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EMC 試験 ―― Part 3: ファスト・トランジェント・バースト、サージ、静電気放電

by Keith Armstrong and Tim Williams

翻訳: T. Sato


これは、欧州 EMC 指令でカバーされる機器のための 「Do-It-Yourself」の電磁環境両立性 (EMC) 試験テクニックに関する 隔月の7回のシリーズの記事の3番目のものである。 このシリーズは試験方法全体 ――開発や障害検出の目的での簡単な試験から、 最小コストの EMC 確認、様々な程度の精度での「予備適合性試験」、 大きなシステムや設備のためのオン・サイト試験、 そして試験認証機関の要求を満たせる規定通りの適合性試験まで―― をカバーするであろう

勿論、5000人の組織にとって低コストであるものは、 50人の組織はかなり高価なものであると考えるかも知れず、 1人だけのものにとっては高価すぎるものとなるかも知れないが、 ここでは誰もとり残されないように可能なコストの全範囲をカバーするつもりである。 もしあなたが EMC 試験の費用を節約したいと思い、 あるいは不適合の製品を販売していることに気付く可能性を減らしたいと思うのであれば、 あなたはより賢くなり、またより熟達しなければならないことを憶えておくこと。 低コスト、低リスク、そして低 EMC スキルを同時に求めることはできない。

このシリーズは、管理や法的な問題 (例えば、EMC 指令への適合の保証のためにどの程度の試験を行なうべきか) はカバーしない。 これは、EMC 試験を実際にどのように実施するかを充分に詳細に述べもしない。 遥かに多くの情報は、試験規格そのもの、 そしてこれらの記事の最後に付けられた参考文献から入手できる。

これらの7個の記事でカバーされるトピックは:

  1. 放射性エミッション
  2. 伝導性エミッション
  3. ファスト・トランジェント・バースト、サージ、静電気放電
  4. 放射性イミュニティ
  5. 伝導性イミュニティ
  6. 低周波磁界 (エミッション、及びイミュニティ)、 主電源のディップとドロップアウト、高調波、フリッカ
  7. 主電源高調波電流、電圧変動、フリッカ、及び突入電流、 そしてその他の試験

3 ファスト・トランジェント・バースト、サージ、静電気放電

このシリーズの第0部 [1] は、以下のものを含む、 実施されるかも知れない様々な種類の EMC 試験について述べた:

そして、第0部は、第三者テスト・ラボを用いる際に どうやって最大の価値を得るかも述べた。

このシリーズのこのパートは、典型的な住居/商業/工業環境向け EN 規格に対する 伝導性イミュニティの試験に焦点を当てる。 自動車、航空宇宙、鉄道、海上、そして軍事環境のための EMC 規格では、 他の種類のイミュニティ試験が要求されるかも知れない。 例えば、自動車環境における伝導性のトランジェントやサージ (スパーク点火式内燃機関、バッテリーを充電するオルタネータの駆動) は、ISO 7637 [2] に示されるように、 230V/415V 主電源に接続された建物で典型的なものとは著しく異なったものとなり得る。 これらの産業は、大抵は信頼性上の理由のために、 彼ら自身の特定の種類の干渉に基づいた 彼ら自身の試験規格を何年にもわたって作ってきた。

安全上の重要な注意: これらの試験の一部には、電気的に危険な導体 (例えば主電源)、 及び/もしくは危険な電圧やエネルギーが関係する。 これらの試験は危険なものとなり得るので、 全ての適切な危険防止策が取られなければならない。 どのような危険防止策が必要であるか確信がないならば、専門家に尋ねること。

ここで述べる EN 基本規格の試験方法は、通常は IEC 基本規格の試験方法と同一 (例えば、EN 61000-4-4 は IEC 61000-4-4 と同一) であるので、 この記事は EU 外の EMC 規定が適用される場合にも有用かも知れない。

3.1 標準化されたイミュニティ試験と現実の信頼性

これらの3つのイミュニティ試験は、再現可能な試験を達成しようとして、 慎重に規定された発生器 ――慎重に規定された波形を持つ―― と 試験セットアップを用いている。 この試験が、期待されるかも知れないほど 再現可能なものではないことを示す多くの経験があり、 この改善のために規格は継続的に発展させられている (これについては [3] を読まれたい)。

しかし、これらの規格が 現実の電磁妨害を非常に良くシミュレートするとは限らないことに気付くことが重要である。 これらの試験で規定された波形は、 実際の応用で存在する妨害波形の正確なシミュレーションとなるものよりも、 試験所用計測器で費用効果良く再現可能な形で発生可能であるものを反映する傾向がある。

Figure 3C 例えば、ファスト・トランジェント・バースト試験は 普通の AC 主電源スイッチやリレー接点が開く際の 「シャワリング・アーク」によって生じる妨害のシミュレートを狙っている。 その主電源ケーブル (そして負荷) のインダクタンスは 電流が遮断された瞬間にフライバック電圧を生じ、 そのフライバック電圧は接点のエア・ギャップを降伏させて アークを生じるのに充分になるまで上昇する。 アークが止まった時、再びフライバックが生じ、 この時には接点はやや遠くまで離れている。 そのため、スイッチやリレーの接点が開いていく際に発生するトランジェントは、 低い振幅と高い周波数 (MHz となり得る) で始まり、 接点ギャップの拡大につれて振幅が上昇して周波数が低下して、 Figure 3A のように見えることがある。 これを、Figure 3C の、一定の振幅と周波数 (5kHz) を用いる 標準的な EN 61000-4-2 試験の波形と比較されたい。

これらの規格を満足するように設計された製品が、 これらの妨害に耐えることをそれほど、あるいは全く考えずに設計され、 また試験が行なわれていないものよりも、 (全てを同一として) 通常はより信頼できるであろうと言うことは正しい。 しかし、これらの規格を満足することは、 これらの3つの規格で代表された妨害に伴う 現場での誤りや故障の心配がないことを保証しない

例えば、EMC 指令の元で整合化された一般規格やその他のイミュニティ規格のほとんどで、 大抵は EN 61000-4-5 に従ったサージ試験が、 ライン間サージについては ±1kV、 ライン ― 接地間サージについては ±2kV のレベルで要求されている。 しかし、欧州や米国において、 典型的な市街地の建物の主電源が 6kV のライン ― 接地間サージを 少なくとも年に一度は受けるであろうことは良く知られている (そして、いくつかの雷防護規格で認められている)。 これは、直撃でなく、その地域における通常の雷雲活動によって引き起こされ、 電子機器の保護のために設計された雷防護システムを持たない建物に印加される。 主電源が架空線で運ばれる郊外の建物は、その架空線の長さに依存して、 年に数十回から数百回に達する 6kV サージを経験すると考えられる。

