カオス学入門:乱流・非線形におけるカオス、アトラクタ、フラクタル、位相空間、トポロジー、複雑系を学ぶメモ帖   (作業中)

             鶴巻有一郎著(07.4.25;4.30;5.1,5.16, 5.18,5.25;6.1;6.5;6.6;6.10;6.18;6.24;7.7;8.30 ; 08.4.21)






目次 

まえがき(07.4.27)

第一章 参考書籍のメモ(07.4.27)

1)              ジエイムズ・クリック著「カオス 新しい科学をつくる」上田睆亮監修・大貫昌子訳、新潮文庫から

第二章 筆者の検討(07.5.1作業中)

2.1)カオス発生の確認

2.1.1)ロジステック差分方程式による扱い (07.5.1;5.16;6.18)

2.1.2)上田睆亮による非線形強制振動方程式による扱い(07.5.18;6.1)

2.2)カオス学の考え方と用語(07.6.5;6.6;6.10;6.18;6.24;7.7作業中)

ひと休み:梅雨宣言もバタフライ効果で形なし?(07.6.18)

2.3)筆者のカオスを扱った論文08.4.21

参考文献名(07.4.25;5.25;6.1;6.10;6.18;7.7)

用語説明

参考Web(07.4.25;5.1,5.25)




まえがき(07.4.25)


先日、カオス[混沌(こんとん)]についてWeb検索すると稲垣耕作先生のHP

http://www.i.kyoto-u.ac.jp/~inagaki/indexj.html

が見つかり、

ライフ・エイブラハム、ヨシスケ・ウエダ編著「カオスはこうして発見された」稲垣耕作、赤松則男訳、共立出版㈱

を読みたくなり、池袋の書店に行く。すると、カオス、複雑系の書籍の多さに驚き、さまざまを手に取り、初歩的入門書として下記の書も含め二冊を購入した。それは、

ジエイムズ・クリック著「カオス 新しい科学をつくる」上田睆亮監修・大貫昌子訳、新潮文庫

である。まず、計算式の記述が無いクリック著から読み始め、次に式が少し出てくるヨシスケ・ウエダ編著へ進もうと考えている。

さて

ジエイムズ・クリック著「カオス 新しい科学をつくる」上田睆亮監修・大貫昌子訳、新潮文庫(英文名“CHAOSMAKING A NEW SCIENCE”)について、上田睆亮先生の愛弟子・同士たる稲垣耕作先生は、Web.[ カオス発見の論文はどんなだったかhttp://www.i.kyoto-u.ac.jp/~inagaki/indexj.htmlの中で、通俗書であるGleick「Chaos」は、上田氏の名前を記載するものの研究内容の調査をしていない通俗書であるとの旨を述べている。

しかしながら、同書は、鶴巻にとってなかなか面白く興味を抱かせるストーリーである。それは、たぶん論文には書かれない動機、物事の考え方の過程、広がりを論じている啓蒙の物語であるからである。もちろん、学術書ではなく小生の疑問点を解消するものでもない。稲垣先生のHPに上田先生の論文を掲載いただいていることはありがたいことである。

いま、クリック著を読み始め、ほぼ、半分の240ページまで進み、最大の関心事であった振子振動の軌道位置と速度変化を表したアトラクタまで読み終えた。ここで、同書のメモと小生がこれまで経験した非線形系の数値計算上で発生した発散について思い出し、書きとどめておこうと思い、この作業を始めている。そして、今後どこまでカオスを調べ、学ぶことが出来るのか、また、調べるに値する価値を有るのか等は分からないが、カオスが天変地異を招くとも考えられず急ぐことなく徐々に、随時、メモを増していければよいと考えている。

ところで、

今朝も落合川の清流は、静かに波紋をつくり、花ショウブを写し、水草を揺らしながら流れている。この流れに降雨による出水が有る場合の流れをわれわれが解析する場合、川の全体を見通すほどの荒さの区間長の箇所の断面形を採用し、その断面を区間内の代表とし、平均流速を用い、かつ、摩擦項に[(流速・マニングの粗度係数)の2乗][区間長]/[径深の4/3]を採用したマクロ的な解析手法と、水面下の渦の成り立ちとその流下を連続的に追跡するミクロ的な解析手法、有限要素法があろう。どちらも、摩擦項があるため非線形の方程式である。

