真実のsin
私とsinとの付き合いは長い。奴ほどワガママで、思うが侭に生きる人間は見たことがない。
喜怒哀楽がハッキリしている。嘘は言わない。良く言えば”子供のような純粋な心の持ち主”、
というか、悪く言えば”ガキくさい”ところも多々あり。
気に入ったものは、どうやら身近に置いておかなければ気が済まないらしい。
例えばそれは、5年以上前にもらった花束のミイラだったり、首や袖が伸びきって、ところどころ破けて、
色なんか元の面影も無いほど変色したシャツだったり、友達から半ば強奪した『バリバリ伝説 全巻』だったり、
中学生の時に女の子からもらったラブレターだったりする。
部屋はいつも汚い。良く言う「足の踏み場も無い」状態ではなく、「足の置き場=服か本の上」なのである。
時々最下層から得体の知れない物(腐ったバナナの皮やドロドロになったみかん等々)が出没する。
こんな奴の性格の一端を示すかのようなエピソードをいくつか紹介しよう。
読んだ方は、これでsinの印象が悪くなってしまうかもしれないが、これも真実なのである。
その1
sinがまだサラリーマンだった10数年前のこと。その当時奴がハマった酒がある。
ジャマイカの「マイヤーズ・ラム」だ。結構キツイ酒だが、近所の「富田商店」で大瓶で購入し、
毎日毎日ロックかストレートで飲んでいた。
ボトルは楕円形でラベルも気に入ったので、中身がなくなっても空瓶を飾っていた。その数は
瞬く間に増えていき、狭い部屋を占領していった。
冷え込む夜には、マイヤーズの空瓶に熱湯を入れ、タオルを巻いて行火(アンカ)の代わりにした。
翌朝はそのお湯で顔を洗っていた。(当時は湯沸かし機も持っていなかった)
奴にとって、そんな愛すべき瓶との別れの日がきた。引越しをしたのだ。
sinが引っ越した翌朝、近所のごみステーションはマイヤーズ・ラムが山を成していた。
あまりの量の多さに、他の家がごみを捨てられないような状態だったとか。
その2
雑誌などで気に入った店の情報を入手し、休みの日に行ってみよう、ということになる。
当日、店の近くまできたのはいいが、道が混んでいたり、迷ったり、挙句に駐車スペースが
なかったりすると、人間誰しもイライラするものである。
sinの場合、このイライラは持続しない。やめてしまうのである。
「めんどくせぇ。やめよう。また次にしよう。」 必ず言う。例え数十キロ、数時間かけて行ったとしても。
一緒にいる人は(折角来たんだし、もう少し待ってもいいんだけどな。次なんていつになることやら・・・。)
と思っても、sinの意見は覆らない。いつでも、どこでも、Going My Way なのである。
その3
sinと知人の披露宴に出席した日のこと。二次会も盛り上がり、酔ったままsinの部屋に帰った。
万年床に横になりながら、sinは「フジ子、腹 減った何か作ってくれ。」などとのたまう。
私は炊飯器を開いたが空だったので、「ごはんがない。スパゲッティならあるけど。」と言った。
すると、「スパゲッティが食いたい。作って作って。」 ・・・sinはワガママ大王になった。
(私だって疲れてんのに・・・。ブツブツ。)文句を垂れながらも心優しい私は台所に立った。
20分後、「sin、メシできたよ。」と言った私にsinは、目を閉じ、首を左右に軽く振りながら
「・・・いらない。」 と言ったのだ。
私はブチ切れた。 「っざけんなよっ!!」 という捨て台詞を吐き、
怒りに身を震わせながら自宅へ帰ったのだった。