6kV という値は、 典型的な家庭用主電源ソケットの背面の接続がこの電圧の前後で絶縁破壊し、 スパーク・ギャップ式サプレッサのように振る舞うことからきている。 主電源配電に大きな三相主電源ソケットのみが取り付けられた三相電源を用いている 産業用施設内では、それらのソケットの絶縁破壊電圧が高くなることから、 ライン ― 接地間サージは 6kV を遥かに超えるかも知れない。 主電源配線が低品質の絶縁を持つ建物において 最大サージ電圧が遥かに低くなり得るのは皮肉である ―― これは、その低品質の配線によって作られる 意図的でないスパーク・ギャップ による (これは火災の危険も持つ)。

著者の一人は、欧州で広く用いられた電源モジュールの 高すぎる故障率を経験したことがある。 これは、スイッチング用パワー FET のゲートへの配線と接地されたシャーシとの間の 沿面距離と空間距離が 5kV 以上 (EN 61000-4-5 波形で試験した時) においては 不充分であったという事実によるものだったことがわかった。 これらのモジュールは明らかに EMC 指令の元に整合化されたイミュニティ規格全てに合格したであろうが、 欧州や米国の大抵の市街の屋内の環境で 少なくとも年に一度は故障することはほぼ確実であった。

もう1つの例は、静電気放電 (ESD) に関係している。 EMC 指令整合イミュニティ規格で求められている試験規格は EN 61000-4-2 であるが、 これは人体放電 (例えば、人々の指や鍵などからの) のみをカバーしている。 様々な現実の負荷インピーダンスに対する実際の人体 ESD 事象の シミュレーションの正確さについての疑問は別としても、 それは、備品や機械による ESD のような、 現実の応用では極めて重要かも知れない他の種類の ESD 事象は扱おうとさえしていない。 ある種の産業、特に絶縁性のシート (紙、プラスチック・フィルムなど)、 気体、粉体 (例えば小麦粉)、あるいは液体が取り扱われている場合には、 機械 ESD は極めて激しいものとなり得る。 プラスチックのベアリングを用いているモーターでさえも、 その回転子と固定子のあいだで激しい ESD 事象を生じ得る。 機械 ESD 問題に関しては、応用と同じほど多くの ESD 波形があり得る。

従って、信頼できる製品を作ることを望むのであれば、 行なわれる EMC イミュニティ作業は EMC 指令の標準的なイミュニティ試験の先へと進むべきである:

信頼できる製品を作ることに対する経済的な報いは、極めて大きいものとなり得る ―― UK のある製造業者が、 彼らの製品を最新の EMC 指令イミュニティ規格に適合させるために 10万ポンドを費し、 その後にその直接的な結果として 保証コストが 270万ポンド減少していることがわかった時に気付いたように。

3.2 試験機器の借用は Do-It-Yourself のために最良の方法かも知れない

このシリーズの第1部 [1] や 第2部 [4] で述べたエミッション試験と異なり、 これらの3つの試験のために代替の試験発生器を用いることは、 (そのような試験は製品の信頼性の改善のために価値があるかも知れないものの) 正式な規格に対する適合性試験に合格するであろうといういかなる確信も与えられない。

多くのレンタル会社が、ファスト・トランジェント・バースト、サージ、 あるいは ESD 試験を正しく行なうために必要な校正済みの試験機器をストックしており、 それを日、週、あるいは月の単位で貸し出すであろう。 これらの試験を妥当な正確さと最小のコストで実施する最も容易な方法は、 その機器を借りて試験を自分で行なうことであることも多い。

これらの試験のための試験セットアップは 特殊な試験用チャンバーや開放型サイトを必要とせず、 高々グランド・プレーンと木のテーブル程度であるので、 典型的な製造会社内での達成が困難なものではない。 EMC テスト・ラボは、しばしば これらの試験を金属製貨物コンテナや低コストなシールド・ルームの中で行なうが、 これは近くで行なわれているかも知れない他の EMC 試験に対する その試験の干渉を防止するためである。 近傍に非常に敏感なものが何もないならば、そのような注意は必要ない。

借用した試験機器は、充分なスキルと細部にわたる注意の元に、 これらの3つのイミュニティ試験に関する全面的な適合性試験のためにすぐに使用できる。

3.3 複合試験機器

Figure 3B いくつかの EMC 試験機器製造業者が、複合イミュニティ試験機器を供給している。 典型的な例は、EN 61000-4-2、-4、及び -5 のための オプションとアクセサリが指定された場合で 9,000ポンドのオーダーの価格となる、 Figure 3B に示すユニットである。

場所、重量、そして費用の節約の手段として、 これらの複合試験機器はあなた自身の構内で適合性試験を実施するための 素晴らしい方法の1つである。 もし試験機器を頻繁に、あるいは長期間借りていることに気付いたならば、 その試験機器を直ちに購入する価値があるかどうかを判断するために 2年間での費用分析を行なうことは良い考えである。

3.4 中古の試験機器の購入

一部のレンタル会社は数年後にレンタル機器の売却を行なっており、 中古の試験機器はその他の多数の供給源からも入手可能である。 中古品の購入における期限内の校正証明書は、 最初の校正を行なうための高価な修理の可能性を低くするというだけのためでも、 充分に価値がある。

中古のイミュニティ試験機器を買う際には、使う必要があるバージョンの規格の 試験を行なえることを確認することが極めて重要である。 試験機器の一部は、 関係するイミュニティ規格の最新版に適合する試験を実施できないことから、 中古でのみ入手可能である。 そのような機器は適合している試験機器よりも安価な筈であり、 金の余裕がない場合の予備調査のためには依然として有用であるかも知れない。

3.5 ファスト・トランジェント・バースト

3.5.1 標準的な試験の詳細

Figure 3C
Figure 3D
Figure 3E
ファスト・トランジェント・バースト (fast transient burst; FTB) 試験 【訳註 ― EFT (電気的ファスト・トランジェント)、 あるいは EFT/B と略されることも多い】 は、普通の AC 主電源スイッチやリレー接点が開く際に、 その電流経路内の誘導性エネルギー蓄積部によって生じるフライバック電圧による 「シャワリング・アーク」によって引き起こされる妨害のシミュレートを狙っている。 Figure 3C は EN 61000-4-4 FTB 試験の標準波形を示す。 それは、それぞれ 15ms で終わるバーストとして 5kHz のレートで繰り返される単方向インパルスの、 毎秒 3回のバーストから成る。 Figure 3D はこの波形発生器の基本回路を、 そして Figure 3E は標準的な試験セットアップを示す。 これらの3つの図は、いずれも EN 61000-4-4 規格から作られた。

