戦略策定

戦略策定

1998年11月23日


 一冊の本をご紹介します。


 失敗の本質 日本軍の組織論的研究
 著者:戸部良一、鎌田伸一、村井友秀、寺元義也、杉之尾孝生、野中郁次郎 
 中公文庫 1991年8月10日初版 (1984年ダイヤモンド社刊)
 

 ご覧のように、バブルの遙か以前に著された書物ですが、現在の経済状況の中で苦労している企業の問題を鋭く突いていると、私には読みとれました。現在の苦境は、日本企業の組織に染みついた体質が影響しています。そして、それは第二次世界大戦中の日本軍にも同じように見られた問題なのです。
 今回からのシリーズでは、本著を現在の企業にあてはめてみて、問題解決へのヒントを探ろうとするものです。

戦略策定のあいまいさ

 戦略に明確な目的や具体的な目標が十分に表現できないと言う問題は、日本企業にしばしば見られます。手段の議論はできるのですが、それを「何のために」しようとするのかを十分に表現できないのです。
 このことは、ちょっとした困難にぶつかると現場が方針を失って混乱してしまうというような現象になって現れます。目的が共有されていないために、ちょっとした困難にぶつかると思考がストップしてしまうのです。

グランド・デザインは必要か?

 欧米の文化では、長期的な計画(グランド・デザイン)を描いて精緻にステップを積み重ねるような組織的なアプローチがしばしば取られ、うまく行きます。アポロ計画のような国家的大プロジェクトは、たいていこのパターンです。一方、日本人はこれがあまり得意ではないようです。部分的には極めて良い成績を収めるのですが、全体としては計画が遅々として進まなかったり、先行するお手本があると高いレベルで仕事ができても、お手本がいなくなると方向を見失ってしまうようなことが起こります。

 ところが、環境変化が激しい時代には、グランド・デザインを描いてからそれを順次進めていく間に環境が刻々と変わっていきます。欧米型の進め方は、難しいのではないでしょうか。
 ハマーとチャンピーが表した「リエンジニアリング革命」は、この点を突いているのだと思います。日本的な進め方(『帰納的』という表現を「失敗の本質」でも「リエンジニアリング革命」でも使っています)は、変化する環境の中で素早く戦略的な変化を進めていくためには有効です。具体的には、現状を分析して課題を洗い出し、それを解決するような手段を設計・構築していくのではなく、実現可能な手段を並べて、その中から漠然と分かっている問題を解決する手段をいきなり選び出すのです。
 これは、日本企業の得意な進め方の一つでありますが、そのこと自体には問題はなく、そのやり方に問題があるようです。

日本企業の陥りやすい失敗パターン

 戦略策定においては、帰納的なアプローチであることが問題なのではありません。ただ、日本人の陥りやすい失敗パターンには、次のような特徴があるように思います。


魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Last update 1998-11-23