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EMC 試験 ―― Part 7: 主電源高調波電流、電圧変動、フリッカ、及び突入電流、 そしてその他の試験

by Keith Armstrong and Tim Williams

翻訳: T. Sato


これは、欧州 EMC 指令でカバーされる機器のための 「Do-It-Yourself」の電磁環境両立性 (EMC) 試験テクニックに関する 隔月の7回のシリーズの記事の7番目で最後のものである。 このシリーズは試験方法全体 ――開発や障害検出の目的での簡単な試験から、 最小コストの EMC 確認、様々な程度の精度での「予備適合性試験」、 大きなシステムや設備のためのオン・サイト試験、 そして試験認証機関の要求を満たせる規定通りの適合性試験まで―― をカバーするであろう。

勿論、5000人の組織にとって低コストであるものは、 50人の組織はかなり高価なものであると考えるかも知れず、 1人だけのものにとっては高価すぎるものとなるかも知れないが、 ここでは誰もとり残されないように可能なコストの全範囲をカバーするつもりである。 もしあなたが EMC 試験の費用を節約したいと思い、 あるいは不適合の製品を販売していることに気付く可能性を減らしたいと思うのであれば、 あなたはより賢くなり、またより熟達しなければならないことを憶えておくこと。 低コスト、低リスク、そして低 EMC スキルを同時に求めることはできない。

このシリーズは、管理や法的な問題 (例えば、EMC 指令への適合の保証のためにどの程度の試験を行なうべきか) はカバーしない。 これは、EMC 試験を実際にどのように実施するかを充分に詳細に述べもしない。 遥かに多くの情報は、試験規格そのもの、 そしてこれらの記事の最後に付けられた参考文献から入手できる。

これらの7個の記事でカバーされるトピックは:

  1. 放射性エミッション
  2. 伝導性エミッション
  3. ファスト・トランジェント・バースト、サージ、静電気放電
  4. 放射性イミュニティ
  5. 伝導性イミュニティ
  6. 低周波磁界 (エミッション、及びイミュニティ)、 主電源のディップとドロップアウト、高調波、フリッカ
  7. 主電源高調波電流、電圧変動、フリッカ、及び突入電流、 そしてその他の試験

7 主電源高調波電流、電圧変動、フリッカ、及び突入電流、そしてその他の試験

このシリーズの第0部 [1] は、以下のものを含む、 実施されるかも知れない様々な種類の EMC 試験について述べた:

そして、第0部は、第三者テスト・ラボを用いる際に どうやって最大の価値を得るかも述べた。

この、シリーズの最後のパートでは、主電源への 高調波電流、電圧変動、フリッカ、及び突入電流のエミッションに焦点を当てる。 これらのための規格、EN 61000-3-2 [2] 及び EN 61000-3-3 [3] は、 その適用範囲内の電気装置 (手短に言えば: 多くの例外はあるが、 一般低電圧電源に接続される 16A/相までを消費する装置) に対して義務化されている。

これらは「水平」EMC 規格 ――これは、それらが機器の種類や、 いかなる一般/製品群規格とも無関係に適用されることを意味する―― であり、ここ数年間の多くの議論 (米国の製造業者の大きなコンソーシアムによる クリントン大統領への直接の陳情を含む) の対象となってきた。 この議論は、EN 61000-3-2 に対する Amendment A14:2000 [4] の 駆け込みでの発行という結果となった。 大抵の製造業者は A14 の適用を望むであろうが、 それは 2003年末までは選択可能なままとなる。 この議論や、これらの規格の適用範囲、適応性、そして免除については この記事では述べない。

自動車、航空宇宙、宇宙、鉄道、海上、そして軍事環境のためには、 他の種類のイミュニティ試験が要求されるかも知れない。 これらの産業界、そしてその他の産業界は、大抵は信頼性上の理由のために、 彼ら自身の特定の種類の干渉に基づいた 彼ら自身のイミュニティ試験規格を何年にもわたって作ってきた。

安全上の重要な注意: これらの試験には主電源が関係し、著しい安全上の危険を与える。 全ての適切な危険防止策を講じなければならない。 安全衛生規則でどのような危険防止策を講じることが要求されているかを知らないならば、 その資格がある人に尋ねること。

EN と IEC には多少の違いがあるかも知れない (特に EN 61000-3-2 と IEC 61000-3-2 の最新の Amendment のあいだ) ものの、 ここで述べる EN 基本規格の試験方法は IEC 基本規格の試験方法と似ている (例えば、EN 61000-3-3 ≒ IEC 61000-3-3) ので、 この記事は EU 外の EMC 要求が適用される場合にも有用かも知れない。 その EN と IEC のあいだの違いについては、ここでは述べない。

7.1 全面的に適合した主電源高調波エミッション試験

この章は、[5] の Chapter 3 に基づいている。

機器への AC 電源入力電流の高調波成分は、 入力電圧の 1サイクル内での負荷の非線形性によってもたらされる。 EMC 指令は、16A/相までの入力電流の全ての電気/電子機器をカバーし、 以前の EN 60555-2 (これはより限定された適用範囲を持っていた) に置き換わる EN 61000-3-2 で具体化された、 高調波エミッションの測定の要求を含んでいる。

高調波周波数範囲は 2kHz (50Hz の 40次高調波) まで広がっているだけであり、 従ってその試験は RF 測定テクニックの使用を必要としないものの、 その測定に関する完全に明白ではないいくつかの点がある。 FFT 分析ソフトウェア、電流トランスジューサ、及びオシロスコープ以上のものなしに 完全に適切な確認を行なえる可能性があるものの、 特にそれが限度値に近く、あるいは高調波に変動がある場合には、 適合する測定はより繁雑なものとなる。

7.1.1 機器

Figure 7A EN 61000-3-2 は測定方法を定義しており、 それぞれの試験機器が規定されている。

Figure 7A は基本的な測定法を示し、その基本的な構成要素は:


7.1.2 AC 電源供給源

要求される精度で高調波測定を行なうためには、 極めて低い歪み (すなわち、純粋な 50Hz 正弦波)、 高い電圧安定性と設定性、そして低インピーダンスの供給源が必要である。 一般に、商用電源はこれらの要求を満たすことはできず、 特別な供給源が必要となるだろう。