FTB 試験を実施しようと思う全ての者は、 適切な版の基本試験規格 EN 61000-4-4 のコピーを持ち、 必要とする試験精度のために必要なだけ、 あるいは彼らの試験機器で達成できるだけ、 それにしっかりと従うべきである。

AC や DC の電源ケーブルには、 規定された結合/減結合回路網 (CDN) を介してバーストが直接注入される。 市販の FTB 試験機器にはこの CDN が組み込まれているが、 EN 61000-4-4 の指示と回路に従って作ることもできる。

信号やデータのケーブルには、 規定された容量性クランプを介してバーストが注入される。 これらのクランプは、EN 61000-4-4 の Figure 5 の詳細な構造図に従って、 ありふれた材料を用いて容易に作れる。 クランプは、標準のクランプと同等の静電容量 (100pF) を生じる、 1m の長さに巻き付けられたテープや導電箔で置き換えることもできる。 絶縁台上の 1m の長さのシールド「ジッパーチューブ」は、 クランプの簡単な代替となり得る。

クランプやそれに相当するものの 1m の長さが長すぎる場合には、 等価な静電容量を与える限りは代替手段 ――発生器の出力をディスクリートの 100pF のコンデンサ (高耐圧セラミック) を介してケーブルの遮蔽や信号の端子に直接接続するというものも含めて―― を使うことができる。 分布結合の欠如のため、これらの代替手段 (特にディスクリートのコンデンサ) は 標準的なクランプ法とは異なった結果を与える傾向があるので、 注意して、また 1m のクランプが使えない場合にのみ使うべきである。

信号やデータのケーブルの試験の際には、容量性クランプが方向性を持たず、 その試験セットアップで使われたどの補助機器も そのケーブルの FTB に曝されることに注意すること。 EUT の反応を正しく測定できるようにするためには、 補助機器にはサプレッション・テクニック (ケーブルをシールド・ルームの壁面の隔壁取り付け型フィルタ、 及び/もしくはクリップ式フェライト・ケーブル・サプレッサに通すなどの) を適用する必要があるかも知れない。 容量性フィルタは、その信号ケーブルが、結合させられた FTB を 実際の応用でそうなるであろうように受けるのを妨げるかも知れないので、 チョークやフェライトに基づいたサプレッサが望ましい。

3.5.2 全面的に適合した FTB 試験

EN 61000-4-4 規格は、基本的には3つのものから成っている: バースト発生器の記述、試験レイアウトの記述、そして試験手順の指示。 規定されたバースト波形は Figure 3C で見た。 これは 50Ω 負荷で校正されるが、勿論、 実際の試験負荷は EUT に完全に依存するので 50Ω であるとは限らない。 従って、EUT に印加されるバーストの波形は異なっているかも知れず、 特に、異なった機種の適合した発生器の間で異なるかも知れない。 これは現在存在している規格で認識されている問題であり、 さらに多くの校正ステップを要求することによって これを改善しようとする改訂がすぐに発行されるであろう。 印加される試験レベルは、校正電圧ではなく 開放回路ピーク電圧で規定されていることにも注意されたい; この開放回路レベルは EUT に印加される電圧ではなく、 これは発生器の信号源インピーダンスと EUT の負荷インピーダンスの比率に依存する。

FTB は数百 MHz に達する周波数成分を含む広帯域現象であり、 従って、他の RF 試験と同様、再現性のためにはレイアウトが重要となる。 バーストの結合は、EUT のその周囲に対する浮遊容量に強く依存する。 レイアウト上、遵守しなければならない点は:

バーストの印加の手順は、一般には素直なものである ―― この規格は、それぞれの結合モードに対して少なくとも 1分を要求しており、 これは 300ms の繰り返し周期においては少なくとも 200回のバーストを意味する。 用いられる製品群規格や一般規格は、どのポートを試験するかを定めるであろう。 低い、あるいは高いレベルのサセブティビリティの確認のために そのレベルを変化させたいと思うかも知れないものの、 他の試験と対照的に、規定された試験レベルを印加する必要だけがある。 これは、クランプを適用する場合には、 ポート毎に 2分間 ――それぞれの極性で一度―― の試験のみを 必要とすることを意味する。

Figure 3F
Figure 3G
主電源の試験については、 これらの全てがグランド・プレーンを基準とした電圧で試験されるので、 バーストを給電線の全ての組み合わせに対して印加する可能性を持つ: L、N、E、L+N、L+E、N+E、及び L+N+E (単相の接地された電源の場合)。 この規格は単に結合/減結合回路網を介した結合の「例」を示しているだけであり、 いかなる特定の組み合わせも命じてはいない (Figure 3F、及び 3G を参照)。 少数の初期の製品群規格や一般規格は、 L+N+E のみへの印加を要求しているものと解釈できる、 「コモン・モード」の EFT バーストでの試験に言及していた。 イミュニティは往々にしてこれらの異なった印加モードのあいだで 著しく変化することから、適合性の観点からはこの問題は重要なものとなり得る。 実際の状況では結合はそれらのいずれか特定のものが支配的となり得るので、 一般的な規則として、我々は全ての独立な組み合わせで印加するように助言する。

3.5.3 オン・サイト試験

EN 61000-4-4 に対するオン・サイトでの FTB 試験は、 要求される比較的単純な試験セットアップ、試験機器の可搬性、 そして規格で適切な方法が述べられていることから、容易に実施できる。 [5] の Chapter 10 も、1m 四方の基準面を必要とする オン・サイト FTB 試験について述べている。 オン・サイト試験は、「規格」ルートを用いた製品の EMC 適合性の宣言にではなく、 ある設備が過敏でないことの証明に限定するのが最良である。 しかし、特に特定の設備のために意図された特注の機器については、 EMC Competent Body は、 EMC 適合性への技術構成ファイル (TCF) ルートに従う際に オン・サイト試験を受け入れるかも知れない。

Figure 3H Figure 3H は工業用キャビネットの主電源線のオン・サイト試験の例を示す。 この場合、発生器は規格で規定された 1m 四方の追加のプレーンを使っていないので、 その結果にはある程度の変動の増加が見込まれる。