一方、水力発電所が圧力水路系を有する場合の安全性は、使用流量のさまざまな予期せぬ変動に対しても、圧力値が構造設計値を上回ることの無いように検討済みである。この流れを扱う場合にも、マクロ的な扱いとミクロ的な扱いがある。マクロ的な扱いは、U字管振動としての扱い、いわゆる流体を剛体とし、長区間の持つマスの運動が基本形であり、管路内壁の摩擦項を含む非線形の方程式である。U字管振動はまさに、振子振動の扱いと同様である。ミクロ的な扱いは流体および管材を弾性体とした扱い、かつ摩擦項を含むものである。なお、管長に沿う計算間隔は伝播波速の速さから比較的長いものであり、断面内の流速は平均値の扱いである。ミクロな流体塊としての有限要素法を使用するほどの課題に遭遇することは無かった。

解析手法には、微分方程式をそのままアナログ解析する設備諸元にあわせた電気回路を組み立てたアナログコンピュータの使用手法と差分式をプログラミングし数値を代入するデジタルコンピュータの使用方法の二種類がある。多くの場合、後者の差分式によるデジタルコンピュータの使用方法が取られてきた。この差分方程式に展開するためには常微分方程式に変換するために、編微分方程式は特性曲線法により、かつ、非線形項を如何に近似的の線形化するかに注意が払われてきた。

このため、数値解析値に異変が起きた場合、計算区間長、計算時間間隔の影響を吟味し、かつ、線形化した項の適用範囲、階差方程式における過去のデータと前後データの反映の形、さらに、採用された階差式が適用地点の条件を満足するものか、一次的に比例する敏感な特殊構造と連結していないかどうか等を吟味し、モデルを組みなおしたものである。

さらに、河川の場合、大局的な見地から擬似的に等流状態を別途、算定し計算値と比較チェックするのは常なることであった。また、圧力管路系にあっても摩擦項を無視し、かつ、極端な運転条件のより安全側の設計値を与えることとなる理論解に基づきチェックすると同時に、水理模型実験、完成後の試験運用の計測等を行い、演算の妥当性を常にチェックしていた。また、圧力管路系の振動系には、不安定性が表れる諸元の存在は自励振動問題の微小振幅理論から明白であり、その領域に当てはまらず必ず減衰方向に作用する構造諸元を採用したものである(小生の論文“鶴巻有一郎,“水力発電所圧力水路系圧力変動の安定性と応答性に関する研究”,土木学会論文集,第423号/Ⅱ-14,199011月,pp.43-52”を参照されたし)。また、強制振動源が存在する場合の振幅の極値を求めるに当たっては、理論解(ただし、摩擦項を線形化)を誘導し(小生の論文“鶴巻有一郎,板倉正和,“自動周波数制御用水力発電所におけるサージングの研究”,土木学会論文集,第509号/Ⅱ-30,19952月,pp.111-119”を参照されたし)、かつ、多くの水力発電所の試験データと比較検討し、その妥当性がチェックされている。

当時、カオスの話 (カオス発生の内容の詳細は知らないが) を聞いたことはあったが、われわれが扱ってきた手法や解析結果に疑問を挟む余地は全く無かった。数値解析値に異変が起きた場合は上記に示した課題を扱い苦労は多かったが、全て、メレタシメレタシと解決していたのだ。そして、カオスを話題にする人たちは、むしろ、そのような手順を踏んでいないのだろうと思っていた。そして、今日までカオスのことを忘れていた。

今日、わが町の図書館においてもカオスや複雑系の蔵書数は相当数あり、すでに、誰もが分かっている新理論のようである。知らぬは初等力学の振動を専門にしてきた小生だけのようである。カオス書は振子の振動にも触れている。そこで今では小生も振子におけるカオスを知りたいと思っている次第である。

なお、本HPに掲載する「圧力管路系におけるサージング・シミュレーション」(リンクnp42m7)のソフトを用い水力発電所の負荷遮断時の様子を解析した結果を下図に示す。下図の一枚目(サージングの時間曲線:従来の時系列図)と二枚目(サージングのアトラクタ)の図は管路の摩擦損失水頭を有する場合(ALF=0.3)であり、三枚目と四枚目の図は摩擦損失水頭を無視(ALF=0)した場合である。これらの解析は3000secに亘るサージング現象の連続解析結果である。これらを見ると演算値は安定しているか、減衰方向の安定へ向かっており、カオスは発生していない。