IEC 61000-3-2 は、 測定中はその電圧は選択されたレベルの ±2% 以内で安定していなければならず、 またその周波数は公称値の 0.5% 以内でなければならないと要求している。 その高調波歪みは、3次高調波は 0.9%、5次は 0.4%、7次は 0.3%、7次は 0.3%、 9次は 0.2%、他の全ては 0.1% 以内でなければならない。 主電源の有限な供給源インピーダンスと その配電系統内の他の負荷の非線形性と変動性のため、 ローカルな主電源がこれらの値に適合できる可能性は非常に低い。

測定用インピーダンス ZM は、 ピークで 0.15V 以内の電圧降下を生じるべきである。 供給源インピーダンスは規定されていないが、どの高調波周波数においても、 セットアップ全体で許容限度値の 5% を超える誤差は許されない。

これらの要求を満たすために、 典型的な試験機器は 50Hz 正弦波発振器で駆動される電力増幅器と、 出力インピーダンスを低く保つための負帰還を用いる。 その出力は昇圧のために電源変圧器を通して送っても良いが、 その変圧器のリアクタンスは 高次の高調波周波数での出力インピーダンスに影響してはならない。 全範囲の負荷を扱うためには、その増幅器は大きい必要があるだろう ―― あなたの製品群はそのレベルに近付かないかも知れず、 社内での使用のためにはより小さい増幅器で充分に良いかも知れないものの、 この規格は 230V で 3680W の電力レベルとなる 16A 定格の機器をカバーする。 高電力で歪みが大きい負荷のためには、 その「模範的」な AC 供給源は実現が極めて困難 (大きく、コストを要する) となる。

Figure 7B 一部の機器はこれを大幅に超えるかも知れないものの、 クラス B 機器のための最大許容過渡高調波を含めた 正当なピーク電流は 40A 程度となる可能性があり、 その供給源は歪みなしにこの電流レベルを供給できるべきである (Figure 7B を参照)。 もし測定された高調波が限度値を大幅に上回る、あるいは下回るならば、 電圧歪みは重大なことではないが、 ボーダーラインの場合には重要なこととなる。

7.1.3 電流トランスジューサ

電流トランスジューサは 高調波電流 In を測定器に結合させるものであり、 電流シャントと電流トランスのいずれかを使用できる。 いずれの場合でも、そのトランスジューサのインピーダンス ZM が 供給源出力インピーダンスに加わり、 その2つは共に負荷電流高調波構造に若干の変化を引き起こす筈である。 0.1Ω 以内のインピーダンスと 10μs 以内の時定数の 抵抗性電流シャントは受け入れられるが、 シャント自身は測定回路からの電気的絶縁を与えないことに注意されたい ―― 安全上の重要な考慮の対象である。

電流トランスは電気的絶縁を与え、 これは単一故障に際してさえも危険の発生を防止する、 必要な電気的強度定格 (この試験は、「voltage withstand」、「hi-pot」、 あるいは「flash test」と呼ばれることがある) と絶縁種別を持つべきである。 抵抗性電流シャントと異なり、 電流トランスはそれぞれの高調波周波数で校正する必要があり、 測定された電流が直流成分を含む場合には 飽和に伴って誤った結果を与えるかも知れない (これは、大抵は AC 電源で 2次、4次、6次といった偶数次高調波で電流が消費されることで示される)。

一定の値の測定における誤差は、許容限度値の 5% 以内でなければならない。 適合性のために、最小から最大の測定レベルでこの精度を維持することは、 電流トランスジューサとそれに関連する入力信号処理のダイナミック・レンジに 厳しい要求を与える。 製造業者によっては、2つのトランスジューサ ――1つは高電流、もう1つは低電流のための―― を使うことで この問題を回避している。

7.1.4 波形分析器

波形分析器は、2次から 40次までの 個々の高調波成分の振幅 In を測定する。 このオリジナルの規格によれば、それは 選択的フィルタやスペクトラム・アナライザを用いた周波数ドメインのものと、 離散フーリエ変換 (DFT) を行なうためにデジタル計算を用いる時間ドメイン式のものの いずれでも良い。 EN 61000-3-2 のオリジナルの版は、時間ドメイン計測器のための要求を 周波数ドメイン式のものとはやや異なって定義している。 しかし、Amendment A14 はこの規格のその要求を削除し、 高調波測定のための参照計測器を定義している仲間の規格である IEC 61000-4-7 のそれで置き換えた。 A14 は周波数ドメイン計測器を非合法化し、DFT 式のもののみを許す (しかし、実際には、全ての商用高調波分析器はいずれにしてもこの種のものである)。

測定を行なっているあいだに高調波成分が変動する場合には、 表示出力の応答は時定数 1.5秒の一次低域通過フィルタのものであるべきである。 IEC 61000-4-7 は 個別のデータ値に対してこの機能を実行する平滑化アルゴリズムの より限定的な詳細を含んでいる。

7.1.5 試験条件

テレビ受像器、オーディオ増幅器、VCR、照明機器、そして様々な家電品を含む、 ある種の機器のための特別な試験条件が、EN 61000-3-2 で与えられている。 独立した調光器やその他の位相制御式デバイスは、 90°の点弧角に設定すべきである。 情報技術機器は、その定格電流となるように構成された機器によって試験される。

オリジナルの版の EN 61000-3-2 は、 他の機器はユーザー制御部やプログラム・モードを それぞれの高調波成分に最大の高調波振幅を与えるように 順番に設定して動作させることを要求していた。 この文面に従えば、 この手続きは完全な試験のためには膨大な時間と労力を必要とするだろうし、 例えば 39次の高調波の最大のレベルを見付けることが 電力配電網の保護に寄与しそうにはないので、これはあまり分別のあることとは言えない。 A14 は、通常の動作条件の元で最大の総高調波電流を生じることが 予期されるモードで試験を行なうという、 より合理的な要求でこれを置き換えた。

7.1.6 機器の分類と限度値

Figure 7C
Figure 7D
このオリジナルの規格は、機器の4つのクラスを設けた:

「特殊な波形」は Figure 7C に示すようなエンベロープで定義され、 これは実質的には通常は半サイクルの 1/3 以下で電流を流す コンデンサ入力電源整流回路を区別する手段である。 高調波限度値は、クラス A については入力電力と無関係な絶対値として、 クラス D については入力電力に比例するスライド式の値の組として定められる。 Figure 7D はこれらの限度値を図式的に示す。 600W を超える入力定格の機器に関しては、 固定されているクラス A 限度値は入力電力が増えると比例的に厳しいものとなる。

