流プローブは環境に対してそれほど敏感ではなく、 これはそれらの開発ベンチや生産ラインでの使用を容易にする。

1.5 開発/診断/品質保証試験のためのオシロスコープの使用

どの電子機器設計者も確実にオシロスコープと適当なプローブを使用できる筈であり、 それらを本来の放射性エミッション試験に合格する、 そして不合格となる EUT の調査のために使用した経験があれば、 それらを放射性エミッション性能とある程度の相関を持つ定性的な確認に使用できる。

勿論、60MHz のオシロスコープは、60MHz 以上の周波数についてはあまり語らないであろう。 そして、勿論、使用するプローブの種類とプロービング・テクニックも 適切でなければならない ―― 100mm の長さのグランド・リードを シャーシの適当な箇所に鰐口クリップで接続した 10倍のプローブを用いて 500MHz を測定しようとしたのでは駄目である。 正確な高周波測定をどのようにして行なうかを学ぶためには、 そのオシロスコープやプローブのマニュアルを読むこと。

オシロスコープ上で見る波形 (時間ドメインの) が スペクトラム・アナライザでの測定 (放射性エミッション規格で用いられるような、周波数ドメインの) でどのように見えるであろうかを理解することが必要となるだろう。 FFT 分析機能を持つオシロスコープは非常に手頃なものとなり得るが、 電圧や電流の変化率 (dV/dt、及び dI/dt) が高いことは 放射性エミッションの脅威がより大きいことを意味する という概念に馴染む価値は依然としてある。 波形の余計なリンギングは、回路の共振周波数について、 そして放射スペクトラム上で見るであろう周波数について、相当のことを語る。

有用なトリックの1つは、その波形がどの程度崩れるかを見るために、 デジタル信号 (例えばクロック) をその信号源から最終的な負荷まで追跡することである。 エミッションが低い良いプリント板は、 その PCB トラックの全長にわたって波形の良好なインテグリティを維持するであろう。 波形が著しく崩れる場合、 そのリンギング周波数はエミッション問題が起こりそうな周波数を警告する。

スペクトラム・アナライザと比較してのオシロスコープの少数の利点の1つは、 オシロスコープは、通常は標準的な電圧プローブと予備のチャネルを用いて、 クロックや他の波形でトリガさせられることである。 オシロスコープの管面に不鮮明なノイズがあるならば、 その不要なノイズにそれらのいずれが最も寄与しているかを見るために、 別のクロックやその他の信号でトリガすることによってその一部を「固定」させられる。

しかし、電圧でのプローブは2つの問題の影響を受ける: プローブの信号とグランドの導体で作られるループが 遮蔽されていないループ・アンテナとして振る舞い、 その局所環境からのノイズを拾い上げる; そして、大抵のオシロスコープは非常に良くない同相信号除去性能を持つ。 このため、あなたが測定しているものが、 あなたがプローブしている信号なのか、近傍の回路から誘起された結合なのか、 あるいは EUT とオシロスコープのシャーシとのあいだの RF 同相電位なのかを 知ることが困難な場合がある。

EUT の同相電圧を知ることは重要であるが、 それが測定しようとしている信号の波形と混合された時には、 人生はより困難なものとなる。 オシロスコープのリードに取り付けられた 32mm の長さの分割フェライト・サプレッサは 有意な改善をもたらし得る。 Frank Keane は、これらの2つのプロービング問題に どのように対処するかを述べた良い記事を [6] に書いている。 彼は、機器の安全接地は決して取り除いてはならない という非常に重要なポイントを示している。

近傍界プローブ、電流プローブ、そしてアンテナのような EMC トランスジューサは、 EUT への電気的な接続を持たず、 従ってオシロスコープのクリップ式の電圧プローブほど多くの問題は持たないが、 その半面それらは電圧プローブが行なうように信号波形を直接測定しない。

EUT の同相電圧は、電界プローブ、 あるいはシャーシや 0V に接続されたピン・プローブを用いて検出できる。 10倍のプローブをグランド・リードを接続せずに EUT のシャーシに接続しても同相電圧を検出でき、 主電源周波数の「ハム」の問題は高域通過フィルタ (プローブ先端への小さい値の直列コンデンサのような) によって解決できる。

手持ちのオシロスコープとプローブの使用は、 明らかに開発/診断エミッション試験のための最小コストの方法であるが、 標準的な EMC 試験との何らかの定量的な相関を達成するためには 波形を読む相当のスキルを必要とする。 どのような相関が合理的に得られるかを学ぶための手段として、 「ゴールデン・プロダクト」試験 (1.9章を参照) が推奨される。 少ない (あるいはゼロの) 出費、若干の学習曲線、 そして「ゴールデン・プロダクト」によって、典型的な電子設計者は 単にオシロスコープを用いることで有用な EMC 情報を得ることができる。

1.6 開発/診断/品質保証試験のためのスペクトラム・アナライザの使用

オシロスコープの使用に伴う問題の1つは、 その帯域が広くなると、その軌跡のノイズが増えることである。 正式な放射性エミッション試験の限度値や結果と比較できるように、 波形の情報を周波数ドメインに変換するという問題もある。 オシロスコープの FFT 機能は 変換のために選択されたウィンドウの種類に依存して異なった結果を与え、 正式なエミッション試験で要求されているような 準尖頭値や平均値の応答をする検波器を持たない。

開発/診断/品質保証試験にスペクトラム・アナライザを用いる主な利点は、 その結果の正式な EMC 試験の結果との対応付けが遥かに容易なことである。

下は 400ポンド程度のものまでを含む、 安価なスペクトラム・アナライザ・アダプタが入手できる。 それらは、表示のためにオシロスコープを XY モードで使用する。 昔はさらに安価なアダプタの広告が出されていたが、 それらがまだ入手できるかどうかは不明である。 戸棚の隅で埃をかぶっている古い 10MHz のオシロスコープを 1GHz スペクトラム・アナライザとして復活させられる!

勿論、そのような安価なアナライザの機能や能力は非常に低い。 より高価なアナライザ ――特に、ケーブル係数やアンテナ係数の自動補償を提供し、 dBμV での目盛を持ち、限度線を表示し、 穏当に正確な準尖頭値と平均値の検波器を持ち、 結果をディスクに保存したりプリンタへ送ったりできるもの―― の購入は、最初の数ヵ月の使用のあいだに相当の時間と金を節約できる。 スペクトラム・アナライザの製造業者は多数あり、 その一部は低コスト EMC 試験市場を直接狙っている。

EMC エミッション測定の独特性の1つは、 広帯域ノイズに狭帯域エミッションと異なった重みを与える、 CISPR16 準尖頭値 (QP)、及び平均値 (AV) 検波器の使用である。 テスト・ラボでの全面的な適合性試験のための使用を意図した高価な EMC 測定器のみが、 正確な QP や AV の検波器を持っているように見受けられる。 マイクロプロセッサのクロックや類似の信号からの変調されていないエミッションは、 全面的な適合性のための EMC アナライザの QP や AV の検波器と同様、 安価な EMC アナライザや全ての非 EMC スペクトラム・アナライザで見られる 尖頭値検波器でもほぼ同一のレベル (数 dB 以内) が測定される。 しかし、データ・バス、直流モータ、リレー接点からのよりランダムなエミッション、 そして低速パルス・エミッションは、 本来の QP や AV の検波器を使わなかったならば 20dB に達する誤差を生じ得る。

中古品や軍事余剰品店は、良質のスペクトラム・アナライザの良い供給源である。 1990年台初期の Marconi 2380 シリーズのアナライザは高々 1000ポンドで入手でき、 それらは QP や AV の検波器を持たず、 部屋の余裕と頑丈な作業台を必要とするものの、素晴らしいデジタル同調式測定器である。 より古い Marconi や Hewlett-Packard のアナログ同調式スペクトラム・アナライザは、 数百ポンドで入手できる。 今は、正式な EMC スペクトラム・アナライザが中古市場に流れ始めている。 しかし、それらの測定器の一部は、購入に要したよりも多くの 一年当たりの校正費用を要するかも知れないことに注意されたい。 常に、中古のアナライザと一緒に全てのマニュアルを入手したことを確認すること ―― 現在の校正証明書があれば遥かに良い!

