レポート:政界に学ぶ「リーダーの支え方」
政界に学ぶ「リーダーの支え方」
1997年11月23日
誤解のないように説明すると、今回は行政改革の是非や橋本龍太郎氏の思想について議論しようと言うのではありません。このホームページは、政策論争の場ではなく、マネジメント研究の場です。橋本龍太郎氏とその周囲を観察して、リーダーとのつきあい方を研究します。それは、企業における社長とのつきあい方の参考になるかと思います。
迷走するリーダー 〜橋本龍太郎〜
朝日新聞1997年11月23日の天声人語に、行政改革をめぐる橋本首相語録が載っている。一部を引用すると、次のようだ。
| 96/11 | 火だるまになってでも、本気で行政改革に取り組まなければならない |
| | 徹底した努力によって行政をスリム化する。実行するのは、強い政治的な意思なくしては到底できない |
| | 行革が進まなければ二度と国民は私を信用してくれないだろう |
| | いろいろな抵抗や困難が予想されるが、身を燃焼させ尽くしてもやり抜く |
| 97/2 | 閣僚が所管の特殊法人を守ろうという発言は慎んでほしい |
いかがでしょう。橋本首相が並々ならぬ決意で行政改革に取り組もうとしたことは、よく分かるのではないかと思います。
足を引っ張るマスコミ
表の最初にある「火だるま発言」を覚えておいででしょうか。あのときのマスコミの対応は、ずいぶん醒めたものでした。
「首相が『火だるま』になってどうする。『火の玉』だろう。」
「そのうち『火の車』になるに違いない。」
一方で、佐藤孝行氏の問題の時は、一斉に批判の嵐を浴びせました。
考えてみてください。失敗に対する批判が集中することは当然として、並々ならぬ決意を述べたり、リーダーシップを発揮して閣僚を方向付けたりしたときに、冷ややかな目で冷笑あるいは無視されているという状態が、リーダーにどのような影響を与えるでしょうか。あるいは、失敗をリカバリした後も、「あいつはこの前失敗した」と何度も言われることは、どのような影響を与えるでしょうか。(これは朝日新聞の話ではなく、マスコミ全体の話です。朝日新聞は「冷笑あるいは無視」という傾向は少ない方でしょう。)
天声人語で紹介されている、橋本龍太郎の最も新しい言葉は次のものです。
「政党政治の中で与党が意見を持ち、それを政策に反映させるのは当然だ。」
陰謀の渦の中で
行政改革の直接の対象である行政サイドには、行政改革を阻止しようとするさまざまな動きがあります。橋本龍太郎氏の失脚を狙うものから、既得権を守るための言質を取ろうとするものまで、明示的な動きだけでなく、かなり回りくどい働きかけもあるでしょう。
ことに難しいのは、「既得権を守ろう」という動きは、必ずしも「自分の既得権」ではないことなのです。つまり、それらの動きは必ずしも「利己的な意見」ではなく、大勢の利益を代表した「正義」なのです。
企業経営への教訓
さて、そのような橋本龍太郎氏の周辺から、企業経営の参考になりそうなことを抽出してみましょう。
- リーダーの理念を支持するなら「支持」を表明しよう
理念を支持しないなら、彼をリーダーにはできない
- リーダーが自らの理念に反する行動・発言をしたら、明確に「NO」を表明しよう
理念の実現に沿う行動・発言は、明確に支援を表明しよう
- リーダーの理念を実現するための「手段の変更」は柔軟に受け入れよう
「朝令暮改」は批判すべきではない
- リーダーに「正義」を語るとき、それが「誰にとっての正義なのか」を考えよう
最初の3点は取締役会に対する教訓で、最後の1点は従業員への教訓です。かつては周辺がこれほど気を使わなくても自らを報道付けられる「強いリーダー」がいました。しかし、変化が激しい昨今は、そのような鈍感で独善的なリーダーは成果を上げられないでしょう。
魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Last update 1997-11-23