ある取締役の就任直後の発言だ。社員の前で放たれた言葉なのだが、彼は取締役の意味を分かっているのだろうか?そういえば最近、取締役講座みたいなのが流行っているらしい。分かってない人が多いのかもしれない。
代表取締役社長 = 代表 + 取締役 + 社長
| 代表 | 代表権を持っているという意味 |
| 取締役 | 「取締役」である |
| 社長 | 社長である |
「代表」というのは、商法での「契約者」としての位置付けを言っているのだと、私は解釈している。これは今日の本題ではないので、これ以上深入りするまい。
「取締役」とは、これも商法で規定された役割だ。これは後で詳しく考えよう。
そして、「社長」とは部長が部に責任を負うのと同じで、会社に責任を負う。いわば命令系統で上位にいることを示す。
では、「取締役社長」と「取締役部長」と、どちらが上かというと、普通は「取締役社長が上」と思うだろう。あるいは、「取締役部長とただの部長は、取締役部長が上」と思うだろう。でも、それは間違い。
「社長と部長は社長が上」は正しいが、取締役としては対等と考えるべきだ。「取締役部長と部長は、部長としては同じ」なのだ。
「取締役」は「取締役会のメンバー」という意味で、取締役会とは、株主に代わって会社を監督するのが役割だ。「会社を監督する」というのは、「社長を監督する」ということと、ほぼ同じだ。では、なぜ取締役がいるのかというと、会社はしばしば間違った行動を取ることがあるから。会社が間違った行動をとると言うことは、株主が損失を被ることを意味する。それを防ぐために、株主は経営のプロ(ホント?)に「会社の監督」を依頼するのだ。
冒頭の取締役の発言の「取り締まられ役だね」は、もしその意味が分かっていっているなら「俺が社長だ」といきなり言っていることになってしまう。何と傲慢な!
レポート「それは確かに正論なのだが・・・」で書いたように、株主から訴えられた取締役の「すべて会社のために行ったこと」という弁解がインチキだということを最初に説明する。これは簡単だ。すでに述べたように、取締役は株主のために働くことを約束した。(取締役を引き受けることはそういうこと。)ということは、「株主のため」はあっても、「会社のため」はあり得ないのだ。「会社のため」と言ったとたんに、株主を裏切ったことになっているのだから。
次に、レポート「地球環境に対する責務」で述べたような、倫理的な取り組みを会社が行うことについての、取締役の役割を考えてみる。これはとても重大なテーマだ。多くの企業が、「地球環境をどうするか」という考えを、もともとは持っていなかったのだ。持っていないことに取り組むことは、これも一つの株主を裏切るパターンの一つであり、普通はできない。そういう理念を会社に持ち込む必要があるのだが、一方、社長は株主に対して成果を還元する責任を負っているから、株主が望まない行動をいきなりとるわけには行かない。つまり、「地球環境を守る」という理念を会社に持ち込むのは、社長以下の社員ではあり得ないわけだ。(法律で規制されるとか、それに取り組むことが直接的に利益になるというなら別だが。)それでは誰が持ち込むのかというと、理想的には株主だ。実現できるのは、株主を代表する取締役だ。つまり、取締役会が株主総会に提案するのが、最も現実的な対応なのだ。
「株主に代わって」ということは、世の中の世論に従う必要がある。世論に背を向け、人気を落とすことは、株価の下落を招くし、株主の本意ではない。現在の世論をよく把握し、未来の世論を予測し、それに利益になるように会社を監督することにより、現在の株主に利益を提供することができるわけだ。また、その行動に対して株主から(たいていは)報酬をもらっている。
最近、取締役会の改革があちこちの企業で行われている。社外取締役を導入する企業も多い。その意味は、こういうところで説明できる。要は、会社を私物化しないことなのだ。