<ERP 終わりのないプロジェクト>IT部門は技術者集団を卒業せよ2005年9月4日
IT部門の仕事は、昔から次の3つとだいたい決まっています。
ひとつは、システム部門にとって未経験の業務がシステム化の対象になっていくことです。1980年代からのシステム部門は、COBOLでプログラムを作ることに加えて業務を理解することを求められました。そうしないと、利用者とのコミュニケーションができず、業務分析に支障があったからです。そのために、社内の業務を分類してそれぞれに担当を分け、業務知識を蓄積するようになりました。担当者を一人前に育てるのに10年ぐらいかかってしまう点は問題でしたが、徐々に合理化に貢献できるようにはなってきていました。ところが、戦略的な分野にITを適用するようになると、これまで未経験だった業務にITが適用されます。たとえば、連結経営であり、ダイレクト販売であり、e調達です。短期間で業務知識を獲得することは容易ではありません。 もうひとつは、インフラとして採用するITが急速に進歩することです。メインフレームの時代には、一度システムを開発すると、次の大規模はシステム更新までは同じ情報技術を継続して使用しました。世の中が進歩しても、簡単には新しい技術を取り入れることができなかったのです。それは、IT部門にとっては恵まれた環境でした。ところが、ERPベンダーは新しい情報技術に対応してERPを進歩させます。ユーザ企業は新しい情報技術を導入しやすくなりました。それが経済的に魅力的であれば、積極的に取り入れていくことになります。その結果、IT部門は社内のITではなく世の中のITに追随することが必要になりました。それはとても難しい課題です。 ERPを導入した企業にとって、今後も引き続いてシステム開発やインフラ整備を責任を持って遂行することは、社内人材だけに頼っていては難しくなっていくと思います。この分野は、外部の専門家との連携が重要になります。
そのような理由で、IT部門は変わらなければなりません。どのように変わればよいのでしょうか。まず、ERPというパッケージを利用するので、ユーザニーズに応えてプログラムを作ったり直したりする仕事はほとんどなくなります。これからのユーザは、欲しいものを説明する必要はなくなったのです。何に困っているのかを具体的に説明すれば、IT部門がERPをうまく使ってユーザの問題を解決してくれる、そんな世界が理想です。 業務知識とは、具体的には財務管理、販売管理、労務管理などです。製造業の場合は、これに購買管理や生産管理が加わります。これは、従来は事務屋さんの得意とする分野です。そういう意味で、IT部門は技術者集団でなくなる必要があります。 ところが、現実にはなかなか変われるものではありません。やはり、IT部門の人たちはプログラム作りが好きなのです。プログラムを作って問題を解決することもできる場合がありますが、それは金がかかるだけでなく、それ以上の問題があります。手作りのプログラムは信頼性が低く、業務の信頼性を損なうことがしばしばです。これは業務のスピードに決定的なダメージを与えることになります。また、手作りのプログラムは業務の標準化を崩し、上流・下流から見えない業務を作ってしまうのです。それらにより、業務の改善の機会を奪い、進歩を阻害する結果になるのです。 IT部門は情報技術を担うのですが、IT部門が重視すべきはT(技術)ではなくI(情報)です。I(情報)とは、業務であり経営です。一般に言われる技術屋(エンジニア)の分野ではありませんが、あえて言うなら「マネジメント・エンジニア」(⇒注)とでも呼ばれるべき分野でしょう。そこへと、IT部門は歩みを進めていく必要があるのです。 (注)「マネジメント・エンジニア」という言葉は、たしか竹之内隆氏から教えられたと記憶しています。
魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/ Last update 2005-9-4 /177
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