7.1.7 クラス D 限度値の適用性

このクラス D の定義は、いくつかの問題を生じてきた。 もし EUT がクラス D となることが疑われるならば、 限度値を適用する前に、 試験機器は最初にその入力波形がクラス D の定義に入るかどうかを確認し、 また有効入力電力を決定しなければならない。 特にその電流、及び/もしくは高調波電流が変動している場合には、 使用すべき正しい入力電力を決めることは難しい。

この困難は、A14 で明確に扱われた。 クラス D は電力網に最大の影響を持つと見倣されている 特定の種類の機器の制約を意図しているので、 A14 はその定義を クラス D 限度値を適用しなければならない 特定の種類の製品を規定するように変更した。 それらは、以下のもので、 600W 以下の規定された電力 (次の章を参照) を持つものである:

その他のクラス B や C ではない機器全ては、クラス A と見倣される。 無期限で延期されている下限の 75W から 50W への移行の論争とともに、 クラス D の「特殊な波形」要求は実質的に議論から外された。

7.1.8 クラス D 限度値のための電力の基礎

クラス D 限度値は W 当たりの mA で与えられる。 A14 によれば、平均エミッションは、 全試験期間にわたる個々の観察時間ウィンドウ内の電力の最大の測定値に基づいて 限度値と比較される。 高調波電流と有効入力電力は同一の試験条件の元で測定されるが、 同時に測定する必要はない。

製造業者は、限度値を決定するための電力レベルを 限度値が突然変わる電力 (例えば 600W や 75W) に達しないように規定することが認められるが、 この規定された値は実測値の ±10% 以内になければならない。 このアプローチの目的は、 その境界付近で動作する機器の僅かに異なる条件での試験が 大きく異なった限度値を与えるかも知れない状況を防止することである。 この目的で規定された電力は、 安全上や機能上の目的での「定格」電力と同一である必要はない。

7.1.9 専門家向け機器

オリジナルの規格に存在している著しい緩和処置は、 1kW を超える電力の専門家向け機器には限度値を適用しない (より正確には、限度値は「検討中」である) ことである。 専門家向け機器は、 「商業、専門職、あるいは工業において使用される、公衆への販売を意図していない機器。 この指定は、その製造業者によって行なわれねばならない」 のように規定されている。 A14 は、もしその取扱説明書が 電力事業者に接続の許可を求めるようにという要求を含んでいるならば、 非適合の専門家向け機器の「特定の種類の低電圧電源」への接続を許すことによって、 これをさらに若干緩和した。

7.2 高調波とフリッカのための市販の試験機器

Figure 7E Figure 7E は、AC Compliance Series Ltd で使用されている、 1kW 主電源供給源を含めて完全なものとされた、 高調波/フリッカ・エミッション複合測定機器を示す。 この機器は、1700ポンド前後の価格で、 Thurlby-Thandar、EMV、そして Laplace Instruments から入手できる。 それは、(その供給源の定格以内の機器に対して) EN 61000-3-2:1995、EN 61000-3-2:1995 + A14:2000、 そして EN 61000-3-3:1995 のいずれかに全面的に適合する測定を提供する。

高調波やフリッカの測定のための EMC 試験機器を購入する際には、 その機器があなたの製品に該当するかも知れない 試験規格と Amendment (例えば A14)、 そして高調波/フリッカ基本規格 (それぞれ、IEC 61000-4-7、及び IEC 60868) に適合するかどうかを常に確認すること。 それを適合性の判定のために使用せず、 あるいはこのシリーズの第1部 [1] で述べた ゴールデン・プロダクト試験法を用いるならば、 規格の仕様に適合しない試験機器であっても受け入れられるかも知れない。

7.3 主電源高調波エミッションのための低コストな非適合の試験

いつもながら、多くの注意が払われなかったならば、 代替の試験方法や試験機器の使用は酷く不正確で誤解させる結果を与え得る。 該当する規格と関係する試験装置を充分に理解すること、 そしてあなたの手法や試験装置が その結果にどのように影響し得るかを理解することは必須である。

該当する規格に可能な限り従うこともほとんど常に極めて重要である。 試験機器が正しいものでないとしても、 試験セットアップと結果の解釈は規格に従うべきである。 [1] の 1.9章で述べた「ゴールデン・プロダクト」法も、 低コストな試験の結果の信頼の向上を大きく助け得る。

7.3.1 製作か購入かの決定

上で述べたように、主電源高調波の試験は RF 問題を何ら伴わず、 自前の試験装置の設計と製作を容易とする。 しかし、多数の試験機器製造業者が この種の機器の市場に様々な水準の価格や性能で参入しているので、 単に適当な機器を購入した方が費用効果が良い (そして、おそらくはより安全!) かも知れない。 高調波/フリッカ複合試験器も珍しくない (Figure 7E を参照)。

7.3.2 主電源供給源の代替

Figure 7E は、1kW 電源供給源の例 ――その上に HA1600 が置かれている AC1000―― を示している。 このユニットは 500ポンド程度の価格であり、 代替の波形分析器 (以下を参照) を使いたい場合には それ単体で使用できるものと考えられる。

スイッチ・モード電力変換器 (デジタル式電力増幅器)、 そして「対高調波注入式波形補正」テクニック (施設での主電源波形補正のために用いられている 「アクティブ高調波フィルタ」のような) の最近の発展は、 伝統的なリニア増幅器式供給源よりも安価な 50Hz 供給源をもたらすかも知れない。

勿論、通常の主電源が、 高調波電流エミッション試験のための供給源として使うために 充分にクリーンである可能性もある。 おそらく、専用の配電変圧器を持つ工場ビルで、 機械や HVAC (空調システム) が動作していない時に、 主電源が「最もクリーン」であることに気付くであろう。 蛍光灯を消すことも、波形をクリーンにすることを助けるかも知れない。 単相機器を試験する場合には、建物内のいずれかの相が 他のものよりも「クリーン」であることがわかるかも知れないので、 (勿論、全ての危険防止手段を講じながら) その相を使用する。

電動発電機は建物の電源から「クリーン」な正弦波を発生させられるし、 動力源がガソリン/ディーゼル・エンジンであれば 勿論完全に独立した電源を発生させられる。 妥当な電力定格を持つ無停電電源装置 (UPS) はかなりありふれたものであるが、 この目的のために適切な唯一のものは、「連続二重変換」式のもの、 あるいは主電源入力なしにバッテリーだけで動作している他の種類のものである。 中古の電動発電機や UPS は非常に手頃な価格で入手できるかも知れない。

