流行の先端を目指し、常にあたらしいものをさがしあるく。
または、流行にとらわれずに、ずっと変わらないものを求める。
どちらがいい、悪いではなく、境界線の実は微妙なことなのであるが、どっちか選べ、
ということになると、俺は後者のほうに属するのかもしれない。
高校生の時、バイクの免許をとった。
ハハは免許を取るのに猛反対だったが、俺は法律をたてにとり、学校をズル休みして
試験を受けに行ったところ、驚いたことに、クラスメートが2人もいた。一人は男だったが、
もう一人はメグミという女の子で、ハハオヤと一緒にきていた。
彼女も猛反対され、泣きながら、絶対取るからね!といっていたのだが、突然、反対の張本人である
ハハオヤが、おかあさんも取ることにしたわ、といって、親子で来ていたのだった。そして、2人とも
落ちたのだが。
免許を取るとバイクがほしくなり、雑誌ばかり読んでいたがとにかくカネがなかったので、夢ばかり
みていた。当時も古いバイクだったが、ホンダにCB400Fという大変美しいバイクがあり、それに
憧れていたのだ。いろいろな改造をして…などと、想像するだけはタダなので、いろいろ空想
していたところ、その想像とほぼ寸分たがわない雰囲気のバイクが発売された。
シンプルな外観。一文字ハンドル。単気筒のリズム。俺は一目でこのバイクがほしくなり、とうとう、
ミツコシでバイトしたカネを頭金としてローンを組み、購入。大学1年のときのことだ。
バンドで忙しく、バイトもなかなかできなかったため、返済には苦労をしたが、銀行残高ゼロの
時にはコンテストの賞金が偶然入ってきたので、なんとか早く終わらせることができた。
バイクというものはいいものだ。全身に風を受け、走る。空気の温度、湿度が、場所場所に
よって違うこともわかる。とてつもない開放感。
もう、15年くらい乗り続けてる事になるのかな。スロットルグリップは俺の手の形になり、シートは
ヤブれ、ボロボロ状態。それからこんなこともあった。
近所のスタンドに洗車に行った。燃料タンクの下部に水をあてると、面白いほどヨゴレがでてくる。
そこで調子に乗ってシツコクやってると、いきなりタンクに穴があき、ガソリンが噴出してきた。
慌てた俺は、急いでガムを噛み、それを貼りつけてとりあえず行き付けのバイク屋に急行した。
タンクをとりかえたバイクは見違えるようになり、バイク屋のおばさんは、
「いやー、このバイク、年々新しくなるねぇ」
などと笑っていた。
そんな俺も、浮気をしかけたことがある。遅い上にブレーキがきかなく、乗りにくいので、ツーリング
などにいくと、最近の高性能バイクについていくには、大変オソロシイ思いをしなければならないのだ。
一大決心をした俺は、さっきのバイク屋に、新型バイクの予約にいき、これがお前の乗り納めだ、と
ばかりにちょっと遠出をした。しかし、海沿いにバイクを止め、なにげなく振りかえりバイクをみつめると、
単気筒の振動に震えている、これまでずっとこいつに乗って、いろいろなところに行って来たことを
思いだし、どうにもいとおしくてしょうがなくなり、俺は予約は取り消してしまった。
もう、一生、壊れてしまうまで、乗りつづけることだろう。
曲がったハンドル、コケたときに削れたマフラー。普通の人には、ただのキズにみえるかもしれないが、
俺にとっては、そのひとつひとつも思い出なのだ。
