俺はうまれて始めてハンモックというものに揺られていた。トムとジェリーをみて
小さな頃から憧れていたのだが、ここでその夢が実現するとは。
ここはタイの東北部、スリン県のサムローン村。飲み物や肉など、わずかしかない
商品しか置いてない店が1件あるきりの、この村の民家で、なぜか俺は何日かすごして
いる。ここはイサーンと呼ばれている地域で、タイのなかでも貧しい地域というのは俺も
知っていた。たしかにその通りかもしれない。日本のテレビには、虫などを食べるその地域
の暮らしを「ゲテモノ」としておもしろおかしく取り上げるし、彼らが食べる、カエルやネズミなども
首都バンコクに住む都会人は(実際、札幌なんか目じゃない大都会なのだが)気持ち悪くて
食べられない、という。しかし、その場所にはその場所の合理性というものがあるのだ、と思う。
バンコク近郊では豊かな水と美しい田園も見かけたが、イサーンのほうは、赤茶けた、荒れた
農地がひろがっているのだ。きっと土地も痩せているのだろう。
ところで、なぜ俺がこんなところに泊まっているのか?
それは、俺の尊敬する、札幌の一部では顔の売れた、一人の紳士、「とーさん」と一緒だったからだ。
彼は、「ヤ」のつく職業だ。俺のヤトイ主なのだが。ずいぶん前からアジアの地を歩き回り、実に
様々なことを知り、それについて自分なりの鋭い考えをもっているのだ。しかも、20以上も年上にも
かかわらず、極めて柔軟な思考を持ち、何処へ行ってもそこで生まれ育ったかのようなとけこみかた
をするので、同行した俺も、いろいろと楽しい思いをすることができた。
タイには3週間ほど滞在していた。とーさんは、アジアの子供たちのためのNGOを主催していて、
本来の目的は、サムローン小学校の子供たちのための資金調達と食料のための、ナマズ養殖
プロジェクトの視察がメインだったが、それはあっという間に終わったので、あとはビールを飲んだり
歩き回ったりと、遊ぶのに費やされた。バンコク、スリン、コーンケーン、ナコーン・パトムに滞在。
以下は、その中でいろいろあったこと、思ったことの断片だ。