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日もとっぷりと暮れた中津川の対岸。絶壁のつづら折りには、松明の灯かりが今日も点った。ここ中深見の 母の生家からも、その灯かりは見えた。
「ばっぱー。ばっぱー」風に乗って聞こえて来る捜索人達の声。母が子供のころ、ある婆さんと幼児が行方不明になったという。捜索は昼夜、 一週間くらい続いたそうだ。家の窓から対岸の灯かりを見ていた母は、恐くなったと話してくれた。
翌年の春、獣の穴の中で大人と子供の白骨死体が発見されたという。狐にでも騙されたのかどうかは判らない。 幼き母には恐かった記憶として残ったのであろう。
この話を聞かされたのは、ちょうど私が小学生の頃だった。人を騙す狐や捜索時の 婆さんを呼ぶ声などから、むかし話のひとつとして私自身とらえていたのかも知れない。
最近ある調べものをしていて、偶然この事件に触れたいち文を見つけた。 婆さんは、集落上げての捜索も空しく翌春、崖の途中で幼児ともども死体で発見された。不幸な事件であるが、人を騙す狐と関連づけられたりと、新たな昔話化の発展性を観る事が出来る。昔話の原型はこんな処から始まっているのかも知れない。 
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