レポート:システム部門の変革
<ERPパッケージの研究(2)>
システム部門の変革
1999年3月21日
年末までで一区切りつけた、ERPについての研究を再開します。私にとって、現時点での最大の関心事です。
ERP導入は、システム部門に対して大きな変革をもたらします。システム部門にとって、その変革を受け入れ、適応できなければ、自らの存続を危うくするような性質の「変革」です。
EDP時代のシステム要員
情報処理がEDPと呼ばれていた70年代から80年代中頃まで、「情報システムは専門家の仕事」でした。仕事の手順や考え方、計算式をきちっと書き出すことができたとして、それからそれをプログラムとして実現する方法を知っているのは、情報システムの専門家だったのです。
システム要員と現場の担当者の間のコミュニケーションも大変でした。お互いに専門用語が分からないのです。こんな会話が交わされました。
会計担当「貸方は未払費用ですよ」
システム担当「貸方?」
会計担当「貸方は右側」
システム担当「右側って何の?」
システム担当「同じ注文番号はあり得ないのですね」
受注担当「あり得ませんよ、めったに。」
システム担当「『めったに』ということは、たまにはある?」
受注担当「いえいえ。99.9%あり得ません。」
そして、システム担当者はその専門知識、たとえばCOBOLというプログラム言語を知っているというだけで、その存在価値を認めてもらえたのです。
オンライン時代のシステム要員
情報システムがEDPとは呼ばれなくなったのは、おそらく80年代の後半でしょう。そのころから、情報システムはデータベースとオンライン処理の時代になりました。システムを構成するプログラムは、相互に複雑に絡まり合うようになりました。
このころ、一部のシステム要員の意識が変わりました。「COBOLを知っているだけではダメだ」ということです。問題意識は3つの方向があります。
(1)ユーザとのコミュニケーションをスムーズに行いたい
この問題意識から、たとえばデータ構造の分析技術が発展しました。データ構造図という図面で、ユーザとシステム担当者が会話をしようとする試みです。少し熱心な現場担当者は、データ構造図を読むことができるようになりました。描けるようになった人さえいたのです。
(2)部門を越えた情報の流れを理解しなければならない
この問題意識からは、システム要員が現場担当者の言葉を覚えるようになりました。会計システム担当者は会計用語を、販売システム担当者は販売用語を覚えはじめたのです。このことは、システム担当者による業務理解を進めました。もちろん、担当している業務知識では現場担当者にかないません。しかし、あるデータが現場の部署での処理を終え、次の部署へ、さらには会計処理へと流れていくプロセスを知っているのは、むしろシステム担当者でした。
一方、この現象はシステム部門にややこしい問題をもたらしました。業務システム別に担当者を分け、担当者はそのシステムからなかなか離れられなくなったのです。担当者を一人前にするには、10年を要するのです。次の担当者を育てなければ、担当者を変えることはできません。一方で、担当者にならないと、仕事は覚えられないのです。
(3)システムの品質を上げなければならない
システム開発の方法論も開発されました。システム要件をまとめていく手順、ユーザとコミュニケーションすべきタイミング、フェーズごとに行うレビュー会議などが導入され、それまでの職人仕事的なシステム開発から、産業としてのシステム開発へと脱皮をはじめました。
システム開発は、より高いレベルで現場の望む仕組みを構築することができるようになりました。
ERPパッケージがもたらすシステム部門の変革
ERPパッケージを導入すると、システム部門がプログラム言語を使いこなせることの価値はほとんどなくなります。プログラムを作成する仕事自体も減ってしまいますし、あったとしても、これまでのように白紙からの開発ではなくなります。
一方、ユーザとのコミュニケーションの重要性はさらに高まるでしょう。しかし、ERPパッケージについて現場担当者が知りたいと思ったときに、それを説明してくれる人は、システム部門以外に、ERPベンダーや外部の経験者なども期待できます。システム部門の独占状態が崩れ、競争が持ち込まれるのです。
部門を越えた情報の流れを理解することも重要です。それどころか、今の流れを理解するだけでは不足です。今の流れ以外に、どのような方法があるのかを知り、この仕事にはどれが合うのかを選択する能力までが要求されます。
システムの品質についても、極めて高いレベルを求められ、それを実現することが可能になります。単にトラブルが少ないというようなことではなく、真の意味で利用者の業績に貢献しているかどうかが問われるのです。
このとき、システム要員に求められる資質はどう変わるでしょうか。当然ながら、プログラミング言語を知っている必要性はありません。ユーザとスムーズにコミュニケーションができるだけの業務知識と高い人間性を持ち、部門や業務機能をまたがった情報の流れを理解しており、利用者のニーズを満たすことよりも、むしろ利用者の業績に貢献するということを可能にする資質です。
それは、「経営コンサルタント」とかなり近いものです。そういえば、アメリカではERPパートナーとして生き残っているのは、経営コンサルティング会社だけだといいます。ERPパッケージにより、システム部門はその役割を完全にかえる必要があるのです。
前のレポート|
次のレポート
魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Last update 2001-1-27 リンク変更