標準的でない試験セットアップの変動は、過剰試験、例えば 該当するイミュニティ規格で要求されたレベルの倍までで試験することによって、 ある程度オフセットさせられるかも知れない。 勿論、その標準的でない試験方法はそれを既にさらに厳しい試験としているかも知れず、 試験レベルを上げることは極めて厳しい試験とし、 製品の過剰設計へと導くかも知れない。 これは、標準的な試験方法から逸脱する際に支払う代価の一部である。

3.5.4 代替の FTB 発生器

安全上の重要な注意: 決して、安全でない試験方法を用い、あるいは電気的な危険を犯さないこと。 もし電気的安全性に関する完全な訓練を受けていないならば、 そうしている (そして試験に合格した) 人を呼ぶこと。

Figure 3J 世界中の会社には極めて様々な種類の シャワリング・アーク・シミュレータが存在しており、 それらの一部は使用が極めて危険である。 かつて好まれていた、 基本的な電気安全上の注意が為されている限り完全に安全なものは、 Figure 3J に示す「チャタリング・リレー」試験である。

チャタリング・リレーは、放射性、及び/もしくは伝導性の妨害を発生させるために、 様々な方法で使用できる。 それが充分な耐電圧を持つ安全絶縁変圧器 (あるいはフローティングの直流電源) から給電されているならば、 コイルの下側は基準面 (あるいはその他の導体) に接続でき、 コイルの上側 (リレー接点に接続されている節点) は 高耐圧セラミック・コンデンサを介して任意の導体に接続できる。 これは、トランジェントをライン間 (すなわち差動) やそれぞれのラインと接地の間で、 そして全てのラインと接地の間 (同相) で発生させられるようにするだろう。

チャタリング・リレーの一般的な代替の1つは、電気ベルである。 試験技術者に対する近くの同僚による物理的な傷害のリスクを避けるために、 実際のベル・ドームは常に取り除くべきである (それを出しているのが自分である場合には、騒音はそれほど迷惑ではない)。 電気ベルは、大抵は、周波数を上げ (振幅は低下する)、 あるいは周波数を下げる (振幅は増加する) ように リレー接点ギャップを調整できるという利点を持つ ―― リレーでは大抵は行なえない調整である。

安全上の重要な注意: チャタリング・リレーや電気ベルからのスパークは 可燃性物質を容易に発火させられることを忘れないこと。

そのような簡単なトランジェント発生器は 正式な EN 61000-4-4 試験機器の極めて低コストな代替として使用できる。 特定の製品におけるそれらの有用性は、 ゴールデン・プロダクトの使用によって向上させられる (これについては [1] の 1.9章を参照)。 その後、それらは、生産における品質保証試験や、 同一の回路技術と正確に同一の IC を用いた変種や新製品の試験のために 有用となるかも知れない。 代替の IC が使われ、 あるいは設計 (ソフトウェアを含む) に何らかの点で大きな変更が行なわれたならば、 「正式」な FTB 試験との相関は失われ、 新たなゴールデン・プロダクトで再構築することが必要となるであろう。

しかし、上の 3.1章で述べたように、 標準的な EN 61000-4-4 試験より、 自家製のトランジェント試験の方が 製品の現実の動作環境をより良く代表するかも知れない。 そのような場合には、 その試験回路 (例えば、10kW モーターと ON/OFF コンタクタ) のセットアップや EUT との物理的な関係 (近さ、同一の電源への接続など) は 現実の状況にできる限り近付けるべきである。 モーターのような回転式デバイスの場合、 その回転部に蓄積されたエネルギーは スイッチ・オフの際に電源に注入される トランジェントやサージに著しく影響し得るので、 モーターに加速や減速に充分な時間を許すような方法で リレーやコンタクタが動作するのがベターである。

EMC 指令に対する適合性を「規格ルート」を用いて自己宣言する際には、 動作環境をシミュレートして信頼性の達成を助けるために チャタリング・リレーや類似の試験を行なったとしても、 将来の告訴の可能性を避けるため、 依然として EN 61000-4-4 に対して試験する (そして合格する) のが最良である。

しかし、技術構成ファイル (TCF) ルートに従う場合には、 あなたが行なった試験がその製品が持ち込まれる環境を代表しており、 それに加えて EN 61000-4-4 を適用する必要はないと Competent Body を説得することが可能であるかも知れない。 これは、可搬型の製品や様々な設備で使用され得る機器ではなく、 既知の設備向けの特注設計の産業用機器のためにのみ可能である可能性が高い。

3.6 サージ

Figure 3K サージ試験は、 AC 電源や何らかの長いケーブルへの雷の影響のシミュレートを意図している。 「長いケーブル」は、大抵は、 それら自身が何メートルも離れた異なった機器の間の 10m よりも長い金属による相互接続、 あるいは屋外のケーブルを意味するものと考えられる。

Figure 3K は EN 61000-4-5 サージ試験の標準波形を示す。 これは、その「コンビネーション波形」という俗称を生んだ、同時に2つの波形 ――開放回路に対する 1.2/50μs 電圧インパルス、 及び短絡回路に対する 8/20μs 電流インパルス―― で規定された単発の単方向インパルスである。 通信用ケーブル (建物から出るもの) の試験のための標準サージ波形は、 10μs の立上り時間と 700μs の立下り時間の、大体似た波形を持つ。 主電源入力の試験に際しては、サージは 主電源波形サイクル中のゼロ・クロスとピーク全てに印加される (正、あるいは負の電圧として)。 サージ防護デバイス (SPD) の過熱の防止のため、 それぞれのインパルスの間に時間を置くことが認められる。

Figure 3L
Figure 3M
Figure 3L はサージ波形発生器の基本回路を示し、 Figure 3M は標準的な試験セットアップを示す。 これらの3つの図は、いずれも EN 61000-4-5 規格から直接取られた。

サージ試験を実施しようと思う全ての者は、 適切な版の基本試験規格 EN 61000-4-4 のコピーを持ち、 必要とする試験精度のために必要なだけ、それにしっかりと従うべきである。

サージ試験の周波数スペクトラムは FTB や ESD 試験におけるものよりも遥かに低く、 その試験セットアップは基準を必要としない (勿論、それは接地を必要とするが、普通の線による接地接続が使えるであろう)。 しかし、サージ電流はキロ・アンペアに達する可能性があり、 発生器と被試験装置の間の配線は頑丈なものでなければならないことに注意すること。