電動発電機や UPS における潜在的に深刻な2つの問題は、 その出力波形の品質、そしてその出力インピーダンスである。 それらの一部は非常に良くない出力波形を持つし、 またそれらのほとんどは比較的高い出力インピーダンスを持ち、 これはその出力波形が EUT の非線形な電流消費によって 歪まされるであろうことを意味する。 このため、EUT の定格消費電力の 10倍、あるいはそれ以上の定格の 電動発電機や UPS を使用する必要があるかも知れない。 従って、EUT による負荷時の出力波形を必ず確認すること。

市販の「クリーン」な供給源を用いている場合であっても、 それが充分な品質の正弦波であり、EUT からの電流の需要が 波形の頭の潰れやその他の波形歪みを生じていないことを確認するために、 その主電源波形をオシロスコープ、 及び/もしくは電源品質分析器 (7.3.4章を参照) で 常に観察することは良い考えである。 使用する供給源の高調波歪みが EN 61000-3-2 の電源仕様に入る (あるいは充分に近い) ことを保証しようとすること ―― さもなくば、あなたは存在していない 高調波エミッション問題を治そうとしていることに気付くことになるかも知れない。

7.3.3 電流トランスジューサの代替

Figure 7F 自ずと平坦な周波数応答 (関心のある範囲内で) を持つことから、 抵抗性電流シャントは魅力的である。 しかし、それは電気的絶縁を提供せず、 その最大抵抗は EUT の回路にその高調波エミッションを著しく変えるほど影響しないように 0.1Ω に制限されている。 この低い抵抗は、EN 61000-3-2 限度値が最低となる高い周波数の高調波に対する 穏当な信号対雑音比 (S/N) の達成の困難をもたらす低い出力電圧を意味する。

Figure 7F は、抵抗性シャントを用いている時に 信号振幅を増加させて電気的絶縁を与えられるいくつかのテクニックを示す。 1:1 絶縁変圧器 (EN 61558 や EN 60950 の該当する部分に適合するもの) は 電気的絶縁を与えられ、昇圧絶縁変圧器は信号増幅も与えられる。 昇圧変圧器は、通常の降圧変圧器を「逆向き」にして使い、 低電圧の二次側をシャントの両側に接続し、 110V や 230V の一次側を波形分析器に接続することで作れる。 大抵の分析器で良い S/N を得るためには、 おそらくは 1:10 や 1:20 の比率が必要であろう ―― しかし、EUT の一次電流成分や所期スイッチ投入電流サージが 波形分析器の入力の過電圧損傷 (あるいは要員への安全上の危険) を引き起こすほど昇圧しないように注意すること。

昇圧変圧器は、それが 0.1Ω 電流シャント抵抗の精度に影響しないように、 相当に高インピーダンスの負荷とともに使わなければならない。 例えば、1:10 昇圧と 1% の許容差のシャントでは、 分析器側の負荷は 10kΩ 以上であるべきである。

電流シャントの出力のブーストのための 主電源変圧器の「逆向き」での使用における安全上の問題は、 典型的な主電源変圧器の二次側は主電源に対する絶縁 (3kV 前後の絶縁強度で試験された、二重絶縁や強化絶縁) を持たないかも知れないことである。 その場合には、あるいは確信がない場合には、 その代わりに2つの変圧器を直列にして使用できる: シャントに接続された 230V:230V 安全絶縁変圧器 (双方の巻線が主電源のための絶縁を持つ)、 そしてそれに接続された昇圧変圧器。 その代わりに、単相 EUT については、 その電源の片側が変電所や建物の受電部で保護接地に接続されている場合には、 昇圧変圧器を接地された側の線にのみ接続し、 その線と接地の間の電圧が低いことを時々確認することもできる。

電流シャントと変圧器や絶縁増幅器 (そしてその電源) は、 必ず、適切な警告サイン (「カバーを外す前に切り離すこと」など) の付けられた 保護接地された金属の箱で囲むこと ―― そして、その主電源に適切な定格のヒューズか過電流遮断器を 取り付けることを忘れないこと。 そのような試験機器を作る際に講じるべき危険防止手段は EN 61010-1 で詳細に述べられており、常にそれに全面的に従い、 その設計が安全であることを確認するために適切な試験を実施するべきである。

Figure 7F は絶縁増幅器法も示している。 いくつものアナログ IC 製造業者 (Linear Technology Corporation、Analog Devices、Burr-Brown など) が電気的に絶縁された測定のための専用の増幅器を製造している。 これらは、絶縁バリアを介して直流電源や信号を得るために 様々なテクニック (例えば、光学的、容量的、あるいは磁気的な) を用いている。 電流シャントは主電源に接続されているので、 適切な定格の絶縁が必要である。 最も安全なことは EN 61010-1 や EN 60950 に適合する絶縁を持つ増幅器を使うことであるが、 それを見付けることは難しいかも知れず、 その絶縁バリアの両側での 3kV 程度の絶縁強度と二重絶縁 (あるいは強化絶縁) を保証しているもので 済ませなければならないかも知れない。 もし電流シャントが中性導体に入れられており、 中性導体が保護接地に対して低い電圧を持つことが確実であるならば、 その絶縁要求は下げられるかも知れないが、これは推奨しない。

絶縁を内蔵している IC を購入する代わりに、自前のものを設計できる。 例えば、短い光ファイバー (あるいは二重絶縁を持つ 3kV 定格のフォトカプラ) への LED を駆動するために電圧 ― 周波数変換を使用し、 その後で波形分析器のために周波数から電圧へ逆変換することができる。 主電源側のための直流電源は、バッテリー、 あるいは 3kV 絶縁 (二重絶縁) の DC/DC コンバータ、 あるいは主電源をその直流出力の基準とした使用のための定格と安全認証を持つ 独立した直流電源装置から得られる。 自前の絶縁増幅器の製作に関するより多くのアイデアは、 [7] や [8] を参照されたい。 しかし、安全に関係する全てに関して EN 61010-1 や EN 60950 に従うことを忘れず、また何も仮定しないこと。

抵抗性電流シャントは平坦な周波数応答を持つものの、 変圧器や増幅器が含められた場合の総合的な応答はそこまで良くないかも知れず、 複数の周波数での校正が必要かどうかを確認すべきである。

