レポート:<特命任務/ERP> ERPプロジェクトの始めと終わり

<特命任務/ERP>

ERPプロジェクトの始めと終わり

2001年3月3日


 ERPを導入しようとするプロジェクトのプロセスを考えて見ます。その始まりと終わりは、しばしば勘違いされていると思うからです。始まりは、プロジェクトメンバーが任命され、プロジェクトが組織として発足したときだと考えられます。終わりは、ERPが本番運用されたときだと考えられます。これは、両方とも間違っています。なぜなら、ERPは全社レベルの経営革新だからです。


 ERPプロジェクトメンバーが任命され、プロジェクトが組織として発足したときには、プロジェクトのミッションが決まっています。このことは、すでに経営革新が始まっていることを意味しています。したがって、この時点を「始まり」と考えることは間違いなのです。
 「経営革新」という観点を重視し、経営者がERPを認識したときが「始まり」と考えるべきではないでしょうか。

フェーズ-2:経営革新の目標設定

 経営者がERPを認識してから、経営革新の目標設定をするまでの期間を、ERPの始まりのフェーズと考えましょう。その前に、システム部門によるERPの調査があるかもしれません。しかし、経営革新であるERPはその時点で始まっていると考える必要はないでしょう。
 ここでの目標は、あまり具体的である必要はありません。方向を示す程度でよいでしょう。通常は、道具を見極めないと、目標の程度は設定できません。この時点では、まだ道具を理解していないはずです。

フェーズ-1:実行計画の策定

 ここで、ERPパッケージが選定されます。そのため、これを「始まり」と考える場合があります。しかし、パッケージ選定は経営革新の目標に沿ってなされますから、すでに始まっていると考えるべきです。
 ここで、方向だけを示していた経営目標を、少し具体化する必要があります。およそどれほどの予算で、どれだけの期間をかけて経営革新を成し遂げようとするのかを明確にするのです。

フェーズ0:プロジェクト準備

 ここで、プロジェクトのコアメンバーが任命され、計画の具体化が始まります。何人かのプロジェクトメンバーにとっては、これが始まりになります。
 このフェーズで、これからスタートするプロジェクトで検討対象とする範囲を決定します。

フェーズ1:基本設計(業務要件定義)

 ここで、全社での検討が開始されます。多くの社員にとってここが始まりになります。
 このフェーズで、目標とする業務の要件が決まっていきます。言ってみれば、成し遂げるべき成果の上限が具体的になっていくプロセスです。

フェーズ2:開発作業(パラメータ設定、プログラム開発)

 ここで、実際のERPパッケージへの作りこみが始まります。実際にパッケージを触るので、「始まり」という印象が明確になります。
 ERPパッケージと現状業務のギャップが明確に認識されるプロセスです。「これしかできないのか」「これで業務が回るか」など、具体的にギャップを解決する検討がなされます。開発に参画する各現場の代表者にとっては、変化を受け入れるプロセスの始まりになります。

フェーズ3:運用移行(ユーザ・トレーニング、データ移行)

 全利用者へのトレーニングがされます。全従業員が変化を認識するという点で、「始まり」ですが、「心の準備」という段階です。
 トレーニングは、単に画面操作だけの問題ではありません。システムの思想やグローバル・スタンダードの業務の仕方など、この段階で理解する必要があります。いわば、経営革新の準備としてのトレーニング開始です。「キャンプイン」という感じでしょうか。

フェーズ4:本番稼動・運用サポート

 ERPパッケージが業務に適用されます。経営革新は完了したのでしょうか。いいえ違います。それは今始まったのです。
 ゲームに新しいルールが適用され、シーズンが開幕しました。ここから、グローバル・スタンダードに沿った経営革新が遂行可能になります。それはたとえば、在庫削減の仕組みがERPパッケージで準備され、いつでも利用可能になっている状態なのです。

フェーズ5:業務改善・レベルアップ

 ERPパッケージの操作になれ、またERPの思想を実務の上で理解し、ようやく業務改善が始まります。たとえばリアルタイムで経営判断ができる程度にデータの精度が向上し、あるいは在庫削減への取り組みが始まります。


 企業としての「始まり」と考えられるポイントは2つありました。ひとつはフェーズ-2の経営者がERPを認識した時点、もうひとつはフェーズ4の本番稼動・運用サポートでの経営革新の始まりです。それ以外は、プロジェクト・コアメンバーなど一部社員にとっての「始まり」や、変化を認識する「心の準備」であり、企業全体の始まりではありません。
 そして重要なポイントがもうひとつ。「ERPには終わりがない」ということです。


前のレポート次のレポート
魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Last update 2000--