一方、気象学者のエドワード・ローレンツは解析を中断し、中断時の演算値の桁数を少なく採用したデータから再出発したときに異変に気が付いたのである。すなわち、ここで示した下図は連続解析結果であり、エドワード・ローレンツの場合と異なる。エドワード・ローレンツは、桁数を少なく採用したデータを入力することで、かく乱または、強制振動を一時的に加え、その結果、かく乱の波紋増大現象を見たのである。とすれば、かく乱または、強制振動による応答問題では?  われわれは、その問題はすでに解決済みである。

以上のような疑問意識を持ちながら、第一章に「参考書籍のメモ」を第二章に「筆者の検討」を、進行形で記述していこう。さて、この先どのようなカオスが待ち構えているだろうか・・・・(07.4.25)

その他の演算条件は下表の通りである。

L=

1000

トンネル長(m)

L/g(dv/dt)z-alf*V*abs(v)

DT=

0.1

計算時間間隔(sec)

 

F(dz/dt)=Q-f*V

Q0=

3

初期流量(m3/s)

 

Q=a*T+b

 

Q1=

0

第一変化点の流量

A=

3.1416

 

Q2=

0

第二変化点の流量

F=

50

サージタンク面積(m2)

D=

2

トンネル径(m)

 

 

 

ALF=

0

トンネル損失水頭係数

 

 

 

T1=

1

第一流量変化点の時刻

 

 

 

T2=

2

第ニ流量変化点の時刻

 

 

 

T3=

 

(第三流量変化点の時刻)

 

 

 

WLU=

 

(ダム水位)

 

a=

-3

 

WLD=

 

(放水口水位)

b=

3

 

CW=

10

プリント間隔

 

a2=

0

 

CK=

3000

プリント回数

 

b2=

0

 


目次↑



第一章 参考書籍のメモ(07.4.25;4.30)



1)              ジエイムズ・クリック著「カオス 新しい科学をつくる」上田睆亮監修・大貫昌子訳、新潮文庫から


カオスについて、上田睆亮先生は、巻末に次のように述べている。

(以下に示す赤字の部分は参考図書からの引用文である。以後同様)

さて、カオスの解説は本文中に十分なされているので、ここで重ねて解説する必要はないだろう。従って、『カオス』という術語についての補足と、若干のコメントで、解説に代えさせて頂きたい。 

 ギリシャ語の『カオス』とは天地創造以前の混沌(こんとん)とした状態あるいは事象を意味し、その対(つい)としての『コスモス』とは秩序のある整然とした世界を表わしている。この意味で本書の『カオス』を理解しようとするといらいらするだけだろう。

筆者は初めて『カオス』という 言葉を耳にした時、唖然としたことを生々しく覚えているが、今となっては学術語『カオス』を提唱した李、ヨーク両氏の慧眼に兜を脱いでいる。では『その定義は?』ということになるが、本文を読めばお解りいただけるように、定義はいまだ確立されていない。多くの研究者がそれぞれ独自に定義をしているが、それらに共通しているのは『非線形の確定系(末来永劫まで予測される規則で表現される系)に生じる不規則(未来の状態が予測不可能)な振動現象』というのが定義といえば言えよう。定義の有無はさておいて、カオスはどこにでも見られる実在する自然現象なのだ。


1-1)序論

・ミッチェル・ファイゲンバウムpp11-

   物理学者

取り組み:「乱流」、「時間」、「宇宙の中の色や形をなぜ人間の目は絶えず変わらぬものとして見分けることが出来るのか、その能力について」、「雲」の不規則性について考えていた人(1970)

     カオスとはできてしまったというより形成過程の科学、いうなれば「こうある」というより「そうなっていく」ことの科学だと言う者もいる。(pp.16)

     カオスは科学の各分野の縄張りを超え、科学全般にかかわりを持つ。(pp.17)