スペクトラム・アナライザは、近傍界プローブ、電流プローブ、 そしてアンテナとともに使用できる。 スペクトラム・アナライザの入力が 50Ω であることから、 典型的なオシロスコープ用プローブは理想的ではないかも知れないものの、 それらは電圧プローブとともに使用することもできる。 スペクトラム・アナライザで電圧を直接測定する場合には、 それらが非常に敏感な (そして交換するのは高価な) アナライザの入力デバイスを焼損しないように、 直流や低周波の信号を抑制するように充分に注意すること。

それらが測定周波数帯の外にあったとしても、 スペクトラム・アナライザは強い信号で過負荷となりやすいので、純粋主義者は それらは常にプリセレクタとして知られているものとともに使うべきだと言うであろう。 大半のテスト・ラボはその追加費用を受け入れられるであろうものの、 試験される製品が高レベルのパルス性エミッションを持たず、 また外来信号が非常に強力でない限り、それは社内試験施設では不要であることも多い。 プリセレクタは、伝導性エミッション試験では遥かに重要である。

入力が過負荷となっているかどうかを見い出すことは容易である: 10dB 貫通 50Ω 減衰器を購入し、それがない状態で測定を行なった後に、 それをプローブやアンテナとアナライザの RF 入力とのあいだに接続して再測定する。 もし表示された信号全てが 10dB 程度低下したならば、 プリセレクタ (あるいは EMC 測定用受信器) の必要はない。 10dB 低下しない信号はおそらくはアナライザを過負荷としており、 10dB 以上低下する信号は 他のどこかの周波数での RF 過負荷によって引き起こされたアーティファクトかも知れない。 アナライザによっては、過負荷に対して他のものよりも高い耐性を持つ。

安価なアナライザは非常に高いノイズ・フロアを持つことがある。 外部の低雑音 RF プリアンプは信号対雑音比を改善するかも知れないが、 大事なスペクトラム・アナライザの入力に直流を出力しないことを確認すること。 RF プリアンプも過負荷に弱いので、それらも 10dB 貫通減衰器を用いて確認する。

周波数ドメインでの視覚化は設計/開発技術者にとって大きな違いを生じ、 極めて安価なアナライザでさえも、設計上の誤った決定の防止と エミッション問題のすみやかな同定を助けるであろう。 「ゴールデン・プロダクト」試験 (1.9章を参照) は 安価なアナライザによる結果にどの程度の信頼を持てるかを定める素晴らしい方法である。

1.7 開発/診断/品質保証試験のためのラジオ受信器の使用

EMC スペクトラム・アナライザの代替の1つは、測定用受信器である。 スペクトラム・アナライザは、 何が起きているのかの視覚的な表示を素早く得るために使うのが オシロスコープのように容易であり、 開発/診断/品質保証での日常的な使用では測定用受信器と比べて顕著な利点を持つ。 最良の EMC 測定には スペクトラム・アナライザではなく測定用受信器が必要だと主張できるが、 ハイ・エンド市場においては その相違は極限的なテスト・ラボにとって重要となるのみであるほど、 今日では双方が良いものとなっている。 伝統的な測定用受信器は信号レベル・メータのみを持つが、 今では多くのものは組み込みのスペクトラム表示を持ち、 あるいはスペクトラム表示を提供するアプリケーション・ソフトウェアが走る コンピュータと接続できる。

しかし、低コストの開発/診断/品質保証作業のための受信器に対する主な関心は、 おそらく「携帯型ラジオ」や類似の日常的なラジオ受信器の使用にある。 可搬型の家庭用のラジオやテレビの受信器は、 ある製品がどれほど悪いことをしているかの何らかの概念を得るために使えるが、 それらが受信する放送周波数帯においてのみである。

「携帯型ラジオ」やその同類のもう1つの大きな問題は、 EMC のためには RF 信号の大きさに関心があるにもかかわらず、 それが RF 信号の変調のみをスピーカに出力することである。 デジタル・クロックの高調波に同調させた時には、背景雑音が抑制され、あるいは 本来の無線送信の振幅が低下することによってそれを検出できるのみである。 クロックの高調波から何かを聞けるとすれば、 クロックの直流電源のリップルによる主電源周波数の倍のかすかなうなりだけであろう。

そのような基本的なラジオで相対比較を行なえる場合もあるが、 本当に必要なものは信号強度メータの付いたラジオ受信器である。 エミッションのレベルとして記録するのは、この信号強度インジケータの出力である。 もしラジオ受信器に関して知っているならば、 「携帯型ラジオ」に信号強度メータを付けられるかも知れない。

特にアマチュア無線の供給者から、非常に広い周波数をカバーする無線受信器 ――手持ち型で、100kHz から 2GHz を連続してカバーし、信号強度メータを持ち、 信号の自動スキャンを持ち、しかも極めて穏当な価格の受信器でさえも―― を個入できる。 アマチュア無線ベンダの包括的なリストとそのウェブサイトへのリンクについては、 http://w4cue.com/vendor.html を訪ねられたい。 軍事余剰品店も広帯域受信器の低価格での良い供給源となり得る。

EMC での使用のために特に設計されていない受信器は、 QP や AV の検波器を持たず、またそのメータは直線的ではないだろう。 最も有用な信号強度メータは、RF 信号のピークに応答する、 0.1ms 以下の反応時間を持つものである。 「ゴールデン・プロダクト」 (1.9章を参照) は、 無線受信器の信号強度メータを異なった種類の発生源からのエミッションのために おおまかに「校正」するために使用できる。 しかし、実際に期待できる最良のことは、 ある問題となる周波数における信号強度メータの読みの減少は、 大抵は正式なエミッション測定での エミッション・レベルの減少に対応するであろうということである。

信号強度メータを持つ通常の無線受信器を用いて製品の放射性エミッションを確認する際には、 正式な EMC 試験と同様に、 EUT 自身やそのケーブルとラジオのアンテナとのあいだの距離や アンテナの向きを規定する方法を定義することが重要である。

無線受信器は組み込みのアンテナを使い、他の全てのアンテナと同様、 オープン・サイトで使用した場合には測定は外乱の影響を受けるであろう。 これに対処する方法は 1.10章でカバーする。

