情報システムを使っても、使わないときと大して変わっていないという例は少なくない。情報システムのメリットが、微妙な計算でようやくプラスになるケースだ。「5年で元が取れる」というように。
ビジネス上の利益を狙うにしろ、省力化を狙うにしろ、1年で元が取れないようなら、その企画は不十分だ。計算ができないケースはある。そういうときは、計算できる数字だけでは不十分になる。あるいは、情報システム部門からは大幅な売上増や間接部門の要員削減を目標として掲げられないときもある。しかし、経営レベルでは限界を超えることを目標とすべきである。
これまで、情報システムによって多くの成功を生んだ企画が2つある。ひとつは給与計算、もうひとつは経理処理である。そろばんの時代に比べ、時間を短縮し、要員を削減できた。その幅は大きかったはずだ。(著者は、そろばんによる給与計算も経理処理も見たことがないので、推定である。)
限界を超えられるかもしれない例として、今回は原価管理をあげる。原価管理で際立った成果をあげることは、実はそう簡単ではない。「管理をする」ということ自体が仕事を増やすからだ。そこで、ひとつの前提を置く。原価管理で自社独自の工夫をこらしていること、その結果として教科書どおりの原価管理から外れてしまっていることだ。そういう事例は多いと思う。
導入する原価管理そのものは教科書どおりのものでなければならない。原価管理が成果をあげるための必要条件だ。それが購買、生産管理、在庫管理と連携することによって、仕事をなるべく増やさずに原価管理を実現し、しかもそれが成長のための道具になるのだ。
原価を次のように分解して、管理を考える。現実には、この中から重点を選んで適用すればよい。
さて、管理目的のために仕事は増えたか?増えたのは標準価格を事前に決める作業だ。価格を管理したい重要な原材料・部品について、年に1回それを決めればよい。
それに対して、管理会計の教科書には生産管理用と原価管理用の区別は書かれていない。管理会計の教科書だから生産管理に触れていないわけではない。管理の粗さ、更新のタイミングも同じでよいし、管轄部署は製造部門でよい。標準原価積み上げのタイミングだけは、会計部門がコントロールするべきかもしれない。
配賦計算を細かくすることには、管理面では何の価値もない。逆に、配賦処理をすることによって物事を分かりにくくする。
この固定費の変動は操業度の影響である。製造設備の操業度は、利益に大きく影響する。しかし、その変動にいちいち一喜一憂することは、二つの意味で誤っている。
ひとつは、製造設備の操業度は製造設備のライフサイクルの中でつじつまが合っていれば良いことがある。一時的に良くても悪くても、たとえば5年間という設備のライフサイクルの中で計画に沿っていなければならないし、計画に沿えばよいのだ。
もうひとつは、操業度を独立に管理できないことがある。操業度が低いからと言って、販売量と無関係に生産量を増やせば、在庫が増える。原価は下がったように見えるが、企業にとってはキャッシュを減らしてしまう点で問題だ。
操業度が重要でないわけではない。短期的に見てはいけないということだ。
教科書には、製造原価のうち加工費(原材料・部品費以外の経費)を加工時間で製造指図に配賦する(加工時間あたりの標準単価を決めて製造指図に賦課する)方法が紹介されている。この方法により、原価管理に操業度の定量的な管理を含めることができる。操業度と経費がそれぞれ管理できる。