米山 祐司(230)
・この会報の特集は「吉岡義彦先生追悼」とのこと。私の思い出もひとつここに記しておきたい。私の教養1年の時のドイツ語の担当が吉岡先生だった。当時は先生も山をやっていたとは全く知らなかった。先生はまだ北大に来て間もない頃だったはずだが、頻繁に休むのに対していろいろご配慮を頂いた。いつも「今度はどこに行くのか」と尋ねられた。ずいぶんクラブでの活動に理解があるなあと思っていた。評価は「可」であったが、よく通ったと思っている。先生が部長となり運営委員会でお会いした時にはびっくりした。先生も覚えていて下さり、再度びっくりした。その後いろいろご一緒させて頂いたが、私にとって吉岡先生はいつも「先生」だったのである。
・さて、今回、原稿依頼を受けてハタと困った。このところ、ここでみなさんにご紹介できるような山関係の活動を何もしていないのである。唯一関係があるといえば、家族でキャンプに行くときは必ず「焚き火」をすることか。これは絶対条件で、キャンプは子供たちを楽しませることはさておいて、焚き火をして酒を呑むことが目的である(この焚き火に惹かれるのはやはり山スキーの後遺症であり、同様の会員の方も多いのではないだろうか)。そこでどうしようかと考えたが、ここでの「活動」は特に「山」に限定していないとあえて判断してしまう。そうすると、私のこのところの「活動」は「海」である。「海」といえば最近は会員の中でシーカヤックが盛んなようであるが、私が海でやるのは釣り、しかも「岸壁・防波堤でのおかず釣り」である。こんなのでいいのかとも思うが他に特に何もやっていないので、ここでは最近1年間の釣りと釣った魚の味について述べてみようかと思う。
・北の海は魚種は少ないが数は多い。数が多いというところが私の嗜好に合う。出来ればたくさん釣れる方が楽しい。たくさん釣れると後の処理が大変だが家の者も近所も魚好きなので全部食べ尽くしてしまう。私の釣りは食べる(食べさせる)ことの楽しみの比重が大きいのである。このところ、近郊で釣れる魚を大体網羅した結果、1年間通してのスケジュールが出来上がった。以下そのスケジュールに沿って記してみたい。
・1月から3月。この時期は凍った湿原の川(市街と湿原の境の旧釧路川)でキュウリウオ、コマイ、チカを、湖でワカサギを釣る。よく氷に穴をあけてワカサギを釣っている映像を見るがあの要領である。川での主たる対象はキュウリウオで、これはワカサギ、シシャモ、チカの兄弟であるが最も大きくなり30cm以上になる。年中沿岸にいるが冬になると川に上がってくる。氷が張った直後の正月明けには常時3桁の釣果が期待できる。匂いはきついが生干しにすると匂いは風味に変わり、甘みのある白身で熱燗によく合う。現場でそのまま焼いてコップ酒をやると寒さも忘れる。
・小さめのやつはよく干してダシにすると一味変わったみそ汁になり、むしって食べる子供のおやつにもなる。結構気楽な釣りなので寒さよけのテントを持って家族でも出掛ける。最近はワカサギよりよく釣れて「量」も多いというのでキュウリ釣りに行く方が多い(特に妻の希望)。釣り場には毎年この時期オコボレを狙ってオジロワシがやってきている。
・3月には氷が落ちる寸前にニシンが入ってくる。キュウリウオにも飽きてきた頃にニシンが釣れ出すと皆の目の色が変わってくるが、それほど釣れるわけではない。1日に何回か回遊してくるのである。ただ、氷も空気も緩んできて春が近いのを感じるようになる。この春ニシンは、身は柔らかく、甘く、塩焼きがおいしい。輸入冷凍大型ニシンとは種類が違うのではないかと思うほど味は違う。
・5月になると家族で海岸に焚き火をしに行く。盛大な焚き火と流木拾いと焼き芋が目的であるが、ついでに近くの川の河口近くでアカハラを釣る。これは産卵のために遡上してきた降海型のウグイで40cm位にもなり、赤筋の婚姻色が出てどっしりと太っている。今までは特に食べなかったが、今年はあまりに見事なので塩焼きにしてみたら夏のウグイとは違い臭みもなく結構いけた。
・続いてカレイが始まる。まずはクロガシラが中心。もう少し暖かくなるとマガレイとソウハチが釣れ出す。クロガシラは身が厚く、刺身、煮付けにするが、釣ってきた日の刺身は透明な味の歯ごたえが売りで、次の日まで寝かせると柔らかくなって旨味がでる。これはクロガシラに限ったことではないが、2度違う味を楽しめる。マガレイの方が味の点では上である。ソウハチは地元では煮付けにもしているが、生干しが定番だろう。釧路の街中ではリヤカー店があるが、そこでは必ずこのソウハチの干したのを見ることができる。独特の風味があり、ファンも多い。これもよい酒の肴である。同僚はこの時期標津沖に大物カレイ釣りに行くが、お裾分けをもらうが楽しみなのが大きなゴソ(ヌマカレイ)である。小さいやつ、川や河口近くで釣れるのは泥臭いが、沖で大きいのになるとクロガシラの刺身よりもさっぱりしていてうまい。ただし、刺身のみである。種類が違うのだろうか。