1.8 予備適合性試験

「予備適合 (pre-compliance)」が何を意味するかの定義はないが、 少なくとも、予備適合性試験は該当する規格で示されているような 試験テクニックを用いるべきである。 EMC 規格は、常に、それ自身で試験方法を述べるか、 あるいは試験方法が詳細に述べられている他の文書を参照している。 EMC 指令への適合性のための放射性エミッションの試験には、 通常は EN 55022 や EN 55011 (CISPR22 や CISPR11) で述べられている試験方法が関係する。 何年ものあいだ、それら双方は OATS (open area test site) での試験を要求していたが、 環境がより騒々しくなる ――特にデジタル放送の使用に伴って―― のに従って、 極めて高レベルの環境雑音に煩わされない OATS のための手頃な場所を見付けるのがさらに困難になっており、 今は代替となる多数の遮蔽された施設が受け入れられている (1.10章を参照)。

全面的な適合性試験の方法は、この記事の後の方で、 そして [16] や教科書のような他の多くの記事で述べられている。 通常、予備適合性試験とは、全面的な適合性試験の方法を用いるが、 金と試験時間を節約するためにいくつかの角を切り落とすことを意味する。 予備適合性試験に関して重要なことは、 その切り落とされた角によってどのような誤差が導入されるかを知るために、 その試験について充分に知ることである。 俗に予備適合性試験として知られているもののスペクトラムは、 全面的な適合性試験によるものと実際上区別しにくい結果を与える試験のための、 極めて不正確なものから実に良いものまでの結果となり得る (注意の程度に依存する)、 試験規格におおまかに基づいた極めて拙速な方法から得られたもののようである。

既に言ったように、EMC 試験における時間と金の節約は賢くなることを意味し、 これは良い例である。 極めて多くの企業が、そのようなシステムの多数の供給者の1つから 「予備適合」エミッション試験システムを購入し、 機器、アンテナ、そして説明書のいくつかの箱を受け取っている。 彼らは、機器とアンテナを接続してフロント・パネルのボタンを押すだけで 測定を行なうことを期待する ―― しかし、30dB、あるいはそれ以上の誤差を容易に生じることとなり得る [7] [8]。 予備適合性試験機器製造業者の一部は包括的なガイドラインを用意している [9] が、 そうしている場合でさえも、 少数の企業のみがそれを読む手間をかけてその指示に従おうとするようである。 新しい PC アプリケーションやオシロスコープを そのマニュアルを参照せずに理解することはできるかも知れないが、 それと同じアプローチは EMC 試験のためには働かない。

正確なテスト・サイトや正確な方法から逸脱すること、 あるいはそれ自身が CISPR16 に適合していない安価な機器を使うことは、 未知の測定誤差を、 さらには時間と労力の無駄 (出荷の遅れ、過剰設計、高生産コスト) や 過剰な財政的リスク (劣悪な信頼性、高率の返品/保証コスト、 さらには自主的なものや執行官の命令による EU 市場からの締め出し) のいずれかをもたらすことを意味し得る。 大きな誤差を伴う低コストな試験は、全く低コストではない。

幸い、商業的/財政的なリスクを負うことなく時間を金を節約するように、 過大な労力を費すことなく予備適合性試験を行なうことが可能である。 しかし、それは機器を接続して測定を行なうというだけの話ではない ―― あなたはあなたの測定における誤差を知る必要がある。

予備適合性試験における誤差を明らかにする2つの方法がある。 1つは、そのサイトの 正規化サイト・アッテネーション (normalised site attenuation; NSA) の測定、 全ての機器、ケーブル、そしてアンテナの校正データの取得、 そして NIS81 [10] を用いた測定不確かさの算出を含む、 全面的な適合性試験と同一の手続きに従うことである。

第2の方法は、1.9章で述べるような 「ゴールデン・プロダクト」試験の使用である。 「ゴールデン・プロダクト」試験では、 あなたのサイトや不確かさについて何かを知ることは必須ではない ―― その「ゴールデン・プロダクト」が、既知の測定不確かさを持つテスト・ラボから あなたのサイトへの「移行標準 (transfer standard)」として用いられる。 全面的な適合性測定の結果 (「マスター」となる結果) と あなた自身のサイトで得られた結果との違いが補正係数として用いられ、 その予備適合性試験サイトで行なわれる全ての測定に適用される。 しかし、そのような違いは、厳密には同じ放射特性を持つ製品のために適当なだけである。

しかし、「ゴールデン・プロダクト」試験でさえも、再現性の問題には対処できない。 もし「ゴールデン・プロダクト」を連日セットアップして測定したならば、 その測定結果にはどのような変動があるだろうか? ケーブル、アンテナ、そして特にそのサイトと局所的な環境を良く管理しない限りは、 試験の再現性は良くないものとなりそうであり、 不確かさの算定には再現性誤差を含めるべきである。

多くの小さい企業のための最良の方法は、NSA、校正、ゴールデン・プロダクト試験、 そして NIS81 を用いた不確かさの算定の混合となりそうである。 あなたのサイトとその不確かさをより定量化できるほど、 より再現性のある「ゴールデン・プロダクト」試験を行なえるであろう。

さて、放射性エミッションの穏当な予備適合性測定に典型的な、 角を切り落とすテクニックのいくつかを見てみよう。 大抵の EMC 規格は放射性エミッションを 10m の距離で測定するが、 予備適合の目的では、 その代わりに 3m の場所で測定して限度線を 10dB 上げるのが普通である。 より近い距離での測定は、より小さい試験サイトの使用を可能とし、 また信号対雑音比を改善する (特に安価なスペクトラム・アナライザや EMC 測定用受信器を用いている時に価値がある)。

アンテナをさらに近く (例えば 1m) に動かして、それに応じて限度線を上げる (アンテナの距離の逆数に比例するので、3倍近付けば 10dB 高くなる) ことも可能であるが、 これはアンテナと EUT の結合効果のために非常にリスクが高い。 10m から 3m についてさえも、その 10dB の補正係数はしばしば不正確なものである。 3m から 1m については、それを技術的に正当化することはできない。 長いアンテナに伴う問題の1つはアンテナの中心がはっきりしないことであり、 アンテナの先端から 1m の距離では、 200MHz から 1GHz の対数周期アンテナの実際の測定距離は その周波数に依存して 1m から約 2m まで変化するかも知れず、 修正された限度線に周波数依存性をもたらす。

Figure 9
Figure 10a
Figure 10b
サイトの NSA (1.12.1章を参照) は、 グランド・プレーンの質と、近傍の金属の面や物体からの反射の影響を受ける。 Figure 9 は、EN 55022 (CISPR22) で規定されている 一般的な 10m OATS セットアップを示す。

そのような OATS のセットアップは困難でも高価でもなく (Figure 10a、及び 10b を参照)、 丸めて仕舞い込んでおける金網のグランド・プレーンを持つ仮設のものとすることさえできる。 駐車場は、夜や週末に使用される一時的な OATS として好まれる。

金属のグランド・プレーンは大地からの再現可能な反射を与えるために規定されており、 高さのスキャンの目的は反射したものと直接の信号を最大とすることである。 多くの人々は「予備適合」試験機器をグランド・プレーンなしに使っているようであり、 多くは高さのスキャンの手間もかけていない。 限度線を 6dB 下げることが、 グランド・プレーンと高さのスキャンの欠如を補償し、 また危険側の誤差を生じさせる方法と見なされているが、 これはフィールドの相殺を生じる大地からの反射 ――測定によってはおそらくは 25dB 程度低下する―― を考慮に入れることはできない。 予備適合試験用のアンテナの一部は、2つのアンテナ高さ ――例えば 1m 離れた―― だけを与える三脚やスタンドとともに供給されている。 それらの双方の高さでの測定結果からそれぞれの周波数での最悪値を採ることは、 その深い相殺が避けられていることを確かとする。 高さの全面的なスキャンを行なわないとしても、 常に少なくとも 1m 離れた2つ以上の高さからの最悪値を記録すること。

