レポート:<経営革新の針路> 革新プロセスの留意点

<経営革新の針路>

革新プロセスの留意点

2003年11月24日


 あるイベントでERPの話をしました。その感想文を拝見したところ「戦略がない」という意見がありました。そのとおりです。ERPそのものには戦略はありません。「戦略」とは他と違うことをすることを考えることですが、ERPは「標準化」であり、言い換えれば当たり前のことを当たり前にできるようになることです。それは「戦略」ではありません。
 一方、別のところでマーケティングについて語り合っていたところ、ERPが話題になりました。話の全体は「戦略」を語っていたのですが、その重要な前提としてERPによる経営資源のマネジメントがありました。当たり前のことができないで、「戦略」は語れないのです。

 このシリーズで語っているのは「戦略」ではなく「標準化」です。それは対極にあるものではありません。どちらも経営に必要なもので、「標準化」は「戦略」の前提なのです。

 では、経営革新のプロセスを考えて見ましょう。プロセスの順序やそれを説明する表現は、さまざまな手法があります。経験に基づく手法であれば、それほど大きな優劣の差があるようには思えません。全体について一貫性をもった思想で望むことは重要だと思います。ただし、そのプロセスにはいくつかの留意点があります。ここではその留意点について指摘をします。

計画フェーズでは「"BPR"を回避せよ」

 まず、経営革新を計画するフェーズです。舵取りしやすい組織を作り、舵取りできる業務を実現できるようにすることが目標です。いかにして経営を統合し、一体化するかを考えなければなりません。決して、「仕事が便利になるように」と考えてはならないのです。
 このフェーズで陥りやすい落とし穴があります。それが「BPR」です。「BPRをしよう」と号令をかけたときに、多くの人が考えるのは「すべてをゼロから設計しなおすこと」「理想の業務プロセスを再構築すること」「膨大な投資を覚悟すること」です。BPRを説いたハマーさんはそんなことは言っていないのですが、10人中9人ぐらいが、そんなことを考えてしまいます。その結果は、永久に終わらない現状分析か、左団扇を目指すアイデア満載の業務設計書か、自分の部署にこそ投資すべきという利益誘導合戦か、そんなところでしょう。
 そこで、私の提案は"BPR"という言葉を使わないことです。使わなくても、経営革新を説明することはできます。

設計フェーズでは「信頼できるデータを作りこめ」

 全体計画を決めたら、次に設計フェーズです。経営革新は業務革新と表裏一体ですから、業務の設計が必要になります。経営の統合・一体化を推進するための業務設計の指針として、今は良い方法があります。それがERPパッケージです。ある程度の実績があるパッケージを選べば、プログラムの信頼性は抜群です。それはデータの信頼性を高めます。ただし、ここでも落とし穴はあります。
 パッケージをそのまま使うことが、信頼できるデータを実現するためには非常に重要です。独自のプログラムを作ると、そこには必ずミスがあります。それはデータの信頼性を大きく損ないます。もちろん、人間もミスをしますが、人間のミスは人間が発見して修正することができます。プログラムのミスによってデータが間違っているとき、それを発見することは至難の業です。
 非常に複雑で膨大な計算を要すると考えて、プログラムによる解決を試みたところ、苦労してもなかなか完成しないケースがありました。ところが、あきらめて人間ができる程度に粗くし、Excelによる計算に変えたところ、精度の点では業務への支障はほとんどなく、ミスもなく、時間もかからないという結果になった経験もあります。

移行フェーズでは「問題に焦点をあてて」

 新しい経営システム、新しい業務システムへの切り替えが近づくと、問題や心配が多数出てきます。「念のために」とか「リスクを減らすために」と言って、さまざまな要望が現場から上がってくるようになります。これにいちいち対応していたら、新しい経営への移行はできません。過去とはきっぱりと決別しなければなりません。過去と同じようにできることが安全ではないのです。過去から変わることがリスクではないのです。
 そうは言っても、現実に問題や心配はあります。実在する問題や心配は明確にその内容を表現できるものです。「念のため」とか「リスクがある」というような表現ではなく「○○が起こる」とか「××が起こったらどうするか」と指摘できるものです。その数は、「念のため」と言っていたときの何分の一かになります。それらの問題の重要性と、起こるかもしれない確率を考えて、問題に優先順位をつけて、重要や問題や心配から解決を図ります。重要な問題さえ解決できれば、先に進むことができます。

実行フェーズでは「目標をあげろ」

 新しい経営、新しい業務が始まり、最初は多少の混乱があるかもしれません。しかし、信頼性を重視した経営・業務は短期間で混乱を抜けるはずです。つまり、慣れるということです。
 では「舵取り」を始めましょう。組織を動かして、成果を目指すのです。今までと同じ成果なら、舵取りはいりません。舵取りで新しい成果を獲得するためには、目標をあげるということが条件になります。

 実は、私の場合は実行フェーズでの目標の切り替えに苦労しています。現在の、私の重要な課題の一つです。


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魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
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