レポート:<役に立つ管理会計>すべての指標はROAに通じる

<役に立つ管理会計>

すべての指標はROAに通じる

2000年1月23日


 管理会計といえば、部門別損益や製品別損益を思い浮かべる人がいます。最近はキャッシュフロー談義が盛んですが、そういう人たちにとってはキャッシュフローと管理会計は別の話になります。売上高利益率を高くすることが、業績向上そのものだと思っている人たちもいます。高く売らないと儲からないが、安くしないと売れないと言うジレンマです。
 今回は、企業の業績を数字でとらえる手段として、管理会計を取り上げます。

すべての基本はROA

 「キャッシュフロー計算書だけを見れば、企業の業績はすべて分かる」と言った銀行マンがいます。こういう言葉は得てして極端な表現をすることがあるので、彼の真意は分かりませんが、この言葉を真に受けてはいけません。
 事業において「儲ける」というのはどういうことかを考えてみましょう。売上高の20%の利益がでたという事実が「儲ける」ということのすべてを語っていると考えている人が意外と多いのです。でも、これは収益の一側面を見ているに過ぎません。原点に戻って考える必要があるのです。

 企業は、元手からスタートします。元手とは、最初は資本金のことです。この元手で店を借りたり、商品を仕入れたりするのです。元手が足りなければ、借金もします。
 1千万円の元手で店を借り、商品を仕入れ、販売をしたとしましょう。そのときに、100万円売って20%儲かるのと、1000万円売って20%儲かるのと、全然違いますね。これを、先ほどの「売上高の20%の利益」が語っていない部分です。

 企業の収益性を包括的に表現する指標は、総資産利益率(ROA; Return On Asset =営業利益率/総資産)です。総資産とは、資本金と借入金、その他の流動負債が含まれます。その総資産で、どれだけの営業利益をあげたのかという指標です。

 管理会計は、企業の収益力を数字で管理するための手段だと言えるでしょう。その管理会計で、企業全体の状況を包括的に表現する数字が、ROAです。そして、ROAを分解すると、さまざまな指標があります。

ROAの分解

 ROAは、最初に次のように分解されます。

 ROA
 = 売上高対営業利益率 × 総資産回転率
 = (営業利益/売上高) × (売上高/総資産)

 先ほど申し上げた、売上高対営業利益率だけでは「収益の一側面を見ているに過ぎない」というのは、こういう意味です。総資産回転率を見ないと言うことは、在庫の増減や売掛金の増減を見ていないということです。これは、管理会計としては片手落ちです。

 さらに、総資産回転率は総資産の各要素の回転率に分解できます。在庫回転率や売掛金回転率というように分解できるのです。そのそれぞれを他社と比較することにより、ベンチマーキングができます。単に「総資産回転率が高い(低い)」では具体的な対策に結びつきませんが、分解することによって、具体的な対策に結びつけることができます。

キャッシュフローの考え方の導入

 管理会計にキャッシュフローを導入しようとする考え方が最近は主流になりつつあります。例えば、EVAは最近の流行の一つです。しかし、EVAには問題もあります。EVAの大小は、ビジネスの大小に左右されます。つまり、現在は小さいが将来性のあるビジネスのEVAは小さいのです。EVAだけを見た経営判断は、大きなビジネスだけを重視する経営判断を招きます。

 ROAをキャッシュフローベースに見直してみましょう。 
 一つは売上高の見直しです。キャッシュフローでは、売上代金回収になります。しかし、売上高は見ておいた方が良いというのが私の考えです。
 もう一つは営業利益の見直しです。これは、フリーキャッシュフローが適しているのではないかと思います。
 最後に総資産の見直しです。総資産の中には、計算上の資産や負債があります。売掛金や買掛金で、これらには金利が掛かりません。フリーキャッシュフローが、株主への配当や借入金の金利支払の原資になることを考えると、金利の掛からない負債を除いた方が、適切に判断できそうです。したがって、有利子負債と株主資本の合計、つまり「投下資本」を使うのが適しているのではないかと思います。
 最終的に、投下資本に対するフリーキャッシュフローの比率がROAの変わりに使われるのですが、その値は資本コストを上回っていなければなりません。

皆さんの考えは?

 このレポートは、いろいろな参考書を眺めてから書こうと考えていました。それで1ヶ月間の間が空いてしまったのですが、この間で結局は1冊の参考書も見ることができませんでした。今日の1日で、記憶に残っている範囲で書いてしまったのです。
 ということは、書いてある内容に見当違いの理屈が入っている可能性は多分にあります。皆様のご指導をお願いいたします。


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魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Last update 2000-1-23