人によっては、 CISPR 楕円が不可能な建物の中で「予備適合」機器を使用することもある。 彼らは、 それぞれの反射について +6dB から -25dB のあいだの周波数に依存する誤差を与える、 周囲の機器や調度品の移動によって日によって変化する未知の反射に悩まされるであろう。 そのような環境においては、対照雑音放射器 (comparison noise emitters; CNE)、 もしくは「ゴールデン・プロダクト」による定期的な確認が、 問題の発見と解決、そしてある程度の再現性の達成を助けるであろう。

建物内での測定のもう1つの問題は他の電気機器によって生じる環境雑音であり、 建物によってはスペクトラムの多くの部分で限度線を超える環境雑音の影響を受け、 これは予備適合性測定を不可能とするであろう。 屋外の駐車場、運動場、あるいは庭に移動することは 建物内の機器からの環境雑音を低減するであろうが、 オープン・サイトでの外部環境問題に対しては何もしない。 オープン・サイトの環境問題に対処するいくつかの方法は 1.10章で議論する。

安価な機器で正確な CISPR16 QP 検波器 (正式な放射性エミッション測定のために要求される) を見付けることは難しく、10,000ポンドのスペクトラム・アナライザでさえも CISPR16 に完全に適合した QP 検波器を持っていないかも知れない。 安価なスペクトラム・アナライザや測定用受信器は、 クロックの高調波や類似のエミッション源からのエミッションの測定に際しては しばしば完全に良い結果を与えるが、 直流モータのブラシからの広帯域エミッションや 毎秒1回のフラッシュで動作しているストロボ・ライトのような低速パルス信号に対しては 誤った測定が行なわれるかも知れない。 しかし、「ゴールデン・プロダクト」の試験 (1.9章を参照) は、 あなたの製品で使われているテクノロジーからの別の種類のエミッションに対して、 予備適合試験用の、あるいは安価な試験器具の検波器を「校正」する良い方法である。

アンテナは落とされ、ワイヤは切れ、コネクタは損傷を受け、 そして電子機器は微妙な形で駄目になる。 従って、少なくとも週に1回 (あるいは何らかの間違いや変更があった時) は CNE か「ゴールデン・プロダクト」を測定することによって、 一貫した結果が達成されていることを常に確認すること。 あなたの機器全て (アンテナ、トランスジューサ、ケーブル、及びコネクタを忘れずに) を 毎年校正するのも良い考えである。 正確な予備適合性試験を行ないたいのであれば、定期的な校正は必須である。

1.9 再現性、そして「ゴールデン・プロダクト」試験

EMC 試験の金を節約したい、 あるいは不適合の製品を販売していることに気付く可能性を下げたいと思うならば、 さらに賢くなる必要がある。 EMC 試験は、大きな誤差や不確かさ、そして再現性の欠如を生じ易い。 「ゴールデン・プロダクト」試験は、特に 1MHz 以上の周波数が関係する、 全ての EMC 試験 (放射性エミッションのみでなく) における 誤差の低減と再現性の改善の大きな助けとなり得る。

EMC 試験の再現性は、同じサイトと同じスタッフによって 全面的な適合性試験の方法が使われた場合でさえも問題となることがある。 全面的な放射性エミッション適合性試験を実施している UKAS に公認されている UK のテスト・ラボで、 あるラボと他のラボとのあいだでの 6dB に達する相違が経験されることが知られている。

相当の技術的努力によって EMC 性能を 6dB 改善できるが、 おそらくは製品の出荷を遅らせ、かつ/もしくは生産コストを上げるだろう。 一方で、エミッションがあなたが考えていたものよりも 6dB 高ければ、 大きな財政的なリスクとともに、不適合のリスクが増加する。

非公認の放射性エミッション試験における誤差が 20dB 以上変化することは容易であり、 30dB の誤差も知られていないことではない。 単なる (RF 吸収材のない) 金属の部屋で試験を行なっていたために 試験がその1つが問題の周波数で 40dB 程度の予期しない上昇を与える 大きな共振の影響を受けていたということを学ぶためだけに、 EN 55022 Class B 限度線の下の 1つの目障りな放射性エミッション周波数を始末しようとして 2人年を費した哀れな奴についての話がある。

突如として、低コストな試験はあなたが期待していたかも知れないように 費用効果が良いものには見えなくなる! 従って、あなたが何をしているのかを、 そして費用を節約したいと思うならば賢くなる必要があるという前のコメントの基礎を 正確に知る必要がある。

試験機器や手法における不確かさや校正誤差とは別の、 再現性の欠如に大きく寄与するもう1つのものは、 EUT ――特にそのケーブル―― のセットアップと配置である。 公認テスト・ラボやその他のものの一部は、彼らの試験の再現性を確認するために 専用の対照雑音放射器 (comparison noise emitters; CNE)、 あるいはエミッション基準源 (emissions reference sources; ERS) と呼ばれる類似のユニットを使用しており、 あなたもそうすることができる。 CNE や ERS は、そのエミッションの、完全に近いテスト・サイトで測定された プロファイル、あるいはシグネチャ (signature) とともに供給される。 それらの「マスター」スペクトル・シグネチャを あなた自身のサイトで得られたものと比較することは、 あなたのサイトの問題の同定と解決を助け、 あなたのテスト・サイト、測定器、そして試験手続きの 再現性が保たれていることの確認を助ける。

しかし、あなたの製品がするであろうものと同じ方法で 電界と磁界の双方を放射できる CNE はない ―― 従って、正確で再現可能な CNE 測定は、 正確で再現可能な EUT 測定を保証しない [7] [8]。 EUT の詳細なセットアップと配置、そのソフトウェアのバージョン、 関連するケーブルや外部機器は、いずれも測定結果に極めて重要なものとなり得る。 ケーブルを僅かに動かしただけでも、 放射性のエミッションやイミュニティの測定結果に大きな相違を引き起こし得る。 長いケーブルを束ねる方法の違いは、エミッションに 20dB 以上影響し得る [11]。

「ゴールデン・プロダクト」試験はこの再現性問題を低減する方法の1つであり、 大半の製造業者がそれを使用できる。 本質的には、「ゴールデン・プロダクト」は、 EUT、そのセットアップ (そのソフトウェアのバージョンを含む)、 ケーブル、そして外部機器の代表的な例から構成され、 全く変更を加えずに、 試験が同一の (あるいは充分に近い) 結果を与え続けていることを確認するために使用する。 理想的には、全ての機器とケーブルは接着剤で固定され、 あるいは典型的なテスト・ラボのテーブルと同じ大きさの木の板に 恒久的に取り付けられるであろう。

このアセンブリ全体が「ゴールデン・プロダクト」であり、 それはその使用が必要になるかも知れない限り変更せずに保管しなければならない。 企業によっては、全ての機器やケーブルを鮮やかなピンクに塗り、 それらを板にしっかりと固定し、 その「ゴールデン・プロダクト」を遠くの意外な場所で厳重に鍵を掛けておくことが、 人々がその一部を顧客に販売し、あるいは部品取りのために漁るのを防ぐ 唯一の方法となることがある。