安全上の重要な注意: EN 61000-4-5 サージ試験の瞬時電力と総エネルギーは実に大きいものとなり得る ―― 電子デバイスを爆発させ、 著しく暴力的な灼熱する断片の放出を引き起こすのに充分である。 この理由から、サージ試験は第三者を確実に排除した場所でのみ実施すべきであり、 全てのオペレータやその他の立ち会い人の全身は 最低限でも丈夫なアクリルやその他のプラスチック板で保護すべきである。 電気火災のために適切な充填済みの消火器も手元に置いておくべきであり、 試験場所全体と EUT のための主電源遮断器の位置も知り、 すぐにアクセスできるようにしておくべきである。

3.6.1 全面的に適合した試験

サージ波形の低い周波数スペクトラム成分のため、 サージ試験はこの記事で述べた他の試験よりもレイアウトの違いに寛容であり、 規格はこれに関してかなり緩和されている。 EUT と結合/減結合回路網とのあいだのケーブルの長さは 2m 以下であるべきである。 それ以外には、レイアウトには何の制約もない。

適合する発生器を短絡回路と開放回路の負荷で校正した際には、 その出力には Figure 3K で示したサージ波形が現れる筈である。 主電源用結合/減結合回路網を通した波形も校正され、 その回路網に影響されないようにされねばならないが、 信号線のための結合デバイスについてはこの要求は除かれている。 信号線用結合回路網は、 印加されるサージのエネルギーを大幅に低減する 40Ω の直列抵抗を含んでいる。 主電源への結合のためには、 発生器はそれぞれの相とのあいだの 18μF のコンデンサを介して直接接続されるが、 ライン ― 接地間の印加は 10Ω の抵抗と 9μF のコンデンサを通して行なわれる。 これは、発生器の 2Ω の実効信号源インピーダンスから取り出し得る 最大のエネルギーは、 実際には相間にのみ印加されることを意味する。

侵襲的なものとならざるを得ないことから、信号線への結合は問題となり得る; この試験のためにはクランプ式のデバイスは使用できない。 しかし、それに接続される 0.5μF のコンデンサに影響されるであろう信号線のためには、 その代わりにガス放電管 (サージ・アレスタ) 結合を用いることが許容される。 規格では、反対側の端が接地され、誘導を生じないように束ねられた 20m の長さのケーブルの片端で EUT に直接結合させることにより、 サージが実効的にシールドに沿った長さ方向に印加される、 シールド線のための別の方法が示されている。 この試験は、ケーブル・シールドを流れる電流が数百アンペアとなるように、 直列抵抗なしで実施される。

Figure 3N 合意された試験計画がそれを変えるかも知れないが、 この試験手順は以下の手順を踏むことを必要とする (Figure 3N を参照):

どれだけのパルスが充分であるかの特定のガイダンスを何ら与えない 最後のものを無視すれば、 レベル 4まで試験される三相電源におけるこの要求の最悪条件の解釈は、 セットアップや試験の進行の時間を含めずに、 単一の完全な試験が 16時間を要するであろうことを暗示する。 テスト・ラボは、彼らの顧客がこれを好まないであろうことを知っており、 大抵はこれらの手順全てに厳格に従わないようにいくつかの近道が取られる。 これは、その規格がもたらす様々な解釈が、 試験の厳しさの程度の相違をもたらし得ることを意味する。

「全ての低いレベルが満足されねばならない」ことの論拠は、 多くの種類のサージ・サプレッサの挙動が サージ電圧の値が低い時と高い時とで異なる傾向があることである。 高いレベルに遭遇した時に降伏して印加された電圧を制限するサプレッサは、 低い電圧ではそうしないかも知れず、 あるいは少なくとも異なった挙動を示すかも知れない。 最悪条件は、組み込まれた抑制デバイスの降伏電圧の僅かに下となり得る。 同様に、サージが主電源サイクル中の異なった時に発生した際に、 EUT の反応は回路の動作やサプレッサの挙動のために変わり得る。 例えば、ゼロ・クロスを見ているフィルタされていない回路は、 サイクルの正のピークで負のサージが発生した時には望ましくない反応を示すだろう。 これらの様々な条件における EUT の挙動に充分な自信がない限り、 可能な限り広範囲の変動に対して試験を行なう意味がある。 これが予備適合性試験のメリットである: 妥当な時間を要する制限された組の試験に信頼を持てるように、 全面的な適合性試験のための試験プランを告げるため。

3.6.2 オン・サイト試験

EN 61000-4-5 に対するオン・サイトでのサージ試験は、 要求される比較的単純な試験セットアップ、試験機器の可搬性、 そして基準面やシールド・ルームが要求されないという事実から、 極めて容易に実施できる。 EN 61000-4-5 の Annex B は、 何らかの規制に対する適合性ではなく設備における信頼性の証明を推奨する、 「システム・レベル試験」と呼ばれるものを述べている。 しかし、EMC 適合性への技術構成ファイル (TCF) ルートに従う場合、 特に特定の設備のために意図された特注の機器については、 オン・サイト試験を受け入れることで EMC Competent Body と合意できるかも知れない。

3.6.3 代替のサージ試験発生器

サージ試験発生器に関係する 決定的に致命的なものとなる電圧、蓄積電荷、そしてエネルギーのため、 (高圧機器の安全な設計に極めて熟達しており、 EN 61010-1 のような安全規格を全面的に適用するのでない限りは) これを自作することは薦められない。 従って、ここでは自作のための回路の例は示さない。

大きな誘導性負荷がスイッチされた時、それが抱える蓄積エネルギーは、 単にそのスイッチ接点にいくらかのシャワリング・アークを生じるよりも 遥かに多くのことができる。 モーター、変圧器、そしてその他の誘導性電力デバイスの 崩壊していく磁界のエネルギーは、 開かれたスイッチ、リレー、あるいはコンタクタのアークによって その電源に大きなサージを送り込むことができる。 これは、標準的な EN 61000-4-5 試験が 意図された用途において製品が曝されるサージを代表しないかも知れない、 もう1つの例である。 誘導性負荷の崩壊に伴うサージは 雷誘導サージよりもかなり高速なものとなるかも知れず、 より多くのエネルギーを持つかも知れない。 10kW モーターと ON/OFF コンタクタの例は既に使われた。 そのような大きな誘導性負荷が主電源配電系の同一の分岐に接続されるかも知れず、 その設備で特別なサージ保護が適用されていないならば、 代表的なサージ発生源による試験は 現場での信頼性の向上と保証クレームの低減を助けるかも知れない。 (モーターの場合、 そのモーターが外部から給電されていない時に顕著な発電効率を持たない限りは、 その負荷の回転イナーシャは重要ではない。)