・この新しい科学の最も熱心な支持者たちは、二十世紀の科学が、一に相対論、二に量子力学論、そして三にカオスというこの三つの発見によって人類の記憶に残るだろうとまで言っている。つまりカオスこそは物理学上今世紀におこった第三番目の大革命だということになるが、最初の二つ同様カオスもまた、ニュートン物理学の教義に立ち向うものである。(pp.18)

     入力にほんのわずかの違いがあっても、出力に莫大な違いが生ずるといった現象には「初期値に対する鋭敏な依存性」という名前がつけられた。この依存性は、たとえば気象関係では、半分冗談めかして「バタフライ(蝶々)効果」と呼ばれている現象に現れている。これは北京で今日蝶が羽を動かして空気をそよがせたとすると、来月ニューヨークでの嵐の生じ方に変化がおこる‥‥‥というような考え方からきたものである。(pp.22)

1-2)第一章 バタフライ効果

ニュートン流決定論者の言葉;「ある系の初期条件がほぼ正確にわかっており、それを支配する自然の法則さえわかっていれば、その系の近似的なふるまいを計算することができる」という主張で、これこそ科学思想の中心をなす前提なのだ。・・・・・ほかの銀河系のある惑星上で木の葉が一枚舞い落ちたなどということまで、考えに入れる必要はないということだ。つまり非常に微小な影響は無視してもかまわない。ものの働きには『収束現象』というものがあって、或る小さな影響があるからといって、それがふくれあがって多大な影響を及ぼすことにはならない」のである。(pp.31)

     エドワード・ローレンツ:MIT:気象学者、気象予測

カオスとの遭遇:周期性の結果となるはずの気象予測演算を中断し、中断の数値を再入力(ただし、桁数が短い)したコンピュータの演算結果は、それまでの、周期性とは異なる情報を出し始める。

・ バタフライ効果は偶然どころか、実は必要だったのだ。小さな乱れが系の中を通る間に巨大なものにふくれあがらず、いつまでも小さいままに止まっていると仮定してみよう。すると天候が偶然以前に通った状態近くに来た場合、そのあともずっと前のパターンの近くにあるはずだとローレンツは考えた。そうすれば事実上、その周期は予測できることになり、面白くも何ともなくなってしまう。これにひきかえ本ものの地球上の天候のように、千変万化のすばらしい複雑さを作りだすには、何を望むといってバタフライ効果以上のものはとても望めまい。

そのバタフライ効果は、「初期値に対する鋭敏な依存性」という専門的な名前をもらうことになったが、この性質はまったくの新しい概念ではなく、その証拠に次のような古い民謡などに顔を出している。・・・pp45

流体力学ではすべてをナビエ・ストークスの方程式という一つの標準的方程式に煎じつめることができるが、これは流体の速度、圧力、密度、粘度の関係を表す、奇跡とでも呼びたいくらいすっきりした方程式である。ところが、それは何と非線形なのだ。したがってそれらの関係の性質をはっきり突きとめることはどうしてもできない。ナビエ・ストークス方程式のような非線形の式のふるまいを分析しようとすると、一歩ごとに周囲の壁がめまぐるしく変ってゆく迷路をさまよっているようなものだ。・・・
 ナビエ・ストークス方程式に非線形という厄介なものさえ含まれていなかったら、この自然界は今とは全くちがったものになり、科学にとってカオスなど必要なかったことだろう。・・・

 ローレンツの三つの方程式は、流体の或る特別な運動をもとに生れたが、その運動とは、熱い気体や液体が上昇する動きのことで、「対流」として知られている。・・・ローレンツにとって対流の例は、一杯の熱いコーヒーで充分だった。pp.46-48

     ローレンツの水車(pp.54)

     ローレンツのアトラクタ(pp.56)

1-3) 第二章 革命

トーマス・クーン:科学史家(pp.65)

・ 今やカオスはただの理論であるだけでなく方法に、そしてただの信念の規範にとどまらず科学の研究法にまでなった。・・・その鍵となるのはグラフィック・イメージ (画像) である。(pp.71)