Figure 7G
Figure 7H
電流トランス・テクニックは、出力のための巻線を持つトロイド・コアを用いる。 測定すべき電流を運ぶ導体は、単にトロイドの中に通される。 クリップ式電流トランス (しばしば「電流クランプ」、あるいは「電流プローブ」と呼ばれる) を作るためには、分割トロイド・コアを使用できる。 Figure 7G は Pearson Electronics Inc. 製の電流トランスのいくつかの例を、 Figure 7H では Fluke や Tektronix 製のクリップ式電流プローブを示す。

ホール効果技術は、直流から 2kHz、あるいはそれよりも上まで応答する 電流センサを作るために使用できる。 実際のホール効果デバイスは、 電流トランスの場合と同様に電流を運ぶ導体が通される トロイド・コアのギャップに置かれる。 そのコアは、その上に巻線も持ち、 小さい電子回路が被試験電流に比例した電流か電圧を出力するかも知れない。 ソリッドなトロイド・コアのもの (例えば LEM-HEME から) や、 クリップ式での使用のための分割コアのものが入手可能である。 Figure 7H に示した Tektronix A622 プローブはホール効果式のものである。

校正: 購入したトランスジューサには、校正係数が、 あるいはそれが周波数によって変動するならば校正チャートが付いている筈である。 しかし、それがない (あるいは、トランスジューサを自作した) ならば、 それを既知の周波数の既知の電流を通すことによって校正できる。 これは、正弦波発生器からの信号をオーディオ電力増幅器で増幅して 精密電力抵抗を駆動することによって容易に達成できる (精密抵抗を過熱させないように注意すること)。 様々な周波数に設定された信号発生器による試験は、 その校正が周波数によってどのように変化するかを測定する (もし変動するならば)。 そのトランスジューサの校正係数が 実際の電流レベルで変動しないことを確認するのも良い考えである。 電流トランスジューサの校正データはその「トランスジューサ係数」であり、 それで得られた生の測定結果を正確な結果を得るために補正するために 常に使用すべきである。

7.3.4 波形分析器の代替

この測定セットアップの最も高価な部分は波形分析器である。 代替手段 ――時には既存のラボ用試験機器を用いた―― は可能であるが、 勿論それらは IEC 61000-4-7 には適合しないであろうから、 その測定結果を適切に解釈するためには その要求と EN 61000-3-2 (及び A14) の理解が必要となるであろう。 このシリーズの第1部 [1] の 1.9章で述べた「ゴールデン・プロダクト」法の使用は、 特定の種類の技術と設計による EUT のための 有用な「予備適合」式の試験結果を代替の試験機器から得るための良い方法である。

勿論、音声周波数スペクトラム・アナライザは 素晴らしい高調波分析器となるであろうし、 電流シャントや他の種類の電流トランスジューサとともに 働くのに充分な感度を持つ筈である。

今は、多くのデジタイジング・オシロスコープが DFT (あるいは類似のフーリエ変換) 機能を 内蔵しており (あるいは出荷時オプションとして指定でき)、 これらは主電源電流の高調波成分のスペクトラム分析のために非常に有効となり得る。 もし、紙と鉛筆、あるいは 一部のオシロスコープで使用できる演算機能を用いて計算を行なえるならば、 あるいは DFT データを PC にダウンロードして後処理を行なえるならば、 変動する高調波のための 1.5秒の平滑化アルゴリズムを含めて、 EN 61000-3-2 と A14 に対する測定を穏当に試みられるかも知れない。

20A までの電流のための市販のクランプ式電流プローブ・アクセサリ (上の Figure 7F を参照) からの典型的な出力は 100mV/A であり、 これは EN 61000-3-2 の最低の電流限度値 (最高の周波数における) を測定している際にはその典型的な電圧は 5mV のオーダーであることを意味する。 これは大抵のオシロスコープで穏当な S/N を得るために充分である。 大抵の電流トランスも穏当な出力電圧を与えるであろうし、 特にそれからの出力は周波数に伴って自ずと上昇することから、 高い周波数での低い高調波電流限度の測定を行なう際の S/N を助ける。 しかし、使用するオシロスコープは、 1mV/div の垂直チャネル感度設定を行なえる必要があるだろう。

オシロスコープが 0.1mV/div の特別なプラグインを持つか、 上の 7.3.2章で述べたように シャントとオシロスコープのあいだで昇圧変圧器か増幅器を使わない限りは、 電流シャントの出力は高い周波数での低いエミッション限度値に対する 測定のためには充分な S/N を与えないであろう。 オシロスコープと共に使うためのバッテリー電源の絶縁増幅器が何種類か販売されており、 シャントと共にこれらの1つを使うことは 安全性の確保を助けながら穏当な測定を可能とする筈である。

Figure 7J 今は、いくつもの携帯型電源品質測定器が入手可能である。 電気設備の電源品質や高調波電流の試験を意図しているものの、 それらを個々の機器からの高調波電流エミッションの 試験のために使用できることも多い。 そのような測定器の例は、Fluke 39、41B、及び 43B (http://www.fluke.com) ――これらは手持ち型マルチメータとして生まれて オシロスコープの機能が追加されたように見える―― や、 Tektronix THS700 シリーズ ――マルチメータ機能が追加された携帯型オシロスコープ―― を含む。 Fluke 39、41B、及び 43B、そして Tektronix THS720P は、 それらを波形分析器とする DFT ソフトウェアと表示機能を含んでいる。 これらの製品の一部の例は、Figure 7J を参照されたい。 電流プローブ (Figure 7H を参照) を追加すれば、 それらは高調波電流を分析できる。 繰り返すが、EN 61000-3-2、及びその A14 での測定の方法に近付けるために、 後処理での計算を使用できる。

残念ながら、これらの携帯型製品の一部で可能な精度や表示分解能や S/N は、 製品の高次の高調波の適合性の確認のためには充分ではないかも知れない。 これらの計測器は、 31次や 50次、あるいはそれ以上まで測定できると言うであろうが、 高次の高調波に対する EN 61000-3-2 限度値は その画面では識別できないかも知れない。

これらの携帯型電力品質計測器の一部は、 Figure 7E で示した高調波/フリッカ分析器と同等の価格となり得る。 しかし、それらは適合した測定を行なわず、 また高次の高調波のために充分に敏感でないかも知れないものの、 それらは他の目的との多目的性のために使用できる ―― あなたの会社は既にそれを持っているかも知れない (あなたの施設の電気設備管理者に尋ねてみよう)。

