アルミ化粧パネルの製作

前作のMT管式6球スーパーでは、アルミ化粧パネルに市販の1mm厚のアルミ板を使用しましたが、今回は和久井さんの提案でアルミ鋳物にしてみました。アルミ鋳物の場合は、厚さが5mm以上でないと製造できませんが、ラジオ全体の厚さが厚くなるのは概観上好ましくないため、出来上がったアルミ鋳物を部分的に座繰りするという至難の業に挑戦することになりました。

アルミといっても、純粋なアルミでは光沢が出ませんので、ジュラルミンを配合したアルミ合金を使用します。ジュラルミンの配合率によって呼称が異なりますが、今回は薄い製品にするため、4Aというアルミ合金を使用しました。

■木型の製作

木型職人とは・・・
木型職人とは、文字通り木型を作る人のことをいいます。皆さんは木型が彼らの商品だろうと思われるでしょうが、実は彼らが売っているのは木型ではなく「形(カタチ)」です。つまり木材を削って作り出した鋳物の原型となる「形」が、彼らの商品なのです。したがって木型そのものは形を作り出すための媒体に過ぎず、一旦形を取ってしまえばそれ自体に用途はありません。このため彼らの作った木型を我々一般人が目にすることはありません。作ったものが残らないため、寂しさを感じられる人もおられると思いますが、それは「形が商品」というコンセプトが一般に理解されにくいためです。寺の鐘、自動車のホイール、さらには奈良の大仏まで、実は木型がその原型になるのです。あらゆる手段を使って求められた形を正確に作り出す。それが彼らの仕事なのです。

今回の木型には、ヒメコマツを使用しました。乾燥して癖を抜いた材木を削って徐々に木型を作ります。木型には主型と中子があります。両者がセットになって一つの木型ができます。この木型を砂に入れて砂型を取り、溶融したアルミ合金を流し込みます。

縮みについて
溶融状態にある金属は、高温であるため膨張しています。したがって鋳型の中で冷え固まると、膨張していた分だけ小さくなります。これを縮みといいます。したがって木型は、縮みを計算に入れてほんのわずかですが大きめに作っておかなければなりません。縮みは金属によって異なりますので、種類に応じて選びます。今回は縮みを1.2%にしました。

木取り

寸法線の描画

ルーター切削

ノミ仕上げ

完成した中子

完成した主型

■砂型の製作と鋳造の様子

栃木県佐野市は、天明鋳物の町として有名です。この町には、優れた技術を持つ鋳物職人がいます。今回は、和久井さんの紹介で、長谷川さんという職人さんにお願いしました。

木型職人が作った木型をもとにして、砂型を作ります。砂型は型をとった後の木型が抜けるように、いくつかに分かれています。今回の場合、アルミパネルの表側や穴の形になるものを主型(下型)、アルミパネルの裏側の形になるものを中子といいます。主型の上型は、今回に関して言えば形を出す役割はありませんが、湯口(溶けたアルミを注ぐ口)や押し湯(圧力を高めるための製品にはならないアルミ)を与える役目があります。

砂型に使う砂は天然の砂ですが、炭酸ガスを注入すると硬化する薬品など、いくつかの薬品を混ぜます。

鋳型に溶けたアルミ合金を流し込むとき、アルミに圧力を加えて密度を高めないと、出来上がった製品の品質が悪くなります。このため、上型には押し湯(上がりとも言う)を設けて溶けたアルミ合金の自重で圧力が加わるようにします。

中子取に肌砂を入れる

砂こめ完了

炭酸ガスを注入して砂を固める

中子の表面を焼き固める

中子

主型の砂こめ
(下型)

主型の砂こめ完了
(下型)

下型に別れ砂を撒く

主型の砂こめ
(上型)

主型の砂こめ完了
(上型)

主型の下型から木型を抜く

主型の下型に中子を置く

上型を下型に載せる

キュポラ

スラッジを取り除く

鋳型に湯(アルミ合金)を流し込む

鋳型を壊す(上型の部分を壊した所)

鋳型を壊し鋳物を取り出す

アルミ合金の部分は湯道と押し湯と湯口

製品(中子側から)

製品(主型側から)

■研磨工程

仕上がった鋳造品を研磨して光沢を出します。

バフ研磨

コンパウンド仕上げ

バフ研磨

完成

■職人と技術

資源に乏しい日本は、加工貿易で戦後の復興を成し遂げました。それを支えてきたのが、町工場で働く職人たちです。彼らは、自分の専門分野を極限まで追及し、新しい技法を取り入れながら優れた技術的財産を築き上げてきました。現代の大手企業ではマニュアル化が進み、社員だれもが技術資産を活用できるように工夫していますが、私は、そもそもこうした技術は、生まれながらに適性を持った一部の人間でなければ、本当に身につけることはできないのではないかと思っています。科学技術の発達と共に、便利な測定器や設備が職場に導入されるようになりましたが、それは技術を身につけた者が利用してはじめて真価を発揮するのであり、素人が盲目的に頼ってもよい結果は得られません。

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