山一證券は、あの大きさで破綻しました。彼らは、真面目に証券マンとして働いていたように思います。「飛ばし」と呼ばれる行為はありましたが、それはあのときに始まったことではありません。にもかかわらず、経営は危機を迎えました。しかし、社長でさえ経営危機に瀕していることを十分に承知していなかったように見えます。だから、あの涙の会見で「従業員は悪くない」という言葉が社長の口から出たのでしょう。こんな破綻が、かつてあったでしょうか。
雪印食品は、輸入牛肉を国産と偽って業界団体に買い取らせるという詐欺のような行動に出ました。それは彼らの本業に直接にかかわる行動で、会社の金を持ち逃げするというような話ではありません。その当事者も、会社のためだと真摯に信じてとった行動でしょう。
また、雪印乳業は返品された加工乳を原料として使用するという、品質無視の行動をとりました。これも、正に本業にかかわる行動です。あれだけの歴史のある企業だから、「品質第一」というようなスローガンはあったに違いありません。高価な絵画をどうかしたと言うような話ではなく、本業そのもので社会を裏切ったのです。
かつて、このような不法行為があったでしょうか。
一方、日産自動車は、あの大きさでずいぶん苦労していました。社員は真面目に働いているのですが、業績は低迷していました。経営者は危機感を持っていましたが、それは現場には伝わりませんでした。しかし、ゴーン社長が就任したら、業績は好転したのです。日産生え抜きの従業員が活躍し、V字回復を果たしたのです。幸運な環境変化に恵まれたわけでもなく、爆発的なヒット商品が当たったわけでもなく、かつてこれほどの回復を果たした企業があったでしょうか。
経営環境は厳しくなっています。日本経済の高コスト体質は定着してしまいました。バブル崩壊後の後遺症はまだ癒えません。若者の就労意識は変わり、指示待ち人間が増え、その一方で内部告発は多発しています。
山一も雪印も、現場は全力疾走していたのだと思います。パワーは余るほどありましたから、一見すると競争に負けてはいないように見えたのでしょう。しかし、舵の向きが違っていました。誤った方向へ突っ走り、暗礁に乗り上げてしまったのです。
日産自動車も危ない状況だったと思います。しかし、ゴーン社長が大きく舵を取り、V字回復を果たしたのだと思います。
世の多くの企業は、暗礁に乗り上げた訳ではないにしても、苦しい経営状況にあります。舵取りを間違えると、暗礁に乗り上げかねません。そのような環境の中で、生き残ること、さらに他社に一歩先んじることを可能にするのは「舵取り」です。
経営革新で経営が獲得するべき能力は、「舵取り」だというのが私の考えです。このシリーズは、企業における経営の舵取りについて掘り下げていきたいと思います。