「ゴールデン・プロダクト」では常に厳密に同一のケーブル ――たとえそれらが同一の供給者からのものであるとしても、 単に同一の種類というだけではなく―― を使うこと。

「ゴールデン・プロダクト」試験は、予備適合や低コストな試験方法 (前の章や、このシリーズの以降の記事で述べるような) が妥当で再現可能な結果を与えることの確認を助けるものと認められている。 最初に、その「ゴールデン・プロダクト」は、一組のマスターの試験結果を得るために 信頼できるテスト・ラボにおいて正しい試験方法を用いて試験されるであろう。 どのようにしてテスト・ラボを信頼できるか? あなたが信頼できる認証機関がその試験に関して公認したラボは良い出発点であるが、 いずれかのテスト・ラボに全面的に頼ることはリスクがあるものとなり得るので、 常に試験規格をあなた自身で学び、あなたが選択したラボで あなたの「ゴールデン・プロダクト」がどのように試験されるかを観察し、 規格から逸脱しているようであれば質問すること。 あなたはこれを行なうことで多くのことを学ぶことができ、 またどのラボを最も信頼できるかも学ぶことができる。 最良の信頼のためには、 あなたの「ゴールデン・プロダクト」のいくつものラボでの試験を観察し、 それらの結果にどの程度良い相関があるかを見る。 これは、あなたにさらなる思考の糧を与え、 あなたの試験の知識を劇的に改善する筈である。

予備適合性試験のためには、 「ゴールデン・プロダクト」の試験の結果は「マスター」試験結果と比較され、 その結果が「マスター」試験結果に充分に近付くまでその試験方法が改善される。 勿論、そのオリジナルの「マスター」試験結果は、 その「ゴールデン・プロダクト」と少なくとも同等に慎重に保管されねばならない ―― いずれも、それのみでは使い道がない。

通常は、「マスター」試験を行なうテスト・ラボが、EUT、外部機器、 そしてケーブルを彼らが最良と考えるように配置することを許すのが最良である。 その後に、その試験の「ゴールデン・プロダクト」のために、 この配置を正確にコピー (同一のケーブルと機器を用いて) する。 もしそのテスト・ラボがあなたが持ち込んだ板切れの上に物を並べるならば、 「マスター」試験の時のままの正確な再構築を助けるために、 あなたはそのラボを離れる前に機器の位置を板にマークし、 また全てのケーブルをテープで止めることができる。 それを自分自身でどのように行なうかを学ぶために、 常にその「マスター」試験がどのように行なわれるかを観察すべきである。

使う試験方法が本来の方法と全く異なる場合 ――例えば、スペクトラム・アナライザや測定用受信器の代わりに、 近傍界プローブ、「携帯型ラジオ」、 あるいはオシロスコープを用いて放射性エミッションを測定する場合―― には、 その「ゴールデン・プロダクト」は それが公認された試験の結果との妥当な相関を与えるまで その代替の方法を改善することを可能とする。 近傍界プローブや電流プローブ、あるいはオシロスコープでは 非常に明白な相関は可能でさえないかも知れず、 その代わりに達成されるのは、その代替試験方法に従った時の 「ゴールデン・プロダクト」のシグネチャのマスター記録である。

その「ゴールデン・プロダクト」のシグネチャは、 その種類の試験のための新たな「マスター」基準文書となる。 その EUT とケーブルの重要な EMC 特性全てをカバーするシグネチャを得るために 何をプローブする必要があるのか、そしてそれをどのようにプローブすべきかを学ぶことは、 最初は実にトリッキーなものとなり得る。 試験手順が決定され、シグネチャを作るために用いられたならば、 それは文書化 (理想的にはスケッチと写真も用いて) し、 何年も先になってから 誰か他の人がその「ゴールデン・プロダクト」に対してそれを繰り返しても 再現性のある結果を与えられるように充分な詳細が記述されねばならない。

試験があまり頻繁にではなく行なわれる場合には、 やるべき最初のことは、その「ゴールデン・プロダクト」を試験することである。 もしその結果が期待した通りであれば、その試験方法は受け入れられることが示され、 試験者は試験したいもの ――新しい PCB レイアウト、 セカンド・ソースのマイクロプロセッサ、マスク縮小された IC、 あるいは「ゴールデン・プロダクト」内の EUT の新しい改良版であっても―― の試験にそのまま進める。 試験が日常的に行なわれる場合には、 その「ゴールデン・プロダクト」は (例えば) 週に一回持ち出され、 試験方法に「ドリフト」がなく、 またアンテナ、ケーブル、プローブ、あるいは他の機器に損傷がないことを 確認するために用いられるべきである。 もしアンテナを落とし、あるいはケーブルが壊れて修理を行なったならば、 その「ゴールデン・プロダクト」の再試験は 再現性が維持されていることを確認するための良い方法である。

製品の全く新しい設計をどこで試験すべきかを理解することは重要である ―― 以前の製品のための「ゴールデン・プロダクト」は、 それが使用するテクノロジーやデバイスが新しい設計と異なれば異なるほど 価値が低いものとなる。 低コストな試験方法は特定の領域に「盲点」を持つかも知れず、 それらの盲点がある種類の製品に対しては問題とならないものの 他のものには大きすぎる誤差を引き起こすことがあり得る。

「ゴールデン・プロダクト」試験は非常に強力な信頼構築テクニックである。 通常、どの種類についても1つの製品のみを作る特注設計企業や、 船のように大きなシステム、機械、あるいは船舶を製造する企業でさえも、 提案された修正やソフトウェアの更新の EMC 試験と確認の目的のために、 彼らが使用する電子技術の代表となる「ゴールデン・プロダクト」を作ることができる。

1.10 開放型と閉鎖型のテスト・サイト

OATS のような「開放型」試験サイトでアンテナを用いる 全ての EMC 測定における問題の1つは、EUT からのエミッションの一部が その電磁環境に存在する強力な放送やその他の正当な無線送信器によって 圧倒されるかも知れないことである。 これは、通常は近傍界プローブや電流プローブにおいては問題とならない。 全てのラジオや EMC 測定用受信器、 そして最低の価格のものを除く全てのスペクトラム・アナライザは 復調出力 (家庭用ラジオ受信器の場合は、それはスピーカやヘッドホンである) を提供し、 これはその信号が EUT から来ているのかどうかを判断するために聞くのに便利である。 音声や音楽は放送局や携帯無線を示し、 テレックスやその他のデータ通信、テレビ映像チャネル、 そしてオフィス内の照明からの特徴的な雑音にはすぐに慣れるであろう。

あるエミッションが EUT によるものかどうかの判断が難しい場合には、 単にその電源を切る。 製品によっては待機状態においても相当のレベルの放射を生じるかも知れない (例えば AC モータのためのインバータ・ドライブ) ので、 EUT から全ての主電源や直流電源を実際に取り除く必要があるかも知れない。 そして、もしその測定されたエミッションがなくなり、 EUT の電源を印加し直した時にのみ復活するならば、 それが環境雑音でないことは明らかである。 時には、そのエミッションと環境雑音信号との弁別のために、 EUT 電源を何回かオン/オフすることが必要となるかも知れない。

