いつでもどこでも簡単に人をハメる方法。
さまざまな要素を考え、ついにある日、俺は一つの回答を見つけた。
人間の習性を利用するのである。
友人と二人で街を歩くとする。
次の角を左に曲がる、というまさにその時、アウトコース側の死角に入ると、俺の存在を
見失った友人は、どこにいるのか確認しようとして、必ずインである左側から後ろを見ようとする
のである。左角なら左側、右角なら右から、ほぼ100%の確率でそうなる。
さて、そうして無様に俺を探そうとするさまをじっとみつめ、できるだけ冷ややかな声で
「おまえ、ド〜コ見てんの?」
と言うのである。
やられた相手はもちろん悔しがるが、もって生まれた習性は、悲しいかな、そう簡単には変えられない。
慣れないうちは何度でもひっかっかる。これは面白い。
俺は大喜びで、街中、学校、交通機関の中などで毎日のようにこのイタズラを繰り返していた。
そのうち、逆にこの手で俺をはめようとする輩も現れたが、戦国時代の剣豪、塚原ト伝のように
常に警戒して危険を避けていたので返り討ちにあうことはなかった。
ある日、作田という男と二人で街に出た。貧乏だった俺達は、タダでゲームをして遊ぼうと思い、
デパートのパソコン売り場へ向かっていたのである。
当時はファミコンが出たての頃だったが俺達には到底買えるわけもなく、デパートへいっては
先にパソコンゲームをやってる中学生を後ろから脅し、席を乗っ取る、ということをよくやっていた。
とりとめのない話をしながらあるくうち、突然、作田の姿が消えた。反応しようとする身体を制御し、
自分に言い聞かせる。
振り向いたら、負けだ。今振り向けば奴にバカにされる。何事もなかったように歩くんだ…
俺はそのまま直進し続けた。
その後、5分ほど一人で歩いたが、まだ出てこない。
強情な奴だ。俺はなおも歩いた。
そしてその頃、作田も突然姿を消した俺に激しく動揺していた。
しかし、悪いことに奴は、所かまわず行う俺の術に毎日にようにハマり、少しだけ免疫ができていた。
それが裏目にでた。
「とにかく歩くしかない」
奴はそう思い、そして俺たち二人は後ろを振り向かず、一直線に別々の方向へと歩いて行ったのである。
結局、その日はもう、奴に会うことはできなかった。
お互いに一人ぼっちで20分ほど歩き、そこでようやく相方がいないことを初めて発見したのだ。
その日の夜、歩きつかれた作田から電話があり、以上の顛末がわかった。
(イタズラな日々3へ続く)