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津南の家の裏庭には、昔から蛍が住みついている。年々その数が減り今年は2匹しか見られず寂しい思いをしていた。振返ってみると、蛍の数が激減したのは、裏庭の先に広がっていた田圃の整備以後ではなかっただろうか。津南は河岸段丘の町であるが、1、2メートルくらいの小さな段差はけっこう残っていた。その段差をならし整備したのだ。当然小さな小川は潰されU字溝に変わった。今から30年くらい前の事だ。
影響は次の年の夏、蛍の数として現れた。蛍は殆ど見る事が出来なくなってしまった。蛍は幼虫時代小川の中で過ごす。その時の餌はカワニナである。そのカワニナの生息環境を一度潰して作った川には、カワニナがいないのはもちろんの事、蛍が住めないのは当然のながれだった。その後、他の田圃でも生活排水や農薬の影響からか、殆どその優しい光を見る事が出来なくなった。追討ちをかける様に、裏の田圃は宅地に姿を変えてゆく。蛍は人間のエゴによって殆ど死滅した哀れな虫。いつしか私の中で、遠い日の記憶となっていったのだった。
近頃が戻って来たらしい。そんな話を耳にした。裏庭の蛍は相変わらず少数であったし、最近は実家に帰っては夜は出歩かず専らビール。今回はちょっと探査してみようと、子供時分よく遊んだ近所へ出かけた。やっぱりいないな。なかば諦めかけた時、小川の草むらに10個ばかりの懐かしい点滅を見つけたのだった。思わず永年逢わなかった幼友達に、出逢った様な感激を覚えた。手の平で光る君は昔のままの君。水中で出番を待つ幼虫達も確認出来た。は手の平より飛びたち、ゆらゆらと点滅と共に姿を隠した。来年もまた逢えるといいな。
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