トップダウン・マネジメントを強化する手段として、「組織のフラット化」をとらえている経営者もいる。一見すると、中間管理階層を減らすことにより、経営者自身の声を組織の隅々まで行き渡らせることができそうに見える。しかし、これもうまくいかない。
「トップダウン・マネジメント」がなぜうまくいかないのか。どうすればうまくいくのか。このレポートのテーマは「トップダウン・マネジメント」を成功させる条件として「インタラクティブ」というキーワードを提供する。それは、通常に言われる「トップダウン・マネジメント」とは少し違って聞こえるだろう。しかし、アメリカから聞こえてくるトップダウン・マネジメント成功例をもう一度よく観察して欲しい。それは単純なトップダウンではなく、「インタラクティブ」という特性がうまく活用されていることに気づくだろう。
一方で、各従業員はそれぞれ違った仕事をしている。それぞれ違う仕事をしている人に対して、一つの命令によって、行動に直接的な影響を与えることができないことは自明である。それでどうするかというと、業務機能別の担当役員を配置したり、部長レベルによる命令の翻訳を期待したりするが、ここで間違いが発生する。
まず、自分の表現力を疑ってみよう。自分の命令が自分の考えを十分に表現しているだろうか。短い言葉の中に自分の考えを十分に表現させる能力は、「詩人」の能力である。実務の能力を特長とするトップマネジメントに「詩人」の能力が兼ね備わっている可能性はきわめて低い。
次に、自分が直接に命令を与える役員や部長のことを考えてみよう。彼らは、自分の命令を十分に理解できるだろうか。また、理解した上でそれを正しく翻訳し、部下に対して自分の考えと寸分違わない正確な命令を出せるだろうか。
では、もしも中間階層にいる彼らに期待できないとして、階層を減らして自分が直接に全従業員に命令し、彼らを監督することを考えてみよう。先ほどもいったように、従業員の仕事は「それぞれ違う」のである。少数精鋭であるはずの今までの中間管理職をうまくコントロールできなかった経営者に、それよりずっと大勢の一般従業員をコントロールすることは不可能だと考えてよいだろう。
単純な「トップダウン・マネジメント」は一般には不可能なのである。従来いわれていたトップダウン・マネジメントはマネジメントの一つの側面を捉えていただけのものであり、最近言われている「強力なリーダーシップ」と「トップダウン・マネジメント」は、実はまったく違う切り口の概念なのである。
トップダウン・マネジメントで、トップ自身の表現力やミドルマネジメントの理解力と表現力がネックになってしなうという話は、この「相互啓発」という行動によって補うことができる。次のようにするのである。
トップは、自分の命令に対して質問や反論が返ってくることを面倒がったりおそれてたりしてはならない。また、ミドルやボトムは質問や反論をすることをおそれてはならない。最終的にはここで行われる会話が命令や指示の質を高めるのだ。また、報告や行動に対する評価を頻繁に行うことも大切である。そのためには経営者も頻繁に現場に行って、現場を観察し、現場担当者の話を聞くことである。半年も経ってから「なんだ。解っていなかったのか」では取り返しがつかない。
このように、トップが自分の命令に対する質問や反論をおそれないという姿勢を保つこと、むしろ質問や反論を促し、しっかりとそれを受けとめること、さらに自分の行動を発言の通りにし、部下の行動を評価してその善し悪しをコメントすることを、「強力なリーダーシップ」と表現しているのだ。
トップとミドルのインタラクティブな関係と同じように、各部門に置いては部長と課長の間で、あるいは課長と担当者の間でインタラクティブな関係を作り上げなければならない。そのとき、トップが「聞く耳」を持つことが、ミドルが部下に対して「聞く耳」を持つことを推進する強力な力になる。上が「聞く耳」を持っていれば、正しい報告は必ず上がってくる。もし、階層の途中でネックになる管理者がいたとしても、その上の階層に「聞く耳」があれば、ネックの管理者を飛ばして報告が上がってくるし、そのことによりボトルネックの管理者を見つけることもでき、その管理者を指導することも可能となる。
アメリカから聞こえてくる、トップダウン・マネジメントの成功事例も、実はこのインタラクティブな関係をうまく作っているだけのことである。アメリカではトップマネジメントといえども取締役会の管理を実質的に受けている。いわば役割としてのCEOであり、単純な階層構造ではない。トップの発言もひとつのアイデアとして経営会議のまな板に乗せられ、磨かれて練られて、効果的な表現に変えられていく。また、電子メールの普及によりトップからミドル、ボトムまでインタラクティブな関係を作りやすくなっている。そのことがマネジメントの質を上げることに貢献しているのだ。そして、実際にトップダウンで流れるのは、命令というよりも経営コンセプトであり、これがインタラクティブなやりとりによって実際の行動へと組み込まれていくのである。