Figure 7K 自前の極めて低コストな波形分析器を作ることは、Figure 7K に示すように、 1個のクワッド・オペアンプに基づいた 4次フィルタよりも僅かに多くのこと、 そして、オシロスコープ ――古い、ほとんどどのようなものであっても―― を必要とする。

それはごく低い周波数 (最大 2kHz) で動作するので、 この回路は試作用基板上に極めて素早く安く作ることができ、 それを安定に保ち電源雑音を低減するために 2つの 100nF デカップリング・コンデンサを オペアンプの電源ピンの非常に近くに置く (特に TL074 よりも高速のオペアンプを使う場合には、 グランド・プレーンも助けとなり得る) ことを除いてはレイアウト上の要求も持たない。 この簡単なフィルタは、その帯域通過出力を観察することによって それが同調している周波数を同定するためにオシロスコープを必要とする。 そのフィルタ帯域幅を計算する手間をかけてはいないが、 それが個々の主電源高調波を明確に分離するために充分に狭いことは知っている。

Figure 7K の「帯域通過フィルタ」波形分析器の操作は次のようなものとなる (それぞれの段階で必要な危険防止手段全てを講じること):

  1. 試験する主電源リードに 電流トランスジューサ (上の 7.3.3章を参照) を取り付ける。

  2. 「クリーン」な電源供給源 (上の 7.3.2章を参照) に 主電源リードを接続する。

  3. EUT の電源を入れ、その動作モード、電力出力などを、 EN 61000-3-2 で規定されているように設定する。

  4. その回路の帯域通過出力を、オシロスコープの垂直チャネル・アンプに、 1MΩ 入力、AC か DC 結合で接続する。

  5. 測定する周波数に合わせてオシロスコープの時間軸を設定する。

  6. オシロスコープ上で所望の周波数が最大となる (= 同調される) ように 二連可変抵抗器を調整する。 これは、かなり純粋な正弦波のように見える筈である。 良いクリアな波形を得るために、 オシロスコープの入力感度とトリガー・レベルを適当に調整する。

  7. 表示されている周波数 ――主電源周波数の倍数の筈―― を オシロスコープを用いて測定し、記録する。

  8. もしその波形が正弦波でない、あるいはぼやけている、 あるいは主電源周波数の倍数でないならば、 故障、あるいは干渉 (例えば強い磁界) がある。

  9. その信号のピーク ― ピーク値を測定し、その実効値を計算する (その帯域通過出力に真の実効値電圧計を接続し、 オシロスコープは正しい「同調」を示すためだけに使うこともできる)。 もしその信号レベルが変動する (EUT の高調波電流需要の変動に伴うのではなく) ならば、 安全側とするためにその最大値を記録する。

  10. 測定された信号が EUT の電流需要の結果として変動する (例えば、それぞれが異なった電流を必要とする動作の反復的なサイクルを通る場合) ならば、EN 61000-3-2 (及び A14) の 変動する高調波を扱うためのルールを適用するために 必要なだけの回数の測定を行なう。

  11. 50Hz 基本周波数から測定の必要がある最大のものまでの全セットを得るまで、 他の高調波に対して上の e〜j を繰り返す。

  12. その高調波の振幅を規定と比較する。

Figure 7K の帯域通過フィルタ「波形分析器」を校正するためには、 EUT の代わりに既知の線形負荷 (例えば精密電力抵抗) と 正確な電流計 (真の実効値の、あるいは実効値で校正された) を直列に接続する。 フィルタを主電源の基本周波数に同調させた時 (供給源が充分にクリーンであれば、どの高調波信号も非常に小さい筈) に、 その電流計の読みを帯域通過フィルタのオシロスコープ上での読みと比較する。 電流計の読みとオシロスコープ上の信号との比較は 50Hz での校正係数を与え、 それが 100mV/A や 1V/A のような扱いやすい値となるように 増幅段の増幅率を調整できる。 上の 7.3.2章で述べたように、ある種の電流トランスジューサは 他の周波数での校正も必要とするかも知れないことを憶えておくこと。

時間に余裕があれば、 初歩的な低周波スペクトラム・アナライザ (より正確には、掃引同調式受信器) を作るために、フィルタの同調を自動化し、 それをオシロスコープのスイープにロックさせたいと思うかも知れない。 そのスイープ速度は、高調波の振幅が影響されるほど速いべきではない。 フィルタ帯域幅が狭くなれば、正確な測定のための最大スイープ速度は低くなる。

7.4 全面的に適合した電圧変動/フリッカ試験

この章は、[5] の Chapter 3 に基づいている。

EN 61000-3-3 [3] は、 主電源への他の種類の低周波「エミッション」に限度値を定めている。 フリッカは、 「その照度やスペクトラム分布が時間につれて変動する光刺激によって誘起される 視覚的な不安定さの印象」と定義されている。 配電網上の、電流が変動する負荷は、 その配電網の直列インピーダンスによって共通接続点での電圧変動を生じ得る。 このような電圧変動は、充分な振幅のものであれば、 同一の電源に接続された照明にフリッカを引き起こし得る。 これは極めて所期の公共電源供給まで遡る極めて古い干渉問題であり、 極めて所期の EMC 規制 ――UK の 1899年の「Lighting Clauses Act」―― の誘因となった。

従って、EN 61000-3-3 ――これは EN 61000-3-2 とほとんど同一の広範囲の装置に適用される―― は、当該の機器が知覚できるフリッカを引き起こせる 電圧変動を引き起こし得る程度を規制する。 それは参照負荷に対して発生させられる電圧変動を制限することによってそれを行ない、 3つの要因に対して限度を定める:

これらの限度値は緊急切り替えや停電には適用されず、 Pst とPlt の限度値は手動での切り替えや 1時間に1回よりも少ない頻度で発生する電圧変化には適用されない。 しかし、電圧変化の限度値 dmax、及び dc は そのような偶発的な事象にも適用され、 これは、そのスイッチの投入が手で行なわれる場合でさえも、 実質的に任意の装置に対して許容できるスイッチ投入突入電流に限度値を定める。 この規格に対する最近の Amendment は、 手での切り替えのためには 6% の dmax (attended 機器や1日に2回よりも多く切り替えられないであろう機器については 7%) を提示しており、 手での切り替えについては 突入電流を含めた半周期ごとの入力電流の実効値の最大値が 20A を超えないならば その機器は試験を行なうことなく適合するものと見倣すと言明している。 もし突入電流測定を行なわなければならないならば、 24回の突入事象が記録され、最大と最小のものが除かれ、 最終的な結果を得るために残りの 22個の平均が取られる。

