レポート:もう一度原点へ

もう一度原点へ

1998年9月13日


 今年の1月から2月にかけて、「経営について再整理」というシリーズがありました。そこでは、「経営をいかに考えるべきか」が論点でした。ところが、読み返してみて足りなかった点に気付きました。それは「経営は何をするべきか」です。それが、タイトルにある「原点」です。

私のビジネスは?

 最初にやらなければならないのは、「私のビジネスは何か」を明確にすることです。これをやらないと、経営に関するあらゆる思考が意味をなさなくなります。

 これを考えることは、そう簡単ではありません。たとえば、

 「そんなことは分かっている」というのも誤りです。「うちは先祖代々豆腐屋だ。豆腐を作るのがビジネスだ」と言い切れるものではありません。豆腐を作るのがビジネスであるなら、いかに豆腐を作るかを考えればいいのですが、これでは何をもって「良し」とするのか見えてこないのです。少なくとも「豆腐をたくさん作る」ことが良いとは言えないでしょう。豆腐はおいしくなければならないのです。しかも、作ったときにおいしいのではなく、お客様が食べるときにおいしくなければならないのです。とのことから、豆腐の作り方を「出来上がるまで」で考えていたのでは足りないことが分かります。作り方は、お客様の口に入る瞬間まで考えておく必要があります。店でどのように陳列し、お客様にどのように渡し、どのように運んでいただき、どのように召し上がっていただくか、という全体を考える意味があるのです。

利益や売上の意味

 「ビジネスは何か」という問いは、量を表していません。それがどれだけのボリュームでできたのかを表すのが「売上」という指標です。また、どれだけ上手にできたのかを表すのが「利益」という指標です。

 「ビジネスは何か」を考えないで「売上」や「利益」を議論することが、しばしば行われます。それでは、質の議論を省略していることになります。質の議論なしで「売上」という量の話をすれば、「質はどうでも良いから量を増やせ」という意図に図らずもなってしまいます。そして、「売上を増やす」だけ、あるいは「利益を増やすだけ」なら可能なのです。その歪みは、在庫や売掛金の増加をもたらしたり、将来の売上・利益を損ねたりします。

人材育成の意味

 「ビジネスは何か」という問いは、ビジネスを担う人材に必要な能力を浮かび上がらせます。その能力を強化することが人材育成です。

 「ビジネスは何か」を考えなくても、幾つかの必要な能力を設定することはできます。でも、その重要性の順位や位置付けが認識できなかったり、重要な能力が抜け落ちてしまったりするのです。


魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Last update 1998-9-13