レポート:視線を市場に向ける
<ERPパッケージの研究(2)>
視線を市場に向ける
1999年4月10日
マーケットを見るべき人たち
ここでは製造業を仮定します。社内組織として、営業部、製造部、物流部、研究所、本社部門(経理、人事など)があるとします。
これらの組織体系の中で、マーケットを見る役目を担うのは営業部門です。営業部門は、マーケットを見て、需要を予測し、販売計画を作成します。その販売計画をベースに製造部門では生産計画を作成します。そして、販売計画に基づく販売活動、生産計画に基づく生産活動が実行され、市場に商品が供給されていきます。
本社部門は、営業部、製造部、その他各部門の経理業務や人事業務を支援します。
さて、これは本当でしょうか。実際にはこんなことが起こっていませんか?
- 営業部門は精度の高い需要予測を行うことができない
- 製造部門は営業部門の計画を信用することができない
- 在庫不足にならないように、販売計画より多めに作るようにしている
- 研究部門は、どんな新製品を開発すればあたるのか分からない
- 本社部門は、営業部門や製造部門に経理の話や人事の話は通じないと思っている
なぜ視線は市場に向かないのか
営業部門の一営業マンになってみてください。日常の仕事で気になることは何でしょうか。いくつか挙げてみましょう。
- 売上のノルマを達成しなければならない。さもないと、上司に叱られる。
- お客からのクレームへの対応は面倒。原因は自分ではないのに。
- 標準品を大量に買ってくれるお客さんが一番ありがたい。
- 注文変更が多いお客はかなわない。
- 製造部門との協力関係をいかに作っていこうか。
- 研究部門の思いつきにはつき合いきれない。
営業部門にとって、市場や顧客はあまり重要ではないのです。その結果、販売計画は自分のノルマが達成可能と思われ、かつ、製造部門の納得してくれる結果になってしまう。そして、それを説明できるような需要予測を行う。もちろんそんな予測が当たるわけはない。
視線を市場に向けるために
しかし、企業にとって顧客は重要です。顧客に接する営業部門にも、顧客を重視してもらわなければなりません。そうさせるためには、どのような手を打つべきでしょうか。いくつかあげてみましょう。
(1)社内の販売・製造・物流の計画段階での連携
社内で、販売計画に基づく物流計画や生産計画、生産計画に基づく購買計画など、実行段階で全体が同期できるように計画の連動が必要です。これにより、お客様のわがまま(小ロット化、短納期化、変更の頻発)に上手に対応できるようにします。
営業部門にとっては、どこまで顧客に約束していいのか、その境界線が分かるようになります。
(2)クレーム対応の迅速化
お客様からのクレームに対して、迅速に対応できるような仕事の仕組みを導入します。迅速に対応することにより、顧客満足度を高めることが可能です。また、営業部門、品質管理部門の負担も軽くなります。
(3)全社の意識を顧客・市場へ
その上で、全社の意識を顧客・市場に向けます。
営業部門は、生産・物流・購買部門がどこまで対応してくれるのか分かっていますから、顧客の要望を素直に聞くことができます。物流部門も、顧客のニーズへの対応が的を得るようになります。
製造部門は、営業部門からの情報に基づいて生産活動を計画・遂行します。営業部門が受け取ってくる顧客のわがままにも、これまでより短期間・低コストで対応できるようになっています。
研究部門も、お客に頻繁に会います。顧客ニーズを知った上で、新製品開発のアイデアを育てていきます。
間接部門は、どれだけ上手に顧客・市場に対応できているのかを計測し、支援します。「上手」は、いかに市場に適合してるか、いかに生産性を上げているかという観点です。
短期的な計画の連動(受注から日々の生産計画、生産計画から日々の購買計画など)は、規模の大きな企業にとっては容易ではありません。一方で、それはERPパッケージの得意分野で、ERPパッケージは非常に強力な武器になります。
再び、マーケットを見るべき人たち
冒頭で、「マーケットを見るのは営業部門の仕事」と書きましたが、ここで訂正します。顧客を見ることは営業部門だけの仕事ではありません。会社全体の仕事で、間接部門や経営者も同じようにマーケットを見ることが求められます。マーケットを見ているから、目標やビジョンを共有できるのです。
また、経理部門の業績管理(管理会計など)や人事部門の人事管理(人材配置など)も、顧客を強く意識して行う必要があります。
全社がマーケットを意識して行動するためには、前述のような部門間の連携が必須です。連携が不十分なままマーケット志向を強いても、「やったふり」と「責任回避」が横行するだけになるでしょう。
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魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Last update 1999-4-11