通常の動作で典型的にフリッカを生じる機器は、 動作サイクル中に変動する負荷を切り替える任意のデバイスを含む。 多くの家電品はこの分類に入り、特別な犯人は、その温度がバースト点弧 ――すなわち、主電源の数サイクルのあいだ続けてヒーターに電力が与えられ、 そのバーストのオン/オフの比率が温度を制御するもの―― によって制御されるヒーターを持つものである。 もしその加熱負荷が大きければ、 この種の機器は容易にフリッカ限度値に違反することになる。 バースト点弧を単にその一般的な代替である交流電力制御法 ――位相角制御―― で置き換えることが、適切なフィルタがなければ EN 61000-3-2 に不合格としそうなことは残念である。

7.4.1 測定系

Figure 7L フリッカの測定に用いられる基本的な測定系は、 Figure 7A に示した高調波分析器と本質的に同一のブロック図と特性を持ち、 この理由から、高調波とフリッカの分析器は往々にして一体化されている。 それらの違いは、 三相電源に対する回路を与えている Figure 7L で見ることができる。 測定される変数は、今度はそれを流れる電流ではなく給電点での電圧である。 EUT の負荷電流の変化が 様々な限度値との比較のために分析される一定の電圧変化を生じるように、 その電源発生器の供給源インピーダンスは慎重に定義されている。

このセットアップの正確さは、相対的な電圧変化が 最大の許容値の ±8% よりも良い総合精度で測定できるように要求されている。 その測定誤差は、その合計がこの限度内にある限り、 その基準インピーダンスと分析器とに振り分けられる。

7.4.2 相対的電圧変化

電圧変化の時間に依存する見え方を構築するために、 その実効値電圧は半周期 (それぞれ 10ms) ごとに逐次的に評価される。 この電圧は d(t) を与えるために公称値で正規化され、 2つの特性値が導き出される:

このオリジナルの (Amendment を適用していない) 規格は、 dc が 3% を超えず、 dmax が 4% を超えず、 電圧変化中の d(t) の値が 200ms を超えて 3% を超えないことを要求している。 手での切り替えや 1時間に1回よりも稀に発生する事象については、 これらの値は 1.33倍される。 これを緩和する Amendment (を参照) は ――この執筆の時点では―― まだ EC Official Journal で整合化されておらず、 それが技術構成ファイルの一部である場合にのみ EMC 指令への適合性のために使用できる。

7.4.3 短時間フリッカ

電圧変化そのものはフリッカの知覚を充分に特性付けない。 人間の目と脳の組み合わせでは、 フリッカの周波数が変わるとフリッカに対する感受性が変動する。 このため、変化の周波数、電圧変化特性の形状、 そして反復性の変化の累積刺激効果を考慮に入れるために、 その電圧変化は数分間の期間にわたって処理されねばならない。 ある種の特殊な状況ではこれは分析的に行なえ、 1つの状況ではグラフに対する直接的な比較 (後述) を行なえるものの、 一般にはその電圧変化はその仕様が独立した規格 (IEC 60868) で与えられている 「フリッカメーター」に渡される。 フリッカメーターは電圧変化特性にその波形に基づいて重み付けを行ない、 これが基準となる方法である。

フリッカメーターの出力は、短時間フリッカ指標 Pst を与える。 EUT の動作サイクル中の、 電圧変化の最も望ましくないシーケンスを発生する部分を含めるために、 Pst は 10分の期間にわたって観察される。 Pst が 1 を超えることは許されない。

Figure 7M 同一の時間間隔で区切られた 同一の振幅の矩形の電圧変化の反復という特殊な状況に対しては、 その Pst の値は、 この規格で公表され、Figure 7M に再録したグラフから導くことができる。 これは、Pst が 1 となる d(t) の値を周波数に対して示しており、 8Hz 程度、あるいは毎分 1000回の電圧変動において最大となる生理学的感受性を図示している。

7.5 フリッカに対する低コストな非適合の試験

フリッカが複雑な人間生理学的現象であるという事実に伴う フリッカメーターの仕様の複雑な要求のために、 フリッカメーター (Figure 7E のような) なしに フリッカを評価することは難しいものとなり得る。

しかし、主電源から比較的安定な電力を消費する極めて多くの種類の製品については、 若干の素早い電流の測定と若干の「封筒の裏」の計算が、 それらが EN 61000-3-3 のフリッカ試験に合格するのが確かであることを示すだろう。

多くの製造業者は、彼らが (あるいは彼らのテスト・ラボが) この計算を行ない、 その結果が無視できる程度のフリッカというものであったことから、 製品の EN 61000-3-3 に対する試験に煩わされていない。 残念ながら、これは、それらが EN 61000-3-3 の突入電流試験 (下の 7.6章を参照) に合格するであろうことを意味するとは限らない。

自前のフリッカメーターの設計を決断する前に、 Figure 7E に示した高調波/フリッカ複合計測器は 1700ポンド程度の価格であり、 適合する結果を与える (その供給源の電力定格内にある機器に対して) ことを考慮すること。 時間と金のより効果的な使い方は、 単にそのような計測器を買うことであるかも知れない。

EN 61000-3-3 の 4.2.3章は、 少数の良く出会う形状についてのピーク電圧変動に対する波形の影響の予測のための、 いくつかの設計者向けのガイドラインを与えるが、 発生が1秒 に1回よりも少ない変動についてのみである。 これは、その機器についての計算、シミュレーション、 あるいは標準的なラボ用機器 (例えばオシロスコープ) を用いた簡単な測定からの、 ありそうな電圧変動エミッションの予測を容易とする。 この予測の精度は ±10% よりも良くないと主張されているので、 結果が限度値の 20% 以内にある場合には、 適合性を保証するために実際の機器とフリッカメーターで確認すべきである。

もし総高調波歪みが 10% 以内の試験用電源と EN 61000-3-3 で規定された電源インピーダンスを使っているならば、 電圧変動をオシロスコープで直接測定することができる (EN 61010-1 に適合する主電源への使用のためのオシロスコープ・プローブを用いて)。

