Intranetと組織的知識創造
1998年8月23日 改訂
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このレポートは、某研究会で私が発表した内容のレジメをもとに、若干の手直しをしたものです。
- 野中郁次郎氏が提唱する「組織的知識創造」に対して、Intranetは強力な武器になると思われる。Intranetを活用することにより、組織的知識創造がどのように促進され、どのような問題が発生するのか、その過程でどのように施策が実行され、それらがどのような成果を上げるのか、など、事例に基づいて報告する。
1.研究目的
- Intranetは組織の進化を加速すると言われている。一方、組織進化の理論として、野中郁次郎教授は「組織的知識創造の理論」を発表している。
- この「知識創造」のプロセスにおいて、Intranet(とくに電子メールとWWW)は、重要な役割を果たすことにあると私は考える。たとえば、次のような点が上げられる。
- ●共同作業における意見交換を促進する電子メール・電子会議
●文章に書いてみるときに、図はもちろん、音なども扱える(マルチメディア)
●既存の知識体系の中に新しい知識を位置づけるハイパーリンク
●複数の目次からも、脚注などからも、目的の知識を引き出せる
●紙で配る必要がないので、時間がかからないし、WWWブラウザさえあればよい
- 本研究の目的は、組織的知識創造の理論と、Intranetの相乗効果を実際の組織を観察することによって分析していこうとするものである。
2.「組織的知識創造の理論」概要
- 1.個人の暗黙知から、もう一人の個人の暗黙知へ(共同化)
2.個人の暗黙知から、個人の形式知へ(表出化)
3.個人の形式知から、組織の形式知へ(連結化)
4.組織の形式知から、組織(=個人)の暗黙知へ(内面化)
- (注)暗黙知については、個人のものと組織のものを区別することはできない。
図1 組織的知識創造の理論
3.組織的知識創造におけるIntranetの位置付け
(1)表出化の支援
- 文章は本題部分だけを書けばよい。とくに、電子メールや電子会議による質問と解答という組み合わせは、手軽さと厳密さを両方兼ね備えた絶好のツール。
(2)連結化の支援
- 個人が作成した形式の文章を、組織の知識として位置づけることを支援するのが、Intranetの場合はハイパーリンク機能。「位置付け」とは、
- − 標準としてのレベル(守るべきルールからちょっとしたアドバイス・工夫まで)
- − 活用すべき手順上の位置(困ったときに見るのでは遅すぎるときもある)
- − 組織として認識している知識の分野(知識を適用すべき場面は狭いかもしれない)
(3)内面化の支援
- 読む立場から望む順序にしたがって知識を獲得することができる。たとえば
- − マニュアルからリンクすることにより、必要な順序で獲得する
- − 関連知識とリンクすることにより、芋づる式に獲得する
- − 整理された目次からリンクすることにより、理解しやすい順序で獲得する
- − 新着情報からリンクすることにより、新しいものだけ獲得する
4.事例研究の経過
この組織は、情報システム開発を事業として営んでいる。
4.1 当初のIntranet活用状況
(1)電子メールの導入
- 1990年 NIFTY-Serve 管理職を対象に導入 使用頻度は週1回
- 1994年 MS-MAIL 全員に導入 使用頻度に個人差
- 1996年 〃 日常的なコミュニケーション手段として定着
(2)イントラネットの導入
- 1996年夏 一部メンバーが興味本位で導入
- 1996年暮れ 利用者が全体65名の1/3程度に広がる。更新するのは2〜3名
4.2 「ゆらぎ」としての組織変更 1997-5-2
- 組織変更では、開発部にあった4つの課を廃止し、フラットな文鎮型組織を志向。
4.3 組織変更の趣旨説明 1997-5-9
- 部長より口頭で、組織変更の趣旨を説明。部長の話をメモして、それをWebで公開。そのメモに対して、部長の口頭説明に対してはなかった「質問」が発せられた。
4.4 Intranetの一層の活用推進へ 1997-6-3
- 「開発ノウハウ」と称して雑多な情報関係の知識を書き込んでいたページがリニューアル。「格納順」から「開発工程順」に変更。
- 新しい試みとして次のようなものもあるが、いずれも低調。
(1)個人の意見を掲示するホームページをイントラネット上に作成
(2)データベースの勉強会を事業所をまたがって編成し、Web上で情報交換
4.5 フラット組織への挑戦 1997-6-10
- このころから、残念ながら退職者が頻発(半年で65名から60名へ)。情報の流れが活性化され、組織がフラット化されたとき、経営者にとって2種類の大きな変化が訪れる。
(1)経営者の考えていることが従業員にオープンになる。「自分とは合わない」と自覚する従業員が出てくる
(2)会社のマネジメント能力が問われる。声の大きさや貫禄で取り繕うことが困難になる
4.6 Intranet低迷期へ 1997-7-30
- イントラネットの活性化により、一部に残っていた古いパソコンの存在が問題になった。組織として活性化を推進することは、一部の古いパソコンを割り当てられた人たちを取り残してしまうことになり、イントラネットへの取り組みが停滞しはじめた。
4.7 Intranetの標準化 1997-8-21
(1)電子ドキュメントの管理基準
- ドキュメントを電子化しても、共有化は思うようには進まない。その原因は、
- @ フォルダを個人が勝手に作ってしまうため、作った人しかドキュメントが探せない
- A 作りやすいフォルダ体系になり、後から探しやすい体系にならない
- B コピーが簡単なので、古いドキュメントが残り、本物が識別できない
- C 紙のドキュメントのように「たまたま見つける」ということがほとんどない
(2)イントラネット・ホームぺージのコンテンツ(内容)に関する基準
- 作成を推進するとともに、陳腐化を防ぐことを主目的とした。たとえば、陳腐化したコンテンツを発見したら作成者にそれを知らせることを、利用者の責務として明記。
(3)グループウェアの選択に関する提案
- 提案されたのは、Webベースの掲示板、スケジュール管理、行き先案内板、施設予約のセットで、サイボウズOfficeというソフト。次のような長所がある。
- −事業所(サーバー)をまたがったスケジュール検索が容易にできる
- −グルーピングして、そのメンバーのスケジュールを一覧できる
- −掲示板は、他のWebページへのリンクを簡単に設定できる
4.8 マトリクス型組織の採用 1998-2-2
- 階層構造の組織は、どうしても実態としての「課」が残ってしまう。課長も課員も、自然とそのように動いてしまう。そこで、次のようなマトリックス型組織を編成。また、非定常業務については非定常の組織で対応することとした。
- 定常的組織
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メインフレーム |
パソコンLAN |
ロジスティクス系業務
(販売・購買・物流など) |
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間接部門業務
(会計・人事・資金など) |
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- 非定常組織
- 柔軟に編成されるプロジェクトチームなど。
5.結論
- これまでの経緯から、Intranetが組織的知識創造のサイクルの中に「表出化」「連結化」「内面化」で強力なるツールであることを確認することはできた。しかし、この組織においても、いまだに組織的知識創造のサイクルがうまく回っているわけではない。
- マネジメントサイクルのPlan-Do-Check-Actionのサイクルを回すのとは違う難しさがある。マネジメントサイクルは管理者一人で実現できるのに対して、組織的知識創造の方は組織のメンバー全員で実現しなければならないからである。
以上
魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Created 1998-8-2 / Last update 1998-8-23