アナライザや測定用受信器、あるいはそれらの試験ソフトウェアの一部は、 ある程度の助けとなる「A - B」機能 ――環境雑音キャンセルと呼ばれることもある―― を持っている。 そのアイデアは、EUT のスイッチを切って測定を行なってそれを B として保存し、 その後に同一の測定を EUT のスイッチを入れて行なってそれを A として保存することである。 「A - B」は、測定されたそれぞれの周波数において、 EUT のエミッションと環境雑音の和からその環境雑音を差し引き、 EUT のエミッションのみを残すことを意味する。 これは良いように聞こえるものの、この方法は著しい限界を持つ: それは環境雑音の変化や「ポップアップ」に対処せず、 EUT のエミッションが環境雑音と同一の周波数で生じている場合には不正確である。 「ポップアップ」はランダムな環境雑音信号 ――しばしば VHF 帯における―― であり、大抵は可搬型や移動式の無線送信器によって引き起こされる。

地下の駐車場や倉庫は、郊外 (文明化から遠いほど良い) と同様、 アンテナを用いた試験のためのより静かな RF 環境を持ち得る。 Celestica は、 Cheshire の地下数百メートルの古い塩坑に OATS を設けることで成功した。

Figure 11 環境雑音問題のある「開放型」試験サイトのさらに一般化している代替は、 「閉鎖型」サイト ――基本的には、通常の環境から遮蔽された、管理された電磁環境を持つもの―― である。 環境雑音による干渉の量の抑制のために普通の金属のシールド・ルームを使うことができ、 これは作るのが難し過ぎず、購入も非常に高価なものではない。 導電性の布で作られた遮蔽テント (Figure 11 を参照) は非常に高価ではなく、 使わない時には畳んでおき、また新しい場所に容易に移動させられる。

どのようなシールド・ルームにおいても、 どのような大きさの隙間も持たない連続した金属面があることが極めて重要であり、 これは扉や換気を困難にする。 その部屋に出入りする全ての主電源や信号を適切にフィルタし、 それらのフィルタを部屋の金属の壁に直接接続することも極めて重要である。 シールド・ルームの製作の最も難しい点は、 シールド・ルームを台無しにしないように、導電性ガスケットを持つ、金属の、 あるいは金属で内張りされた扉を作ることであると言うことは正しい。 完成品の遮蔽された扉と枠を専門の製造業者から購入することがほとんど常に最良である。

残念ながら、単なる金属の部屋や遮蔽テントは極めて強い内部反射の影響を受け、 RF 共振の上昇を与える。 後述するモード撹拌テクニックはこれらの共振を良い効果のために用いるが、 その他のシールド・ルームの共振は大きな測定誤差を生じる: 30dB の誤差は珍しくない。

RF 吸収材は、このような共振の振幅を低減する良い方法である。 吸収材には2つの種類がある: 大抵はカーボン混合発泡材で作られた大きな楔や厚板、 そしてフェライト・タイル。 発泡材で作られた楔は軽量であるが大きな空間を占め、 火災に際しては深刻な有毒な煙の危険を持ち得る。 フェライト・タイルは非常に重く、 ほとんどの並の金属の部屋は多数のものの重量を支えることができない (そして、もし天井が落ちれば深刻な危害を与え得る) であろう。 このいずれも高価であるので、 安く上げるためにはそれらを賢く配置することが助けとなる。 EMC コンサルタントやシールド・ルーム設計者の一部は、 最良の費用効果のためには吸収材をどこに取り付けるべきかを計算するための 複雑なソフトウェアを使っている。

多くの EMC テスト・ラボは、典型的には、OATS で全面的な適合性試験を行なう前に、 EUT によって放射される周波数を同定するためにシールド・ルームを用いている。 これは、厄介な環境雑音信号の同定を除くことによって、時間の節約を助ける。

しかし、スキル、経験、そして部屋の共振に対する一定の知識があれば、 吸収材を僅かだけしか、あるいは全く持たない単なる金属の部屋でさえも、 開発/診断/品質保証作業のために非常に有用となり得る。

Figure 12 悪化しつつある周囲環境は、遮蔽されたテスト・サイトを 予備適合性試験や全面的な適合性試験のためにさらに魅力的なものとしているが、 良い NSA を持つシールド・ルームは多量の RF 吸収材 ――通常は全ての壁面、扉、そして天井を完全に覆う―― を必要とする。 楔形吸収材の大きな寸法やフェライト・タイルの大きな重量は、 良い NSA を持つシールド・ルームは、 通常は最初から設計する必要があることを意味する。 吸収材で内張りされたグランド・プレーンを持つ部屋は半無響室と呼ばれ、 Figure 12 は SEQAL のそのような部屋の非常に大きな例の写真である。

企業が放射性イミュニティ試験 (このシリーズの第4部を参照) のために 全無響室 (吸収材が床にもあるもの) を購入している場合には、 それを放射性エミッションの予備適合性試験のためにも使用できる。 大地面からの反射がない場合には高さのスキャンの必要がないので試験時間は節約されるが、 放射性エミッションの限度線は 6dB 下げなければならない。

Figure 13 モード撹拌 (stirred-mode) 試験は、 放射性のエミッションとイミュニティの試験の双方のための 興味深い可能性の1つである。 これは、周囲の共振モードを「撹拌」するために モータで駆動される大きな金属のパドルを持つ、 吸収材を全く持たない単なる金属の部屋を使用する。 これらのパドルは、その無作為化のプロセスを最大化するために、 互いに異なった角度の不規則な形状とされている。 このアイデアは、そのパドルが 1回転するあいだに、EUT とアンテナは それぞれの異なった周波数における共振のピークに遭遇するであろうというものである。 アンテナを EUT に向ける必要さえない。

ここ 10年間に、モード撹拌 (stirred-mode)、 及びモード同調 (mode-tuned) チャンバー (反響チャンバーと呼ばれることもある) に対する多くの研究が行なわれており、多数の文書が入手可能である [12] [13]。 モード撹拌チャンバーに関する記事や論文は数学的なものとなる傾向がある ――[13] はその構成に関する情報を含んでいるものの―― が、 鍵となる点は低周波で正確な結果を与えるためには それらのチャンバーは非常に大きくなければならないことである。 DERA の大きなモード撹拌チャンバー (Figure 13) は、 下は 80MHz まで平坦であると見なされている。 しかし、大きなモード撹拌チャンバーでさえも、 典型的な全無響や半無響のものよりも遥かに低コストであろうし、 それでも低周波において有用な (正確さは劣るものの) 結果を与える。 (非常に強力な、あるいは高価な RF 電力増幅器を必要としないことから、 それらは放射性イミュニティ試験の費用も節約する。) 試験方法が極端に異なることから、 予備適合性試験でのモード撹拌テクニックの使用に対する充分な信頼を得るためには、 「ゴールデン・プロダクト」試験 (1.9章) が必要である。 「モード同調」は、これも使用できるかも知れない、関連するテクニックである。

今では、多くの製造業者が、 放射性エミッション測定のための遮蔽された試験用セルを提供している。 それらの内部空間はシールド・ルームよりも遥かに小さく、 従って測定の再現性のためには どのようなケーブルを束ねて引き回す方法もさらに重要なものとなる。 最も一般的な種類のセルは GTEM であり、 そのエミッション測定のための使用は [14] で述べられている。 この手法のユーザー間での情報交換や議論の促進のための GTEM ユーザー・グループが存在している。