その代わりに他の電源インピーダンスを用いて負荷電流変動を測定するならば、 それを標準インピーダンスを用いた場合に期待できる電圧変動に 数学的に変換する必要があるだろう。 しかし、負荷電流変動自身が電源インピーダンスに依存するであろうから、 もし負荷電流を測定するのであれば、 その電源インピーダンス (抵抗とインダクタンスの双方) が 標準の電源インピーダンスと等しいか、あるいはそれよりも低いことを 確認するのが最良であることに注意されたい。

今は、負帰還テクニックによって達成される プログラムされた (あるいはゼロの) インピーダンスか標準インピーダンスを持つ、 合成式の主電源電圧供給源が入手可能である。 時と共に、より多くの製造業者がこの市場に参入し、 これらの供給源の価格も低下している。 Figure 7E は、ゼロに近いと理解されているインピーダンスを持つ、 1kW 主電源供給源の例を示す。

負荷電流は、 上の 7.3.2章7.3.3章で述べたものと 全く同一の供給源と電流トランスジューサを用いて測定でき、 オシロスコープで簡単に観察できる。

もし、機器の負荷電流波形を知っている ――計算、シミュレート、あるいは 標準供給源インピーダンスかゼロ・オームでの測定のいずれによっても―― ならば、結果としての主電源電圧変動波形を計算、あるいはシミュレートできる。 EN 61000-3-3 の 4.2.3章、そして Figure 5、6、及び 7 を参照すれば、 あなたの製品からのフリッカ・エミッションを予測できることに気付くかも知れない。

もしあなたの PC やワークステーション上で動作する 回路シミュレータを持っているならば、測定された電流を EN 61000-3-3 で規定された供給源インピーダンスと同一の回路に入力し、 それによる出力電流変動を見い出せるだろう。 10ms 以内で終わる電圧変動は EN 61000-3-3 とフリッカメーターの仕様で要求されている積分プロセスで「鈍らされる」が、 対応する出力を与えるためにシミュレータに機能ブロックを追加できるかも知れない。

7.6 突入電流に対する低コストな非適合の試験

EN 61000-3-3 のスイッチ投入突入電流限度値は (様々な波形の電圧変動のためのフリッカ限度値と比較すれば) 比較的理解しやすい。 スイッチ投入突入電流の測定のために、 上の 7.3.2章7.3.3章で述べたような 電流トランスジューサをオシロスコープと共に使うことも容易である。

Figure 7N デジタイジング・オシロスコープ (あるいはアナログ・ストレージ・オシロスコープ) は、 この目的のために最良である。 上の 7.3.4章で述べた電源品質分析器の一部は、 スイッチ投入突入電流を捕えて表示するための ストレージ・オシロスコープとして機能するであろう。 Figure 7N は Fluke 43B で捕えられた大きな突入電流の例を示す。 フリッカメーターを使っていない場合には、 EN 61000-3-3 は測定されたそれぞれのサンプルに対して 10ms の積分時間を使うことを忘れないこと。 多くのコンデンサ入力整流回路は スイッチ投入時にそのコンデンサを充電するために非常に高い電流を流すが、 その電流「スパイク」は非常に狭く、 10ms にわたって積分されればそのピーク値よりも相当低く測定される。 Figure 7N は 100ms 強で終わる突入事象 (大きな誘導モーターの起動のようなものかも知れない) を示し、 これは 10ms の積分では低下しないだろう。

使用する主電源供給源は、突入電流試験における問題かも知れない。 突入電流の測定の際には電流供給能力は非常に重要であり、 多くの種類の「クリーン」供給源には電流制限があって EUT が標準的なインピーダンスの実際の主電源から取り込むであろう電流を 供給できないかも知れない。 従って、主電源供給源の購入や設計の際には、 それが突入電流の EN 61000-3-3 限度値よりも遥かに大きい 短時間電流を供給できることを確かめるのが最良である。

7.7 高調波とフリッカのオン・サイト試験

EN 61000-3-2 や EN 61000-3-3 には、 それらの試験を EMC テスト・サイトで実施するという要求はない。 従って、以上の章が考慮されている限りは、 試験はラボと同様にオン・サイトで実施できる。

7.8 その他の EMC 試験

IEC 61000-4-x シリーズの多くのものを含めて、 ここで触れることもできたものの、 EMC 指令の元に整合化されている規格の大多数で 要求されていないことからそうしなかった、 他の多くの EMC 試験がある。

EN 55013 (テレビ、及びラジオ受信器) や EN 50083-2 (音声、及びテレビのケーブル配信) のような規格は、 それらの規格に現れるだけの特殊な試験を含むことがあり、 それらは一般にこのシリーズでは述べられていない。

軍事、自動車、民間航空、テレコム、無線通信、 そしてその他の専門化した産業界のために作成されたものや、 民間用機器の核電磁パルスに対するイミュニティといった特殊な EMC 規格もあり、 これらはここではカバーされていない。

他の国で開発された EMC 規格 (例えば、FCC、GOST) も扱われていないが、 ほとんどの国が IEC や CISPR に基づいた EMC 規格へと移行しつつあることから これは徐々に問題ではなくなりつつある。

これらの他の規格全ては、Competent Body の合意の元に、 EMC 技術構成ファイルで使用できる。 他の試験規格の一部が、あなたの機器を信頼できるものとすることを助ける上で 有用であることに気付くかも知れない。 そのような規格の例は、 10kHz〜18GHz の電界エミッション/イミュニティ、 20Hz までの伝導性エミッション/イミュニティ、 60Hz〜100kHz の「建築物電流」へのイミュニティ、 そして様々な種類の地上/海上/空中の乗物で見付かる 極めて多様なトランジェントやサージへのイミュニティの試験方法を述べている、 MIL-STD-462 や DEF STAN 59-41 である。

7.9 参考文献


Eur Ing Keith Armstrong, C.Eng MIEE MIEEE
Partner, Cherry Clough Consultants, Associate of EMC-UK
Phone: 01457 871 605, Fax: 01457 820 145, Email: keith.armstrong@cherryclough.com
http://www.cherryclough.com

Tim Williams, C.Eng MIEE
Director, Elmac Services, Associate of EMC-UK
Phone: 01243 533 361, Fax: 01243 790 535, Email: elmactimw@cix.compulink.co.uk
http://www.elmac.co.uk


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これは、 EMC+Compliance Journal 上で発表された文書を、 その許諾を得て T. Sato が翻訳したものです。 この翻訳については、原著者らはいかなる責任も持ちません。 これについての意見、質問などは VEF00200@nifty.ne.jp (T.Sato) 宛にお送り下さい。

Last update: 2004-12-12