・6月から7月には防波堤でカジカとアブラコを狙う。この釣りは簡単な仕掛けで散歩気分である。2、3時間も釣ればバケツ一杯になる。カジカはいやになるくらい種類があるが、もって帰るのはだいたいこのあたりでいうマカジカ(ギス、イソ)が中心。身はぶつ切りにして頭も割り入れ、みそ汁にしてしまう。余ったらスープストックにしておけば料理に使える。通称ネカジカ(ヨコスジ)は沖の根につくが、たまに防波堤にも来る。これは刺身に出来、煮付けでもイケル。ケムシカジカの姿はグロテスクだが刺身では最高。アブラコも40cm近くが足下から釣れ、これは塩焼き、味噌漬け、粕漬けがいい。もう少し小さいのは甘辛く煮付ける。アブラコは南でいうアイナメだが、こちらでは近縁のウサギアイナメ、スジアイナメ(通称ハゴトコ)が中心となる。青とか赤とか黄色だとかの色が鮮やかである。カジカは重いだけだが、アブラコはなかなかのファイターである。
・7月の末になるといよいよマス(カラフトマス)のシーズンが始まる。マスは8月の下旬までで、続いて9月一杯がアキアジ(シロザケ)となる。この時期、港は一気に燃え始める。昔はマスはウキ、アキアジはブッコミ(投げ釣り)が中心だったが、最近は海でもルアーやフライをよく見るようになってきている。しかし、私はマスもアキアジも釧路バージョンのウキ釣りである。マスは50−65cm、アキアジは60−80cm台で針掛かりすると一気に爆発するが、ウキへのアタリは微妙である。アキアジはマスよりもさらに微妙でウキが沈み込まないことも多い。
・8月の下旬にはマスの最後の群とアキアジのファーストランが重なるが、一度アキアジが上がり始めるとマスの価値は一気に下落する。その闘い振りと重量感が格段に違うのである。竿を持つ手が痺れるのはアキアジでなければ経験できない。しかも、アキアジのハシリはブナっている(婚姻色がでたのがブナでまだでてないのが銀毛)が5、6年魚の80cm台の大型が多く一層熱くしてくれる。ブナでも、オスの腹の身の厚いのは油がのっていてうまい。サケは秋に回帰するアキアジより6月頃に定置網で水揚げする回遊中のトキシラズや北洋ものの方が人気が高いが、アキアジもすてたものでなく少々ブナっていても十分うまい。アキアジに比べてマスの評価は低いが味は淡泊でこれはこれでかなりうまい魚である。サケ・マスはよく知られているので、食べ方についてここでは3つだけ述べたい。
・マスもアキアジも私は頭と中落ちの汁が一番好きだ。頭の軟骨周辺の味がいい。子供も頭が入ってないと怒る。こちらの狙いは目の回りである。最近ではイクラの醤油漬けも有名になったが、家では醤油だけしか使わない。いろいろ手を加えるところもあるようだがこれで十分である。ただ、醤油は「歯舞の昆布醤油」というのを使っている。「昆布」が生臭さを消すのではないかと妻はいっている。生の半身を鉄板で焼いて味噌をのせ、野菜を山盛りにするのがチャンチャン焼きとなる。火が通ったら全部かき混ぜてしまう。これは私にとって野菜をうまく食べる料理といえる。近所のおばさんは、アキアジは内臓も全て食べるというが、家ではまだそこまでいっていない。今後の課題である。
・9月から10月にかけて、マス・アキアジの熱狂とは離れて静かに釣りをするならソイ(クロソイ、シマソイ)とガヤ(エゾメバル)がいい。これには知床まで出掛ける。静かにウキが沈み込むのを楽しめる。ウキではなく直下釣りにすると、これは場所さえ見つければ子供でも手軽に釣れる。引きもいいので皆夢中になる(やはり「静かに」とはいかないかもしれない)。両方とも、刺身、煮付け、塩焼きと何でもいいが、これもアラの澄ましが一番好きだ。絶対頭を割り入れないといい味がでない。刺身ではガヤの方が淡泊でおいしいと感じている。
・10月に入るとシシャモが岸寄りする。シシャモは初冬のある夜、一斉に川に遡上し産卵する。それまで河口近くで体調を整えているのである。これは新鮮なところを干して焼いて丸まま食べる。メスは卵が魅力だが、味はオスの方がいい。
・風が肌を刺すようになる10月から12月はコマイとチカ。この時期のコマイはゴタッペといわれる小さいのが多い。小さくても生干しにするといい味になる。食卓にキュウリとコマイの生干しがあると最初にコマイの方が無くなる。干していてキツネにとられたことがあるが、キツネもキュウリをよけてコマイだけとっていった。出刃包丁でも持っていき釣ったはじからさばいて海水につけておけば後は干すだけである。大きいのをオオマイといっているがこれは干すよりも鍋にした方がいいスープがとれる。コマイは鱈の親戚である。チカは海にいるワカサギといってもいい。ただ、ワカサギよりも匂いはきつく、大きくなると30cm近くになる。チカは潮通しのいい埠頭の角や船の陰に集まる。群に当たるとバケツ一杯ぐらいはいく。ちょっと2、3時間楽しんでくるのにいい。のべ竿でやれば小さいわりに引きもいいので熱中できる。ワカサギと同じように天ぷら、唐揚げ、南蛮漬け、白焼きにしている。大きいのは糸作りの刺身にしても焼いてもいい。この釣りを始めるともう冬である。そして、次には早く川が凍るのを待つことになるのである。
・以上、このあたりで岸から釣れる代表的な魚を紹介したが、他の地方に行くと市場で魚屋を見るのが楽しみである。それぞれの地方で多様な魚がいて見ているだけでも楽しい。このあたりではどんな魚をどうやって釣っているかを見るために港に行く時間を都合することもあるが、まだ竿は出せないでいる。今度はみなさんの地方の魚とその釣り方をいろいろ聞いてみたいと思っている。