問題となる負荷の極端な例は、MRI スキャナで使われている超電導磁石である。 それらは kA 定格の電源からのチャージ・アップに数週間を要することがあり、 その磁界が破れた時には電源に、そしてアークを発生できるその他の任意の導体に、 1MJ 程度のサージを数マイクロ秒の間に戻し得る。 これは 1kV での EN 61000-4-5 主電源サージ試験のエネルギーよりも 約 10,000倍大きく、むしろ直撃雷のように構造金属材を破壊できるものである。 MRI スキャナの製造業者は、ほぼ確実に、 彼ら自身の製品の電子回路の保護のためだけにであっても、 これらのサージの吸収のために必要な手順を考えている筈である。

よりありふれたレベルでは、適切なサージ試験に合格させるための設計は、 雷雨の活動に伴う現場からの返送の低減のために極めて有用となり得る ―― UK においては深刻な問題となることは稀であるが、 そのような返送に対応することが困難なインフラストラクチャーの、 世界の他の一部では遥かにそうである。

3.7 静電気放電 (ESD)

Figure 3P
Figure 3R
Figure 3S
Figure 3T
ESD 試験は、摩擦帯電 ――大抵は、靴や着衣と、 床や棚などに用いられている異種の材料との擦り合わせに伴う―― によって高い電圧に帯電させられた人の指からの、 直接の、あるいは手で持った鍵やその他の金属製のものからの 放電の影響のシミュレートを意図している。

Figure 3P は、単発の単方向インパルスである、 EN 61000-4-2 ESD 試験の標準波形を示す。 Figure 3R は、ESD 発生器、あるいは ESD「ガン」の基本回路を、 そして Figure 3S は基本的なベンチ・テストのセットアップを示す。 これらの3つの図は、いずれも EN 61000-4-2 規格から作られた。

この種の人体 ESD 試験を実施しようと思う人は、 適切な版の基本試験規格 EN 61000-4-2 のコピーを持ち、 必要とする試験精度のために必要なだけ、 それにしっかりと従うべきである。 適合している ESD ガン ――その1つの例は Figure 3T に示す―― は簡単に借りられ、比較的素直に使用できる。

3.7.1 全面的に適合した試験

トランジェントの結合のモードが妥当に良く定義された、 上記の2種類の試験とは対照的に、 ESD 試験 ――規格に完全に従って行なったとしても―― は良くコントロールされない。 試験技術者のスキルと経験 ――特に試験箇所の選択と実際のストレスの印加における―― に多く依存する。

基本的なレイアウトは素直なものである。 EUT はグランド・プレーン上に置かれ、ESD 発生器もそこに戻される。 このグランド・プレーンは、 EUT や結合板を超えて少なくとも 0.5m は延びていなければならない ―― すなわち、EFT 試験のために要求されるものよりも大きい。 グランド還流リードは発生器と共に校正され、 これは試験で用いるものと正確に同一のリードであるべきである。 異なったリードは異なったインダクタンスを持ち、 これはその放電波形、特にその尾部を変える可能性がある。 このリードは、常に EUT やその他の構造物から (規格によれば、最小 0.2m)、 そして試験技術者の体から離すべきである。 グランド・プレーン上の EUT の分離距離は、EFT バースト試験と同様、 床置き型の機器では 10cm (この 10cm の距離は、フォーク・リフト用パレットの厚さと同一)、 卓上型の機器では 80cm である。 EUT の周囲には、少なくとも 1m のクリア・エリアがあるべきである。

卓上での試験のためには、EUT の真下に、それと絶縁された、 水平結合板 (horizontal coupling plane; HCP) として知られる第二のプレーンがある。 これは、グランド・プレーンに放電抵抗リードで接続される。 このリードの構造は重要である: その目的は、HCP を実際の放電に際しては分離するが、 その後で電荷が放電できるようにすることである。 リードの浮遊容量が HCP とグランド・プレーンの双方から分離されるように、 抵抗はリードの両端に取り付けられる。 その抵抗は印加される ESD 電圧ほぼ全てに耐えなければならないので、 それらはその表面を通したトラッキングを防ぐために充分に大きいべきである。 炭素体抵抗 (炭素皮膜や金属皮膜ではなく) は、この部品として良い。

EUT (卓上型のもの) は HCP 上にその面を HCP の縁から 10cm 離して置かれる。 必要であれば、ケーブルは HCP から垂れ下げられて試験場所から離れる。 実際には、この規格はこの点で弱い: 他の RF 試験と同様、 ケーブルのレイアウトや終端は試験結果に大きな違いを生じ得るのに、 それらが「設置プラクティスの代表」であるべきだと言っていることを除き、 EN 61000-4-2 はそれらをどのように扱うべきかについてほとんど何も言っていない。

この試験で従う手続きは、 接触放電、及び/もしくは気中放電の直接の印加、 そして結合板への接触による間接的な印加に分類される。 放電ガン自身は、接触放電と気中放電の双方を行なえる。 接触放電のためには、その尖ったチップ (先端) が試験箇所に接触させられ、 パルスを生成するためにユニット内のリレーが閉じられ、試験電圧をチップに印加する。 これは気中放電法におけるエア・ギャップの降伏に関係する変動を除去し、 導電性の面がアクセス可能である場合に優先される方法である。 しかし、もし EUT が放電があり得るかも知れない絶縁されている面を持つならば、 依然として丸いチップを用いた気中放電法も必要である。 好まれる点は、 その蔭に金属膜や金属部品があるかも知れないプラスチック筐体の開口部や継目、 そしてキー・キャップの間や窓の周囲の隙間である。

ESD ガンは試験される面に垂直に保持しなければならず、 これからのどのようなずれもガンの前面と EUT との間の浮遊容量に影響し、 これは変動の原因となる。 さらに、気中放電を行なう際には、ガンの取り扱いに自信を持つべきである。 この規格は、「チップは EUT に触れるまで 可能な限り速やかに (機械的な危険は生じさせずに) 接近させねばならない」 と言っている。 印加されるストレスは接近速度に大きく影響されるので、これは重要である。 揺らぎのある、慎重な接近は、放電毎のストレスの大きな変動をもたらすであろう。

