1991年3月、初めての海外旅行、香港、中国へ行ったときのこと。香港の今は無き啓徳空港(ここへ着陸するときのスリルはいまだに強烈な印象として残っている)へ到着したのは夜中の12時前。空港を出たとたん、僕と友人は2人で、途方に暮れてしまった。2人とも、なーんにも調べていなかったのだ。とりあえず、バスターミナルへ行く。どのバスに乗れば良いか、全くわからない・・というのも、どこを目指せば良いかも全く分からなかったのだから、バスに乗る以前の問題であった。

その場で初めて「地球の歩き方」を広げる。安宿が集まっている有名な雑居ビル「重慶大厦」を我々は目指せば良いということが分かった。さて、そこへ行くにはどうしたら良いか・・。バスの行き先や時刻表などをキョロキョロと見ていると、一人の男が近づいてきた。宿の勧誘だった。我々に部屋の写真を見せ、熱心にしゃべり出した。海外で初めて英語を聴いて話したのが、その男とのやりとりであった。「勧誘慣れ」していない我々は非常に戸惑い、男はしつこく勧誘してくる・・そんなやりとりをしていると、警官が何人かやってきた。男はIDカードみたいなものを見せて、「俺は悪いことはしていないよ」みたいなことを言ったが、警官は男を連行して行った。「ああいう奴らは相手にするな」と言い残して、警官は去って行った。初海外旅行にして、いきなりハプニング。

さて、どうするか・・。エアポートバスの最終の時間だ。どうにかなれ!ということで、我々はエイヤと目の前のバスに飛び乗った。降りる場所なんてわかるわけがない。けど、エアポートバスだから、当然ホテルのある場所に着くだろう・・。不安を抱えながら、始めてみる外国の街を窓から眺めていた。バスの乗客は我々だけだった。あるところでバスは止まり、運ちゃんが「ここで降りろ」と言った。降りたところの路上にいたおばさんに運ちゃんは何かを告げて、バスは去って行った。そのおばさんは、宿を経営している人だった。50香港ドルの部屋があるという。まあ、いいかと思い、我々はその部屋に泊まることにした。

おばさんに案内されるまま、我々はついていった。怪しげなビルに入っていく。中近東系の男たちが何やらたむろして、こっちを見ている。「ヤバイかな・・」不安になっていく。おばさんと一緒に、一瞬ためらいながらも、エレベータに乗り込む。すると、同時に一人の中近東系の男も乗り込んできた。そのとき不安は頂点に達した。が、何事もなく、その男は途中の階で降りて行った。一体ここはどこなのか、安全な場所なのか危険な場所なのか、このおばさんは信用できるのか・・我々は何もわからず、ただおばさんを信用するしかなかった。

部屋に案内され、とりあえず我々は一安心した。その日は、不安を抱えつつも、すぐに眠ることができた。朝になって、外へ出てみた。なんと、昨日の夜中とはまるで違う、まさににぎやかな「香港」の街が目の前にあるではないか・・!。そう、我々が泊まっていたところも、ズバリ「重慶大厦」だったのだ。こうして、すべてが行き当たりばったりの我々の旅が始まったのであった。

 

 

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