耳に水が入ってしまった時、どうするのか?
たしか小学生だった時、何かの本で、水の入った耳を下に向け、片足ケンケンするのが
正しい、と書いてあった気がする。
しかし、どうにもバカ過ぎるような格好だと俺は思うのだが。
それに、この方法は本当に「正しい」のだろうかというギモンは俺の中では消えないのだ。
無意識にうちにする仕草というのは、本やテレビ、周りの環境などから、知らず知らずのうちに
自分に刷り込まれているのではないだろうかと時々、考える。
「待った」という仕草。開いた手のひらを相手にむけるこの動作。逼迫度が増すほど、腕の伸ばし具合が
張り詰めるような気がするが、まぁ、そんなことはどうでもいい。
高校生の時の修学旅行は一大イベントだった。みんな張り切る。
サッカー部のモテモテ男、ハラダもこの日の為にパーマをかけ、ドカンと呼ばれていた大変太い
学生ズボンを新調し、のぞむ。行き先は京都。我々の頃はまだ青函連絡船が運行していたが、彼は
その格好でフネの上でオニゴッコをしていて生活指導の先生(柔道5段)にパクられ、ズボンを没収されて
しまった。
あ、とられたか、と思っていると、次の日も同じようなズボンをはいていてまた没収され、しかし、あくる日も
太いズボンをはいていた。こうなることを見越して、奴は予備ズボンを2枚持ってきていたのだった。
しかし、この準備の良さが先生の逆鱗にふれ、京都のトコヤで5厘刈りにされてしまうことになる。
前日まで、実にカッコいいリーゼントをキメてた奴が、突然、僧になって出現したので我々は驚いたが、
もともとルックスがいい奴なので、ボウズになってもカッコよく、ちょっとしょんぼりするくらいのダメージで
済んだのだが、ここにもうひとり、ココロに大きなキズを負った奴がいた。
ヨーイチロー・キムラである。
野球部に所属していてもともと丸刈りだったが、彼もまたなかなかカッコいい奴だったので問題ない。
目がぱっちりしていて、なかなか男らしい風貌の奴なのだが、授業中は教科書をマクラにして熟睡、しかも
ヨダレを流して寝るので、表紙は多少シワシワになっていた。
学生生活を送るのには避けて通れない、男の関門がある。
学校でウンコなどしようものなら、罪人扱いされるのだ。本人は隠れて、見つからないようにトイレに行った
つもりでも、帰ってくるとその事実はクラスの大半にバレていて、
「お前、さっきウンコしてたろ」
などと糾弾されるのだ。それはまだ良いほうで、トイレの個室が閉まっていると、バケツに水を溜め、誰彼
の見境なく上からぶっかける、なんてこともあった。ごめんちゃい、俺だ。悔い改めました。今。
しかし、さすがに高校生にもなると、そんな迫害の歴史も幕を閉じ、トイレとの長かった戦いも、終わる。
修学旅行独特の、一部ハイになった気分で列車の座席で盛り上がっていたキムラだが、ふと、便意を
催していた。男らしく堂々と、クソをしてくる、とデカい声でいい、大股で便所に歩いて行ったキムラだが、実は、
その便所のカギは壊れていたのだった。
何も知らずにJRの一段高くなっている和式便器にしゃがみこみ、彼は安らかな孤独の時間を過ごしていたのだが
ここで、事件は思わぬ方向へ展開する。クラスの女どもが、集団でこの便所にやってきたのだ。
ドアの取っ手に手がかかる音を聞き、毎日野球部で鍛えていたキムラはとっさに排便姿勢のまま、上半身
だけを半回転させ、左手でノブを押さえた。
しかし、コワれているドア表示は、入ってませんよ、というふうになっているので、女どもは、
「なにこれ、あかないよー?」
などといいつつ、シツコクもガチャガチャやっている。キムラも、入ってます、などと言えば良いのに、
歯を食いしばって耐えるのみだ。
とうとう、女どもは集団で力を合わせ、ドアに挑み始めた。さすがのキムラも懸命に頑張っていたが、
とうとう力尽き、ドアは大きな音を立て、物凄い勢いで全開になった。
女どもは、きゃーっ!!などと叫んでチリヂリに逃げて行ったが、そのときのキムラの格好こそ、
最初に述べた「待て」の姿勢だったそうである。しかもなにか叫んだらしい。
この話しは確かハラダに聞いたのだが、ヤツによると、キムラは肩をガックリと落として便所から
帰ってきた後、しばらく誰とも話さなかったそうである。それを、誰にも言わないという約束でキキだし、
それがあまりにも面白かったのでヤツはみんなに広め、そして今、1000のアクセスを超えた俺のページ
に載ることになる。キムラ、すまん。そして、まったく関係ないのだが、俺は今、クロワッサンの新しい
食べ方を発見し、巻いてある形をくるくると逆にハガシながら、食ってみた。すると、途中で失敗し、
ちぎれて一番中心の部分だけが残ってしまった。これはクロワッサンのホネです。あむあむ。