まず、基本的に企業が行っている活動は「事業」です。事業の実体は「現場」であり、同じ活動が経営者から見れば「経営」です。ERPは事業活動を支援する仕組みですから、現場をも支援しますが、経営者も支援します。ERPそのものは、経営者を重視しているわけではないと私は感じています。
現場にとってのERPは、業務をレベルアップする道具です。レベルアップした業務は、確かに窮屈ですし、忙しいのです。草野球とプロ野球では選手の運動量がぜんぜん違うことをご存知ですか。草野球では、選手は自分のところに飛んできたボールを追うだけで、外野手などは退屈な守備位置です。プロ野球では選手は最も効果をあげるように、あるいはリスクを避けるように動き回ります。外野手も大忙しです。ちょっとしたエラーで、草野球では何点も入って大混乱になりますが、プロ野球では最小の被害で食い止めようとします。現場も、レベルアップすれば緊張感が必要になるし、疲れるのです。ただし、勝てるようになります。
一方、経営にとってのERPも経営をレベルアップするための道具です。レベルアップした経営は楽でしょうか。決してそのようなことはありません。草野球の監督は試合中はひまそうですが、プロ野球の監督はやはり忙しく動き回っています。選手のレベルが高いので、監督もさまざまなセオリーや作戦を描いておかなければなりません。即断即決が勝つための最低条件です。さらに、失敗すれば全国のファンからブーイングが起こります。
そうなんですね。ERPは野球にとっての捕りやすいグローブであり、打ちやすいバットであり、走りやすいスパイクであり、ブルペンとの電話です。もちろん道具に過ぎませんが、使いこなすには若干の技術が必要です。素人にとっては、安物のグローブとの差は感じられません。プロにとっては、ぎりぎりのプレーで差の出るグローブです。道具の差を享受するためには、ぎりぎりのプレーを可能とする訓練が必要ですし、試合でがんばってぎりぎりのプレーをしなければなりません。それをしなければ道具の差は出ません。だから、現場にとっては負担が増えるのです。経営にとっても負担は増えています。
冒頭の誤解ですが、経営者は責任があるので、負担が増えたことよりも、より責任を負いやすいことに魅力を感じるのでしょう。従業員も、業績が上がって給料でも上がるのであれば、厳しい仕事を受け入れるでしょう。現実はそうではありませんから、ちょっと愚痴ってみたくもなるのでしょう。
まだERPを使っていない各社は、この愚痴を真に受けるべきではありません。仕事のレベルが上がっているから愚痴っているのです。ERPが仕事のレベルを表すわけではありませんが、もし仕事のレベルで負けているとしたら、ERPは避けるべきものではなく、利用するべきものです。
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| ERPネタをしばらく続けてみました。このシリーズを始めるにあたって、ダベンポートの「ミッション・クリティカル」の刺激を受けています。ERPを検討されている、あるいは利用されている皆さんにもお勧めします。 |