・ 振子について:「友人が二人、一人は大きく揺れる振子を、一人は小さく振れる振子の振動周期を勘定するものとすると、十回はおろか数百回まで数えても、その周期は一回、いや一回の何分の一たりともずれることがないはずだ」ガリレオはこの主張を実験のかたちで表現したが、これを信じさせたのはその理論である。それは非常に強力な理論だったため、彼の説はいまだに高校の物理学の授業で、絶対の真理として教えられているぐらいである。ところがそれはまちがっていたのだ。ガリレオの見た規則性は、ただの近似に過ぎない。錘の運動の変化してゆく角度が、これを表す方程式に僅かながら非線形を生みだすのである。振幅が小さければその誤差はほとんど無いに等しいが、厳としてあることにちがいはない。しかもその誤差は、ガリレオが説明しているような大ざっばな実験でも、ちゃんと計測できるのである。(pp.75)

・ 振子を理解しない限り物理学者は乱流や複雑性を真に理解することはできなかった。それも今世紀前半には不可能だったような仕方で、理解しなければだめなのだ。カオスがさまざまな系の研究を統一していくにしたがい、振子の力学は広がり、レーザーから「超伝導ジョゼフソン接合」まで含む、ハイテクを網羅するようになってきた。(pp.77)

スチーブ・スメールUCバークレー:(pp.82)

 多次元トポロジーの研究、フィールズ賞受賞の数学者、

(トポロジー:位相幾何学):「ポアンカレ予想」という五次元以上の空間の問題を解く

その後、トポロジーも力学系も一つのものの裏と表であると考える数学者アンリ・ポアンカレの考え方から、トポロジーと力学系とを結びつけることで、形を使ってある系の挙動の全貌を視覚化することだと考えた。系のある瞬間の状態値を時間経過にともなって見たとき面上に軌道を描くこととなる、さらに、その系のパラメータを変えれば軌道も変わるが大ざっぱに見て同じような形は、その挙動もまた同じようなものだ。こうしてその形を目に浮べることさえできれば、その系が理解できるというわけである。(pp.85-86)

 ファン・デル・ポール:電気工学者の見つけた不規則なノイズをスメールは位相空間に表すことを考えた。表すためには、どうやら位相空間が全く新種の複雑な変換の組合せを経なければならないらしいということに、スメールは気がついた。彼はいち早く、大域的な挙動を目に浮べるという自分のアイデアを、新種のモデルにして表した。その彼の創作こそ、カオスのイメージとしてそれ以来ずっと残ることになったいわゆる「馬蹄」構造である。

スメールの馬蹄の簡単な例を作るには、まず矩形をとり、上下をぐつと押し縮めて水平の棒を作る。この棒の一端をつかんで引き伸ばし、端を重ねるように祈りたたみ、馬蹄に似たC形を作るのである。そしてこの馬蹄形が新しい矩形の中に埋まっているものと想定し、先にやったように押し縮め、折りまげて引き伸ばす、という変換を練返す。・・・

それから数年後大気に関してローレンツが発見することになった「初期値に対する鋭敏な依存性」を、実にすっきりと視覚化したものになった。pp.93

・フィリップ・マーカス:NASA;天文学者兼応用数学者(pp.100

木星の赤斑をコンピュータで再現し、混沌とした木星の流動にあって、その赤斑は安定した位置に存在する混沌であることを見出した。

1-4) 第三章       いのちの満干


     集団生物学;

     生物の個体数変化(繁殖変化)を予測演算する式:Xnext=r x(1x)

ここに、Xnext=来年の個体数、r=増加率(これをパラメータに選び検討している)、x=今年の個体数

この式を変形した式をロジステック差分方程式という。

     ロバート・メイ:生物学者:応用数学者:ロジステック差分方程式の研究者

  r2.7x0.02(1x)0.98Xnext0.0529、さらに進めると、0.6292へと落ち着いていく。しかし、r3.0を超えたとたん、各年の個体数に振動が表れる。カオスが現れたのである。ロバート・メイの協力者ジェームズ・ヨークの論文名「周期三はカオスを意味する」・・・・

たとえ決定論的なシグナルなどがあったところで、そんなものはあっけなく消し去られるだろうと言い張った。つまり決定論的数学が、定常的なふるまいを生んだとするか、あるいは外部からのランダムなノイズが、ランダムなふるまいを生んだとするかのどちらかである。

そのような論議のいきさつの中にカオスは、単純で決定論的なモデルでも、一見でたらめな挙動を生むことがあるという驚くべきメッセージを発したのである。(pp138)