今では、多くの製造業者から、小さな部屋から卓上の寸法のものにわたる大きさの、 様々なエミッション試験用セルが入手可能である。 GTEM と同様、それらのどのセルについても、 全面的な適合性試験との相関に関連する信頼の問題は、 開発/試験/品質保証試験 ――予備適合性試験から全面的な適合性試験まで―― でさらに重要になっている。

この信頼を得るための「ゴールデン・プロダクト」 (1.9章) の使用における問題の1つは、 OATS のための正しい配置は、 選択されたセルで使用可能な空間内には実際に収まらないかも知れないことである。 全く同一の本物の電子ユニットとケーブルのままで、 同一のバージョンのソフトウェアを同一の方法で実行する、 修正された「ゴールデン・プロダクト」を作る必要があるだろう。 OATS とセルとのあいだでの結果の違いは、 少なくとも異なったケーブルの配置によって生じるであろうが、 ある期間にわたる製品のテクノロジーを用いた比較は、 ユニットとケーブルをセル内に配置する方法を、さらに 測定の違いの理解とセル測定の信頼へと導く筈のその他の試験手続きをもたらすであろう。

1.11 システムや設備のオン・サイト試験

システムや設備は、自ずと大きいものとなる傾向があり、 その稼働場所で構築された時にのみ機能する実体となるので、 システムや設備のテスト・ラボにおける試験はしばしば完全に非実際的なものとなる。

大半のシステムや設備における EMC 問題の主因は 比較的小さい電子モジュールやそれらを含むキャビネット、 そしてそれらの接続ケーブルであると言われており、 従って大抵はこれらは所定の EMC テスト・サイトで試験できる。 例えば、30MHz 以上の放射性エミッションの試験のためには、 そのケーブルが何百メートルもの長さとなるかも知れない 最終的な設備を代表する結果を得るために必要なのは、 4m の長さのケーブルだけである。

もし、最終的な設備を代表するような方法でセットアップして試験され、 その後にそれらが試験された方法を代表するような方法で設置されたならば、 ラボでの試験とサイト試験の良い相関を達成でき、 オン・サイト試験を不要とさえするかも知れない。 勿論、この記事の他の場所で見たように、EMC 試験における時間と金の節約は、 捨てられるだけの時間や金を持っている時よりも EMC に関して賢くなることを必要とし、 [15] はこれを助けるであろう。

専用の試験サイトでどのように EMC 試験を行なうかを解説する 充分な量の情報 (適用できる国際規格を含む) が入手できるが、 オン・サイト試験の特別な要求をカバーするために書かれたものは遥かに少ない。 EMC テスト・ラボの一部はオン・サイト試験を専門としており、 (少なくとも EU 適合性のためには) 企業がオン・サイト EMC 試験を彼ら自身で行なうべきでない理由はないものの、 彼らのサービスを日割で、あるいは行なうべき試験によって借りることができる。

Figure 14 オン・サイト試験の問題はテスト・サイトが理想的でない場合の予備適合性試験と同一であり、 例えば Figure 14 は明らかにある種の大きな金属のキャビネットのためには近すぎる バイログを用いたサイト試験を示している。 残念ながら、「ゴールデン・プロダクト」試験 (1.9章) の選択肢は 大抵はシステムや設備のためには実際的ではないが、 反射の可能性の注意と適切な試験は試験結果全体に対する信頼を与え得る。 オン・サイト試験に関するより詳しいことは、[15] の Chapter 10 を読まれたい。

テスト・サイトで試験されていないシステムの適合性を示すために in-situ 試験を使えるかどうかには、いくらかの議論がある。 EN 55011 (CISPR 11) は、明示的に次のように言明している: 「ある機器に関して、テスト・サイトではなく使用する場所で測定された測定結果は その設備のみに関係付けねばならず、 他のいかなる設備を代表するものと見倣してもならず、 従って統計的評価の目的で用いてはならない。」

対照的に、CISPR 16-2 は、あるシステムが3つ以上の代表的な場所で試験されたならば、 それらの結果は適合性の判断の目的のために 類似のシステムを持つ全てのサイトの代表と見倣して良いことを示唆している。 US FCC 規則も類似の条件を持っている。 しかし、いずれにしても、 技術構成ファイル (TCF) ルートによる EMC 指令への適合のためには、 選択した Competent Body が同意するならば、 製造業者は彼が望むどのようなオン・サイト試験についても TCF に書くことができる。

1.12 全面的な適合性試験

あなたの製品を規格に書かれている通りに正確に試験する ――予備適合性試験と区別して「全面的な適合性」試験と呼ぶ―― つもりであるならば、考慮すべき3つの点がある。 それらは:

試験機器については既に述べており、 伝導性エミッションに関する以降の記事で再びカバーされるであろう。 ([15] の Chapter 10 の試験機器に関する章も参照。)

1.12.1 テスト・サイト

完全に適合したテスト・サイトは、 EUT の位置と測定用アンテナのあいだを超えて広がるグランド・プレーン、 EUT を回転させ、 かつそれをプレーンから 80cm 上 ――卓上型の装置の場合―― に保持する手段、 そして、水平と垂直の偏波とするとともに、 アンテナを 1〜4m の高さでスキャンできるようにするマストを含む。 商業環境向け規格は、3m、10m、そして 30m の3つの測定距離を許しているが、 最後のものは実際にはごく稀にしか使われず、ここでは検討しない。 CISPR 22 では、測定距離は EUT の境界からアンテナの基準点で取られる。 グランド・プレーンは、 実際の大地の材質 (湿った、あるいは乾燥した土、コンクリートなど) と無関係な予測可能な結果を保証するために用いられるが、 それはその試験手続きに複雑性をもたらす。

Figure 15 適合の目的で使用できるテスト・サイトを使用できないものから区別するパラメータは、 正規化サイト・アッテネーション (NSA) と呼ばれる。 これは、EUT の位置から測定用アンテナの位置のアッテネーションの測定結果である。 CISPR 16-1 や CISPR 22 を含む CISPR 規格は、 異なった測定距離とアンテナの偏波のための理論的な NSA と周波数の対応表を含んでいる。 あなたのテスト・サイトで測定された NSA はその理論値と比較され、 その違いが 4dB 未満であれば、そのサイトは適合の目的で使用できる。 Figure 15 は 3m と 10m の距離のための理論的な NSA 曲線を示す。

あなたが予期するであろうように、3m の測定距離は 10m よりも低い損失を示す。 水平と垂直の偏波のあいだの差は、グランド・プレーンからの反射の影響による。

理論的には単純であるものの、NSA の測定は簡単な手続きではない。 信号発生器から測定用受信器までの損失は、2つの条件で測定される ―― そのサイト内のそれらに対応する位置にある2つのアンテナを介して一度、 そしてアンテナへのケーブルを互いに直結して一度。 NSA は、これらの測定値の差から、 双方のアンテナのアンテナ係数を差し引いたものとなる。 CISPR の基準は、測定器の不確かさについて 3dB を、 サイトそのものの変動に関して 1dB のみを許容している。 うまく作られたサイトはこの要求を満足できるが、 測定の不適切さに対する極めて僅かな余裕しかない。 特に問題なのは、使用されるアンテナが、 自由空間のためにではなく、NSA 測定の特定の状況のために 校正されていなければならないことである。 これらの2つの条件のあいだでのアンテナ係数の差は、 それ以外の点では満足なサイトの結果を台無しにするのに全く充分なものとなり得る。

