レポート:<特命任務/ERP> ERPの柔軟性
<特命任務/ERP>
ERPの柔軟性
2001年3月10日
たぶん1996年ごろであろうと思いますが、ERPに対して「柔軟性に欠ける」という評価が広がり、その後は「柔軟性」を売りにするERPパッケージがいくつも出てきました。オラクル、BAAN、SSA BPCSなどです。そして、柔軟性に欠けるといわれる代表格がSAP R/3でした。
今回は、企業の基幹業務システムの「柔軟性」について考えてみます。
一口に「柔軟性」と言っても、さまざまな観点があります。
- 特徴的な業務要件に対して「柔軟に」対応することができること
- 業務要件の変化に対して「柔軟に」対応することができること
- 組織変更に対して「柔軟に」対応できること
- 情報技術の進歩に対して「柔軟に」追従できること
- 動作環境やパッケージのバージョンアップの適用を「柔軟に」選択できること
思いつくままにあげてみましたが、これらはそれぞれ、かなり違うことを言っています。それぞれについて、ERPパッケージと自前システムを比較しながら、柔軟性について考えます。
業務要件に対する柔軟性
ERPパッケージを導入していると、業務要件に対して「帯に短し、たすきに長し」という状況になることがしばしばあります。自分で作れば、業務要件のままで開発することができるので、ERPパッケージの柔軟性の欠如が強く印象付けられます。
たしかに、たとえばある製品の特性に合わせた独特の業務要件があるとき、ERPパッケージがそれを十分に実現できない場合があります。よくあるのは、販売業務での数量の扱い、生産業務でのBOMの多様性(加工条件により無限のパターンがあるような場合)などです。これは確かに、困った問題ではあります。
ところが、実際には財務会計や管理会計でも業務要件との不一致が発生します。これらの業務は、主として数字を扱うバーチャルの世界ですから、業務要件は変更し易いのですが、強硬な抵抗に会う場合があります。これは、たいていの場合に柔軟性の問題ではありません。ERPに組み込まれているベストプラクティスへの理解の問題です。自社独自の業務要件がベストプラクティスを超えている可能性は僅かです。この側面では、柔軟性のあるパッケージでは業務のレベルダウンをきたす可能性が大きいことになります。
まとめると、柔軟性も痛し痒しです。
業務要件の変化に対する柔軟性
こういう世の中ですから、業務要件が急に変わることがあります。調達をインターネットで行うようになったり、生産形態を見込み生産から受注生産に移行したり、受注業務を各営業所から受注センターに集約したり、これまでなかったような変化が起こることもあります。
このような変化は、たいていの場合にERPパッケージのほうが柔軟に変化についていけます。なぜなら、パッケージではプログラムを作ったり直したりする必要がないからです。逆に、業務要件にきめ細かく対応した自前システムでは、それらのきめ細かい対応をいちいち見直さなければならず、短時間で大きな変化に対応することはできないということになります。
組織変更に対する柔軟性
組織変更は、システムの担当者にとっては厄介な仕事です。組織変更への対応の仕方は、ERPパッケージであろうと自前システムであろうと、大きな違いがないようです。どちらの場合も、実体の組織に細かく対応するほど、組織変更は難しくなります。システム内の組織は、実体の組織と無関係に分けて、それをたとえば管理会計のレポートだけで束ねて見るのが、柔軟性の点ではよさそうです。
システムが統合されているという点からみると、ERPパッケージはひとつ対応すれば全体が変わります。ただし、変えるのは難しい仕事です。自前システムは、多くの場合に業務システムごとに対応が必要で、対応漏れもしばしば起こります。
情報技術の進歩に対する柔軟性
これは圧倒的にERPパッケージが有利です。メジャーな新しいOSの導入や新しいデータベースへの移行に対して、基本的な準備をパッケージベンダーがしてくれます。UNIXからWindows2000への移行のような、自前システムでは大変な変更になるケースでも、多分たいした苦労もなく移行できるのではないでしょうか。
自前システムでは、古い技術をいつまでも維持していくことが必要です。新しい技術を学んできた新入社員に対して、古い技術を教え込み、仕事に就かせます。新入社員にとっても、先輩たちにとっても、それは楽しい話ではありません。
バージョンアップの選択に対する柔軟性
これは、自前システムにはない心配です。
ERPパッケージは、しばしばバージョンアップがなされます。バージョンアップが何回かあると、古いバージョンのサポートが停止されます。仮に、3世代前までしかサポートされないとすると、バージョンアップの3回に1回は適用しなければなりません。バージョンアップは、システムに手を加えるほど重たくなっていきます。また、システムに手を加えるほど、ベンダーのサポートがほしくなります。バージョンアップをやむを得ずやるとしたら、それもなかなかつらい話です。システムに手を加えないことが、ERPパッケージのバージョンアップを軽くするコツです。
前のレポート|
次のレポート
魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Last update 2001-3-10