レポート:<特命任務/ERP> ERPと経営戦略

<特命任務/ERP>

ERPと経営戦略

2001年3月25日


 R/3の良さがだんだん分かってきました。「良く出来ている」という評価は時々聞きましたが、逆に「××が足りない」「○○もできない」「不便」「仕事が増える」という評価も聞きます。私の周辺も同様ですが、「これはあるでしょう」と私が言った機能でいまだに見つからないのは、2つだけです。ひとつは月締めの請求書で、これは日本独特の商習慣のようです。もうひとつは買掛金の明細を品名、数量、入庫日付を含めて確認する手段です。
 ある経験者から聞いた話ですが、「確かに完璧なまでによくで来ていますが、個々の企業にあったカスタマイズをするのは至難の技です。」ということです。彼女は、明らかにアンチR/3だと思います。欠点もいろいろ教えてくれました。しかし、最初に「確かに完璧なまでによくできています」と言わせるだけのものはあるのだと感じています。
 もっとも、別にR/3だけがそうなのではなく、主要なERPパッケージはどれでもそうだという人もいます。確かに、R/3に特別に高度な機能があったという話もありません。あたりまえのことがあたりまえにできるだけです。それが難しいことなのですが。
 さて今回は、ERPと経営戦略です。「ERPとコアコンピタンス」で述べたように、ERPはコア・コンピタンスを失わせるものではありません。ERPは多様だからです。このことは、ERPが経営戦略をもたらしてくれるものでもないことを示しています。

 ERPがもたらしてくれる、あたりまえのことがあたりまえにできる状態は、経営戦略を語る資格を与えます。あたりまえのことがあたりまえにできる企業は、他社がやらないことに資源と時間を投入することができるのです。

 さて問題です。あなたはあたりまえのことをできていますか?実はこれは、結構高いハードルなのです。多くの企業は、あたりまえのことのうち半分ぐらいはできています。ところが、できていないこともぱらぱらとあるのです。そして、企業の基礎的な強さ(あたりまえのことができる能力なので、たとえて言えば「基礎体力」でしょうか)は、諸々のあたりまえのことのなかで最も弱いところに制約されてしまうのです。さらにまずいことには、多くの企業は自社の強みや弱みをよく理解していないのです。つまり、あたりまえのことができていないことを自覚できない場合が多いのです。

 そこに、ERPの新たな問題が出てきます。ERPはあたりまえのことをあたりまえに行う仕組みです。当然ながら、ユーザにもあたりまえのことを遂行することを求め、それができる前提で組み立てられています。もし、現実にはそれらのあたりまえのことが遂行できないとしたら、ERPは実務で使うことができないのです。ERPユーザの中には、ERP稼動前にユーザの業務スキルが不十分であることが判明し、教育期間を計画しなおしたために、システムの稼動開始が2年遅れた例もあるそうです。

 まとめます。

 ERPはあたりまえのことをあたりまえに処理するシステムです。当然ながら、ユーザにもあたりまえのことをあたりまえに遂行することを求めます。それができることがERPユーザの条件であり、それができたときに初めて、経営戦略について語ることができるのです。


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魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
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