卯の木

 1984年「卯の木」と題する油彩画が一人の画家によって発表された。上越市生れの画家・故富岡惣一郎氏である。何十年という間、ただひたすら雪景ばかりを描き続る画業。注目すべきは雪そのものの景色であった事だ。「トミオカ・ホワイト」と呼ばれる独特の世界である。殆ど白一色の色彩。実際にその色を作ろうとすると、なかなか微妙に仕上がっている事が分かってくる。寒さの中にも温もりを感じさせる色彩である。

 制作するにあたり、冬の晴れ間を縫って新潟空港からセスナをチャーターしている。作品(227×162)は、白い画面の中に暗く沈んだ河が、画面めいっぱいに「ひ」の字型に蛇行する構図。なぜ「卯の木」と付けたのだろうか。構図からだと外丸本村の方が相応しいかもしれない。また蛇行が深いため栄村の横倉・青倉間がモデルだったのではと、思いを巡らすのも楽しい。本当に卯の木であるとしたのなら、右手のカーブは信濃川。左手のカーブは清津川であろう。手前の合流点より下流の部分と比較対象の人工物は、絵画的手法により省略され、パっと見で雪景色の小川に見えるこの作品も、実は相当スケールの大きいモチーフから出来ていることになる。

 「卯の木」。そこは遺跡の宝庫。縄文草創期から後期にまで、萬遍無く出土する。悠久の河の流れの中に、「卯の木」を見ているのかもしれないな。

※トミオカホワイト美術館 南魚沼郡六日町上薬師堂142   0257-75-3646

#富岡氏が描いた「卯ノ木」は小千谷の卯ノ木とのこと。津南好きの私にとってはやはり、津南の卯ノ木。信濃川沿線で営まれた縄文文化も包括する、時のビッグスケールを感じさせるからである。