レポート:ビジネスとラグビー

ビジネスとラグビー

1997年1月17日


 ある社長が、年頭の挨拶でビジネスをラグビーに喩えられ、「スクラムを大切にする。スクラムトライは理想的だ」と言われました。この言葉をもう少し具体的にビジネスに展開したところ、3つのパターンで説明でき、いずれもとても示唆に富むストーリーになります。

 3つのストーリーの配役を、目次替わりに表に示します。私は3番目の喩えが一番好きです。

 役割FWBK敵チームボールゴール
喩え1研究部門事業部障害・制約条件研究成果商品化成功
喩え2既存事業新規事業マーケット商品・サービス事業の成功
喩え3挑戦的な社員多くの社員障害・制約条件仕事の責任組織の目標

喩え1:スクラムを組むのは研究部門

 新商品開発の始まりは研究部門の組んだスクラムです。研究部門が組んだスクラムから、研究成果が蹴り出されます。事業部は蹴り出されるタイミング、方向を予知してラインを構成して準備しています。蹴り出された研究成果はラインをパスされ、さまざまな制約条件を克服して前進していきます。克服できない障害があると、そこに再び研究部門が集結してモールを組み、再び事業部がラインを構成して準備します。こうしてボールは前へ前へと運ばれ、研究部門と事業部が力を合わせて、やがて商品化に成功します。

 ここでは、研究部門と事業部のチームワークがラグビーによりうまく説明できます。このストーリーでは、「スクラムトライ」は研究部門がいきなり「商品化成功」をもたらすことになります。事業部が直接には参画しないわけですから、かなり例外的なパターンと言えるでしょう。

 研究成果を商品化に結びつけるためには、多くの部署の協力が必要です。協力と言っても、単に側面から支援するのではなく、自ら主体的に責任を負って関与することが必要なのです。それはまさにラグビーでパスを受けて走る姿と同じです。チームの中で最も前にいるのがボールを持つ人です。その瞬間は彼が最高責任者なのです。

喩え2:スクラムを組むのは既存事業

 新規事業は、最初は既存事業の後方に控えています。既存事業がマーケットを支えていますが、タイミングを合わせて、新規事業に前進のきっかけを作ります。ボールを受けた新規事業は、素早いフットワークによりマーケットに浸透していきます。既存事業も新規事業とマーケットの動きに合わせて前進していきます。マーケットの動きにうまく合わせられないときは、既存事業のスクラムと新規事業のラインが再び編成を整え、既存事業のパワーと新規事業の素早い動きを活かせるように体制を整えます。こうして、さまざまな商品・サービスがマーケットに受け入れられると、事業が成功することになります。

 ここでは、新規事業と既存事業の相乗効果がラグビーによりうまく説明できます。このストーリーでは、「スクラムトライ」は既存事業が中心になって事業成功を獲得することを喩えたことになります。

 新規事業がひとりで走り込んでトライすることは、極めて困難なことです。既存事業との連携、相乗効果が必要です。それを実現するためには、チーム全体に「勝つ」という強い意志が必要です。

喩え3:スクラムを組むのは仕事を支える社員

 仕事は多くの社員により支えられています。組織の目標を達成するためには、前進して仕事をレベルアップしていかなければなりません。しかし、仕事のレベルアップに直接に貢献できる社員はそれほど多くはありません。一部の挑戦的な社員が仕事のレベルアップという責任のパスを受け、猛然と前進をします。このとき、他の社員はスクラムを解き、前進する選手を追います。ここで仕事のレベルは一気に前進します。前進するとき、仕事の責任はそのときの最も前進に貢献できる社員に的確にパスされます。やがて、何らかの障害によるタックルで前進は止められます。社員はすばやくそこに集結し、そこでモールを組み、仕事を支えます。挑戦的な社員は再びラインを整え、次の前進に備えます。こうして仕事のレベルを上げていって、組織の目標を達成することになります。

 ここでは、普通の社員と挑戦的な社員の役割分担と協力体制がラグビーにより説明されます。このストーリーでは「スクラムトライ」は多くの社員が力を合わせて目標を達成することを喩えたことになります。

 派手に見えるのは足の速い挑戦的な社員ですが、仕事を支えるのはそれ以外の普通の社員です。挑戦的な社員だけではトライは奪えません。しかし、挑戦的な社員がいないと、仕事のレベルアップはなかなか進みません。また、最前線にいるボールを持って走る社員は、周囲の環境に的確に対応してめまぐるしく交代することになります。


 この内容は、NIFTY-Serveのビジネスマン・フォーラムで1〜2年前に展開された、同様の内容の電子会議についての記憶を参考にしています。


魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/