レポート:<原価でサバイバル> Perfect Storm(外乱と原価管理)

<原価でサバイバル>

Perfect Storm(外乱と原価管理)

2000年9月2日


 最近、原価管理に関心があります。私の勤務先で、このテーマが急速にクローズアップされているのですが、その仕事に私自身は直接には関わっていません。それでも漏れ聞こえてくる現場の声、他社との違いに驚きの毎日です。
 そうしてたどり着いた最近の私の結論は、このシリーズのタイトルである「原価でサバイバル」です。つまり、原価管理は生き残りをかけた製造業のグローバルな競争の中で、おそらく最も基本的な生き残りの条件だろうということです。

標準原価の必要性

 私の周辺で、原価管理がクローズアップされたのは、私の勤務先へのERP(R/3)導入にあたり、標準原価の導入を検討したのが始まりでした。全社的な問題になったのは、すでに導入作業が始まった2000年4月です。「今まで何をしていたの?」とあちこちから言われました。
 このホームページを見てみると、標準原価について最初に描いたのは「『利益』について」というレポートで、1998年2月にさかのぼります。レポートに間違ったことが書いてあるわけではないのですが、この時点で実は私は、標準原価について正しい認識をしていませんでした。
 次に標準原価が現れるのは、「役に立つ管理会計」(1999-3-28)です。ここでは、日次管理のために標準原価が必要だという程度で、ここでも認識が不十分でした。このレポートには、標準原価を実際原価に近づけることが重要であるかのような記述がありますが、これは間違った認識です。
 今思うのは、原価管理のためには標準原価しかあり得ないということです。実際原価計算は、原価管理を想定していない計算です。だから、原価管理をしようとすると、その結果を複雑に分析する必要があります。加工した結果を再び解きほぐす作業ですから、それは簡単ではありませんし、分析に限界があります。簡単ではないということは、理解しにくいと言うことであり、分析結果がアクションに結びつきにくいという結果になります。また、たとえば月次の原価計算の結果をいくら分析しても、その月のどこに変化があったのか分かりませんから、変化の原因の把握ができずに終わってしまうことになりがちです。
 私は今「標準原価しかあり得ない」と申しましたが、これはすでに多くの先輩たちから聞かされていたことです。たとえば、
 実際原価、正常原価、標準原価はいずれも原価計算手続きの基礎となりうる。しかし、管理目的及び価格設定の目的のためには、必ず標準原価を使用しなければならない。
(ヨーヘン・ジンマーマン/「MBA全集3 アカウンティング」(ダイヤモンド社発行)より)
この文章を読んだときに、私はここにマーカーで印を付けました。しかし、その重要性を十分に認識できなかったのは残念でなりません。

原価は管理できない?

 ある化学会社にお勤めの方と、原価の話になりました。彼の勤務先の原価計算制度は実際原価計算です。私が「製造部門の原価管理の基本は原単位管理(原料の配合のことです)と経費管理」だと発言したところ、反論が返ってきました。原単位も経費も、それほどぶれないと言うのです。それでは何が大事かというと、次のようでした。
 これらが原価のポイントだとすると、それに対してどのようなアクションが取りうるでしょうか。原料の価格は、購買部門の努力もありますが、一企業ではどうしようもない市況の変化もあります。操業度は、売上との関連で管理されるもので、独立に変動させると過大な在庫の積み増しを許すことになります。上流工程の操業度も同様です。これらのことから、原価は管理できないという結論になります。本当でしょうか。

 「Perfect Storm」という映画の宣伝を見ました。ものすごい荒波にもまれている船が映っています。原料の価格や操業度は、原価管理から見ると、あの荒波です。荒波に弄ばれていると、船がどっちへ進んでいるのかはどうでも良くなります。ところが、船には行き先があります。行き先に舳先を向けるのが、原価管理です。
 原価管理どころではない危機は起こるのかもしれません。しかし、だからといってちょっとした波に揉まれたときにも、行き先に無関心になってはならないのです。行き先を失った船は働いていないのと同じです。

 原料の価格変動、設備の操業度の変動があっても、製造部門の原価管理の基本は、原単位管理と経費管理でしょう。製造部門による原価管理を可能にするためには、管理できない変動を分けて管理することが必要です。そのためには、標準原価計算制度が必須だというのが、現時点での私の認識です。
 それは仮に月次の原価管理であったとしても、同様です。


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Last update 2000-11-11