音楽の記憶 |
意外な人がこれを読んでくれていることを知って、何か書かなくちゃと思いつつ、なかなか思い当たることがない。だいたい、その人がそんなに音楽を聴くような気がしないのです。読んでいて面白いのかな。つまんないだろうな。でもね、僕は音楽がなかったら死んでたと思いますよ。本当に。 |
中古レコード店で1枚150円とかで売っているようなLPの中に、特に掘り出し物のレア盤というわけではないにもかかわらず、軽いショックを受けるものがたまにある。 今回見つけてしまったのが、Shakatakの"Night Birds"だ。これは1982年に、最もお洒落な音楽として北アメリカを除く世界のほぼ全域を席巻したのだった。当時このアルバムのタイトル・トラックは、FMラジオをつけると必ず流れてきた。決して誇張ではない。AM放送がストレートに大衆性を指向するのに対して、民放のFM局は、シティ・ライトが灯り始めるトワイライトのひとときにクリスタルなサウンドをセンチメンタルな恋人たちにお届けしたりするのが使命だった。考えてみれば、随分と過剰な文化である。その時代を生きていた人たちは、『ハートカクテル』の実写版のような中にあって、やはり必死だったのだと思う。その「必死」さに形を与えたものが"Night Birds"だ。 決して清算できない過去として流行の創出を呪縛し続けるその音は、ヤワな歴史修正主義など到底太刀打ちできない。そればかりか、年を経るにつれ、その反時代性はますます手に負えない獰猛さへと変わっていく。 (追記: テレビでバラエティー番組を見ていたら、BGMに"Night Birds"が使われていて、オセロの中島知子が「なんでシャカタクやねん」ときっちり指摘していた。中居正広には「イトーヨーカ堂の3Fみたい」と言われていた。同じ番組で藤井一子の『チェックポイント』も使われていた。なかなか毒のある選曲をするなぁ、と思った。) |
ヘッドホンを買った。 実は、3ヶ月前にも買ったばかりだった。ネットで調べ尽くしたつもりになって、三千円くらいのイギリス製を手に入れたのだが、小さくて頭に入らないので無理に延ばそうとしたら、小さな音をたてて割れてしまった。尤も機能に直接支障のない部分だったので、黒いビニールテープを巻いて使っていたものの、外観が痛々しいばかりでなく、やっぱり頭が大きすぎるせいか、圧迫感が凄まじいので、ちゃんとしたものを買い直すことにした。 そこでまたネットで再調査をした。今度はいろいろなことが分かった。「ドンシャリ」という言葉がある。間違っているかもしれないが、要するに中間を抜いて低音域と高音域ばかりが強調された、下品な音質を指して使うらしい。品がないのは嫌である。ただ、それ以上に気になるのはデザインだ。困ったことに、僕の気に入った形をしたヘッドホンは、典型的なドンシャリと評されていた。もう1つ見た目の好きなモデルがあり、音質に関する評価は高いものの、一万円を大幅に上回る値段が付いている。そう、ここで予算の問題が浮上する。高くて一万円ちょっとといったところか。この「ちょっと」という部分が具体的にいくらなのか曖昧なまま、現物を試聴してみるため、都心の家電製品量販店へと足を運んだ。 予想以上に種類が豊富だったので、気になっていた2つのモデルは両方ともあり、それらを比べてみた結果、僕は下品な音が好きだということが分かった。六千円弱。音はともかく、形は上品だと思う。本当はあと二千円出せば一番気に入った音を出すヘッドホンに手が届くのだけれど、それはデザインが今ひとつなのでやめておいた。さて、買ったばかりのヘッドホンで何を聴くか。 |
"DNA on DNA"というCDが発売されている。 Ikue MoriのドラムとArto Lindsayのギター/ボーカルにRobin Crutchfieldのキーボード、あるいはTim WrightのベースによるDNAのスタジオ音源がほぼ全て網羅されている上、ライヴ音源まで収められている。Arto Lindsayを知らなかったら、僕の人生は確実に今とは違うものになっていただろう。今でもArtoの真似を結構真剣にやったりしている(demo参照)。僕は高校生の頃、通信販売でDNAの演奏が入っているコンピレーション・アルバム(当時は「オムニバス」と呼ばれてたけど)の"No New York"とか、6曲入りのミニ・アルバム"A Taste of DNA"を買っていた。結構高かった。全部CDに収録されている。 中に、Artoがちゃんとキーとリズムを合わせてリフを弾いている曲があって、ちょっとだけ普通のニュー・ウェイヴっぽいのが、かえって新鮮だった。 |
CTIレーベルから発売されたMilt Jacksonのアルバムに"Olinga"というのがある。 僕が好きなのは最後の"I'm Not So Sure"という曲で、CDで再発された時のタスキに「ソウルフルなミルト・ジャクソンの隠れた名盤。リズム隊もオトナ。」と書かれている通り、Ceder Waltonのピアノ、Ron Carterのベース、Micky Rokerのドラムスのアンサンブルがすごくかっこいい。Ceder Waltonの演奏の中では"Eastern Rebellion"と同じぐらいのお気に入りである。 CTIのレコードと言えば、ジャケット・デザインが綺麗なことでよく知られている。この"Olinga"では、深い紫色の空をバックにピラミッドが赤く照らし出され、手前には青ざめたスフィンクスが写っている。このデザインを、ピラミッドとスフィンクスの色を入れ替えただけで、ほとんどそのままジャケットとして使ったのが、Cabaret Voltaireの"Body And Soul"だ。このアルバムは、数ある彼らのレコードの中でもベスト3に入るものだと僕は思っている。 |
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