蝉天国


蝉の抜け殻

 ひとつ、ふたつ、みっつと、数え始め、首が疲れるのでやめた。実家の庭木についたセミの抜け殻を数えていたのだ。それでは地面にあいた穴を数えると、見える所だけでも120穴以上はある。草むらも合わせると推定300匹は地上に出たと考えられる。これは凄い。

 97年は前年以上にセミが出ている。葉っぱの裏も鈴なりで、抜け殻の上に、また抜け殻がある状態。という事は、この庭の地下では凄い密度でモズ達が生存していたわけであるから、植木鉢の下にも今夜出て来るモズがいるかもしれないと剥ぐってみた。案の定、そこにいた。日光を浴び、穴へ後ずさりする。それにしても、この庭には子供じぶんからセミは住着いており、よほど条件の良い環境なのだろう。

 私は植物には明るくないが、植物好きな人から見れば様々な植生があり面白いはずだと思う。そんな所だから、雑草防止の為に、コンクリートやアスファルトで覆う事無く、今に至っている。私の代になってもその意志を受継ぎ、土のままの庭にしたいと思う。ほとんどがアブラゼミで、ミンミンやヒグラシはまれ。ヒグラシが希望だが、自然は人の都合など考えていない。考えていないから自然なのだ。そんな事を思いながら、そっと鉢をもとに戻した。

※モズ:方言でセミの幼虫の意。(盛夏・陣場下)
#面白い事に毎年、出てくるセミの傾向が異なる。1997年は圧倒的にアブラゼミの年であったし、1999年はミンミンゼミが首位を奪った。2000年はアブラゼミ、そして2001年はミンミンゼミの夏であった。
陣場下の殆どのセミはこの庭から旅立ったのではないかと思わせる出来事であった。
#近年「ビオトープ」なる言葉を聞いた。意味を知るにつれまさに、つなんの裏庭の事ではないかと思うようになった。