厳密に言えば、測定された NSA は、 ±4dB の余裕を超えているテスト・サイトの結果を修正するための 「補正係数」としては使用できない。 これは、それが2つのアンテナのあいだの そのサイト内での特定の場所における人為的なアッテネーションにのみ関係するためである。 EUT と測定アンテナとのあいだのアッテネーションは、 それらの2つのあいだの電磁結合や EUT の放射特性がアンテナのそれと異なることから、 同じ場所においてさえも大きく異なったものとなるかも知れない。 NSA は、校正としてではなく、 あなたのサイトの品質の指標として適合性の目的で用いられる。

歴史的に、CISPR 規格は、外部からのいかなる反射も適切に管理されるように、 OATS を測定範囲から規定の距離内に障害物のないオープン・サイトとして述べている (Figure 9)。 航空機格納庫やバス・ガレージのような大きな建物も適切なものとなり得るものの、 大抵は、これは実際に屋外のサイトを意味するものと解釈されてきた。 勿論天候は問題であるが、OATS での最大の難点は環境無線信号の存在である。 これらは、産業活動やコンピュータ・ネットワークからの高帯域雑音と同様、 広域放送、ページャ、携帯電話、全ての種類の遠隔通信 ――エミッション限度が保護しようとしている信号そのもの―― を含む。 上で議論したように、エミッション測定からこれらを除去する信頼できる方法はなく、 同一の、あるいは近傍の周波数の環境雑音よりも低いレベルの EUT からのエミッションの満足な測定を行なうことはできない。 環境雑音の存在の元で測定を行なういくつかの代替手段が CISPR のドラフトで示されたが、 その適用範囲は限定されており、稀にしかうまくいかないであろう。 これらの理由から、測定環境から環境雑音を除去するために、 今日の大抵の全面的な適合性測定は半無響遮蔽室で実施されている。

資金とスペースに大きな余裕があるのでない限り、 CISPR の NSA 要求に適合する遮蔽室を 壁面や天井に吸収材を含めずに作ることはできないであろう。 これは、これらの5面からの反射が NSA フィギュアを著しく歪めるであろうためである。 典型的な小さい裸の遮蔽室 ――3m 試験範囲を丁度含められるだけのもの―― は、 実際の NSA が一部の周波数で 30dB を超えて変動し得るほど悪い反射を持つであろう。 そのような部屋で測定を行なうことは不可能である: 望み得る最良のことは、問題となるかも知れないエミッション周波数を同定し、 オープン・サイトにおいてこれらを個々に測定することである。 代替手段は、その壁面や天井を反射を抑制する 吸収材 (フェライト・タイルやピラミッド形カーボン混合発泡材) で覆い、 その部屋を測定に使用できるようにすることである。

最近の 10年間の吸収材技術の発展によって、 今は 4dB NSA 基準を満たす「コンパクト」な半無響遮蔽チャンバーを作れる (低コストではないが) ようになった。 それでさえも、吸収材の不完全性のためにその性能は真のオープン・サイトよりも悪く、 この受け入れのために、 CISPR は単なる単一の位置のものではなく「空間的」 NSA 特性を要求している。 5つの NSA 測定 ――EUT が占める領域の中央、左、右、前、及び後ろ―― が必要であり、 受け入れ可能なサイトのためにはその全てが理論的な値の 4dB 以内になければならない。 これは容易ではないが、不可能な要求ではない。 あなたのチャンバーでそれが管理されていないならば、 内部で EUT の予備スキャンを行ない、 問題となる周波数のみを外部の適合した OATS で1つづつ測定するのが全く合理的である。

1.12.2 試験手続き

最良の機器や設備も、適合性試験を正しい方法で行なわないならば役に立たない。 手続きの自動化は部分的にのみ可能である ―― 試験技術者のスキルに大きく依存する。

オーバーライディング要求は、 EUT からの最悪条件のエミッション・レベルを見付けて測定したことを 保証するためであることを憶えておくこと。 これは、あなたが様々な要因を扱わねばならないことを意味する:

電子製品の大多数は放射アンテナとして意図的に設計されたものではなく、 偶発的にそのように振る舞うだけである。 従って、あなたは最大の放射の方向を知らず、 それぞれの周波数でそのユニットの周囲全体を確認しなければならない。 EUT のコンポーネントや外部のいかなる導電性構造物 ――特にケーブル―― の配置も そのパターンを変え、ある配置はそれを最大とするであろうが、 通常は事前にこれを予測することはできない ―― ケーブルの偏波をアンテナの偏波と一致させることは意味があるだろうというのは 見込みのある賭けであるが。

EUT が間欠的な機能を持つならば最大のエミッションは時間によっても変わりそうであり、 それは厳密な組み立て状態や動作状態にも依存して変わるかも知れない。 予備適合性試験の良い論拠の1つは、 全面的な適合性試験に備えて最悪条件の組み立てや動作のパラメータをあらかじめ決定し、 全面的な適合性試験のセットアップで これらのパラメータを探すために費す時間を節約することである。

CISPR 測定手続きは、水平と垂直の双方のアンテナ偏波、 そしてグランド・プレーン反射の相殺効果を除去するための 1〜4m (3m、及び 10m の試験距離について) のアンテナの昇降の 最悪条件の結果を得るという要求を含んでいる。 (見掛けに反して、 昇降は EUT からの垂直方向のエミッションを検出することを意図していない。) 標準的な CISPR 試験のためには、測定は、 30〜1000MHz (おそらくは近い将来に拡大される) の全周波数範囲を 120kHz の固定の帯域でカバーしなければならない。 周波数の刻み、それぞれの周波数に留まる時間、測定帯域、検波器の応答時間、 そして EUT のエミッションの周期は全て関係を持ち、 結局はこれらの関係が試験にどの程度の時間を要するかを決定する。

Figure 16 これらの要素全てを考慮した上で、 大抵のテスト・ラボの標準的なプラクティスとなっている 典型的な全面的な適合性測定手続きを Figure 16 に示す。 これは、環境の問題を除去するために半無響チャンバー内において、 高速な尖頭値検波器 ――これは、(少なくとも理論的には) 常に QP 検波器よりも高い値を出す―― で一連の初期スキャンを行なうことによって、総測定時間を最適化する。 これらのスキャンは、安心するためには限度値に近すぎる、 さらに調査を必要とする周波数の表を生成する。 その後、これらの周波数のそれぞれは、適合するサイトにおいて、 昇降、回転、そして偏波の変更によって値を最大としながら、 低速な QP 検波器を用いて測定される。 肝心な点は、最終試験のための周波数の表は、 関係する全てのエミッションを含まなければならないことである。 もし欠けているものがある ――例えばスキャンが速すぎ、あるいは方向の範囲が不充分であったために―― とすれば、この手法は無価値となる。 他のものと同程度に試験技術者のスキルと適格性を必要とするのはこの点である。

1.13 参考文献


Eur Ing Keith Armstrong, C.Eng MIEE MIEEE
Partner, Cherry Clough Consultants, Associate of EMC-UK
Phone: 01457 871 605, Fax: 01457 820 145, Email: keith.armstrong@cherryclough.com
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Tim Williams, C.Eng MIEE
Director, Elmac Services, Associate of EMC-UK
Phone: 01243 533 361, Fax: 01243 790 535, Email: elmactimw@cix.compulink.co.uk
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これは、 EMC+Compliance Journal 上で発表された文書を、 その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。 この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。 これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.ne.jp (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: 2004-10-30