垂直結合板、そして卓上型機器のための HCP への間接放電も、 全ての種類の製品のために実施しなければならない。 これは接触試験のみである ―― すなわち、気中放電チップは使われない。 それは近傍の導電性物体への放電の影響をシミュレートする。 良く絶縁された製品の場合、それは放電が実際に発生する唯一の試験となる。 多くの場合、これは直接放電よりもストレスの低いものであり、 良い製品はそれに影響されないであろうが、 試験を行なうまでそれを仮定することはできない。 この規格の Amendment 1 は ガンを EUT の面の中央の結合板の縁に保持すべきことを明確にするように この手法を変更しており、 これはオリジナルの規格の表現とは異なっている。 通常、4面全てを試験するために EUT を回転しなければならないだろう; これは、EUT のそれぞれの該当する面が HCP の縁から 10cm となることを 保証するよりも容易だろう。

実際の適合性試験の実施は、以下のように進められるべきである:

この試験は、その機器の通常の使用に際して 要員がアクセス可能な箇所や面でのみ要求される。 これは、潜在的に感受性を持つ箇所の一部を 直接試験する必要がないことを意味するかも知れない。 2000年 11月に発行された、この規格の Amendment 2 は、 アクセス可能な箇所が何を意味するのかの、より明確なガイダンスを与えている。 それは、非接地の EUT のための手続きも明確化している。 もし印加された電荷がパルスの間に EUT から放電できない ――例えば、外部接続を持たないために―― ならば、そのストレス電圧はそれぞれのパルスの印加の後で変化するであろう。 これは、印加されるストレスを低下させる ――同一の極性の連続した印加によって EUT の電圧が印加された電圧へと上昇する場合―― か、 あるいは上昇させる ――印加のあいだで極性が変えられた場合―― であろう。 これに対処するために、 EUT がその度にしっかりと放電されるようにする必要がある。 この Amendment は、それが試験結果に影響しないであろう限り、 試験に際して EUT に放電抵抗ケーブルを取り付けることを推奨している。 さもなくば、それぞれのパルスの後で放電用ブラシを当て、 あるいはエア・イオナイザを使うことができる。

根幹となる ESD 試験規格 IEC 61000-4-2 は 1995年頃からあり、 それはオリジナルの IEC 801-2:1991 からほとんど変更されていない。 それは時の試練にかなり良く耐えてきたが、 完全な改訂版の望みをもたらす充分な経験が得られた。 この版 (IEC 61000-4-2 第 2版) の最初のドラフトは 2001年 1月 5日に回覧された。 これは既存の規格の完全な書き直しである: ESD 試験や試験機器に関係する全ての人がそれを読むべきである。 主要な変更点は:

3.7.2 オン・サイト ESD 試験

EN 61000-4-2 に対するオン・サイトでの ESD 試験は、 要求される比較的単純な試験セットアップ、そして試験機器の高い可搬性 (例えば、Figure 3T に示す ESD 「ガン」はバッテリー電源であり、 1つの使用中にもう1つを充電できるように予備のバッテリー・パックが付いている) から、極めて容易に実施できる。 さらに、EN 61000-4-2 の 7.2章と Figure 7 は、 非常に持ち運びやすい 0.3×2m の基準面の追加を要求するだけの、 「設置後の試験」と呼ばれるものを述べている。 オン・サイト ESD 試験は、[5] の Chapter 10 でもかなり詳細に述べられている。

3.7.3 代替の ESD 試験発生器

Figure 3U Figure 3U は、かつて人気があった、 改造されたピエゾ式ガス・ライターを示す。 これは極めて安価 (数ポンド) に購入でき、 粗雑な ESD ガンを作るために容易に改造できる。 その出力波形は未知 (おそらく EN 61000-4-2 スタイルの校正治具を用いた校正はできるであろうが) であり、どのような ESD 試験でも 何もしないよりも遥かに良いという原理の元に働く。

代替の ESD 発生器は、 ガス/石油燃焼ボイラーのスパーク点火回路を用いて容易に作れる。 もう1つの代替手段は、 自動車用のイグニション・コイルと回路を使い、 単純な単安定で駆動されたパワー FET やリレーで コイルにエネルギーを供給することである。 テレビ・セットの回路、はしご形回路網、あるいはネオン・ランプ電源から 高電圧発生器を作ることも可能である。 いずれの場合でも、 EN 61000-4-2 の気中放電チップと合わせるための直径 8mm の半球状チップと共に、 慎重に絶縁された手持ち型プローブが必要である。 勿論、これらの異なった発生器全てが実に異なった特性を持つであろうし、 高電圧スパークの発生のために誘導性やピエゾ式のコンポーネントを直接使うものは、 典型的なデジタル回路で見られる破綻の多くを引き起こす、 正式な ESD 試験の極めて早い立上りエッジを達成しないであろう。

自家製の ESD ガンは、 「正式」な気中放電 ESD ガンでできるのと同じ方法でその出力電圧を管理できる: それを 1秒、あるいは内部の高圧発生器の能力によっては数分の 1秒 (自動車用スパーク発生器は 100Hz のスパーク・レートも可能な筈である) ごとにスパークを発生する、連続放電に設定する ―― そして、放電チップからターゲットへの距離を変える。 空気はおおよそ 1kV/mm で降伏するので、 4mm のギャップではおおよそ 4kV で、 15mm のギャップではおおよそ 15kV でスパークを生じる。

適合する ESD ガンと自家製のもののいずれを用いてでも、 そのガンを連続動作に設定し、 試験箇所を様々な試験電圧に曝すためにチップの距離を 2〜10mm で変えながら プローブ・チップを製品の表面に沿って動かすことにより、 若干の経験とともに、 あなたの製品の ESD への弱点を極めて速やかに探せるようになるだろう。

適合する ESD ガンの借用が低コストであり、 またその試験セットアップが極めて低コストであることから、 大抵の企業には、彼ら自身の ESD ガンを作って、 それらが過剰試験や不足試験とならないかを心配し、 あるいは単に彼らの製品に異なった試験を行なう理由はなさそうである。

しかし、規制適合性への何らかの関心のためではなく、 むしろ現場での信頼性を助けるものとして、 特定の産業プロセスからの放電のような実際の環境の脅威のシミュレートのための 自家製の ESD シミュレータが必要となるかも知れない。 そのようなシミュレータを作る際には、 帯電容量と放電経路のインピーダンスをある程度正確に得ることが重要 (おそらくは 50% 以内で充分) であり、 これは放電を生じる構造物 (ほとんど常に金属物体) のいくらかの測定と ある程度の経験的な算定を伴うかも知れない。 多くの電子回路は同じ電圧レベルの異なった極性のものに対して 異なった挙動を示し得るので、 往々にして放電の極性が重要となることに注意されたい。

