最近火山性の微動や地震が増加し、噴火が懸念されている磐梯火山についてその噴火史と山の様子を備忘録的にまとめました。なお磐梯火山の歴史については山元・須藤(1996)を元にしました。
磐梯火山は福島県猪苗代湖の北に位置します。磐梯火山は平面的には直径10kmほどあります。磐梯火山はおもに3つのピークからなり、高いピークから順に大磐梯山(1818.6m)、櫛ヶ峰(1636m)、赤埴山(1430m)です。磐越西線の郡山から麓に向かう間は、大磐梯山と、櫛ヶ峰からなる双耳峰にみえます。
山元・須藤(1996)の地質図を参照
磐梯火山がいつ頃噴火を開始したのかはよくわかっていませんが、磐梯火山のほとんどは数十万年前以降にできたと考えられています。磐梯火山は下位から古期山体噴出物、小磐梯山体、大磐梯山体、からなります。
古期山体は赤埴山、櫛ヶ峰、大磐梯山の西側に露出している山体です。これらの山体は現在の地形面をよく観察すると一つの成層火山であったことが推定されます。ただし地層をよく観察すると、明らかな不整合も見いだされるので、古期山体は単純に成長していったのではなく、成長と浸食、山体崩壊など複雑な過程を経て成長していったものと思われます。古期山体の形成は今から20数万年前に終わったようです。
小磐梯山体は現在の大磐梯山の北側に位置していた山体で有名な1888年の山体崩壊で、ほとんど消滅しました。小磐梯山体の残存物は崩壊壁に見られるほか、溶岩流が北西部に見られます。小磐梯山体の形成時期はよくわかっておらず、大磐梯山体ほぼ同時期であると考えられていますが、絵画資料から大磐梯よりも開析が進んでいたことが推定されています。このため、小磐梯山体は大磐梯山体よりも前に成長をやめたと考えられます。活動の開始は5〜6万年前頃だと考えられています。
大磐梯山体は古期山体の南西に開いた馬蹄形の崩壊カルデラ内に形成された円錐形の成層火山です。大磐梯山体の活動開始は、後述する翁島岩屑なだれ堆積物(36000〜40000年前頃)の後であると考えられます。また、大磐梯山体の成長は24000年前後までに終了しているものと考えられます。
磐梯火山を給源とすることが明らかな噴出物はAT(22000年前)以降、沼沢-沼沢湖テフラ(5000年前)まで見つかっておらず、この間はすくなくとも大規模な噴火は無かったものと考えられます。沼沢-沼沢湖テフラの上位には4つの水蒸気爆発の堆積物があります。そのうち上位二つは上から、1888年の山体崩壊のときの水蒸気爆発堆積物、806年の水蒸気爆発堆積物です。
磐梯火山は過去に何度か大規模な山体崩壊を起こしました。このことは山体には馬蹄形の崩壊カルデラが、山麓には崩壊で生じた岩屑なだれ堆積物が堆積していることからわかってきました。磐梯山北側には1888年に小磐梯山が崩壊してできた馬蹄形崩壊カルデラがあり、ここからでた岩屑なだれによって川がせき止められ(旧長瀬川)、桧原湖、秋本湖などが生じました。大磐梯山がある古期山体南西の馬蹄形カルデラに対応して山麓に翁島岩屑なだれ堆積物があります。大磐梯山の西側にも櫛ヶ峰〜大磐梯山〜赤埴山で囲まれる馬蹄形の崩壊カルデラがあり、これに対応して山麓に琵琶沢岩屑なだれ堆積物があります。この形成時期は6〜7万年前頃と考えられます。
1888年の山体崩壊はマグマが関与していない水蒸気爆発によるものと考えられています。一方、翁島岩屑なだれに関してはその下位に軽石流堆積物があるほか、岩屑なだれ堆積物中にデイサイトの本質岩片が含まれることから、マグマの上昇に関係して発生したものと考えられます。