レポート:経営者は操縦席に座れ
経営者は操縦席(コックピット)に座れ
1998年5月24日
情報共有と経営
電子メールやイントラネットによる情報共有が広まってきました。これらは経営のスピードを上げる効果が間違いなくあります。
あなたが今朝発した言葉は、数分後には全社にくまなく伝わり、全従業員がその言葉をふまえて動き出すという世界が、すでに現実のものになっています。このことは、実は恐ろしいことでもあるのです。なぜなら、もしあなたが誤った指令を出したとき、組織はその方向へ動きだしてしまうのです。あるいは、指示を出すタイミングが遅れたとき、組織は今までの方向へ行きすぎてしまうのです。
超高速経営の恐怖
たとえ話で説明しましょう。自転車で町を走っていたとします。走りながら回りを眺め、面白そうなところに立ち寄ることができます。行き過ぎてしまっても、その場で方向を変えて戻ってくればよいのです。
では、自動車で走っていたらどうでしょう。走りながら回りを眺めることは可能ですが、面白そうなところを見落としてしまうことが多くなります。あらかじめ、どういうところを探すのかを決めておかなければなりません。あまり間際になって発見しても、急停車は危険です。行き過ぎると、Uターンできる場所を探さなければなりません。
高速道路を走っているときは、行き過ぎたら次のインターまで行って帰ってくることになります。高速で走っても、ちっとも時間は短縮できないという結果になります。カーナビが欲しくなる瞬間です。
企業経営も、高速になると同じような弊害が出てきます。あらかじめ何を求めるのかを決めておくことが必要になり、さらに高速道路の場合は、あらかじめどこへ行くのかを描いておく必要があります。すなわち、経営目標や経営ビジョンが、従来にも増して明確に描かれなければならないのです。そして、目標へいたる道を描き、今はどこを走っているのかを知る必要があります。
しかし、実態は・・・
ここまでの話で、違和感を感じられた方も多いでしょう。「そんなことは起こっていない」と。
なぜ起こらないのかというと、みんな怖がって、そんなにスピードを出していないからです。あなた自身もそうでしょうし、あなたの部下である管理者も、一般社員も、スピードを出せることは分かっていても、出せないでいるのです。高速道路を100km/hでとばせる自動車に乗って、自転車のような15km/hぐらいのスピードで走っているいるようなものです。情報化投資で強力なパワーを得ても、経営の実態は変わっていないのです。
このことは、情報化投資がムダになっている実態を示しています。あるいは、先行する競合他社との差がますます広がってしまうことを示しています。従業員の不満もたまってきます。
操縦席(コックピット)に座ろう
高速で走るパワーを得ても、それを使うには強力なコントロール手段が必要になります。それを「操縦席(コックピット)」と私は表現してみました。それはたくさんの計器を並べたデスクトップということでは必ずしもありません。最新の航空機のコックピットも、通常はシンプルな計器とシンプルな操作で複雑な機体の制御を実現しているはずです。
高速経営を実現するためには、次のことが重要です。
- 経営目標や経営ビジョンをシンプルに表現する(複雑な目標・ビジョンには複雑な計器盤が必要)
- 現状の実態をシンプルに示す(シンプルな目標・ビジョンが前提となる)
- 現状を目標へ向けるように舵を取る
- 現状から目標への道筋と、現在位置を知る(レーダーかカーナビのように)
- 現状とたどるべき道筋との差異を把握し、舵を補正する
- 必要に応じて、詳細情報を得られる手段を準備しておく
- 目標への道筋や、目標自体も評価し、必要なら修正する
高速経営を実現している企業は、いくつかあります。彼らは、実にシンプルに経営目標・経営ビジョンを描いています。機会があれば見てみてください。
魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Last update 1998-6-13