1-5) 第四章       自然のジオメトリ(幾何)

     ベンワー・マンデルブロ:IBM;数学者、経済学:綿の価格変動解析

後に、ハーバード大学で経済学、エール大学で工学、アインシュタイン医科大学で生理学を教える。

  伝送中のノイズの研究において、19世紀の数学者ゲオ・カントーレの名をとった「カントーレ集合」(連続データの中からある法則にしたがってデータを抜き取っていった、残りのデータを使用する方法)を用いて検討。(pp.159)

ナイル河の水位変動の検討を「ノアとジョセフ効果」に分類。(pp162)

「英国沿岸の長さはどれだけあるのか?」長さ、深さ、厚さなどを測るユーグリッド式測り方ではとうてい不規則な形のものの本質を捉えることは出来ない。(pp167)・・

フラクタル(分数的次元)について:

分数的次元とは、ある物体の異常さやギザギザやでこぼこなど、他にはどうしてもはっきり定義しようのない性状の度合を測る方法である。たとえば曲りくねった海岸線は、なるほど長さとしては計れないが、特徴といえる起伏や出入りの度合はちゃんとあるものだ。・・・マンデルブロは分数次元をフラクタルと名付ける。(pp.172)

コッホ曲線(pp.175)、穴だらけの構造(pp.178) ,

フラクタルは自己相似性を意味する。自己相似性とは、スケール全体にわたるシンメトリ(左右対称)のことで、パターンの中のパターン、つまり「回帰」を意味する。(pp.181)

     クリストファー・シュルツ:コロンビア大学:地球学者、地震分布の研究にフラクタル幾何学を使用、(pp.182)

フラクタルの適用先;金属面ささくれ、原油を含む多孔質性の岩石や穴や溝、ずたずたに断ち切られた地震帯の地層

          動脈から毛細血管にいたる血管

          心臓の鼓動、肺の空間構造(面積)

          網目のように入り組んだ河、樹皮、銀河系

          


1-6) 第五章       ストレンジ・アトラクタ

乱流構造(スケールの相違を問わず)

     ハリー・スウィニー:ニューヨーク市立大学:相転移の研究から出発し、流体の流れ研究へ、しかも、乱流構造の研究へ(pp.219)

・ジェリー・コラブ:へーバーフォード大学:

  相転移と流体の不安定性が似ているため、スウィニーとコラブの共同研究(流体)が始まる。まず、クエットの流れの実験から始める。二重の円筒の間に注入した流体を、内側の筒を回転させ観測する。(pp.224

ランダウの理論:流れが増すごとに新しい振動周波がひとつずつ現れるだろう

このランダウの言う転移点をスウィニーとコラブは計測する。(1980)(pp.227)

     デービッド・リュエル:物理学者

     フロレンス・ターケンス:数学者

     注目されていたランダウの図(ただし、図が示されていない、どのような図であろうか)pp.229)

「ストレンジ・アトラクタ」は、これは現代科学の最も強力な発明の一つである位相空間という場所に住んでいる。位相空間とは数を転じて図にする便法で、情報を一切合財要約し、その可能性のすべてに通じる道について、まことに融通の利く地図を作る方法だ。

もし系が摩擦なしに揺れ動く振子なら、変数の一つは位置、一つは速度で、それが表す点は絶えず変りながらぐるぐる果てしもなく練返すループ状の軌跡を描いていく。同じ系でもエネルギーのレベルがもっと高く、つまり振子がより早くより遠くに振れる場合は、位相空間内に前のループと似ているがもっと大きな輪を描くことになる。・・・・

だがここに摩擦という現実の味をちょっぴり加えるとたちまち状況は変ってくるのだ。

振子に摩擦が加わってくると、何も運動方程式など使わずとも、その運命は知れている。どんな軌道であれ、いずれは同じ位置、つまり速度ゼロ、位置ゼロの中央点に落着くものと決っているからだ。結局この中心の不動点は、軌道を「ひきつける(またはアトラク卜する)」わけである。そして軌道は永久にぐるぐる環を描き続ける代り、だんだんと中心に向ってらせんを描いていく。系のエネルギーは摩擦によって散逸するが、位相空間ではその散逸は高エネルギーの外域から低エネルギーの内域へと、軌道を中心にひきつける「ひきこみ」となって現れる。この場合のアトラクタは最も単純なもので、まるでゴム布に埋めこんだ針の先ほどの磁石のようなものだ。(pp.232,233)

