レポート:「夢の情報システム」とは
<ERPパッケージの研究>
「夢の情報システム」とは
1998年12月27日
ERPに対する誤った期待をいだき、それに対する幻滅が失敗の要因になっているケースもあるように思われます。ここに紹介する「夢の情報システム」は、誤った期待です。これを見て「そんなことは考えていない」とおっしゃる方も、では何を考えておられるのか、表現してみてください。
夢の販売システム
販売部門にとって、仕事のあるべき姿とは、次々と注文を取ってくる状況でしょうか。それはどうすると可能になるでしょうか。
- 価格を客の言いなりにする
- 仕様は顧客の望みに寸分違わず合わせる
- クレームはクレームの発生原因をつくった人が対応する
- 一人の顧客が大量に発注してくれる
- 注文の変更はいつでも受け付ける
- 急な注文、突発的な注文も引き受ける
- 顧客は請求したとおりに支払う
夢の生産システム
生産部門にとって、仕事のあるべき姿とは、もっとも効率的に生産できる状況でしょう。それはどうすると可能になるのでしょうか。
- 仕様の種類は少なくする
- 品種の切り替えを極力減らし、同じものを長く生産し続ける
- 飛び込み、特急のオーダーは許さない
- 注文の変更は許さない
- クレームは販売部門が責任をもって対応する
販売部門と生産部門の利害関係
上のような仕事ができれば、営業部門も生産部門も寝て暮らすことができます。一つの理想の姿でしょう。さらに、販売部門と生産部門の利害が一致する点、一致しない点があります。
一致する点
- 一人の顧客が大量に同じものを注文してくれることが望ましい
この点は、販売部門と生産部門で意見が一致しやすいでしょう。間違うと、これが「正しい」ことであるかのように理解されます。つまり、「顧客がわがまま」という意見です。
一致しない点
- 受注した注文の変更を受け付けるべきか
- 飛び込み、特急のオーダーは引き受けるべきか
- クレームは誰が請けるべきか(原因を作った人か、販売部門か)
- 仕様の種類は増やすべきか(増やさないと売れない、増やすと効率が落ちる)
この4点は、販売部門と生産部門で意見が一致しない点です。しばしば喧嘩の原因になります。
「夢の情報システム」とは
現場が楽になることを情報システムの目標にすると、上のような「夢」が描かれてしまいます。これらはあきらかに誤りです。この誤りは「程度の差」ということではありません。物の見方がまったく誤っているのです。では、情報システムは誰のためのものでしょうか。
ひとつには、経営者のためのものという考えです。これは主として株主を強く意識した認識です。株主から経営を引き受けた経営者に、十分な情報を与え、その責務を果たすことをサポートするのが情報システムという考え方です。
もう一つは、顧客のためのものという考えです。顧客への便宜をさらに向上させるための情報システムという考え方です。
そして、ERPに対して「現場のための」という期待を持つと、大きな幻滅を感じることは間違いありません。
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魚谷幸一 http://homepage3.nifty.com/uotani/
Last update 1999-3-21