中深見のキツネ


 戦前の尋常高等小学校を出たばかりの中深見の少年は、ある日の夕方、家には帰らなかったそうだ。家人や近所の者が総出で捜すが見つからない。翌日の夕方、中津川へ下る林の中で少年は無事発見された。切株に腰掛け遠くをぼんやり見ていたそうだ。これはきっとキツネに化かされたに違いないと、ムラでは噂された。そんなこともあってか、なかなか嫁のきてが現れなかったのだという。

  最近、キツネに化かされたなどという話しは、まったく聞かなくなった。人を化かす力を持ったキツネ達は、いったい何処へいってしまったのだろう?

 キツネが人を化かした時代は、今は絵本の中だけなのだろうか?キツネをはじめとする野生動物たちとのコミュニケーションの減少が背景にあるのではないか。そんな印象を受けた今回の採話だった。

 

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