     位相図を見ると、ループは周期性を、ねじれは変化を、空白はあの物理的に不可能な場合を表すと想像・考察することが出来る。(pp.233)

     力学系を構成する部分のうち、独立して運動できるものは、それぞれの変数であり、それぞれの自由度を持つているが、その自由度ごとに位相空間内に新しい別の次元が必要になる。(pp.234)

     無限の自由度の物理的挙動を表すには無限の次元が必要であり、それはランダウの乱流のイメージ(pp.235)

     デービット・リュエル:眼に見える乱流のパターンは、未知の法則によっていると想像する。振子と乱流は全く異なる。振子運動は不動点(摩擦による静止状態となる点)と環状ループ(摩擦が無く安定運動状態)の二つのアトラクタによっている。しかし、乱流にはこの特性がない。(pp.240-241

    

(本HPの「まえがき」に図示したサージタンクの運動と同様に、すなわち振子の運動は、不動点と環状ループの二つのアトラクタであることを上記は言っており、振子にカオスが存在するとは言っていない。では、振子にカオスが発生するのは振子運動の特別な場合なのだろうか?この答えは、参考図書2の上田睆亮先生の研究された式を見ることで明らかになる。なお、著者ジエイムズ・クリックは、自励振動や強制振動についての話を記述していない。これは、このテーマを語る上で大きな欠陥であると思う。)

     そこで、リュエルとターケンスは別種のアトラクタをさがす提案をする。:下記のような三個の条件を持つもの。

1)力学的に究極の状態を表す安定性

2)低次元性(ほんのわずかな自由度をもった軌道)

3)振子のような安定ではなく非周期性をもつ

この条件を満たすものが、すでにローレンツのアトラクタであり、論文は公表されていた。(pp.242-243)

また、機械ばねの運動に似た高速の電子回路を研究していた上田睆亮(よしすけ)のストレンジ・アトラクタの論文が公表済みであった。(pp.246



ここから、後半が本書の最も重要な部分であり、かつ、我々にとっても価値ある部分である。是非、皆様にも読んでほしい部分であるため、ここにて本章を終了する。


目次↑


二章 筆者の検討(07.5.1;5.16)

 

自然現象を扱う技術者にとってカオスの発見は、大変なことになってきた。参考書籍1)の通俗書は、広範囲に及ぶカオス現象とその対応・応用、さらに、研究とはどのようなことかを述べており、米国でベストセラーになるだけのことはある。しかし、技術者が容易にカオスの存在を納得できるのは参考書籍2)、3)からであり、これを、補うものとして他の資料も掲載した。さらに、カオスに関する研究成果を実際の技術課題に適用し、解説している大阪大学杉本研究室の http://www-nlmech.me.es.osaka-u.ac.jp/research/index.htmlは、小生の如き不勉強の技術屋には衝撃である。

ここでは、まず、先人の発見に習って、カオスの一例を示すロジステック差分方程式を小生自身が確認したのち、筆者の課題に関して述べたい。



2.1)カオス発生の確認

2.1.1)ロジステック差分方程式による扱い
(07.5.1;5.16)

カオスの存在をパソコンで容易に演算できるものに生物の繁殖数を推算するのに用いられるロジステック差分方程式がある。その式は

Xnext=r x(1x)


ここに、Xnext=来年の個体数、r=増加率(これをパラメータに選び検討している)、x=今年の個体数

であり、応用数学者兼生物学者のロバート・メイが研究に用いていたものである。

すなわち、初年度のxから次年度のXnextを上の式から算出する。さらに次の年の値を推算するにはXnextをxに置き換えた後に、上の式を用いればよい。

非常に簡易な式であるためここでは、EXCELを用いて作成してみた。

ここをクリックするとダウンロードが出来ますCHAOS 1 .(136KB)

ここでは、初年度の個体数をx0.02とし、個体数の増加係数rをパラメータに選択し  r2.7から3.909まで変化させ、60年間