安全上の重要な注意: EN 61000-4-2 ESD 発生器は危険ではない (ペースメーカーやその他の 埋め込み型や装着型の電子機器を付けている人には推奨されないものの) が、自家製の ESD 発生器は充分に致命的なものとなり得る。 EN 61010-1 は、ピークや直流で 15kV までの電圧は それが 45μC を超える放電を生じ得る場合には安全でないと見倣し、 15kV を超える電圧は 関係するエネルギーが 350mJ を超える場合には安全でないと言っており、 おそらくはこの安全規格のガイダンスに従い、 それらの限度を超えるならば 必要な全ての人体高電圧保護手段を取ることが賢明であろう。 45μC は 15kV で 3nF (あるいは、8kV で 5.6nF) という静電容量の最大値を暗示する。 15kV 以下で誘導的に発生させられた ESD については、 おそらく 350mJ の限度を適用するのが最も安全であろう。

3.8 イミュニティ試験に際しての不良の同定

3.8.1 試験機器

試みたことのある全ての人が気付いたように、普通の試験機器 (デジタル・マルチメータ、オシロスコープ、ロジック・アナライザなど) は、大抵はイミュニティ試験中はほとんど使いものにならない。 それらは、何が測定されているのかを告げることが困難となるほど その試験そのものによって動揺する; あるいは、そのプローブのインピーダンスが、 プローブされた回路にそれに異なった反応をさせるほど影響する。 もう1つの可能性は、プローブ自身が試験妨害の注入点として機能し、 回路の応答を遥かに悪くすることである。

少数の製造業者が、光ファイバーによって外部の測定器 (試験の影響から充分に離れた) に接続される超小型プローブを開発している。 この2つの種類は、[6] と [7] で述べられている。 この種のシステムで用いられている超小型プローブは、 場合によっては 1GHz を超える帯域での、 電圧、電流、そして局所的フィールド強度の測定のために開発された。

3.8.2 局所的イミュニティ試験

[1] で述べたような近傍磁界/電界プローブは、 イミュニティ試験における局所的な妨害源として使用できる。 [1] の自家製のプローブは そのような乱用に耐えられるほど頑丈である筈だが、 もし購入したプローブを使っているのであれば、それらを使う前に それらが計画した用途に対応できるかどうかを確認すること。

局所的なイミュニティ試験は、多数の方法で使用できる:

[1] の Figure 1、2、及び 4 で示した 近傍界プローブや電流プローブは、 FTB 発生器の出力に直接接続し、FTB 波形に対応した局所的な磁界や電界を (あるいは、[1] の Figure 4 で示したものの場合には、 磁界と電界を同時に) 発生させられる。 これらのプローブの使用の手順は、 局所的なエミッション源の検出のための使用と似ている ―― プローブは、最も敏感な領域が特定されるまで、製品の疑わしい領域にわたって、 デバイスや導体の極めて近くで慎重にスキャンされる。 [1] の Figure 5 で示した自家製の電流プローブや [4] の Figure 1 や 3 で示した 市販のトランスジューサは、 FTB 妨害を特定のケーブルに注入するためにも使用できる (しかし、市販のトランスジューサがそのような使用のための定格を持つかどうかは 常に確認すること)。

[1] の Figure 2 で示したものに似た「ピン・プローブ」は FTB 信号を導体やコンポーネントのリードに直接注入するために使用できるが、 高耐圧コンデンサ (例えば 100pF の) を使う必要があるだろう。 ある種の内部信号や PCB コンポーネントに それらを損傷させることなく注入するためには、 広帯域電力減衰器を取り付ける必要があるかも知れない。

発生器を低い試験レベルに設定して開始して、 顕著な反応が見つかるまでレベルを上げ、それを修正し、 そして次に敏感な領域が見つかるまで試験レベルを上げるのが普通である。 近傍界エミッション試験と同様、 顕著な反応を引き起こす全ての領域が 製品全体の「正式」な試験に関係するとは限らない。

局所的な ESD 試験は自家製の磁界プローブ (シールドされた、あるいはシールドされていないもの) や 電流プローブを用いて行なうこともできる。 しかし、1kΩ 程度の高耐圧放電抵抗を含むように改造されない限りは、 電界プローブやピン・プローブは単に ESD 電圧まで充電され、 それが放電されるまでは役立たずになるだろう。 通常の BNC (あるいは N 型) コネクタの使用における問題は、 それらが ESD 発生器と接続できず、 またいずれにしてもおそらくは 4kV 程度で弧絡を起こすであろうことである。 ESD ガンの出力に直接差し込めるコネクタを持つ新しいプローブ (多分、予備の放電チップを改造した) を作った方が良いであろう。

改造されたガス・ライターや 自動車用スパーク・プラグによる ESD 発生器を使っているならば、 手持ち型のプローブ・システムを作るために それらに直接取り付けられる磁界ループ・プローブや電界プローブを作ることは 全く素直なものであろう。

FTB と ESD の双方の問題は、伝導した電圧や電流、 あるいは放射されて誘起されたフィールドによって起こり得る。 異なった種類の局所的なプローブや試験方法は 異なった局面をシミュレートするであろうし、 問題の原因が既知でない (あるいは少なくとも疑わしい) ならば、 適当な種類のプローブ全てを使う必要があるかも知れない。

局所的なサージ試験を行なうことは推奨されない。 いずれにしても、 不良箇所は往々にして焦げや外観が損傷したコンポーネントによって、 あるいは製品内でスパークが発生している位置を探すことによって見付けられる (常に対爆シールドを使うことを忘れないこと ―― サージ試験に際して、あなたの体、特に眼を、製品のどの部分にも曝さないこと) ので、通常はそれは必要ない。 サージ試験での不良の大半は、 FTB や ESD において普通な高周波誘導性/放射性結合ではなく、 伝導性低周波過電圧によって生じ、 従って弱い領域は大抵は回路図や製品の内部構造やプリント板のレイアウトから 容易に見付けられる。 6kV サージでの弧絡の防止のために必要な沿面距離と空間距離は、 清浄な PCB 面上で、10mm を超え得る。

参考文献


Eur Ing Keith Armstrong, C.Eng MIEE MIEEE
Partner, Cherry Clough Consultants, Associate of EMC-UK
Phone: 01457 871 605, Fax: 01457 820 145, Email: keith.armstrong@cherryclough.com
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Tim Williams, C.Eng MIEE
Director, Elmac Services, Associate of EMC-UK
Phone: 01243 533 361, Fax: 01243 790 535, Email: elmactimw@cix.compulink.co.uk
http://www.elmac.co.uk


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これは、 EMC+Compliance Journal 上で発表された文書を、 その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。 この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。 これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.ne.jp (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: 2004-11-13