コンピュータが個別の企業に貢献した最近の例は、コンピュータを「情報処理マシン」として使っている。貢献は合理化効果ではない。合理化ではない効果をどうやって得るのか。それが今回のテーマだ。
まず、一般的な「情報」に関する理論である。
「情報」は不確実性を減少させる。たとえば、傘は雨が降るとよく売れるが、翌日の天候が分かれば傘の売れ具合が予測できる。予測にしたがって仕入れれば、より多くの利益を得ることができるが、翌日の天候が分かっている場合と分かっていない場合の利益の差が情報の価値である。
確実な天気予報は価値があるが、大体当たる予報もそれなりの価値がある。利益を得る確率を増やしてくれるからだ。当たる確率が減るにしたがって情報の価値は減るが、絶対に当たらない予報は、確実に当たる予報と同じ価値がある。逆をやればよいからだ。最も価値がないのは、あってもなくても同じ予報だが、情報の価値はそれ以下にはならない。(現実社会には、マイナス価値の情報として「だまされる」という状態があるが。)
理論的には、情報とはそういうものであり、ゴールドラットも、「チェンジ・ザ・ルール」の序文で、「データがそろわない状態で意思決定する」という状態の限界を超えることにコンピュータ・システムの価値があるとしている。このことは彼独自の理論ではないが、そのことの重要性に気付くことが大切なのだ。つまり、知らずに行動していた状態から、知って行動する状態に変わることが儲けにつながる。
では、コンピュータを上手く使っている例を見てみよう。
セブンイレブンはPOSシステムを最も上手に使っている企業だといわれている。売れ筋商品をアイテムレベルで把握し、適時適量の仕入をして、最小の在庫で最大の利益を得ようとしている。経験のないアルバイトが素早くレジを打ち、金額を集計し、お釣りを計算することにも意味はあるが、利益の源泉はむしろ、最新の販売状況を知って仕入れができることにあるのだと思う。
デル・コンピュータはSCMを高度に実現し、最小の在庫と資金で最大の業績をあげている。末端ユーザからの注文を直接に自社で受け、部品を手配し、組み立て、出荷する。ひとつひとつの注文を全社が知って、全身で反応する仕組みができている。受注時にすべての必要なインプットがされ、データの再入力がないことにも意味はある。しかし、利益の源泉は注文の内容を瞬時に共有して、全社一斉に反応をすることにある。
アマゾン・ドット・コムはインターネットを使った通信販売の最大手のひとつである。注文のデータ入力は顧客の仕事であり、自社にはデータ入力のための要員は不要になっている。その価値は大したものではない。利益の源泉は、顧客に対して興味を持ちそうな商品をさまざまな形で提案することにある。多くの顧客の購買行動を分析することにより、さまざまなパターンを知っている。そのパターンに沿って提案をする。
最後に、下手なコンピュータ活用事例である。
予算編成や人事考課にコンピュータを活用しようとする例がある。いずれも、一見すると定型的に見えるので、自動化が試みられる。しかし、定型的なのは縦横の集計をするとか、評価者と被評価者の関係という部分部分である。全体としては、経営目標や方針は変わり、組織は変わる。同じ予算はないし、同じ人事考課もない。プロセス全体を一連のシステムとして組み立てると、毎年毎年システムを手直しすることになるし、場合によっては手直しが追いつかずに目標や方針の方が制約を受けてしまう。合理化効果も出ない。(このようなプロセスは、全体を一連のシステムとするのではなく、プロセスを細切れにして間は手作業でつなぐような発想がよい。EXCELは強力な武器になる。)
予算編成や人事考課が年に1回・2回だからうまく行かないわけではない。月に1回でも週に1回でも、ルーチン業務だからコンピュータにさせようとする発想も失敗が多い。週に1枚の伝票を登録するのに要する時間は、せいぜい5分であろう。それを自動化するプログラムを開発するのにはたとえば半日かかるとする。この開発は4〜5年で元が取れると計算されるが、それでは元が取れたことにはならない。(経験値だが、プログラムを開発すると、その開発規模の約20%の程度が毎年のメンテナンスに浪費されると思う。)それでも、ルーチン業務だというだけで利用者はプログラムを作ろうとする。システム部門も半日程度ならやってやろうとする。その積み重ねが、莫大な情報コストを生み、失敗事例となる。
まとめると、コンピュータによる事務の自動化ではなく、情報理論に基本である「知って行動する」を目指した情報の活用を、情報で儲けるための基本的な取り組み方として提案する。