レポート:<経営革新の針路> 舵取り重視の組織

<経営革新の針路>

舵取り重視の組織

2003年10月27日


競争の質の変化

 簡単におさらいをします。

 パワー競争では、営業や製造がそれぞれエンジン全開で突っ走りました。言い換えれば、エンジンの大きさとスピードメーターが勝負のかぎという時代でした。ところが、舵取り競争では、スピードを調節して、適切に舵を取り、障害物を避けなければならないのです。つまり、前方の視界、制御系(多様なメーター群、アラーム装置、遠隔制御)、操縦術(舵を切る角度とタイミング、スピードの調節)が重要になりました。もちろん、エンジンが要らないわけではありませんが、エンジンだけでは勝てないのです。
 もし競争に敗れると、単に遅れて進むだけではありません。荒波に揉まれ、暗礁に乗り上げるという結果が待受けています。パワーの競争では、人の後を追っても生き残れましたが、舵取り競争では適当な相手に着いていくと、一緒に座礁する危険もあります。
 そのような環境で、会社は放っておくとどこへ行くか分からないのです。しかし、行き先さえ間違えなければ、パワーで勝てなくても、勝負に勝てる可能性はあります。企業規模が違っても、互角の勝負が可能なのです。

経営革新で変えるもの

 「経営革新」というと、執行役員制の導入や社外取締役の招聘が思い浮かぶかもしれません。しかし、それは本質ではないと、私は思います。
 多くの企業にとって最初に必要なのは、業務にセオリーを導入することです。業務にはセオリーがあります。それは、業務の基本ともいえるものです。多くの企業では、業務の基本が十分に実践されていません。基本に外れた業務が散見される組織は、経営者にとって非常に舵取りしにくいものです。業務の基本を身に付け、実践することは、経営革新の重要なポイントです。
 考えて見てください。キャッチボールが確実に出来ない選手が何人かいるような野球チームでは、監督がどんな作戦を考えようが、基本が出来たチームには勝てるわけがないのです。なんでもないところでエラーが出たり、ボンヘッドが出て、監督の技量は試合では出せません。

 「そういうレベルは卒業した」とおっしゃる経営者もおられるかもしれません。それは、もしかすると危険な兆候です。プロ野球の選手が「キャッチボールは卒業した」と言い出すことはたぶんありません。それを言うのは、むしろ素人の草野球です。

 経営革新の話題で、業務レベルの話が出てくることには、違和感があるかもしれません。しかし、業務と経営は表裏一体です。企業の活動の実態はビジネスプロセスです。ビジネスプロセスの革新を経営者が見ると「経営革新」で、現場から見ると「業務革新」です。業務を変えることが、すなわち経営革新と考えて、ほとんど間違いありません。

 業務の変更だけですまないことがないわけではありませんが、業務の変更を伴わない経営革新はあり得ないのです。執行役員制や社外取締役も、経営が企業活動の舵取りをするための手段のひとつで、それらが適切あるいは必要なときに選択されるものです。
 具体的に言えば、「品質第一」と言いながら返品された加工乳を原料としてリサイクルしてしまうことが、硬直化した組織では起こりえるのです。そのときに、「それは変だ」と言えるのは社外の感覚です。おそらく、社外の目で見れば、わざわざ原料のチェックをしなくても、「品質第一」が掛け声だけになっていることに気付くことができる、そういう期待だと私は思います。

方針に沿って行動する組織

 それでは、「舵取り重視の組織」の姿を描いてみましょう。

 一つ目の条件は、判断に必要な情報や意見を判断する人に集められることです。そのうち、意見や予想情報は人間が創造する情報です。ところが、事実としての情報は客観的な測定値が必要都度速やかに提供されることが条件になります。測定の基本は、世の中一般で使われている尺度であることが必要です。独自の尺度は、どれだけ客観的か、どれだけ根拠があるか、どのように反応するべきなのかが非常にわかりにくくなります。もし独自の尺度を入れるとしても、その意味を十分に吟味し、かつ、枝葉部分に付け加える程度にするべきです。

 二つ目の条件は、情報や意見に基づいて、それぞれの人が役割を果たし、適切な判断ができることです。経営者にとっては方針を出すことが判断をすることであり、受注担当にとってはお客様のスペックにあうロットの在庫確認をして受注可否を判断することであるわけです。それを可能にするのが、基本に忠実な業務処理なのです。

 三つ目の条件は、判断の結果に従って、実際に人々が動くことです。判断が適切でも、その判断に従って動けない組織はしばしばあります。基本に忠実な判断があっても、それを理解する知識と指示に従って動ける能力がメンバーになければ、判断の通りに行動できません。それは、日ごろの訓練によって可能になっていきます。仕事で「訓練」は、軍隊や消防士でなければしっくり来ないかもしれません。しかし、プロがプロとしての仕事をするためには、やはり訓練は必要なのです。それは、業務も経営も同様です。

 では、次回はそのような組織を作っていくプロセスを検討しましょう。


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魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
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